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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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近衛兵の心意気

近衛兵たちは、11階層を突破してからも順調に進んでいった。


モンスターとの戦闘を繰り返しているが、まだ余裕がある。


さすが王族を守るために鍛えられているだけのことはある。


そして、ついに20階層を突破した。


「20階層も問題なく突破しましたね」


「これなら最低でもDランク冒険者のラインは超えているな」


隊長も部下たちの様子を確認する。


まだ全員が戦える状態だ。


「今日はここまでにする。一度引き上げるぞ」


「はい!」


近衛兵たちは来た道を戻り、一階層まで戻ってからエレベーターに乗った。


その日の攻略を終えた近衛隊長は、王妃のもとへ向かった。


「王妃様、20階層まで突破いたしました」


「まあ……20階層まで?」


王妃は報告を聞いて少し驚いた。


「はい。全員、まだ戦える状態です」


「それなら明日も続きをお願いしましょう」


「承知しました」


翌日。


近衛兵たちは再びダンジョンへ入った。


エレベーターで20階層まで移動し、21階層へ進む。


そこから先も、近衛兵たちは慎重に進んでいった。


だが、アレンはモニターを見ながら首を傾げていた。


「……なんだ、この陣形」


近衛兵たちは、横一列になって進んでいる。


しかも、中央が前方を受け止め、両端の兵士が外側から攻撃する形だ。


「普通、縦だろ」


アレンは思わず心の中で突っ込んだ。


モンスターが前方から現れる。


近衛兵たちは横一列のまま迎え撃った。


中央が攻撃を受け止め、その左右から兵士が攻撃を加える。


さらに別のモンスターが横から近づこうとすると、両翼の兵士が対応する。


「なるほど……」


アレンは見ていて気づいた。


これは鶴翼の陣だ。


正面から敵を受け止めながら、左右から包み込む。


対人戦闘を想定して作られた陣形なのだろう。


「さすが対人専門部隊だな」


冒険者なら、もっと単純に前衛と後衛に分かれる。


だが近衛兵たちは違った。


王族を守るために、人間を相手にした集団戦を徹底的に叩き込まれている。


その戦い方を、そのままダンジョンでも使っているのだ。


近衛兵たちはそのまま攻略を続けた。


そして――


「30階層です」


ついに30階層へ到達した。


アレンはモニターを見ながら呟く。


「さすがに30階層はきつそうだな」


30階層のボス。


これまでの階層とは明らかに違う強さだ。


近衛兵たちは隊列を組み、ボスへ挑んだ。


「行くぞ!」


隊長の号令とともに、近衛兵たちが動く。


中央がボスの攻撃を受け止め、左右から攻撃を仕掛ける。


だが――


「ぐっ!」


ボスの攻撃を受けた兵士が吹き飛ばされた。


「隊列を崩すな!」


隊長が叫ぶ。


しかし、近衛兵たちの装備ではボスの攻撃を完全には受け止められない。


騎士団が使うような重装備なら耐えられた攻撃でも、近衛兵の装備では厳しい。


一人、また一人と押し込まれていく。


「隊列を維持しろ!」


「無理です!」


「まだだ!」


陣形が崩れ始める。


それでも近衛兵たちは逃げなかった。


隊長が声を張り上げる。


「我々が突破されたらどうなる!」


近衛兵たちが隊長を見る。


「王族に危険が及ぶのだぞ!」


その言葉に、兵士たちが再び立ち上がった。


身体は限界に近い。


それでも武器を握り直す。


「まだ戦えます!」


「俺もだ!」


「行くぞ!」


アレンはモニターを見ながら呆れた。


「……いや、誰も守ってないだろ」


さっきまで王族を守るための陣形だった。


だが今は、その王族がここにいるわけではない。


それなのに、誰も逃げようとしない。


アレンには、もはやコントのようにしか見えなかった。


「冒険者だったら、とっくに一度引いてるぞ」


30階層のボスは強い。


このまま戦えば危険だと分かる。


冒険者なら撤退して、装備を整えて、また挑戦するという選択肢を取るだろう。


だが近衛兵たちは違った。


王族を守る。


その一点だけで、限界を超えて戦い続けている。


「……そういうことか」


アレンはモニターを見つめた。


「冒険者と兵士の差って、強さじゃないんだな」


もちろん、装備や訓練による差はある。


だが、それ以上に違うものがある。


「心意気か」


彼らはただの兵士ではない。


王族のすぐそばで命を懸けることを役目としている、近衛なのだ。


普通の兵士なら、とっくに撤退していてもおかしくない状況だった。


それでも近衛兵たちは立ち続けた。


そして最後には――


「うおおおおっ!」


近衛隊長がボスへ突っ込んだ。


一人だけ、動きが違う。


隊長はボスの攻撃をかわし、隙を見つけて一気に距離を詰める。


「これで終わりだ!」


渾身の一撃がボスを捉えた。


ボスが大きくよろめく。


そして、そのまま倒れた。


「……倒した」


誰かが呟いた。


しかし、勝利を喜ぶ余裕はなかった。


近衛兵たちはその場に座り込んでいる。


立っている者すら少ない。


身体への損傷が激しく、しばらくまともに動けそうにない。


アレンは隊長を見る。


隊長だけは、まだ立っていた。


「隊長だけ別格だったな……」


30階層を突破できた。


だが、それは近衛兵全員が30階層のボスに対応できたという意味ではない。


隊長の実力が突出していたからこそ、最後に勝ち切れたのだ。


アレンはモニターを見ながら考えた。


「近衛兵の実力は、20階層までは十分。30階層は隊長がいれば突破できる……ってところか」


そしてもう一つ。


アレンは、冒険者と兵士の違いをはっきりと感じていた。


強さだけではない。


守るものがある者は、最後まで立ち上がる。


それが近衛兵なのだ。

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