兵士と冒険者
アレンはダンジョン内の冒険者たちを眺めながら、ふと思った。
「そういえば、兵士と冒険者って、どっちが強いんだ?」
冒険者については、これまでずっと観察してきた。
何階層まで進めるのか。
どんな魔物と戦えるのか。
どれくらいのポイントを生み出すのか。
冒険者が強くなっていく過程も、かなり詳しく把握している。
しかし、兵士についてはよく分からない。
兵士も戦闘訓練を受けている。
だが、冒険者とは戦う相手も目的も違う。
冒険者は魔物と戦い、兵士は基本的に人間を相手にする。
「分からないなら、実際にダンジョンに挑んでもらえばいいか」
アレンはあっさりと結論を出した。
兵士が何階層まで進めるのかを見れば、冒険者との違いも分かる。
「よし、王妃様にお願いしよう」
アレンは宝くじ箱を通して、王妃様へ書状を送った。
内容は、近衛兵の精鋭でパーティーを組み、ダンジョンに挑んでほしいというものだった。
無理に深い階層まで進む必要はない。
自分たちが進めるところまででいい。
アレンとしては、それだけでも十分なデータになる。
王妃様は書状を読み終えると、すぐに近衛隊長を呼んだ。
「近衛隊長、ダンジョンマスター様からお願いがありましたわ」
「お願い、ですか?」
「ええ。近衛兵の精鋭でパーティーを組み、ダンジョンに挑んでほしいそうですわ」
「…………」
近衛隊長は言葉を失った。
「我々が、ダンジョン攻略を?」
「そうですわ」
「……騎士団ではなく?」
「近衛兵を、と指定されていますわ」
近衛隊長は困ったように王妃を見る。
近衛兵は王族を守ることが仕事だ。
もちろん戦闘能力は高い。
日々厳しい訓練を行っているし、対人戦闘についてなら自信もある。
しかし、魔物との戦闘となると話は別だった。
近衛兵は対人戦闘を想定した部隊なのだ。
王族を狙う暗殺者。
反乱を起こした貴族。
王城へ侵入してくる敵。
そうした相手から王族を守るための訓練が中心になっている。
魔物を相手にした実戦経験は、ほとんどない。
「……騎士団に頼んでほしかった」
近衛隊長は思わず本音を漏らした。
「私もそう思いますわ」
王妃様も苦笑する。
「ですが、ダンジョンマスター様が近衛兵を指定されたのですもの。お断りするわけにはいきませんわ」
「それは……そうですね」
王妃様からの命令であり、さらにダンジョンマスターからの指名でもある。
断るという選択肢はなかった。
「ただ、進めるところまででいいそうですわ」
「それは助かります」
近衛隊長は胸を撫で下ろした。
無理に深い階層まで攻略しろと言われていたら、かなり頭を悩ませるところだった。
「では、精鋭を選抜いたします」
「お願いしますわ」
こうして近衛隊長は、ダンジョン攻略部隊を編成することになった。
翌日。
選抜された近衛兵たちが集められた。
「今日から我々はダンジョンに挑む」
「ダンジョン……」
「魔物と戦うのですか?」
「そうだ」
近衛兵たちは顔を見合わせた。
誰もが剣の腕には自信がある。
しかし、魔物と戦った経験がある者はほとんどいない。
「我々は近衛兵だ。魔物討伐を専門にしているわけではない」
隊長はそう前置きした。
「だから、無理はするな。危険だと判断したら戻る。これは命令だ」
「了解しました!」
近衛兵たちは一斉に返事をした。
一方その頃、アレンはダンジョンコアの前で楽しそうにしていた。
「これで分かるぞ」
冒険者は魔物との戦いを繰り返して強くなっている。
では、対人戦闘を専門としている兵士がダンジョンに入ったら、どこまで通用するのか。
アレンは今まで比較できなかった二つの存在を、初めて同じ場所で観察できることに期待していた。
「さて、近衛兵は何階層まで行けるかな」
アレンはダンジョンの入口へ視線を向けた。
やがて、近衛兵の精鋭部隊がダンジョンへ入っていった。




