安定収入
アレンは、最近のダンジョンの状況を確認していた。
現在、トップ層の冒険者たちは50階層でボスと戦っている。
50階層まで到達できたパーティーはまだ少なく、クリアしたのは一組だけだ。
「順調に強くなってるな」
アレンが冒険者たちの動きを眺めていると、ダンジョンコアが現在のポイント収支を表示した。
ダンジョンでは、冒険者が中にいるだけでも滞在ポイントが入る。
しかし、それだけではない。
歩き回って体力を消耗する。
武器を振るう。
魔法を使う。
傷を負い、回復する。
そうやって冒険者が体内のエネルギーを使えば使うほど、ダンジョンに入ってくるポイントは増えていく。
当然、強い冒険者ほど一度の戦闘で使うエネルギーも多い。
つまり――。
「強い冒険者ほど、ポイントをたくさん落としてくれるんだよな」
『その通りです』
「だから下層ほど、いい武器や装備を出せる」
『はい。高階層ほど、より強い冒険者が活動するため、ダンジョンが得られるポイントも増加します』
アレンは満足そうに頷いた。
最初は弱い冒険者しか来なかった。
だから低階層の設備や景品も、それに合わせたものだった。
しかし、冒険者たちが成長すれば、ダンジョンに入ってくるポイントも増える。
ポイントが増えれば、さらに強い敵や装備を用意できる。
そして強い敵と戦った冒険者は、さらに成長する。
「上手く回ってるな」
アレンにとって、冒険者を育てることはダンジョン経営そのものだった。
そして、その中でも忘れられない戦いがある。
「勇者とエンシェントドラゴンの戦いは、本当に凄かったな……」
あの戦いでは、とんでもない量のポイントが発生した。
勇者が全力で戦い、エンシェントドラゴンも凄まじい力を使った。
これまでの冒険者同士の戦闘とは、比較にならない。
アレンが想定していた以上のポイントが一気に入ってきた。
「まあ、その分ご褒美を奮発しすぎて赤字になったけど」
アレンは苦笑する。
初回だからこそ、特別な報酬を用意した。
あれだけ凄まじい戦いを見せてもらったのだから、奮発するのも悪くないと思ったのだ。
「二回目からは赤字にならない予定だったんだけどな」
『……』
「なんで来ないんだ?」
勇者たちは、その後やって来なかった。
アレンとしては、もう一度あの規模の戦闘が起きれば、今度こそポイント収支も計算しやすいと思っていた。
しかし、期待していた再戦は起きない。
「まあ、そう何度もあんな戦いが見られるわけないか」
アレンは諦めて、別のデータを見る。
「こっちは順調だな」
Cランク冒険者の人数が、以前とは比べものにならないほど増えている。
30階層の攻略を目指す冒険者も増え、ボス戦を経験する者も多くなっていた。
さらに下の階層では、次のランクを目指して鍛錬する冒険者たちが増えている。
かつては一部のベテランしか到達できなかった場所に、今では多くの冒険者が挑戦している。
「冒険者の育成は順調だな」
アレンは満足していた。
強い冒険者が増える。
ダンジョンに入るポイントも増える。
そのポイントを使って、さらに強い敵や装備を用意できる。
冒険者たちは強くなり、ダンジョンはさらに発展する。
「このまま行けば、もっと下の階層も解放できそうだな」
アレンは50階層で戦う冒険者たちを眺めながら、次の階層について考え始めた。




