王妃様に報告
勇者パーティーがエンシェントドラゴンを倒した。
その知らせを聞いた王妃は、すぐに勇者たちを自分の屋敷へ招いた。
ダンジョン内に用意された屋敷の応接室。
王妃は勇者たちを見て、まず装備の変化に気づいた。
「皆さん、装備が変わっていますわね」
「はい。エンシェントドラゴンを倒したあと、ダンジョンから褒美としていただきました」
勇者が腰に下げた剣を見せる。
「これはエクスカリバーです。以前使っていた聖剣よりも強力です」
魔法使いも新しい杖を掲げた。
「私の杖はレーヴァテイン・ロッドです。魔力の通りが以前の杖とはまるで違います」
戦士は新しい盾を軽く叩く。
「この盾も前の盾より頑丈です」
槍使いは背負っていた槍を見せた。
「俺はグングニルです」
聖女の天女の羽衣も、以前とは比べものにならないほどの装備だった。
王妃は驚きながらも、勇者たちの表情を見ていた。
「それほどの装備をいただけるほどの戦いだったのですね」
勇者は少しだけ黙った。
「……はい」
あの戦いを思い出す。
七十階層。
扉を開けた先にいたエンシェントドラゴン。
自分たちは全力で戦った。
これまで経験したどんな戦いとも違う。
あれほどの相手と、もう一度戦えと言われても無理だ。
「私たちは、ここで冒険者を引退することにしました」
王妃が目を見開く。
「引退……ですの?」
「はい。もう、あの戦い以上の戦いをすることはできません」
勇者は仲間たちを見る。
誰も反対しなかった。
この六日間、ダンジョンを進み続け、気がつけば七十階層まで到達していた。
そして最後に待っていたのが、あのエンシェントドラゴンだった。
「私たちはもう十分です」
勇者がそう言うと、仲間たちも静かに頷いた。
王妃はエンシェントドラゴンについて尋ねた。
「エンシェントドラゴンを倒したということは……ダンジョンはどうなりましたの?」
「何も変わっていません」
「何も?」
「はい。しばらくしてから、エンシェントドラゴンが復活する気配を感じました。どうやら倒されても復活するようです」
王妃は以前、エンシェントドラゴン本人から聞いた言葉を思い出した。
――我は何度でも復活する。
だからこそ、勇者たちの報告にも驚きはあったが、ダンジョンそのものが消滅するとは思わなかった。
「そうですの……」
王妃は勇者たちを見送る。
最後まで、勇者たちはエンシェントドラゴンがダンジョンマスターではないことを王妃に話さなかった。
王妃はそれを知らないまま、彼らを見送った。
勇者パーティーはそのまま解散することになった。
誰も後悔していなかった。
六日間という短い期間だったが、十分すぎるほどの経験をした。
そして何より、最後にあれほどの強敵と戦えた。
勇者は後に、その戦いを記録として残すことになる。
人々が何十年、何百年と語り継ぐことになる戦いだった。
一方、ダンジョンの中。
アレンはマスタールームからエンシェントドラゴンを見ていた。
復活したエンシェントドラゴンは、何事もなかったかのように七十階層に立っている。
「結局、もう戦ってくれないのか」
アレンは少し残念そうに呟いた。
勇者たちが戻ってきたら、毎日戦わせて、エンシェントドラゴンのレベルを一つずつ上げてみようと思っていた。
どこまで強くなるのか、見てみたかったのだ。
だが、勇者たちはもう戻ってこない。
「まあ、仕方ないか」
アレンはエンシェントドラゴンを見る。
最初は、こんな強いモンスターを置いてしまったことを後悔していた。
誰か倒してくれないかなと思っていた時期もあった。
それなのに今では――
「なんだかんだで、ペットみたいなもんだしな」
アレンは復活したエンシェントドラゴンを眺めながら、少しだけ寂しそうに笑った。




