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ダンジョン前の商人

「アレン、何かダンジョンの前が騒がしいよ」


モニターを見ていたアレンに、声がかかった。


「ダンジョン前?」


アレンは別のモニターに切り替える。


そこには、いつもとは違う光景が映っていた。


ダンジョンの入口前に、何台もの荷馬車が並んでいる。


冒険者だけではない。


商人らしき人間まで集まっていた。


「何だ、あれ?」


「商人だね」


「商人?」


「うん。たぶん、ダンジョンで人が集まっていることに気づいたんだと思う」


アレンは画面を拡大する。


商人たちは荷馬車から商品を降ろしている。


水。


食料。


保存食。


簡単な調理道具。


冒険者向けの商品が次々と並べられていた。


「……なるほど」


アレンは納得した。


このダンジョンは、冒険者が定期的に訪れる。


しかも、ガチャから出る商品を目当てにやって来る冒険者までいる。


それだけ人が集まれば、当然、商売になる。


「敏い商人が買い付けに来たんだね」


ダンジョンの外で売買されているのは、冒険者が手に入れたガチャの商品だった。


手鏡。


ガラスコップ。


タオル。


コピー用紙。


冒険者が自分で使うだけではなく、売ることもできる。


それに目をつけた商人が、直接買い付けに来たのだ。


「しかも……」


アレンは別の画面を見る。


商人の前に、冒険者たちが並んでいる。


「水を売ってる」


「食料もだね」


冒険者たちは、商人から水や食料を買っている。


アレンはしばらく黙って画面を見つめた。


そして、口元が緩んだ。


「これ、かなりいいんじゃないか?」


冒険者がダンジョンに来る。


モンスターを倒す。


ガチャを回す。


そして、ダンジョンの外に出る。


これまでは、それが基本だった。


だが、ダンジョンの前で水や食料を買えるようになれば話が変わる。


「食料を持ってくる必要がなくなる」


冒険者は必要な分だけ買えばいい。


「水も買えるなら、持ち込む量を減らせる」


さらに、食料が尽きたから帰るということもなくなる。


「つまり、もっと長い時間ダンジョンに潜ってもらえる」


アレンはモニターを見ながら、どんどん考えが膨らんでいく。


これまでは冒険者の滞在時間を増やすために、ダンジョンそのものを改良していた。


だが、外側から勝手に便利な施設が増えていく。


しかも、アレンがポイントを使う必要もない。


「商人が勝手にダンジョンの設備を充実させてくれてるようなものじゃないか」


これは経営ゲームとしてかなり嬉しい。


アレンはさらにモニターを見る。


商人の周囲には、簡単な休憩場所まで作られ始めている。


冒険者が座って食事をしている。


買った水を飲んでいる。


そして、再びダンジョンへ入っていく。


「……これなら」


アレンは少し考えた。


「ダンジョンで寝泊まりしてくれるようになったら最高だな」


朝にダンジョンへ入る。


昼もダンジョンを探索する。


食料を買って、そのまま探索を続ける。


夜になったらダンジョンの中で休む。


そして翌朝、また探索する。


「それなら一日だけじゃなくて、何日も滞在してくれる」


滞在時間が増えれば、入ってくるポイントも増える。


モンスターを倒せば魔石も増える。


ガチャも回してくれる。


「最高じゃないか」


アレンは思わず笑った。


自分が頑張って冒険者を引き留める必要すらない。


客が増える。


客が長く滞在する。


客が必要な物を買う。


その需要を見つけた商人がやって来る。


商人が来れば、さらに冒険者が長く滞在できる。


「ダンジョンが大きくなると、勝手に周りも便利になっていくのか」


アレンはモニターを眺めながら、楽しそうに呟いた。


「これ、本当に経営ゲームみたいだな」


そして、アレンは次の画面へ切り替えた。


「ダンジョン内に休める場所を作ったら、もっと滞在してくれるかな?」


新しい設備の候補が、頭の中に浮かび始める。


商人が作った店。


冒険者が集まる休憩場所。


そして、さらに長く滞在できるダンジョン。


「……次の設備投資、決まったかも」


アレンは嬉しそうにモニターを眺めていた。

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