最終決戦
70階層。
勇者パーティーは、ボス部屋の前までたどり着いていた。
「今日はここで休もう」
ボス部屋の前にある広い空間。
ここまで来る途中に何度も戦闘を繰り返したため、無理に挑むことはしなかった。
テントを張り、食事を済ませる。
そして翌朝。
勇者はボス部屋の巨大な扉を見上げた。
「行こう」
仲間たちが頷く。
勇者が扉を開ける。
部屋の中央に、それはいた。
巨大なエンシェントドラゴン。
勇者は剣を構えた。
エンシェントドラゴンが口を開く。
「よくぞここまでたどり着いた」
「お前がダンジョンマスターのエンシェントドラゴンか」
「そうだ」
エンシェントドラゴンは勇者を見下ろす。
「お前には、我の前に立つ資格がある」
勇者は眉をひそめた。
「……嘘だな」
「何?」
「お前がダンジョンマスターなわけがない」
勇者はエンシェントドラゴンを指差す。
「使役されたモンスターが、偉そうなことを言うな」
エンシェントドラゴンが黙る。
「……」
しばらくして、ドラゴンが呟いた。
「ばれてた」
「最初からな」
「うむ」
エンシェントドラゴンは立ち上がる。
「では、やりあおうか」
「望むところだ」
両者が同時に動いた。
轟音がボス部屋を揺らす。
勇者の剣がエンシェントドラゴンの鱗を切り裂く。
ドラゴンの爪が勇者を襲う。
戦士が盾を構え、魔法使いが魔法を放つ。
聖女が仲間を支え続ける。
一撃。
また一撃。
どちらも譲らない。
勇者パーティーは今までにないほど激しく戦った。
エンシェントドラゴンも全力で応戦する。
戦況は一進一退。
どちらが勝ってもおかしくない。
勇者は笑っていた。
自分の代には魔王がいなかった。
勇者として選ばれたものの、伝説に残るような敵と戦う機会はないと思っていた。
だが、今。
目の前には、これまで出会ったどんな敵よりも強大な存在がいる。
「こんな相手と戦えるとは……」
勇者は剣を握り直す。
「神よ、感謝します!」
最後の力を振り絞る。
エンシェントドラゴンも咆哮を上げる。
そして――
勇者の一撃が、エンシェントドラゴンを捉えた。
巨大な身体が崩れ落ちる。
静寂が訪れた。
勇者は息を切らしながら、倒れたエンシェントドラゴンを見つめる。
「……勝った」
長い戦いだった。
勇者は、この戦いを後世に残すことを決めた。
勇者とエンシェントドラゴン。
この二者が死力を尽くして戦った最終決戦として。
その戦いを制した勇者に、アレンは報酬を用意していた。
エクスカリバー。
レーヴァテイン・ロッド。
グングニル。
そして天女の羽衣。
どれも、この世界では見たこともないほどの装備だった。
勇者パーティーは、それぞれの装備を手に取る。
やがてそれらは、勇者パーティーを象徴する代表的な装備として知られることになる。
「……凄いな」
勇者はエクスカリバーを握る。
仲間たちも、それぞれの装備を確認する。
そしてボス部屋を出る。
その直後だった。
勇者が足を止めた。
「……今のは?」
「どうした?」
「エンシェントドラゴンの気配が……」
仲間たちも感じ取る。
倒したはずのエンシェントドラゴン。
その気配が、再び現れていた。
「復活したのか?」
勇者はボス部屋を振り返る。
だが、もう戻る必要はない。
勇者はマスターキーを取り出した。
「帰ろう」
エレベーターの扉が開く。
勇者パーティーは乗り込む。
扉が閉まる。
エレベーターは、勇者たちを地上へ運んでいった。




