王妃様と勇者
Sランクパーティーは、今日こそ60階層まで行くのだろうと思っていた。
「今日は50階層からだよな」
「ああ。勇者パーティーなら、そのまま60階層まで行きそうだな」
「昨日の進み方を考えたら、普通にありそうだ」
朝食を終え、準備をしているところへギルド職員がやってきた。
「本日の探索ですが、中止になりました」
「え?」
全員が職員を見る。
「中止?」
「はい。王妃様のお茶会に招かれております」
「王妃様のお茶会?」
「皆様も一緒に来て構わないそうです」
「俺たちも?」
思わぬ話に顔を見合わせる。
そして勇者パーティーとともに、王妃様の邸宅へ向かった。
「ようこそ、皆様」
部屋に入ると、王妃が笑顔で迎えてくれた。
「……」
Sランクパーティーの全員が姿勢を正す。
王妃が座っているだけなのに、凄まじい気品を感じる。
「どうぞ、お掛けくださいませ」
「はい!」
返事まで妙に大きくなる。
椅子に座っても、誰も気を抜けない。
「……すみません」
Sランク冒険者の一人が小声で呟いた。
「何で謝った?」
「分からない。何もしてないのに謝りそうになった」
隣では勇者も縮こまっている。
Sランク冒険者は思った。
――今なら倒せる気がする。
もちろん、実際には絶対に無理だ。
だが、今の勇者なら何となく勝てそうな気がした。
そんな中、王妃が勇者へ尋ねた。
「今日は60階層まで向かわれる予定だったそうですわね」
「はい」
「60階層には、エンシェントドラゴン様がいらっしゃるかもしれませんわ」
「……」
「エンシェントドラゴン様は、この王国の守り神でもありますけれど……戦うおつもりかしら?」
勇者は少し考えた。
「会話ができるのであれば、会話してみます」
「まあ。それなら安心しましたわ」
王妃が微笑む。
そのときだった。
コンコン。
扉が開く。
「失礼いたします」
侍女が服を持って入ってきた。
「こちら、聖女様へ」
「私に?」
聖女が服を受け取る。
「どうして今?」
「分かりません」
王妃が楽しそうに笑う。
「聖女様、着替えていらっしゃいな」
「今ですか?」
「ええ」
聖女は侍女とともに部屋を出ていった。
しばらくして戻ってくる。
「お待たせしました」
「……」
Sランクパーティーが固まった。
いつもの聖女とは雰囲気が違う。
「どうかしら?」
「似合ってる」
勇者が即答した。
「ありがとうございます」
王妃も満足そうに頷く。
「とても素敵ですわ」
そしてお茶会が続く。
しばらくして、王妃が勇者へ何かを差し出した。
「こちらをどうぞ」
「これは?」
「ダンジョンランドの招待券ですわ」
「ダンジョンランド!」
Sランクパーティーが反応する。
「初めて入れるのか?」
「ずっと気になってたんだよな」
「俺もだ」
王妃が微笑む。
「今日は探索もありませんし、楽しんでいらっしゃい」
こうして一行はダンジョンランドへ向かった。
「うわあああああああああっ!」
ジェットコースターが走り出した瞬間、勇者の悲鳴が響き渡った。
「……」
Sランクパーティーが顔を見合わせる。
「勇者が叫んでる」
「マジかよ」
「ははははは!」
「うわあああああ!」
さらに加速する。
「勇者、頑張れ!」
「戦ってるときより必死じゃないか!」
Sランクパーティーは大笑いした。
そして次はお化け屋敷。
入口で聖女が立ち止まった。
「……私、こういうの苦手なんです」
「へえ」
勇者が笑う。
「じゃあ行こう」
「勇者様……」
中へ入る。
薄暗い通路を進む。
突然、横から何かが飛び出した。
「きゃあっ!」
聖女が悲鳴を上げる。
「……」
Sランクパーティーが顔を見合わせる。
「今の聞いたか?」
「聞いた」
「聖女がお化けを怖がってるぞ」
「ははははは!」
さらに奥へ進む。
また何かが飛び出す。
「いやあっ!」
聖女が勇者の後ろに隠れる。
「ダンジョンのモンスターには平気なのに!」
「これは面白すぎる!」
「勇者もジェットコースターで叫んでたしな!」
「今日は最高だな!」
Sランクパーティーは笑いながら、次のアトラクションへ向かっていった。




