Sランクパーティーの興奮
ホテルの部屋。
Sランクパーティーは、それぞれ椅子やベッドに座りながら、今日一日の出来事を振り返っていた。
誰も、なかなか寝ようとしない。
「……すごい戦いぶりだったな」
最初に口を開いたのはリーダーだった。
「すごいっていうか……」
タンクが苦笑する。
「全然本気出してなかったよな」
「だよな」
37階層のリッチ。
自分たちにとっては、簡単な相手ではなかった。
魔攻と魔防を重視した装備を揃え、対策を考え、ようやく倒した相手。
それを勇者は、たった一人で数十秒。
聖女も一人で浄化。
賢者に至っては、魔法を結界で防いで一撃。
「Sランクの俺たちが苦戦した相手をソロで瞬殺だろ」
「しかも勇者だけじゃない」
「聖女も賢者もだ」
全員が頷く。
「さすがだよな……」
しばらく沈黙したあと、別のメンバーが思い出したように言った。
「それよりさ」
「ん?」
「勇者の剣、見たか?」
「ああ」
「あれ、やっぱり噂の剣だろ」
勇者が使っていた剣。
普通の武器とは明らかに違っていた。
「代々の勇者が引き継いでるっていう剣だろ?」
「たぶんな」
「実物を見るのは初めてだったけど……すごかったな」
今まで数々の名剣を見てきたSランク冒険者たちでさえ、目に焼き付いていた。
「聖女の杖も凄かったぞ」
「確かに」
「聖女が代々引き継いでるっていう杖だろ?」
「そういう噂だな」
あれだけの装備を持っている。
しかも、それを使う本人たちの実力も桁違い。
「……俺たちが集めてきた武具が、おもちゃみたいに感じるな」
タンクが自分の装備を見る。
Sランクまで上り詰めるために、金を稼いでは装備を買い替えた。
強い武器を求めて、各地を探し回ったこともある。
それでも。
今日見た勇者たちの装備と比べれば、別世界のものに感じた。
「そういえば聞いたことがある」
リーダーが言う。
「勇者パーティーって、各地のSランクダンジョンをいくつも攻略してるらしいぞ」
「マジか」
「魔王がいないから、世界中のダンジョンを回ってるって話だ」
「だから、あんなに慣れてるのか」
「たぶんな」
全員が今日の光景を思い出す。
ボス部屋に入る時も迷いがなかった。
敵を見ても動揺しない。
自分たちが苦戦した相手を見ても、まるで日常のように倒していく。
「……勇者パーティーを敵に回すくらいなら」
誰かがぽつりと言った。
「国家を相手にしたほうが、まだましだよな」
「マジそれな」
即答だった。
「国家なら戦力が見えるからな」
「勇者パーティーは何を出してくるのか分からない」
「そもそも一人一人が国家戦力みたいなものだろ」
「しかも、それがパーティーを組んでる」
「……考えたくないな」
全員が苦笑する。
そしてまた、今日の戦いについて話し始める。
「でも、あの魔法を切ったのは凄かったな」
「俺は聖女の浄化だな」
「俺は賢者の結界」
「いや、勇者の一撃だろ」
「あれは反則だ」
笑い声が部屋に響く。
もう何度目か分からないほど、同じ話を繰り返している。
それでも興奮は冷めなかった。
今日、世界最高峰の存在を間近で見た。
それだけで、Sランク冒険者たちにとっては忘れられない一日になった。
窓の外はすっかり暗くなっている。
時計の針だけが静かに進んでいく。
「……もうこんな時間か」
誰かが時計を見る。
「明日も10階層進むんだろ?」
「そうだったな」
「寝ないとまずいぞ」
そう言いながらも、誰もすぐには寝なかった。
「それにしても……」
また誰かが口を開く。
「勇者パーティー、凄かったな」
「……ああ」
その一言に、全員が頷いた。
興奮はなかなか冷めない。
Sランクパーティーの夜は、そんな話を繰り返しながら、ゆっくりと更けていった。




