Sランクパーティーへの依頼
Sランクパーティーが滞在している宿に、ギルドから依頼が届いた。
「……ギルドから依頼?」
リーダーが依頼書を受け取る。
普段なら珍しいことではない。
Sランクともなれば、ギルドから直接依頼が来ることもある。
だが――
「なんだこれ?」
依頼書を読んだリーダーが固まった。
仲間たちが覗き込む。
「どうした?」
「依頼内容が……」
リーダーは依頼書を読み上げた。
「ダンジョンの道案内」
「…………」
全員が黙った。
「俺たちSランクだよな?」
「そうだけど」
「Sランクパーティーへの依頼だよな?」
「そう書いてある」
「……道案内?」
聞いたこともない。
Sランク冒険者が受ける依頼といえば、強大な魔物の討伐や危険地帯の調査、国からの重要な依頼などだ。
それが、道案内。
しかも――
「依頼料、2億円……」
再び沈黙が落ちた。
「2億?」
「2億だ」
「道案内で?」
「道案内で」
誰も理解できなかった。
「何かの冗談じゃないのか?」
「俺もそう思う」
リーダーは依頼書を何度も確認する。
金額の見間違いではない。
桁も間違っていない。
2億円。
普通の道案内なら、あり得ない金額だ。
「もしかして……」
一人が口を開いた。
「国王を60階層まで連れていけ、とか?」
「それなら分からなくもないな」
国王をSSSランクダンジョンの深層まで連れていく。
それなら護衛の危険もある。
2億円という金額も理解できる。
だが、依頼書には護衛とは書かれていない。
「でも、それなら護衛依頼として出すはずだ」
「そうだな」
リーダーは腕を組んだ。
「そもそも道案内ってことは……」
仲間たちも同じことに気づく。
「俺たちが戦うことを想定してないんじゃないか?」
「……だよな」
SSSランクダンジョン。
そこをSランクパーティーが案内する。
つまり、依頼主が自分たちとは別に戦えるということになる。
「そんな奴、いるか?」
「さあな」
「他のSランクパーティーだって、強さは俺たちと大して変わらないだろ」
Sランクパーティーは、この世界でも最高峰の冒険者たちだ。
もちろん個人差はある。
だが、同じSランクという枠にいる以上、極端に実力が離れているわけではない。
「俺たちより強いSランクが来たとしても、せいぜい多少上くらいだ」
「それなのに、俺たちは戦闘じゃなくて案内だけ?」
「ますます意味が分からないな」
依頼書を眺めながら、全員が首を傾げる。
「とりあえず、ギルドで話を聞くぞ」
「そうだな」
依頼書だけでは何も分からない。
そもそも、なぜ自分たちが選ばれたのか。
誰を案内するのか。
どこまで案内するのか。
そして――
なぜ2億円なのか。
「行くか」
「おう」
Sランクパーティーは宿を出た。
向かった先は冒険者ギルド。
2億円という、とんでもない報酬がついた「ダンジョンの道案内」。
その依頼の正体を確かめるために。




