セレスティアへの贈り物
アレンはマスタールームのモニターを眺めていた。
映っているのは、王妃様の自宅。
今日は大規模なお茶会ではないらしく、数人の令嬢を招いて、家の中でゆっくりとお茶を楽しんでいるようだった。
王妃様が用意した茶菓子を囲み、楽しそうに会話をしている。
「大規模に開催しない時は、自宅でお茶会をしてるんだな」
アレンはモニターを眺めながら、ふと王妃様の姿に目を向けた。
「王妃様も綺麗だな」
そして、その隣にいるセレスティアを見る。
「……セレスティアも綺麗だな」
二人とも美人だ。
だが、並んでいるところを見ると、雰囲気がかなり違う。
「タイプが違うんだよな」
王妃様は、どちらかというと可愛らしい雰囲気がある。
対してセレスティアは、姿勢もよく、表情にも凛としたものがある。
「王妃様は可愛いタイプで、セレスティアは凛々しいタイプか」
アレンはしばらく二人を眺めていた。
そして、ふと思いつく。
「……そういえば、セレスティアにはまだ服をプレゼントしてなかったな」
王妃様にはすでに日本の服をいくつも贈っている。
王妃様は自宅ではそれらの服を気に入って着ている。
ならば、セレスティアにも一着くらい贈ってもいいだろう。
アレンはカタログを開いた。
「セレスティアなら……これかな」
凛々しい雰囲気に合いそうな服をいくつか眺める。
派手すぎず、かといって堅苦しくもない。
日本で普通に着られているような、ラフな服。
「これにしよう」
アレンは選んだ服を送った。
しばらくすると、王妃様の自宅に荷物が届いた。
「まあ?」
王妃様が箱を開ける。
中に入っていたのは、見慣れない日本の服だった。
そして、その上には一枚のメッセージが置かれている。
そこに書かれていたのは、いつものように短い文章だった。
『セレスティアにプレゼント』
『今すぐ着替えてみて』
セレスティアが目を丸くする。
「私に、ですか?」
王妃様は楽しそうに笑った。
「ええ。どうやらあなたへの贈り物みたいですわ」
「これは……服?」
「そうみたいですわね」
セレスティアは服を手に取った。
これまで着てきた服とはまったく違う。
しかし、不思議と嫌な感じはしない。
むしろ動きやすそうだ。
「せっかくですから、着てみてはいかが?」
「……はい」
セレスティアは別室へ向かった。
しばらくして戻ってくる。
「まあ……」
王妃様が嬉しそうに声を上げる。
普段のような格式ばった服装ではない。
もっと気楽で、動きやすい。
それでもセレスティアの凛々しい雰囲気にはよく似合っていた。
「似合っていますわ」
「ありがとうございます」
セレスティアは少し照れながら、自分の服を見下ろす。
「なんだか……楽ですね」
「でしょう?」
王妃様も笑う。
実はこの家にいる時、王妃様自身も日本の服を着ることが増えていた。
王宮ではどうしても格式を意識した服装になる。
しかし、この家は違う。
ここにいる時くらいは、もっと楽な格好をしていたい。
そのため、王妃様はいつの間にか日本の服を着て過ごすのが当たり前になっていた。
そして今日からは、セレスティアも同じだった。
「この家にいる時くらいは、こういう格好でもいいかもしれませんね」
「ええ。むしろ私は、この格好のほうが好きですわ」
二人は顔を見合わせて笑った。
その様子を、マスタールームのモニター越しに見ていたアレン。
「おお、似合ってるな」
アレンは満足そうに頷いた。
王妃様も日本の服。
セレスティアも日本の服。
王宮では見られない、完全にリラックスした姿だ。
「二人とも、この家にいる時はラフな格好をするようになったな」
アレンにとっては、ただ服をプレゼントしただけだった。
しかし、それをきっかけに王妃様とセレスティアにとって、この家はますます肩の力を抜いて過ごせる場所になっていった。




