学園の開設
武道大会が終わった後も、アレンはダンジョンランドの利用状況を眺めていた。
「武道大会はかなり人が来たな」
生徒だけではない。
親も来た。
観客も来た。
そして、帰る前にダンジョンランドの施設を体験していった。
「他にも学園の行事ってあるんだよな?」
アレンは王妃に書状を送った。
『学園ではどんな行事をやっている?』
王妃から情報が届く。
入学式。
卒業式。
武道大会。
文化祭。
発表会。
季節ごとの行事。
その他にも、生徒たちが参加する様々な催しがある。
アレンは一覧を眺めていく。
「……結構あるな」
ダンジョン内で開催できそうなものも多い。
広い場所を必要とする行事なら、ダンジョンランドの施設を使える。
観客が来る行事なら、それだけ人も集まる。
「むしろ学園そのものをダンジョン内に移せないか?」
アレンは考える。
教室を作る。
運動場を作る。
図書館を作る。
食堂も作る。
寮まで用意できる。
ダンジョンなら土地はいくらでも確保できる。
「……これ、普通にできそうだな」
だが、すぐに問題に気づいた。
「いや、さすがに今の学園を丸ごと移転させるのは難しいか」
学園には長い歴史がある。
教師もいる。
貴族の生徒もいる。
既存の施設もある。
いきなりダンジョンへ移転という話になれば、反対する人間も多いだろう。
「だったら分校だな」
アレンは別のことを思い出した。
この国の学園には、平民でも優秀な人間なら通える制度がある。
身分だけで入学を拒まれるわけではない。
だが、実際には毎年入学する平民は少なかった。
「能力があっても、学園に通う金がないんだよな」
授業料だけではない。
生活費。
食費。
通学費。
場合によっては住居まで必要になる。
平民にとって、学園に通うこと自体が大きな負担になる。
「だったら、ダンジョン内に学園を作ればいい」
土地はアレンが用意できる。
施設も作れる。
そして何より――。
「お金はダンジョン内で稼いでもらえばいい」
ダンジョンには冒険者がいる。
商人もいる。
ダンジョンランドもある。
様々な仕事が生まれている。
働きながら学ぶことができれば、学園に通うための費用を自分で稼げる。
「これなら平民でも通えるんじゃないか?」
アレンは王妃に検討するように指示する。
王妃もこの案に興味を示した。
その後、学園側や国の関係者との話し合いが行われる。
最初は戸惑いもあった。
しかし、平民にも学ぶ機会を与えられる。
しかも、ダンジョン内にはすでに人が集まる仕組みができている。
働きながら学べる環境も用意できる。
少しずつ話は進んでいった。
そして――。
国内初となる、平民向けの学園分校がダンジョン内に開設された。
「ここが……学園?」
初めて訪れた平民の生徒たちは、目の前の校舎を見上げていた。
立派な教室。
図書室。
食堂。
運動場。
そして、少し離れた場所にはダンジョンランドまである。
「俺、本当にここで勉強できるのか?」
「私も……」
これまでなら、才能があっても金銭的な理由で学園へ通えなかった者たち。
そんな平民のための学び舎が、ダンジョンの中に誕生した。
生徒たちは授業を受ける。
授業が終われば、ダンジョン内の店や施設で働く。
働いて得た金で生活し、学び続ける。
もちろん、勉強だけをするわけではない。
ダンジョンランドで開催されるイベントにも参加できる。
そしてダンジョンには、今まで以上に人が集まるようになっていった。
アレンはその様子をマスタールームから眺める。
「学園を作ったら、学生まで増えたな」
最初は観光客を増やすために作ったダンジョンランド。
そこからお茶会が始まり、武道大会が開催され、そして今度は学園までできた。
「……なんか、どんどん文化が進んできたな」
アレンはそう呟きながら、今日も増えていくポイントを確認していた。




