王妃様のお茶会
王妃はダンジョンランドを体験した翌日、さっそく行動を起こした。
上位貴族たちのもとへ、招待状を送ったのだ。
内容は、ダンジョンランドでのお茶会への招待だった。
通常、王妃主催のお茶会に招待されるのは伯爵家以上。
ところが今回は違った。
伯爵家だけではなく、子爵家にも招待状が届いた。
子爵家にとっては、まさに驚きだった。
「王妃様から……我が家に?」
「お茶会への招待状です!」
「本当に?」
これまで王妃のお茶会に呼ばれたことのない家も多い。
それだけに、招待状を受け取った子爵家は大喜びした。
そして何より、王妃は貴族令嬢たちにとって憧れの存在だった。
王妃から直接招待された。
それを断る令嬢など、ほとんどいない。
こうしてお茶会当日。
ダンジョンの入口には、次々と貴族家の馬車が到着した。
「こちらが王妃様のいらっしゃるダンジョンなのね」
「緊張します……」
「王妃様に失礼のないようにしなくては」
華やかなドレスに身を包んだ令嬢たちが、護衛を引き連れてダンジョンへ入っていく。
普段の冒険者たちとは明らかに雰囲気が違う。
そんな令嬢たちが次々とやって来るため、ダンジョンの入口はかなりの賑わいになっていた。
ダンジョンランドへ入る際には、今回は特別に制限が設けられていた。
一人の令嬢につき、同行できる護衛とメイドは一人ずつ。
それでも人数はかなりのものだった。
そしてダンジョンランド中央広場。
そこにはたくさんのテーブルが並べられていた。
テーブルの上には、色とりどりのお菓子が並んでいる。
焼き菓子。
ケーキ。
クッキー。
チョコレート。
果物を使った菓子。
そして紅茶も、一種類ではない。
様々な種類が用意されていた。
令嬢たちは目を輝かせる。
「まあ、素敵……」
「こんなにたくさんのお菓子が」
「紅茶も何種類あるのでしょう」
やがて王妃が姿を現す。
令嬢たちは一斉に立ち上がった。
「王妃様、本日はお招きいただきありがとうございます」
代表するように、一人の令嬢が挨拶する。
「よく来てくれたわね、セレスティア」
王妃は笑顔で迎えた。
「あなたには次期王妃を期待しているから、最初に招待したかったのよ」
「まあ……ありがとうございます」
セレスティアは緊張しながらも嬉しそうに頭を下げる。
お茶会は和やかに始まった。
王妃を囲み、令嬢たちが紅茶を楽しむ。
普段ならなかなか話す機会のない家の令嬢同士が言葉を交わす。
最初は緊張していた子爵家の令嬢たちも、王妃の気さくな雰囲気に少しずつ緊張を解いていった。
一方、その頃。
近衛兵たちは護衛やメイドたちを集めていた。
「これからダンジョンランドの施設について説明する」
ジェットコースター。
観覧車。
ボーリング。
ダーツ。
ビリヤード。
温泉。
サウナ。
施設ごとの利用方法や注意事項を説明していく。
護衛たちは真剣に聞いている。
メイドたちも、令嬢が安全に楽しめるように必要なことを確認していた。
ただし、すべての令嬢が同じ行動をするわけではなかった。
特にセレスティアやフローラのような高貴な令嬢には、王妃が自ら案内することになった。
「こちらがジェットコースターよ」
「これに乗るのですか?」
「ええ。とても楽しいわよ」
王妃と令嬢たちが乗り込む。
しばらくして――。
「きゃあああああ!」
ダンジョンランドに令嬢たちの悲鳴が響き渡った。
ジェットコースターが高速で走り抜けていく。
別の場所では、お化け屋敷からも悲鳴が聞こえる。
「いやあああ!」
「きゃっ!」
アレンはマスタールームから、その様子を眺めていた。
「おお、ちゃんと悲鳴が聞こえるな」
令嬢たちは楽しそうに施設を回っている。
しかしアレンには一つだけ不満があった。
「王妃様の悲鳴が聞きたかったんだけどな」
以前のお化け屋敷でも王妃は悲鳴を上げなかった。
ジェットコースターも楽しんでいる。
「まあ、いいか」
令嬢たちが楽しんでいるなら、それで十分だった。
その後もお茶会は続き、令嬢たちは様々な菓子と紅茶を楽しみながら、王妃との会話に花を咲かせた。
そして夕方。
王妃が開いたお茶会は、大盛況のうちに終了した。
「本日はありがとうございました」
「とても楽しかったです!」
「また来たいですわ」
令嬢たちは名残惜しそうにダンジョンランドを後にしていく。
護衛やメイドたちも、それぞれの主人について帰っていった。
やがてダンジョンランドが静かになる。
アレンはマスタールームで今日一日の結果を確認した。
「……すごいな」
お茶会そのものは大成功だった。
だが、アレンが見ていたのはそこではない。
今日ダンジョンへやって来た人数だった。
令嬢だけではない。
護衛もいる。
メイドもいる。
一人の令嬢につき、それぞれ一人ずつ。
さらに王妃や近衛兵までいる。
「めちゃくちゃ人が来たじゃん」
当然、その分だけダンジョンに入った人数も増えている。
そして――。
ポイントが一気に増えていた。
「お茶会を開いただけなのに、こんなに稼げるのか」
アレンは思わず笑う。
「ダンジョンランド、最高じゃん」
冒険者を集めるために作った施設だった。
しかし、貴族令嬢たちを集めるお茶会にも使える。
しかも令嬢一人では来ない。
護衛もメイドも連れてくる。
結果として、大勢の人間がダンジョンへやって来る。
「王妃様、またお茶会を開いてくれないかな」
アレンは今日増えたポイントを眺めながら、そんなことを考えていた。




