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中毒者誕生

「一体倒せば、もう一回ガチャが引ける」


監察官は三階層のモンスターを探し始めた。


一体倒す。


魔石を拾う。


これで手持ちは四個。


監察官はガチャの前に戻ってきた。


「もう一回だな」


再び魔石を四個投入する。


ガチャが回り、景品が出てくる。


「……今度は何だ?」


監察官が景品を確認する。


「水か」


二回連続で水だった。


「まあ、使えるからいいか」


監察官は水を収納すると、そのまま先へ進んだ。


四階層。


そこにいたモンスターも、三階層と同じように監察官へ向かってくる。


「この階層も敵が襲ってくるか」


監察官はモンスターを倒していく。


「変化はないな」


そして、ガチャを見つけた。


「一回三個か」


監察官は必要な魔石の数を確認する。


「三個なら、さっきより少ないな」


ガチャを回す。


また景品が出てくる。


監察官は景品を確認すると、次の階層へ向かった。


五階層。


「……今度は逃げるのか」


モンスターが監察官から距離を取る。


監察官は追いかける。


「一階層や二階層と同じだな」


逃げるモンスターを追い詰めて倒す。


そして、ガチャを発見する。


「一回二個か」


監察官は魔石を確認する。


「これならすぐ回せるな」


監察官はガチャを回した。


さらに六階層へ進む。


六階層もガチャは一回二個。


七階層も二個。


八階層も二個。


九階層も二個。


監察官は各階層を進みながら、モンスターの行動とガチャに必要な魔石の数を確認していった。


「六階層も二個」


「七階層も二個」


「八階層も二個」


「九階層も二個」


最初はダンジョンの難易度を調査していたはずだった。


モンスターの強さ。


行動パターン。


階層ごとの変化。


本来なら、それを確認するために来た。


ところが今では――。


「この階層は魔石二個で一回か」


「こっちも二個」


「こっちも二個か」


監察官はガチャの前に立つたびに、必要な魔石の数を確認している。


アレンはその様子を見ていた。


「……なんだかガチャの調査みたいになってない?」


『最初はダンジョンの調査だったはずだよ』


「だよね」


監察官は六階層から先で、魔石が自然と集まっていくことにも気づいていた。


「この辺りまで来ると、普通にモンスターを倒しているだけで魔石が集まるな」


ガチャ一回に必要なのは二個。


それなら、魔石がたまるたびにガチャを回せる。


「これはいいな」


監察官はまたガチャを回す。


「次は何が出る?」


さらに魔石が集まる。


また回す。


「なるほど……」


気づけば監察官は、ダンジョンの難易度よりもガチャのことを考える時間が増えていた。


「一階層と二階層は、敵と一体ずつ戦えていいな」


監察官はそれまでの階層を振り返る。


「初心者なら、あそこでモンスターとの戦いに慣れることができる」


そして三階層を思い出す。


「慣れてきたら三階層か」


三階層ではモンスターが襲ってくる。


戦闘の練習をしながら魔石を集め、ガチャも楽しめる。


「これはこれで悪くない」


さらに六階層以降を考える。


「ガチャで稼ぐなら、六階層が一番おいしいか?」


魔石二個で一回。


しかも、モンスターを倒していれば自然と魔石が集まる。


「ここならガチャをたくさん引けそうだな」


監察官は、完全にガチャを楽しみ始めていた。


その様子を見ていたアレンは呆れた。


「こいつ、何しに来たんだ……」


『ダンジョンの調査だよ』


「最初はそうだったんだけどね」


監察官はさらに進む。


そして十階層。


そこでもモンスターを倒し、ガチャを確認する。


「……一個?」


監察官は表示を見て目を疑った。


「一回に必要な魔石が一個なのか?」


魔石一個でガチャが一回引ける。


監察官は周囲を見渡す。


モンスターがいる。


「ということは……」


一体倒せば、一回。


もう一体倒せば、もう一回。


監察官の目が輝いた。


「これは……」


武器を構える。


「倒すしかないな」


一体。


二体。


三体。


監察官は次々とモンスターを倒していく。


魔石を拾う。


ガチャを回す。


またモンスターを倒す。


魔石を拾う。


またガチャを回す。


「もう一回!」


さらにモンスターを倒す。


「もう一回!」


アレンはその様子を見ながら、深いため息をついた。


「ほんと、こいつ何しに来たんだよ……」


『監察官としての仕事は、ちゃんと終わったんじゃない?』


「そうだけどさ」


最初はダンジョンの難易度を確認するためにやって来た監察官だった。


一階層から十階層まで確認した。


モンスターの強さにも問題はない。


行動パターンの変化も確認した。


ガチャについても確認した。


調査としては十分だった。


それなのに。


「もう一回!」


十階層では、すっかりガチャの虜になっていた。


そして後日。


監察官は仕事が休みの日に、時々アレンのダンジョンへ来るようになった。


「今日は休みだ」


監察官はダンジョンの入り口に立つ。


「今日はどこまでガチャを回せるかな」


その姿を見たアレンは呆れた。


「やっぱり来たよ……」


『リピーターになったね』


「監察官までリピーターにするつもりはなかったんだけどな」


しかし、アレンのダンジョンにはまた一人、ガチャを楽しみに訪れる冒険者が増えていた。

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