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仮の少女  作者: 白玉
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仮の少女

大きな木の扉を、コンコンと叩く。




……特に反応は無い。


「あはは、騎士団の建物は、許可を取らなくても入れるんだよ。」


後ろから声がしたので振り向くと、十字架を首にかけたお兄さんがいた。腰に剣をさしている。


「そうなんですか?」

「ああ。知らなかったのかい……って、君、凄い痩せてるね!?大丈夫かい?」

「あ、はい。大丈夫です。」

「全然大丈夫には見えないけど……とりあえず、中に入って。」


扉を開けてもらって中に入ると、人が沢山いる。


忙しそうに働いている人もいれば、椅子に座って談笑している人もいる。

壁に紙が貼ってあったり、正面のところに人が立っていたり……。


「えっと、そこの椅子に座っておいてくれるかな?」


と指さされたのは、木製の高そうな椅子と机が置いてあるところ。


椅子に座って待っていると、お兄さんがいろんなご飯や飲み物を持ってきた。


「騎士団は、お金が無い人に、無料で食事を提供してるんだけど。」

と言って、私の前にご飯を置いてくれる。



お肉。


しかも、鉄の板の上でジュージューと音が鳴っている。

いつものような切れ端じゃない、ちゃんとした肉の塊だ。


「えっと…食べていいんですか?」

「普通はパンと牛乳が貰えるんだけどね。君、今にも死ぬんじゃないかってくらい痩せてるし…。」


そう言いながら、私の顔を覗き込む。


「こういう言い方は悪いけど、身なりも整ってないよね。君……もしかしてだけど、スラムの子かな?」


「…!」




「あっ、ごめんね、警戒させちゃったかな。」

「スラムの子……だったら、どうするんですか?」


スラムの人間は、下民は、迫害される。

それは、上から来た人や、上に行ったけど帰ってきた人から良く聞いた話だ。


友達を連れていった人達も、私たちに乱暴していった。



「あ〜。しまったな……変な印象与えちゃった。『噂』もあるだろうし……。アリナさん読んでくるか。」


そう言って立ち上がると、お兄さんは正面のところに入り、奥に行った。




今のうちに逃げようか。


でも、顔を覚えられた。



追われたら、捕まって殺されるかもしれない。

それなら、逃げない方がいいか…



しばらく待っていると、綺麗な女の人が歩いてきた。

武器は持っていないっぽい。


「ごめんね〜。君がその女の子かな?」


椅子を後ろにずらし、いつでも立てる様にする。


「あっ、あっ、ちょっと待って!何もしないから!えっと、色々誤解を解きたいんだけど……」


と言って、お姉さんは説明し始めた。




「私たち騎士団は、国に縛られない民間組織なの。だから、バルロ王国以外にも騎士団の建物はあるわ。ここはバルロ王国の首都、ハスベルク支部よ。それで、あなたが私たちを警戒している理由なんだけど……」


お兄さんが言っていた、「噂」というもの。一帯何を指しているのか。


「スラムで広まってると思う『噂』、地上の人は、スラムに住む人を迫害するっていうもの。あれはその…デマでは無いのだけれど、あくまでこの国だけの話なのよ。」

「……」


「それで、さっきも言ったけど、騎士団は国の組織では無いでしょ?だから、私たちはスラムの人達に悪いことをしたりはしないのよ。それどころか、騎士団主体で、再就職みたいな援助活動をしてたりもする。国には疎まれてるけどね……」


確かに、スラムにはそういう話があった。地上の、ある組合が、助けてくれるかもしれない、というもの。


「本当ですか…?」

「ええ!そうだから……難しいかもしれないけれど、あなたには私たちを信用してほしいの。私たちも、できる限りあなたを応援するから。」


「…分かりました。」

「グウゥ〜」


…私では無い。この女の人だ。


「あっ、ごめんね〜。美味しそうなお肉が目の前にあったものだから…」

「食べていいですよ。私、さっきパン食べたので」

「ええ〜。でもぉ……。あなた、凄く痩せてるし」

「私はまた貰えばいいので。」

「それもそうね!」


そう言うと、そのお姉さんはお肉を食べ始めた。私のナイフとフォークまで使っている。


食いしん坊だな…。


「ちょっとアリナさん!!何この子のご飯食べてるんですか!」

「モグモグ…ごめんね〜、お腹空いちゃって。この子の分、出してあげてくれる?」

「ハァ〜…お金、取りますからね。」


「ええ〜!!そんなぁ…」

「当たり前でしょ。」



……とりあえず、ここは安全なのかな?


そういえば、私はお金を稼ぎに来たんだった。


「あの、仕事を探してるんですけど…何か無いですか?」

「あら、仕事探してるの?ちょうどいいわ〜!」


そういうと、お姉さんは壁に貼ってあった紙を取って来た。

「こうやって、依頼と報酬を紙に書いて貼るんだけど、これを受けてみるのはどうかしら?騎士団職員名義で受けられるわよ。手続きは私がしておくから。」

「えっとそれは……何か…」


「騎士団職員になっておけば、毎日の配給と、騎士団の建物で寝泊まり出来るようになるわよ!」

「配給って、どのくらいですか…?」


「そうね〜。位によって変わるけど、新人は毎日パン3つと、スープと、牛乳…とかかしらね。」


「なります!!」


「あらそう?良かったわ〜!それじゃあ早速、この依頼を引き受けて頂戴ね。」


「えっと……『迷い猫の捜索』?」

「ええ。3番通りのトルトさんの飼ってる猫がどこかに行っちゃったみたいでね。探して欲しいの。」

「分かりました。」


「それじゃあ、こっちで職員登録しとくけど……名前はなんていうの?」

「えっと……無いんですけど……」


「そう……それじゃあ、『仮』で登録しておくわね」


「分かりました。」




立ち上がり、入り口へ向かう。


「それじゃあ、行ってきます。」

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