少女の行き先
外へは、簡単に出られる。
でも、誰も出ようとはしない。
それは、スラムに住む下民が外の街に出たところで、迫害されて殺されると分かっているからだ。
でも、私は出たいので、なんとかして下民だとバレない様にしなければならない。
服装はボロボロの布切れ、髪はボサボサで虫がたかっていて、靴は履いていないし、どうするか…。お金があれば、スラムで綺麗な靴や服と交換出来たんだけど、今は無い。
外に出てみればなんとかなるか。
という事で、階段を登って上に出る。
スラムに住んでいる人間は、扱いとしては不法侵入者だ。国のゴミ捨て場に勝手に人が集まっているからなのだが、数が多すぎて黙認しているらしい。
外でお金を失い、立場も無くなった人が、ここにやってくる。他にも色々理由はあるが、みんな、全てを失った人達だ。
だから、出ようと思えば簡単に出られるし、逆に入ろうと思えば簡単に入ることが出来る。
生まれて初めて、地上に上がった。
スラムとは違い、乾いた、澄んだ空気が流れている。
いつもジメジメしていて、ゴミだらけの場所とは、やはり違う。
スラムの上は、町はずれの荒地だった。
地面もサラサラしている。
ゴミも落ちていないし。
さて、服装をどうしようか。
街には売っているだろうけど、下民には売ってくれないだろう。でも、それ以外に行くところが無い。
う〜ん……う〜ん……
ひとまず街へ向かう、か。
窓の外に干してあったコートを盗り、羽織る。
大きめだったので、膝あたりまで隠れて、フードで頭も隠した。
「あとは靴だな……」
あ、靴屋だ。
店先に私でも履けそうな靴が並んでいる。
貰おう。
「あっ、コラ!!泥棒!!」
「やばっ…」
ダッシュだ。
この街の地図は分からないので、入りくんでいそうな裏路地に駆け込む。
右へ左へと曲がっている内に、私を追う声も聞こえなくなったが、自分がどこにいるかも分からなくなった。
とりあえず靴を履いてっと。
「グウゥ〜」
とお腹が鳴る。
ああ、お腹空いたな……。そういえば今日、パン切れとネズミしか食べてなかったんだ。
どこかで食事を取りたいが、無料で分けてくれるところがあるのか、分からない。盗んで過ごし続けるのは厳しいし、お金を稼がないとな…。
どうやって稼ごう。
日雇いの仕事とか?何かの求人とかやってないかな。
そう思い、大通りに向かって歩き始めた。
玄関の前で箒をはいていたおばちゃんに話しかける。
「あの、すみません」
「ん?どうしたんだい?」
「お金を稼ぎたいんですけど、仕事を紹介してくれる場所、知りませんか?」
「なんだい、あんた、随分と痩せこけてるねぇ。家出かい?」
「あ、いえ……」
「あんまり若い内に無理するんじゃないよ。ほれ、私の昼食だ。これでも食べてな。それで?仕事だって?仕事が欲しいなら、騎士団に行くといいよ。」
「わわ、ありがとうございます…」
「騎士団は、ここの通りの向こう…白い建物だよ。」
「分かりました。ありがとうございました。」
「あんたまだ14とかそこらだろう?止めはしないけど、気をつけるんだよ〜」
手を振っておばちゃんと別れる。
スラムで育った分、人を見る目があるのかもしれない。
昼食と言って渡されたカゴの中には、大きなパンと干し肉、それと、クリーム色の何か?。嗅いだことのない匂いがする。
初めて食べる完全なパンに興奮しつつ、ギルドへ歩き始めた。
建物は、どれも石や木で出来ていて、スラムの様な家は無い。しかも、2階や3階がある。
誰もが活気を持っていて、忙しそうに働いていた。
ドン、と、前から歩いてきた男の人とぶつかり、後ろにこけた。
「あっ、ごめんね。大丈夫?」
と言って、手を差し伸べてくれる。
スラムなら、無視するか、邪魔だ!と言って、唾を吐きかけてきたりするだろうが、そんなことは起こらない。
心の余裕も、街の人にはあるのかもしれない。
そんなことを考えていると、パンと干し肉を食べ切ってしまった。残るは、この変な匂いがする塊だけ。
触るとベトベトしている。
毒では無いはずなので、思い切って口に入れてみた。
………
なんとも言えない味がする。
少しねちょねちょしているが、塩分が含まれているようで、少ししょっぱい。
後から聞いた話だが、これはチーズと言うらしい…
スラムでもあったが、ネズミが食べていたり、腐っていたりしたので、誰も食べようとは思わなかったのだ…
などとしていたら、左手に、大きな白い建物が見えてきた。




