少女の猫探し
ひとまず、依頼人の家へ向かう。
事情聴取もしなければいけないし。
えっと……3番通りの………トルトさん。
地図も渡されたので、それを見ながら家を探していく。
「あ、あった。」
その家は、聞いていた通りのヤバそうな家で、入ったら呪われそうだ。けど、聞かないわけにはいかない。
コン、コンと扉を叩く。
「あの……すみませ〜ん…誰かいますか?」
「バカめ、2回ノックはトイレだよ。」
「わっ…」
扉をガチャっと開けて出てきたのは、不健康そうなお婆さん。白い服を着ていて、何だか変な匂いがする。
「えっと……トルトさんですか?」
「そうだよガキンチョ。何か様かい?」
「あの……この依頼、受けたんですけど……」
私が差し出した紙を、パッと取るお婆さん。メガネをクイっと上げて、依頼書を読んでいる。
「あんたみたいなガキが騎士なのかい。世も末だね。」
「え………っと……すみません?」
「逃げ出したのは、内の黒猫のススだよ。尻尾が曲がってるのと、喉に白い模様がある。見たら分かるよ。」
と言うと、バン!と扉を閉められた。
「見つけるまで帰ってくるんじゃないよ!!」
「………」
う…うーん…。
ひとまず探してみようかな。
確か、黒猫のススちゃん。喉元に白い模様がある、と…
聞き込みをしてみるか。
「あの、すみません。」
「はい。」
「黒猫で、喉元に白い模様がある子…見かけませんでしたか?」
「う〜ん、黒猫ねぇ……。見た気はするんだけど」
「どこらへんでしたか!?」
「5番通りのパン屋の前で……」
5番通りのパン屋。
「パン屋さん…あった。……うわぁ、良い匂い!」
パンってこんなに種類があるんだ…。
甘い匂いのパン、お肉が挟まっているパン、果物が乗ったパン、細長いパンや大きいパン……
「どうしたのかな?お嬢さん。」
「あっ、えっと……。喉元に白い模様がある黒猫、見ませんでしたか!?」
「ああ、それなら、さっきここの路地を通って、6番通りに行くのを見たよ。」
「分かりました。」
「あっと、お待ち。このパンあげるよ。随分と痩せこけてるね。」
「わ…ありがとうございます!」
6番通り……6番通り……
服屋さんがたくさん並んでいる。ズボンと上着がくっついた服や、キラキラした宝石が付いているドレスもある。あのスカート、可愛いなぁ…。
おっと、猫を探してるんだった。
「すみません、喉に白い模様がある黒猫、見ませんでしたか?」
「それなら、そこにいるよ。」
と、私が話しかけたおじいさんが指差したのは、服屋の屋根の上。黒猫だ。しかも、喉元に白い模様。
こちらを見下ろしている。
「あっ、居た!」
トッ、と、猫が駆け出してしまう。
「待て〜!!」
猫を追って路地裏に駆け込む。
積んである箱や、ベランダの物干し竿などを伝い、屋根まで登った。猫、居る!
「ミャー」
屋根をぴょんと飛んでにげだした。
私も猫を追って、屋根と屋根を飛び移る。
そうやって猫を追っていると。
次の屋根に飛び移ろうとした時、足元の屋根の瓦が剥がれて、足が滑った。
「あっ、ヤバっ…!」
2階の上から地面に落下した。幸い、下にゴミがたくさんあったので、全身に痛みが走ったが、怪我は無かった。
トン、とお腹の上に猫が飛び乗ってきた。
「ミャー!」
「う……うう……」
痛みに悶絶していると、通りの方向からおじさんが覗き込んできた。
「何があった…!?うおっと、君、大丈夫かい!?」
「う……いてて……」
私と猫の方に駆け寄ってきた。
「屋根から落ちたのか.......全く、最近の子はやんちゃだねぇ…。危ないから、大人が居ない時に屋根には登っちゃダメだよ。」
「うぐ…すみません…。」
「全く…。」
そう言いながら、おじさんは私が起き上がるのを手伝ってくれた。傷口も見てくれたが、大丈夫そうだ、と言われた。
「ありがとうございます。」
とお礼して、猫を持ってトルトさんの家へ向かう。地図で見ると……ここは4番通り。隣の通りだな。
トルトさんの家に向かう。
今度はしっかりノック3回だ。
「なんだい?」
「猫、見つけてきました。」
猫を私から取り上げ、依頼書を確認するトルトさん。
「フン。」
と言って、私にお金を渡してくれた。
「あ……。」
「さっさと帰りな!!もう夕方だよ!」
と言うと、トルトさんはバン!と扉を閉めてしまった。
「………」
少し驚いたが、報酬は貰えたし。
騎士団の建物に帰ることにした。




