96.兄ちゃん、隣の騎士はイタズラっ子だった
孤児院での仕事を終えると、僕たちは城にある魔法師団にすぐ向かうことになった。
何でもエアリオスさんとアクエリオスさんの合体家事魔法が想像以上にすごいらしい。
「やはりソウタは貴族になるべきだ……」
さっきからエリオットさんがずっとブツブツと呟いているぐらいだからね。
何でも貴族になれるほどの功績かもしれないと。
貴族になるつもりはないから、そんなに心配しなくてもいいのに……。
「お二人の魔力はまだ大丈夫そうですか?」
「「ああ、家事魔法も完璧だぞ!」」
全ての洗濯物を洗い終わる頃には、二人とも魔法の制御は上手になっていた。
まあ、エリオットさんが厳しく教えたというのもあるけどね。
城を目の前に僕たちは一度足を止める。
「ソウタ、ここからは気を引き締めて――」
「それはエリオットさんですよ?」
僕はエリオットさんの手を掴み、ニコリと微笑む。
きっと僕よりも考えごとをしているエリオットさんの方が、どこかに行ってしまいそうだ。
「あぁ……そうですよね」
「だから、いつでも僕の手を放したらダメですからね」
いつ誘拐されるかもわからないほど、城には危険がいっぱいだ。
エリオットさんは僕の手をギュッと握り返すと、そのまま魔法師団に向かって歩いていく。
「やっぱり視線が痛いですね……」
「「きっと俺たちがいるからな」」
やけに胸を張るエアリオスさんとアクエリオスさん。
エリオットさんはその隣でため息をついていた。
「彼らは幼い時からイタズラの双子精霊って言われてたんです」
「「えへへへ」」
明らかにエリオットさんは褒めてないのに、二人は嬉しそうに笑っていた。
「そこに私の兄であるバリーも含めて……」
「あー、火、水、風とバランスが良さそうですもんね!」
「「「……」」」
なぜか僕に視線が集まる。
何かおかしなことでも言ったのだろうか。
「ひょっとして、土魔法担当の黄色とかもいました?」
「いや、それはいないですけど……」
「残念でしたね。もう一人いたら完璧だったのに!」
小さい頃ってそういうごっこ遊びが好きだから、四人か五人はいると思ったのにな。
僕も弟妹に付き合わされてヒーローショーごっこをよくやった覚えがある。
僕と次男は基本的に怪物役かロボット役になることが多かったけどね。
「エリオットさん、ソウタっておかしい?」
「おかしいというより……バカですか?」
「いや……普通は兄さんみたいな人が四人もいたら嫌がると思うけど……」
どうやらエリオットさんは相当手を焼いていたみたいだね。
バリーさんもだけど、根は優しい人が多いと思うけどね。
僕はエアリオスさんとアクエリオスさんを見つめて、ニヤリと笑う。
「明日も孤児院で洗濯当番ですからね?」
「「まかせろ!」」
あれだけ僕にこき使われたのに、僕に頼られて嬉しいのか二人は嬉しそうにしていた。
どこから見ても、彼らの方が変わり者のような気がするけどね。
「あっ、コンラッド団長が土魔法使いだから、ちょうどいいですね!」
「あっ……そうですね……?」
青翼騎士団でヒーローごっこができそうだ。
ただ、エリオットさんも仲間に入りたかったのか、どこか浮かない顔をしていた。
「魔法師団のミレイユ団長だったら、一人でヒーローごっこ……いや、虹色担当に――」
「ソウタ、到着しますよ」
しばらく歩くと、魔法師団の研究所が見えてきた。
――ボンッ!
扉に手をかけようとした瞬間、中から大きな音が聞こえてきた。
僕たちが中に入ると、やはり小さくなったミレイユ団長がいた。
「おお、ソウタ……今日はまた別の仲間を連れているな」
ミレイユ団長の視線は、エアリオスさんとアクエリオスさんに向いていた。
「お前らすぐに魔道具と研究材料を隠せ!」
ミレイユ団長の声に、慌ただしくなる。
「こいつらは何をしでかすかわからないからね!」
どうやらここでもエアリオスさんとアクエリオスさんは有名なようだ。
その二人で慕っているバリーさんをここに連れてきたら、魔法師団は大騒動になるだろう。
魔法師団は急いで道具を片付けていく。
「おー、片付けができてすごいですね!」
チラッと隣を見ると、三人とも視線を逸らしている。
騎士たちは掃除すらできなかったからね。
「これぐらい誰だってできますよ」
「魔法師団を舐めてもらっては困ります」
魔法師はそう言いながらも、どこか嬉しそうだ。
バカにするなって言われるかと思ったら、魔法師団も弟妹に似ている。
優秀な人が集まる魔法師団だからか、頼られるのが好きな学級委員長みたいな人が多いのかもね。
「それで今日は私の実験に付き合ってくれるのか?」
「えーっと……合体家事魔法ができたので……」
僕は視線をエリオットさんに向ける。
魔法を詳しく知らない僕より、エリオットさんが伝えた方が早いだろう。
「ソウタの提案で、ここにいる二人の魔法を同時に組み合わせた魔法が――」
「それは本当か!」
ミレイユ団長はすぐに詰め寄ってきた。
やはり彼女はただの魔法好きなんだろう。
それに他の魔法師も手を止めて、興味深そうにこっちを見ている。
「この間教えた洗濯魔法を二人の水魔法と風魔法を使って再現してみました」
「ほぉ、それは普通の洗濯魔法と何が違うんだ?」
「何と……強さのバリエーションが増えました!」
洗濯魔法と合体家事魔法の違いは、洗濯機を使いこなしていた僕だからこそわかるものだ。
「それは意味があるのか……?」
「ありますよ! 標準コースは汚れを落とすためですけど、合体家事魔法の洗濯はおしゃれ着コース搭載ですからね!」
僕は堂々と胸を張る。
それを見たエアリオスさんとアクエリオスさんも胸を張っていた。
「あっ……そうか……」
ミレイユ団長は難しい顔をしていた。
きっと洗濯をしたことがないんだろう。
どうやらこのすごい機能はミレイユ団長には伝わらなかったようだ。
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