93.兄ちゃん、違和感を覚える
黒翼騎士団を見送ってから孤児院に行こうと思ったが、今日はみんなが見送ってくれるらしい。
「ソウタ、頑張ってこいよ!」
「夜もご飯を作って待ってるっすよ!」
エルドラン団長とジンさんに見送ってもらっていると、どこか背中がムズムズする。
「ソウタ……」
ゼノさんは相変わらずどこか寂しそうな顔をしている。
僕が手を広げると、ゼノさんは潜り込むように抱きついてきた。
「ゼノさんもお仕事頑張ってくださいね」
「ソウタも」
まるで最後の別れかのように、ギュッと強く抱きしめられる。
本当に今日のゼノさんはどこかおかしいな。
「ソウタ……」
「アルノーさん!?」
俺に甘えたこともないアルノーさんもこっそり僕に抱きついてくるぐらいだ。
「おい、アルノーいたのか!」
「えっ、いつからいたんっすか!」
気配が薄すぎて、普段は誰も気づかないアルノーさんがエルドラン団長やジンさんにも見えるらしい。
やはり今日のみんなはどこかおかしい。
「みなさん、少しおかしいですよ?」
「ははは、そんなことないぞ」
エルドラン団長はニヤリと笑うと、僕をギュッと抱きしめる。
「ソウタ、元気でな」
「もう、エルドラン団長もおかしいですよ」
「ははは、ソウタを見送ることが初めてだからな!」
そう言って、エルドラン団長は僕の頭を撫でて、調理場に向かって歩き出した。
「エルドラン団長、どうしたんですかね?」
「あー、さっき洗い物をしている最中に皿を割ったから急いで片付けるじゃないっすか?」
ジンさんは思い出したかのようにエルドラン団長のことを話した。
「……手が滑っちまってな」
一瞬だけ間が空いて、エルドラン団長は振り返らずに頭をガシガシと触っていた。
僕に怒られると思っているのだろう。
「調理台の下に隠していたのが懐かしいですね」
「……今の俺は前よりも違うからな!」
振り返ったエルドラン団長は笑っていた。
まあ、このあとみんなも仕事があるから、片付けは早めにやっておいたほうがいいもんね。
「ソウタ、元気にたくさん食べるっすよ!」
「いやいや、さっき食べ過ぎましたよ」
ジンさんからお弁当を渡されると、彼も僕をギュッと抱きしめた。
ジンさんから抱きしめてくることって珍しいのに、そんなに僕を見送るのが悲しいのかな?
僕が高校生になった時に、早く家を出ることを知った末っ子もこんな感じだったな。
一緒に登校できないことに落ち込んでいたっけ。
家の近くに小学校も中学校もあったから、僕が高校生になるまでみんなで行ってたもんね。
「ソウタ、貴族には気をつけるんだぞ!」
「やつらはすぐに裏切ってくるからな」
「いざとなったら、ソウタの料理で手懐けちまえ!」
他の騎士も僕の頭を撫でたり、背中を叩いて応援してくれた。
その様子を見て、そんなに仕事が忙しくなるのかと疑問に思ってしまう。
エリオットさんが僕の仕事を管理してくれるって言ってたけど、ちょっと先のことを考えると怖くなってくるね。
「じゃあ、行ってきます!」
僕はみんなに手を振って、黒翼騎士団の庁舎を後にする。
チラッと振り返ると、調理場に向かっていたエルドラン団長も戻り、僕を見送ってくれている。
……なんだか、少しだけ胸がざわついた。
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