94.兄ちゃん、新しい相棒を見つける
「今日は孤児院に行った後はどうします?」
「んー、せっかくだから魔法師団にも行きましょうか。宿題は早く終わらせた方がいいって言いますし!」
まず一番初めに向かうのは孤児院だ。
その後は魔法師団にも今日は行くつもりで考えている。
って言っても、僕が魔法師団に行ってもアイデアを出すだけだからね。
予定を一気に詰めたほうが、後々ゆっくりできるからね。
「では、ソウタが魔法師団に行っている間に、城で勤める料理人と予定の打ち合わせをしてきます」
城の料理人へのレシピを教えるのは、エリオットさんが事前に日付調整をしてくれるらしい。
本当に僕の秘書みたいだね。
「それにしても今日のみなさん、まるで僕が帰ってこないみたいな雰囲気でしたね」
「ソウタを見送るのは初めてですからね」
やけにしんみりした空気に少し嫌な胸騒ぎがしたけど、みんなが大袈裟だから見ていて面白かった。
今日の夜には帰ってくるのにね。
「夜は何を作ってくれるか楽しみだな」
「そうですね……」
僕はエリオットさんと手を繋ぎながら、商店街を歩いていく。
エリオットさんの目は普段よりもどこか優しさを感じる。
いつもキラリとメガネを光らせているような人だからね。
「ソウタ、今日も美味しい野菜が採れたから、また持っていけ!」
「おじさん、ちゃんと売り物だからお金を取らないとダメですよ!」
「がははは、それもそうだな! 今日も安くしてやるぞ!」
今日も商店街は賑やかだ。
色々なお店の店主から声をかけられて、孤児院に行くのにも何度か立ち止まらないといけない。
「せっかくだから、肉じゃがとか煮浸しとかでもいいかな……」
野菜をオススメされたから、今日は早く帰って僕も何か作ってあげようかな。
きっとエルドラン団長は揚げ物ばかり作るだろうから、僕はさっぱりしたものがいいだろう。
「孤児院に到着しますよ」
今日のメニューを考えていると、エリオットさんの声でハッとした。
いつの間にか孤児院が見えてきた。
今日は子どもたちの声があまり聞こえない。
「孤児院もどこかおかしいのかな……?」
少し心配になりながらも、中に入り調理場に向かっていく。
「ソウタ先輩、おはようございます」
「ソウ、おはよう」
孤児院の調理場ではキッシュさんが孤児院の年上組のオリーブと料理をしていた。
「おはようございます」
僕が挨拶をすると、すぐにキッチンさんとオリーブは真剣に料理をしていた。
彼女には料理店を出したいという目標があるから、キッシュさんとともに料理を担当してもらっている。
「今日はバリーさんいないんですか?」
ここ最近ほとんどバリーさんが子どもたちと遊んでいたが、今日は周囲を見回してもバリーさんはいない。
「最近、副団長の仕事をサボっていたから、コンラッド団長が朝からね……」
「あー、怒られたんですね」
僕の言葉にキッシュさんは頷いていた。
バリーさんは子どもの面倒を見るという言い訳で、サボるために孤児院に来ていたのかもしれない。
それは本人しかわからないことだからね。
「あれ……? 他の子どもたちはどこにいるんですか?」
バリーさんがいないのはわかったが、子どもたちがいないのはおかしいもんね。
「あぁ、今日はエアリオスとアクエリオスが手伝いに来ているので、一緒にいますよ」
「んっ……誰だろう……」
僕が首を傾げていると、後ろからエリオットさんに肩を叩かれた。
「兄さんとよくいる双子の彼らです」
僕が初めてバリーさんに誘拐された時に、一緒にレオの宿屋に来た二人か。
バリーさんの子分みたいな感じだったけど、実際は大人しくて黒翼騎士団の騎士とさほど変わらなかったけ。
「僕もそっちに行ってきますね」
真剣に料理を教えている隣で邪魔をするのは悪いと思い、僕は子どもたちの声を頼りに歩いていく。
どうやら声は裏庭から聞こえてくるようだ。
きっと何かしているのだろう。
僕はエリオットさんとともに向かうことにした。
「おっ、ソウタおはよう!」
「ソウにい!」
僕に気づいたのかカイとルカがやってきた。
その手には泡がついた服を持っていた。
桶の中に水を入れて、洗濯をしていたようだ。
「二人ともおはよう。みんなも朝からお手伝いしてすごいですね」
僕が声をかけると嬉しそうな顔をしていた。
その中にはエアリオスとアクエリオスも混ざっている。
本当に貴族ってあまり褒められることがないのだろう。
僕に洗濯をしたとアピールしている。
ただ、中々汚れが落ちていないのも現状だ。
「ソウにいも手伝って!」
「中々汚れが落ちなくて大変なんだよ!」
黒翼騎士団には洗濯魔法があるけど、孤児院では手洗いで生地同士を重ねてもみ洗いをしている。
それでも外で駆け回る子どもたちの汚れた服は、簡単に汚れは落ちない。
「やっぱり洗濯板みたいなのがないと大変そうだね」
僕もみんなに紛れて、一緒に服を手洗いしていく。
エリオットさんの魔法に頼りたいけど、子どもたちにはどうにか自活できる方法を教えないといけないからね。
「そういえば、二人は自分たちで洗濯するのに抵抗はないんですか?」
「「ないぞ!」」
貴族で前衛騎士なのに珍しいこともあるんだな。
「「どうだ?」」
「綺麗になってますね」
「「俺たちにかかれば楽勝だ」」
綺麗に服を洗っては、僕にちゃんと洗えているか聞いてくる。
双子なのもあってか、全てのタイミングが一緒で僕はそちらの方が気になってくる。
「二人は水魔法と風魔法を使うので、むしろ心地良いのかもしれないです」
隣で一緒に洗っていたエリオットさんが声をかけてきた。
どうやら好みと魔法の適性は似ているのかもしれない。
魔法を扱う人全員にアンケートを取ったら、その辺は明確になりそうな気がする。
「そんなに嬉しそうな顔をしてどうしたんですか?」
「いや、ここにも僕の手助けをしてくれそうな人がいると思ってね!」
僕はエアリオスとアクエリオスを見てニヤリと笑う。
だって、新たに洗濯魔法とドライヤー魔法が使えそうな人材と出会えたんだからね。
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