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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました〜誤解されがちな騎士団を立て直します〜  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売
第三章

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92/106

92.兄ちゃん、弟の成長に悲しむ

「んっ……美味しそうな匂い……寝坊!?」


 僕は部屋の外から香る匂いで目を覚ました。

 急いでベッドから下りて時計を見るが、普段と起きる時間は変わらない。


「壊れてるのかな……」


 時計を眺めると、ちゃんと針はカチカチと動いている。

 こんな時間に騎士たちが起きていることは珍しい。

 キッシュさんも最近は青翼騎士団から孤児院に通っている。

 泥棒が入ってきたのかと思い、扉を少しだけ開けて、チラッと覗く。

 すると、騎士たちが全員(・・)起きていた。


「ソウタ、おはよう!」

「……おはようございます」


 僕は驚きながらも挨拶を返すと、いつものようにあの人が抱きついてきた。

 

「ソウタアアアアア!」


 ゼノさんは相変わらず普段と変わらないね。

 ……いや、普段のゼノさんだと朝はボーッとして、子どものように朝ご飯を食べながら寝てしまうような人だ。

 それに他の騎士も朝から掃除をして、朝食まで作っている。


「みなさん、どうしたんですか? 風邪でも引きました?」


 僕の言葉に騎士たちもキョトンとした顔をしていた。


「ははは、ソウタは寝ぼけているのか?」

「俺たちもやる時はやるっすよ!」


 朝ご飯ができたのか、調理場から大量にトンカツを揚げたエルドラン団長とジンさんが出てきた。


「忙しいソウタのために、自分たちができることをすることにしたんです」


 その後ろには大量のサラダを持ったエリオットさんがいた。

 僕が忙しいのを知っていたのか、負担を減らそうとしてくれたのだろう。


「ふふふ、みなさん大人になりましたね」


 子どもが成長したらこんな気持ちになるのだろうか。

 ……いや、騎士たちは元々大人だったね。

 嬉しい気持ちもあるが、少し寂しい気分だ。

 それに反抗期がないと、どこか爆発するって聞いたこともあるから、心配な気持ちも……大人だからないか。


「ほら、早く朝飯を食べるぞ!」


 テーブルの上にずらりと並べられたトンカツとサラダ。

 アルノーさんと張り切ったのか、パンはいつもより多めに用意してあった。

 僕は急いで身支度を済ませて、椅子に座る。

 時計を見ると、普段よりも二時間程度早い。

 まさかこんな早い時間から朝ご飯を食べるとは思わなかった。

 僕は手を合わせて、エルドラン団長の方を見る。


「どうしたんだ?」


 目が合ったエルドラン団長は不思議そうな顔でこっちを見ていた。


「いや……僕は何もしていないので」

「ああ、そうか。俺が掛け声をするのか」


 普段は作った人があいさつの掛け声をするため、僕が担当になっていた。

 でも、今回に限っては何も(・・)していない。


――パチン!


「いただきます!」

「「「いただきます!」」」


 手を合わせると大きな音が鳴るとともに、食事のあいさつを済ませる。

 ただ、騎士たちはいつもと違いジーッと僕を見ていた。


「どうしました?」

「あぁ、ちゃんとできているから気になってな」


 どうやら僕が関わっていないから、美味しく出来ているか心配のようだ。

 昨日も唐揚げのサイズが全部違っていたから、焦げていたやつもあったもんね。

 僕はトンカツを一枚取り、そのままかぶりつく。


「うん、美味しいですよ!」

「うっし!」

「団長、やりましたよ!」


 僕の言葉にみんな嬉しそうな顔をしている。

 だが、ゼノさんだけはどこか寂しそうに僕の顔を見つめていた。


「ゼノさん、どうしました?」

「ソウタがいな――」

「ははは、ゼノはソウタのご飯が食べられなくて悲しんでいるだけっす!」


 ジンさんはゼノさんの肩を強く叩いていた。

 僕のご飯が食べられないからってそこまで落ち込むこともないのにね。


「夜ご飯は何が食べたいですか?」


 僕の言葉に周囲は静かになる。

 普段ならみんなで食べたいものを言い合って、メニューの取り合いになるぐらいなのに、今日はやけに静かだ。


「みなさん、どうしました?」

「夜飯も俺たちが作るから、ソウタは気にしなくてもいいぞ」

「ええ、ソウタはしばらく忙しいですからね」


 エルドラン団長とエリオットさんは優しく笑っていた。

 だけど、その奥にどことなく悲しさを感じる。

 僕が熱を出した時に一生懸命おかゆを作ってくれた弟妹たちを思い出す。

 あのときは母さんも夜勤に行ったばかりだし、父さんは宿直だったかな……。

 僕もなるべく仕事を終わらせて、みんなを安心させないとね。


「わかりました。でもみなさんが食べたいものがあったら、すぐに作りますからね」


 僕はトンカツを持って周囲に見せる。


「さすがに揚げ物ばかりだと胃もたれしちゃうからね!」


 そうは言っても、僕はいくらトンカツを食べても胃もたれする気配がなかった。

 僕が何も手伝ってないご飯を食べるのが初めてだったからね。

 あまりの嬉しさに、僕は普段の倍以上食べてしまった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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