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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました〜誤解されがちな騎士団を立て直します〜  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第三章

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85.兄ちゃん、これは体質なのかな?

 フォルテさんにお弁当を託した僕たちは黒翼騎士団の庁舎に帰るために来た道を戻っていく。


「やっぱり城は気軽に来たらダメなところですね」

「私とゼノもあまり近づかないようにしてますからね」


 貴族でも爵位が高い人ばかり勤めている城は面倒ごとが多いらしい。

 フォルテさんのような変わり者ばかり働いているって思うと、近づかない方が身の安全のためにいいだろう。


「黒翼騎士団の少年を見ていないか?」

「小さくて可愛らしい子なんだが……」


 すでに宰相と財務卿が僕が城の中にいないかと探していた。


「これは走って逃げるしかないですか?」

「ええ、今日捕まってしまったら、しばらく通うことになりそうですしね」


 二人とも手にはお弁当を持っているから、また持ってきてと依頼されるに決まっている。

 宰相の口元には煮込みハンバーグのタレがついているぐらいだからね。

 二人がいなくなった瞬間、僕たちは走り出す。

 城の出口はあとわずか――。


「えっ……なにこれ!?」


 そう思った瞬間、僕の体がふわりと浮かんだ。

 次第にエリオットさんとは距離が離れていく。

 まずい……このままだと置いていかれる。

 咄嗟に手を伸ばすが、エリオットさんには届かない。


「エリ……」


 声をかけようとするが、口を塞がれて声が出ない。

 まさか城で誘拐のようなことが起こるとは思いもしなかった。


「やぁ、久しぶりだね!」


 僕の口を塞いでいたのは、魔法師団の副団長であるユリウスさんだった。

 彼は満面な笑みで僕の方を見て笑っている。

 そのまま浮いている僕の手を持って、城の中を泳ぐようにスイスイと飛んでいく。

 さっきフォルテさんが使っていた風魔法と同じやつだろう。

 どこか無重力空間に近いため、どこかに飛ばされてしまいそうだ。


「僕をどうするつもりですか……」

「君には魔法師団に遊びに来てもらおうと思ってね」


 どうやら魔法師団に連れて行くために誘拐されているらしい。

 僕って誘拐される体質なんだろうか。

 普通に声をかければいいのに、それを知らないはずはない。

 やはり貴族たちに関わらない方が良いのは確かだ。

 遠くの方では僕がいなくなったことに気づいたエリオットさんが周囲をキョロキョロしていた。


「エリオットさーん! 魔法師団に連れてかれまーす!」


 僕の声に気づいたのかはわからない。

 ただ、他の貴族たちもいるから、誰かには伝わっただろう。

 しばらく誘拐されていると、ふわりと地面に下ろされた。


「ここが魔法師団の研究所だ!」


 扉を開けると、様々な器具や道具が置かれていた。


「懐かしい……僕の好きな匂いだ……」


 アルコールのようなツンとした匂いや少し甘くて薬品っぽい匂い、古い木の棚の匂いが混ざったような――そんな独特な匂いがする。

 異世界でも研究所は理科室と似た匂いがしていた。


「やっぱり君を連れてきて正解だ」


 ユリウスさんはどこか嬉しそうにしている。

 その後も様々な機械や道具を紹介してくれた。

 彼は本当に魔法が好きな少年のような人なのかもしれない。


――バンッ!


 突然、隣の部屋から爆発音が聞こえてきた。


「はぁー、今回も魔法の融合はできなかった……ユリウス、その人誰?」


 部屋から小柄な女性が出てきた。

 その瞬間、周囲で作業をしていた魔法師団の人たちが手を止めた。

 僕とそこまで背丈が変わらない少女だけど、着ているローブはなぜか大きい。

 怪しげに僕の顔をジーッと見つめている。


「この間話した魔法を面白い使い方をする――」

「おおお! ぜひ、少年の魔法を見せてくれないか!」


 ものすごい勢いで近づいたと思ったら、僕の手を握っていた。


「落ち着いてください」

「ユリウス君、魔法好きの私が落ち着けるはずないだろ!」


 彼女も魔法が好きなんだろう。

 でも、僕は魔法が使えないから、彼女の希望には応えられない。


「すみません、僕は魔法が使えないので……」

「あぁ、まだ覚醒していないのか!」

「いえ……僕は貴族じゃないので魔法が使えない――」

「んっ? 貴族じゃなくても魔法は使えるようになるよ?」


 彼女の言葉に僕は耳を疑った。

 魔法を使えるのは貴族だけだと聞いている。

 ゼノさんやエリオットさんからも、そうやって聞いているからね。

 でも、実際はどっちが本当なんだろう。


「それは本当ですか?」


 思わず僕は聞き返してしまった。


「そうだよ! 魔法師団長のこの私が言うんだからね!」


 小柄な少女は腰に手を当てて胸を張っていた。

 まさか目の前にいる彼女が魔法師団長だとは、誰も思わないだろう。


「僕と同じぐらいの身長なのに……」

「ムッ! これは複合魔法に失敗して、魔力が暴走しただけだ!」


 どうやら魔法の実験に失敗して、小さくなってしまうらしい。

 ゼノさんやエリオットさんの小さい姿……絶対に可愛いだろうね。

 バリーさんは、いたずらっ子になる姿しか想像できないや。


「普段は大きいんですか……?」

「ええ、豊満な胸にくびれたウエスト、今すぐにでも子が産め――」

「ミレイユ団長、相手は子どもです」

「おっと、それはすまないね」


 彼女は何を言おうとしていたのか、僕にはわからなかった。

 ただ、普段は全く見た目が異なっているらしい。

 魔法がない世界で生きていたから、本当に不思議だ。


「そういえば、自己紹介をしていなかったですね」


 僕は姿勢を正して胸に手を当てる。


「黒翼騎士団所属、後務騎士のソウタです。得意なことは家事全般。料理や洗濯が好きですね」

「おお、ソウタと言うんだね」


 ミレイユ団長は姿勢を正すと僕の真似をする。


「魔法師団所属、魔法師団長のミレイユだ。得意なことは魔法全般。趣味も魔法だな」


 本当に魔法が好きなミレイユ団長。

 ただ、この挨拶って――。


「お見合いみたいですね」

「「ブッ……あはははは!」」


 ユリウスさんの言葉に僕たちは笑い合っていた。

 だが、僕たちは大事なことを忘れていた。

 僕が誘拐されていたことを――。

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