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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました〜誤解されがちな騎士団を立て直します〜  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第二章 戦うショタおかん

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73.兄ちゃん、孤児院でもおせっかい

「ほら、お前たちも掃除しな!」


 僕とルカに向けて雑巾を投げ捨てると、女性もその場から立ち去った。

 すぐに僕たちもある人の隣に行き、掃除を始める。


「カイ、無事だった?」

「なっ……何でお前たちまで来てるんだよ!」


 僕たちが孤児院に来たのを今になって気づいたのだろう。

 ここには戻りたくないって言っていたぐらいだもんね。

 カイは心配そうに僕とルカの手を握る。

 ただ、僕はチラッと見えるカイの腕が気になった。


「これどうしたの?」

「あいつらにやられた」


 カイの腕にはミミズ腫れのような傷や内出血がいくつもできていた。

 皮膚が切れている場所もあり、傷ができてそこまで時間は経っていないのだろう。


「カイにい!」


 ルカはカイに会えたのが嬉しいのか、涙を流しながら抱きついた。

 やっぱり兄弟は一緒にいる方がいいね。

 そんな様子を見て、よく思わない人たちも孤児院の中にいる。


「おい、お前らが掃除しないと俺たちが怒られるんだ」

「そうよ! 掃除しなさい!」


 僕たちを注意してきた孤児の体にも無数の傷ができていた。

 どうやら連帯責任で怒られているのだろう。

 ただ、その中でも小さな子どもは傷が少ない。


「あなたは奴隷として売られるから痛い思いをしなくていいわね」

「どういうこと?」

「そのままの意味よ。傷があれば奴隷としての価値が悪くなるからよ」


 きっと孤児院で子どもの世話をする年上組と奴隷として売られる年下組に分けられているのだろう。

 何か問題があれば年上組が罰せられる。

 だから、年下組の世話をするのに必死のようだ。

 ここは孤児院というより、刑務所って言われた方が納得しそうだ。

 ひょっとしたら、刑務所の方が命は守られているかもしれない。


「掃除は得意だから任せて!」


 僕はすぐに乾いた雑巾で砂と埃を集めていく。

 本当はほうきが欲しいけど、近くに見当たらないからね。


「そんなやり方じゃ綺麗にならないだろ」


 年上組の少年は水に濡らした雑巾を床に置いた。


「ちょっと! 乾拭きしていないのに水拭きしたらダメでしょ!」


 つい僕のおせっかい魂に火がついてしまった。

 だって、砂や埃がある状態で水拭きをしたら、伸ばして余計に取りづらくなる。


「まずは乾拭きして、それからしっかり絞った雑巾で拭くこと! 拭き方はこんな感じで隙間なく拭いて、溝はしっかりと擦るんだよ! わかった?」

「おっ……おう……」


 少年は申し訳なさそうに雑巾を縁に置き、埃を手で取っていく。


「新人なのに口うるさい子……ってあなたソウじゃない!? なんで戻ってきたのよ……」


 少女は僕の顔を見ると、驚きながらも嬉しそうにしていた。

 やはり僕はここの孤児院にいた子なんだろう。


「私、オリーブよ? 覚えているかな?」


 僕がこの体に入る前の記憶はほとんど覚えていない。

 ゆっくりと横に首を振ると、少女は残念そうにしていた。


「せっかく孤児院から抜け出せるように手伝ったのに、私の名前を忘れるなんてね。殴られ損じゃないの」


 どうやら彼女に助けられて外に出たのだろう。

 でも、生きる方法を知らずにゴミ捨て場で力尽きたところをエルドラン団長たちに助けてもらったってことだね。

 今頃庁舎に帰ってくるから、心配して探してくれたらいいな。


「ソウタは元々ここにいたのか?」

「どうだろう……記憶がないんだ……」


 隣にいたカイが聞いてきたから、僕は正直に答えた。

 きっとカイとルカが孤児院に来る前に、前の僕はここから脱走していたのだろう。


「忘れられるなら、綺麗さっぱり忘れた方がいいからね」


 カイは小さく呟いた。

 覚えていてもいいことがないのは確かだ。


「ほら、あなたたち話してないで掃除をするわよ! せっかくだからソウの言った通りにやってあげるわ!」


 オリーブは少し嬉しそうに僕が言った通りに掃除をしてくれるようにみんなに声をかけていた。

 ただ、床を掃除しても鼻の奥を刺激する匂いは消えそうになかった。

 みんなからは汗と汚れが混ざった匂いがする。

 お風呂にも入ることができず、水浴びもあまりできてないのだろう。

 オリーブの髪も脂で固まって、いくつ束になっている。


「これで綺麗になったかな!」


 水拭きが終わる頃には自然と孤児たちの顔も笑顔になっていた。

 思ったよりも汚れていた床は拭き方でかなり変わった。

 やっぱり掃除は気持ちも綺麗にしてくれるからいいね。


「お前たち掃除は……綺麗になってるじゃないか」


 職員の女性が帰ってきた。

 オリーブの話では、孤児院は夫婦で面倒を見ており、男が管理人でルカの言っていた大先生らしい。


「誰の指図でここまで綺麗になったんだね?」


 女性の言葉に誰も答えずに俯いている。


「ソウタ何も話すなよ」


 カイが小さな声で話しかけてきた。


「なんで……?」

「話したら目をつけられるからだ」


 どうやらみんなで僕を守ろうとしているのだろう。

 それは年上組の孤児たちから感じた。


「口も聞けない醜い子どもたちね! ほら前に出なさい!」

「キャ!」


 女性はオリーブの腕を引っ張ると、すぐに床に投げ捨てた。

 ポケットから取り出したのは短めな鞭。

 それを見て震えるオリーブを他の孤児たちは見ないように目をつぶっていた。


「お前たちが何も言わないなら、この醜い女を――」

「やめてください! 掃除の仕方を教えたのは僕です!」


 すぐに僕は止めるようにオリーブの前に出た。

 こんな小さな子たちが鞭で叩かれるなんて見てられない。


「ほぉ、お前は……たしかソウだったな。今までどこにいたんだ?」

「掃除をするために店で雇われていました」

「ほぉ、そうか……。でも、逃げ出したやつにも罰が必要だな」


 女性は大きく鞭を振った。

 僕はオリーブに当たらないように押し倒す。

 パシンッという乾いた音が部屋に響く。

 背中に焼けるような痛みが走る。でも、僕に後悔はない。


「お前は売り物になるからな。これぐらいでやめておこう」


 数回叩かれると、女性は満足したように部屋に戻って行った。

 今まで感じたことのない痛みに、思わず顔が歪んだ。


「おい、ソウタ! 大丈夫か!」

「二重跳びに失敗して、縄が当たった時みたいだね」


 僕はできるだけ微笑んだ。

 縄跳びが当たった時よりも痛いけど、これならカイも心配しないだろ。


「二重跳びが何かわからないが見せてみろ!」


 カイはすぐに僕の服を捲ると、顔を歪めていた。

 きっと傷になっているのだろう。

 それでも僕は目の前にいるオリーブが叩かれずに済んだことにホッとした。

 これで前の僕を孤児院から脱走させてくれたお礼にはなったかな。

お読み頂き、ありがとうございます。

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