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転生先で生活能力ゼロ騎士団に保護された結果、僕がおかんになりました〜誤解されがちな騎士団を立て直します〜  作者: k-ing☆5シリーズ書籍発売中
第二章 戦うショタおかん

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64.兄ちゃん、路地裏の見学をする

 僕はパンを持って路地裏に入っていく。


「カイ! ルカ!」

「ソウにい!」


 声に反応してルカが勢いよく走ってきた。

 黒翼騎士団の制服を見て、警戒していたのが嘘みたいだ。


「おい、走っていくなとあれほど言っただろう」

「お腹ぺこぺこだもん!」


 カイも遅れて追いかけてきた。

 ルカの姿に呆れているが、カイもお腹が空いているのだろう。

 ジーッとパンに視線が向いている。

 

「今日もパンだけでごめんね」

「このパン好きだからいいよ!」


 ルカは嬉しそうにパンを口いっぱいに頬張る。

 家事が休みになるとお弁当を作らないため、二人に待ってくる食べ物がパンのみになってしまう。

 二人のためにも僕は家事を休みにしたらいけないな。


「そういえば、二人はいつもどこにいるの?」

「この奥にある路地裏だぞ?」


 路地裏なのはパッと見ただけでもわかる。

 ただ、この世界にはダンボールやブルーシートがないから、どうやって住んでいるのか気になった。


「パンをくれたお礼に案内してあげるね!」


 僕とそこまで変わらない年齢なのに、痩せ細ったルカの腕が僕の視線に入る。

 ルカは嬉しそうに僕の手を掴むと路地裏に入っていく。

 一瞬、カイの顔が歪んだがルカは気にしていないのだろう。


「うわっ!?」


 足元に何かが通り過ぎたような気がした。


「ネズミさんがいるから気をつけてね」


 思ったよりも路地裏は不衛生で驚いた。

 その辺でネズミは走っているし、生きているかわからない人たちが建物の外壁にもたれるように寝ている。

 二人ともこんな生活をしているのだろうか。

 胸の中が不安に駆られていく。


「食べ物を……」


 声が聞こえて周囲を見渡す。

 外壁にもたれる人とチラッと目が合ったと思ったが、虚な視線は僕の手元を見ていた。


「走るぞ!」

「えっ!?」


 今度はカイが僕の手を引いた。

 勢いよく走ると、カゴからパンが転がっていく。

 それに群がる人たち。

 僕が思っているよりも路地裏は過酷な世界のようだ。

 孤児院の問題だけかと思ったが、制度として整えなければ変わらないのだろう。


「じゃーん! ここが僕のお家だよ」

「お家……」


 目の前には驚きの光景が広がっていた。

 風を避けるものはなく、地面に藁が敷かれて、小麦を入れる麻の袋が置いてあった。

 今も少しずつ季節が変わり寒さが増していく中で、寒さ対策はできているのだろうか。

 それに気づいたのかルカは麻の袋に入って、ニコニコと笑っている。


「ここに入って寝るとあったかいんだ」


 暖を取るルカの姿に僕は何も声が出なかった。

 きっと黒翼騎士団がいなければ、僕も同じような生活をしていたのだろう。

 助けてもらったのはゴミ捨て場の中だったからね。

 今にも泣きそうな気持ちを抑えて、僕は微笑んだ。


「僕も入っていいかな?」

「いいよ!」


 大きな麻の袋なら僕とルカも入れるだろう。

 僕はルカが空けてくれた隙間にゆっくりと体を入れた。


「ははは、ソウにい狭いよ」

「春巻きになった気分だね」

「春巻き……?」


 隣でルカはよだれをすすっていた。

 春巻きが食べ物だってすぐにわかるのは一種の才能だろう。


 袋の中からはわずかに麦の匂いが香る。

 寝袋に近い構造になっているのか、思ったよりも袋の中は暖かった。

 ただ、藁の上で寝ているからか背中が痛いのは変わらない。


「ソウタ、もう帰った方がいい」

「えー、せっかくソウにいが来てくれたのに……」

「うるさい!」


 カイの顔は苦痛の表情を浮かべていた。

 前世ではカイよりも生きている僕が、彼が何を思っているのかわからないわけではない。

 黒翼騎士団と孤児院から抜け出した孤児とでは生きる世界が違うとでも言いたいのだろう。


「もうソウタは来なくてもいい」

「ご飯はどうするの?」

「俺たちでなんとかする」


 何とかするって口では言っているけど、今でも僕が持ってきた物しか食べていない気がする。

 周囲に何かゴミが落ちているわけではないからね。


「嫌だ! それは僕が許さないからね!」


 我慢していた気持ちが溢れ出てくる。

 僕にできることは数少ないだろう。

 でも、弟妹の年齢に近い彼らを見捨てることは僕にはできない。


「うわー! 兄ちゃん、ソウ兄をいじめた!」

「おい、いじめてないぞ!」


 あたふたするカイに僕はさらに泣きマネをする。

 僕を遠ざけようとした罰だからね。

 だけど、それがいけなかった。


「おい、こいつを泣かしたのは誰だ!」


 体がふわりと浮くと、なぜか僕はバリーさんに抱き寄せられていた。

 その手には剣が握られており、カイとルカに向けられている。

 突然の出来事で、二人とも声が出ずに怯えていた。

 さすがにそんなことされたら驚いちゃうよね。

 僕ですら驚いて声が出なかった。


「こら、バリーさん! 僕の友達に剣を向けない!」

「はぁん? お前泣いてただろ……?」

「どこをどう見たら泣いてたんですか?」


 僕は手で瞼を広げて、目の中を見せつける。


「ほら、ここが赤い……」

「泣いてないです!」

「えっ……」

「僕が泣いてないって言ったら泣いてないです」


 バリーさんは納得できていないのだろう。

 それでも文句を言いながら剣を腰に戻した。

 何をするかわからないから、僕は気が気ではない。


「それでバリーさんはどうしてここに来たんですか?」

「あぁ! バターをどれくらい入れるか聞こうと思ってだな」

「はぁー」


 まさかバターの入れる量を聞きにわざわざ戻ってきたとは思いもしなかった。

 ここにいるってことは、ずっと僕の後を追いかけてきたのだろう。


「バターは入れすぎなければいいですよ」

「なっ!? それじゃあ、わからないだろ!」


 この人には味見をするという概念がないのだろうか。

 呆れて言葉も出なくなる。


「ソウタ、この人は……」

「ああ、青翼騎士団のバリーさんです! 少し怖いですが、猫みたいな人なので気にしなくて大丈夫です」

「「猫……?」」


 カイとルカは首を傾げていた。

 やっぱり猫には見えないのかな?

 僕からしたらバリーさんは猫にしか見えないからね。


「おい、お前らみたいな孤児が何で孤児院じゃなくてここに住んでるんだ? 孤児院に早く帰れ!」


 次第にカイとルカの顔が曇る。

 いや、この人猫じゃなくてただのバカだったのを忘れていた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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