62.兄ちゃん、息子にはなりません!
「えーっと、これとこれもオススメですよ」
「そうか……」
僕はバリーさんのお皿にパンをポンポン置いていく。
あれだけ迷惑かけたんだから、たくさん買ってもらわないと割に合わないからね。
それに騎士だからいくら買っても食べられるだろう。
バリーさんを連れてコンラッドさんのところまで向かったが、なぜか僕をジーッと見ていた。
「やっぱりソウタくんは青翼騎士団に欲しいね」
「まだ言ってるんですか? その前に業務改善してくださいね」
僕の言葉にコンラッドさんはクスリと笑う。
笑って誤魔化しているかもしれないけど、青翼騎士団の後務騎士不足は大きな問題だからね。
「それに僕は貴族ではないから、青翼騎士団に所属することはできないですよ」
「ああ、それなら私の息子になれば大丈夫だ」
「はぁー、またそうやって冗談ばかり……えっ?」
さっきまで笑っていたコンラッドさんの顔は急に真剣味を帯びる。
「ははは、そういうところは子どもぽい顔をするんだね」
「はぁー、騙されるところでしたよ」
僕はうっかり騙されるところだった。
コンラッドさんって時折本当のような冗談を混ぜてくるから、気をつけないといけない。
気づいたら自ら口走って良からぬ方向に進みそうだ。
「あっ、バリーさんピーマン残したらダメですよ」
「なっ……」
スープの中に入ってたピーマンをお皿に出してたので、隣に座る僕はすぐにスープに戻した。
「僕はいつでも見てますからね」
弟妹も同じことをしていたけど、本当に同じことをするとは思いもしなかった。
チラッと隣のテーブルを見ると、青翼騎士団の中にもチラホラと野菜を残している人たちがいた。
「コンラッド団長……」
「どうした?」
「食事指導もしないといけないみたいですね」
「ははは……」
コンラッド団長は乾いた声で笑った。
その目は全く笑っていない。
まさかと思いコンラッド団長の皿に目を向ける。
「はぁー、玉ねぎが苦手なんですね」
綺麗に重ねた皿の間に挟まっていた玉ねぎがチラッと見えた。
コンラッド団長まで野菜を残しているとは思わなかった。
騎士の代表である騎士団長の姿を見て、学ぶことも多い。
子は親を見て学ぶ……に近いっていうからね!
朝食のサラダをみんな食べられたのは葉物だから食べられるけど、その他が苦手ってことかな。
ちょうど野菜をもらったから、スープにして持って帰ってもらおう。
「エリオットさんは野菜好きなのに、よく青翼騎士団に所属できましたね……」
「そうなのか?」
「えぇ、あの人かなりの野菜好きで黒翼騎士団ではサラダ当番ですよ」
エリオットさんは野菜に関しては好き嫌いがないからね。
「そうか……俺は部下のこともわかってなかったのか」
「むしろ上司が好き嫌いまで知ってたら気持ち悪いから、それでいいんじゃないですかね?」
コンラッド団長はどこか驚いた顔をしていた。
まさかそこまで驚くことも言ってないんだけどね……。
職場の上司が自分の好き嫌いを全て把握していたら、もはやストーカーかと思う。
それは僕でも嫌だよ。
「だけど僕はみなさんの好き嫌いを覚えましたからね」
すぐに名前は覚えられないけど、顔と嫌いな野菜ならすぐに覚えられる。
友達も食べ物の好き嫌いと顔を照らし合わせて覚えたからね。
これから毎日青翼騎士団に通うことになるから、みんなの好き嫌いを無くすチャンスだろう。
少し通うのが憂鬱になっていたけど、楽しくなりそうだ。
……だけど、あの二人のことを思い出すと、笑ってばかりもいられない。
「そういえば、コンラッド団長に聞きたいことがあったんですけど……」
「何かあったのか?」
「孤児院について教えてもらってもいいですか?」
「孤児院か?」
コンラッド団長は少し考えていたけど、途中から呆れたような顔をしていた。
「それならエルドラン団長の方が詳しくないか?」
「エルドラン団長ですか?」
「ああ、黒翼騎士団は元々孤児院にいた孤児の集まりだぞ?」
「そうなんですか? 知らなかったです……」
その言葉に僕は驚いた。
今まで黒翼騎士団について聞くことはなかった。
知っているのはエリオットさんとゼノさんが貴族出身ということだけ。
他の人たちは普通の平民出身だと思っていた。
まさか本当に黒翼騎士団が孤児院と関わっているとはね。
「もちろん孤児院の運営は国がやっているんですよね?」
「あぁ、国が補助金を出しているけど、エルドラン団長たちの活躍で今はちゃんとした生活できる環境になっていると思う」
ちゃんとした生活ができるようになっているのに、なぜカイやルカがあんなに痩せ細っていたのだろう。
明らかに孤児院を抜け出して痩せたというよりは、前から食事を与えられていないのは目に見えてわかった。
「管理も貴族がしているから、よほどのことがない限り大丈夫だと思うぞ」
「それは本当ですか……?」
コンラッド団長を疑っているわけではない。
ただ、何事にも仕組みというものは、いつだって穴がある。
貴族でもお金に目が眩む人は少なくはないと思う。
政治家の裏金問題とかをニュースで見たことがあるからね。
「ああ、貴族は誇り高いからな! それにもし国庫を故意に盗み出せば、爵位を失うか最悪は死罪になるからな」
バリーさんは鼻高々に威張っていた。
やはり貴族なのが一種の自信にもなっているのだろう。
それに孤児院の問題が本当だったら、僕の一人ではどうにもできない気がする。
「誇り高い貴族ならピーマンは残したらダメですよ?」
「むっ……ほら、ちゃんと食ったぞ!」
スープの器にはピーマンは残っておらず、全て完食していた。
「バリーさん、えらいですね。それなら明日からピーマン祭りにしましょうか!」
「お前は悪魔か!」
どうやら僕はバリーさんに悪魔認定されたようだ。
僕が悪魔だったら、孤児院の運営者は何になるのだろうか。
ふと僕はそう思った。
「ははは、やっぱりソウタくんは面白いね。うちの息子にならないか?」
「遠慮しておきます」
「くっ……。でも、もし何かあれば私に言いなさい。調べてあげるよ」
いや、悪魔は僕の目の前にいるコンラッド団長かもしれないね。
頼んだ時は僕がコンラッド団長の息子になる時かもしれない。
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