60.兄ちゃん、決心する
太陽の日差しが顔を照らし、僕は目を覚ました。
手で顔に触れると目からは涙が出ていたのか、顔が汚れている。
「懐かしい夢を見たな……」
両親や弟妹たちと公園で遊んでいた夢を見ていた。
なぜかみんなで僕を置いて帰って行っちゃった。
久しぶりに夢の中で会えたけど寂しくなったのだろう。
「ゼノさん……あっ、部屋に戻ったのかな?」
ベッドの上には僕しか寝ていない。
さすがに小さなベッドに大人と子どもが二人寝るには狭いだろう。
夢の中の笑い声が嘘みたいにこっちの世界は静かだ。
「まだみんな寝ているのかな?」
僕はベッドから起きて、朝食とお弁当の準備に向かうことにした。
「うわっ!?」
扉を開けた瞬間、エルドラン団長とジンさんが詰め寄ってきた。
「ソウタ、いっぱい寝たか?」
「元気っすか?」
その後もゾロゾロとみんなが集まってくる。
きっと僕が夕食も食べずに寝たから、心配していたのだろう。
「もう元気になりましたよ」
僕がニコリと微笑むと、安心したような顔をしていた。
「今すぐご飯を――」
「今日は作らなくていいぞ!」
エルドラン団長の言葉に僕は驚いた。
普段なら作って欲しい料理を一番に言ってくるのに、その素ぶりすらない。
「僕は必要ありませんか?」
「いやいや、決してそんなことはないぞ! ただ、今までソウタに頼りっきりだったからな」
そういえば、いつもは僕が一番に起きているのに、今日に限ってはみんなの方が早起きだ。
それに騎士の中にも見当たらない人もいる。
「ソウタ、朝食の準備ができましたよ」
エリオットさんが調理場から何かを持って出てきた。
「パンにサラダ……?」
「今日は黒翼騎士団の仕事を休みにしようと思ってね」
エリオットさんの言葉に、他の騎士たちが頷いていた。
僕が働きすぎだと感じて休みを作ろうとしていたのだろう。
「ほら、ソウタ座るぞ」
エルドラン団長は僕を持ち上げると、そのまま椅子に座らされた。
目の前には美味しそうなパンやサラダ。
そして――。
「これは……?」
「ああ、唐揚げを食べたら元気になるからな!」
相変わらずエルドラン団長は揚げ物が好きなようだ。
ただ、僕が知っている唐揚げとは少し異なっていた。
鶏肉にパン粉が付いているからね。
「どこから見てもチキンカツなんだけど……」
パン粉はところどころ厚くて、形も揃っていない。
見た目はチキンカツでも、食べたら唐揚げってこともあるかもしれない。
「ほら、食べてみろ!」
みんなにジーッと見つめられながら、ゆっくりと口に運ぶ。
「うん……やっぱりチキンカツだ」
「なんだと!? 俺は唐揚げを作ったつもりだぞ!」
この間揚げ物の説明をしたが、天ぷらとフライの違いしか教えていない。
今後は素揚げとかもフライになって出てくるのかもしれない。
「でもすごく美味しいです」
僕がいなくてもご飯が作れるようになっただけでも嬉しくなる。
弟妹たちも僕が風邪を引いた時にたまご粥を作ってくれたっけ。
あの時は両親も夜に仕事に行っていて、心細かったけど弟妹の成長を一番感じた。
今目の前にいる騎士たちは弟妹ではないけど、僕のために作ってくれたんだ。
そう思うと、心がポカポカしてくる。
「おい、ソウタ大丈夫か?」
「やっぱり不味かったんじゃないんっすか?」
「無理したらダメですよ」
心配そうに顔を覗いてくるけど、何かあるのだろうか。
「どうしました?」
戸惑っていると、エリオットさんがハンカチを手渡してきた。
「涙が出てますよ」
「えっ……?」
僕は目元に手を触れると、ポタポタと涙が溢れ出ていた。
「みんなが優しいからつい出ちゃった」
急いで涙を拭いて、唐揚げを口に入れる。
しっかりと味がついた食べたことのないチキンカツだけど、僕にとったらこの世界で食べた中で一番美味しく感じた。
「早く食べないと僕が食べますからね」
エルドラン団長のように、口にたくさん詰めると騎士たちは本当に食べられると思ったのか急いで椅子に座っていた。
「パンもサラダも美味しいです……」
どうして泣いているのか、最初は自分でも分からなかった。
ただ、騎士たちを疑いたくないという気持ちだけが、はっきりと残っている。
この選択が正しいかどうかは分からない。
それでも、今の僕には黒翼騎士団のみんなは大切だった。
「へへへ、僕は幸せものですね」
「当たり前だ! 俺たちは家族だからな!」
エルドラン団長の言葉に僕はこくりと頷く。
その後も僕の涙はなかなか止まらなかった。
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