102.兄ちゃん、初めての一人で城に行く
食事を終えた僕はコンラッド団長の自宅から一人で城に歩いていく。
普段はエリオットさんがいるのに、一人だとやはりどこか寂しい。
気づいたらみんな朝ごはんを食べたのかなとか、ちゃんと起きれたのかなって心配になってくる。
「はぁー、やっぱり貴族街は僕には合わないね」
静かな貴族街はまるで図書館のようだ。
コツコツとタイルの上を歩く音や扉を開ける音、風が吹き抜ける音すら聞こえてくる。
「よーよー、そこの坊主。今日は一人なのか?」
背後から声をかけられたが、僕は気にせず歩いていく。
変な人に声をかけられたら、無視するのがいいもんね。
「おい、無視するなよ!」
そう言われると、僕は後ろを振り返る。
僕と目が合うと、嬉しそうに笑う人たちがいた。
「変な人とは関わったらいけないと聞いてるので……」
「おいおい、どこからどう見てもカッコいい青翼騎士団の副団長様だろ!」
「あっ……そうですね」
僕は何もなかったかのように歩き出す。
声をかけてきたのはバリーさんだ。
それにその隣にはエアリオスさんとアクエリオスさんもいた。
この三人が集まったら、貴族たちに有名な厄介なイタズラ三人衆だったんだよね。
だから、さっきからお店の人たちからの視線が痛いわけだ。
「「ソウタ、おはようございます」」
「おはようございます」
エアリオスさんとアクエリオスさんがニコニコしながら、僕の隣にやってきた。
「おい、俺には挨拶してくれないのかよ!」
「バリーさんもおはようございます」
なぜかバリーさんは照れていた。
挨拶しただけなのに、本当によくわからない人だ。
「おう! おはよう……って歩いていくなよ!」
僕は一人で城に行けるように練習するためにコンラッド団長の家に泊まったのに、バリーさんが付いてきたら意味がない。
何度か走ったりして引き離そうとしたが、ずっと後ろから付いてくる。
僕よりも足がずーっと長いのに、歩くスピードをわざと遅くして後ろを歩いているからね。
「城に行かなきゃいけないので、バリーさんには構っていられないです」
「それなら俺もちょうどいくから問題ないな」
「……へっ!?」
僕は立ち止まって、バリーさんを見るとニヤニヤとしていた。
「やっとこっちを見て――」
「また何かやらかしたんですか?」
「なんだと!?」
「「くくく……」」
バリーさんが城に呼ばれるってことは、何かやらかしたに違いないだろう。
そんなバリーさんを見て、エアリオスさんとアクエリオスさんは笑っていた。
「二人はミレイユ団長に呼ばれたんですか?」
「「さすがソウタだね!」」
昨日のミレイユ団長を見れば、今日も呼ばれることはわかっている。
合体家事魔法から何かアイデアが得られた様子だったしね。
「俺は青翼騎士団の活動報告書を提出しにいかないといけないからな」
「へー、そういう仕事があるんですね」
バリーさんの話を聞いていたら遅くなってしまいそうだから、僕は歩き出す。
「なんたって青翼騎士団の副団長……っておい!」
そんな僕を再び追いかけるようにバリーさんは追いついてきた。
必死に走ってくるバリーさんを見ていると、これはこれで面白い気もする。
「そういえば、三人は同じところに住んでるんですか?」
「……はぁん?」
「「ちがうよ?」」
一緒に来たから同じ場所に住んでいるのかと思ったが、どうやら違ったようだ。
昨日青翼騎士団の庁舎でバリーさんを見かけたから、夜勤でもしていたのかな?
「一緒に来たので待ち合わせですか?」
「いや、俺はエリオッ――」
「「シィー!」」
バリーさんはエアリオスさんとアクエリオスさんに口を塞がれていた。
やっぱり三人は仲が良さそうだね。
そんな賑やかな時間を過ごしていたら、いつのまにか城が見えてきた。
朝からたくさんの人が城に向かって出勤している姿を見ると、僕も社会人になった気分だ。
僕は姿勢を正して、三人に声をかける。
「では、みなさん今日も頑張って働きましょう」
「「はーい」」
「あっ……ああ」
今日は城で働く人たちに昼食を提供している食堂に行くことになっている。
エリオットさんが事前にレシピを伝えるように時間を調整してもらっているからね。
そういえば、さっきバリーさんの口からエリオットさんのような名前が聞こえてきたけど、気のせいかな。
きっと会えなくて寂しいから聞き間違えたのだろう。
今頃ゼノさんは、ジンさんやエルドラン団長に引っ張られているだろうな。
僕は食堂に向かって歩き始めたところで足を止めた。
そして、すぐに三人のところへ走って戻る。
「食堂がある場所を教えてください!」
エリオットさんが時間を調整してくれても、肝心の食堂がある場所を聞いてなかった。
「くくく、ソウタが俺に頼みごとをしてくるなんてな」
「ええ、僕もバリーさんに聞くとは思わなかったです」
「……なんだと!?」
「どうしました?」
僕はわからないフリをして首を傾げる。
自分でもバリーさんに聞くことになるとは、思わなかったからね。
「ああ、まあそうだよな。食堂は城に入って真っ直ぐ進んで、飯の匂いがする――」
「うん、エアリオスさんかアクエリオスさんに聞きますね」
まさかそんな覚え方をしているとは誰も思わないだろう。
匂いで場所を探すなんて――。
「あー、俺もそんな感じでいつも歩いてるんだけどな……」
「同じく……」
どうやら僕は頼る人を間違えたようだ。
やっぱり似たもの同士が集まるのかな?
城を真っ直ぐ歩いて、歩いている人に声をかけた方が良いだろう。
「みなさん、頑張りましょうね!」
僕は再び声をかけて、城に向かって歩き出す。
「なんか別の意味で応援されたような気がするんだが……?」
「うーん、応援してくれたんだろう」
「あまり考えない方がいいですよ」
三人とも深く考えるのはやめたようだ。
各々の目的の場所に向かって歩き出した。
僕は言われた通りに真っ直ぐ歩き、食堂に向かっていく。
子ども一人で歩いているのに、特に気にされないのは貴族としてはよくあることなんだろう。
「あとは誰に声をかけるかだよね……」
ある程度真っ直ぐ進んだため、誰かに声をかけようかと思ったけど、みんな忙しそうでタイミングを逃してしまった。
気づいた時には、周囲に歩いている人がいない。
それに城の床はタイルだったのに、いつのまにか赤色の絨毯のようなものになっていた。
言われた通りに歩いてきたのに、迷子になってしまったのだろうか。
どうしようかと思い、周囲をキョロキョロしていると、貴族服を着ている少年を見つけた。
彼もキョロキョロしているから、きっと同じように迷子になった子なのかもしれない。
背丈も僕より少し大きいぐらいだから、ちょうど声もかけやすい。
「あの子に聞いてみようかな」
僕はそう呟いて、その少年に向かって歩き出した。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします(*´꒳`*)




