ベッドは家具であり、凶器である
しばらくはほのぼのパートに入ります。
是非ご付き合いをm(_ _)m
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ーーふー、ごちそうさまでした。食べてないのに腹いっぱいだ...。
『相棒、俺もこんなに幸せなこと感じたことないぜ。ほんとに相棒の出会いに感謝だな。』
唐突にキチの声がしたが今はこの余韻に浸っていたい。だからスルーすることにした。
「ごちそうさまでした。プレルよ、また腕を上げたの。もしやネクトのためかの?」
「はい、お粗末さまでした。ええ、もしかしたらそうかもしれませんね。何しろ初めてのお友達ですし、張り切るのはしょうがないですよ。」
「そうかの、ならば、ネクトよ...プレルを頼んだぞ?」
え、頼むって何?てかそんなに顔怖くしてこっち睨まないで。普通にチビっちゃいそうだから。
ーー頼むって、どういうことだ?
「なに、これからもプレルの友達でいて欲しいだけだ。儂だとどう頑張っても主的な存在でしかならんからの。だから、頼んだぞ?」
友達...か。別にそれならな、こちらから申し出たい気分だよ。
ーーまぁ、その位だったら別にお安い御用だよ。改めてよろしくな、プレル。
「ええ宜しくされちゃいますよ、ネクトさん。」
前略、母さん。俺に人外の友達ができました。
「それでは名残惜しいですが...【感覚共有】解除。」
その言葉と共に俺の中から何かが消える感覚と共に、それまで感じていた味と匂いもきれいさっぱり消えてしまった。
ううぅー
その感覚に俺はテーブルにうつ伏せになった。これは後味がきつい、そう思った。
「プレルよ、ずっと繋ぎっぱなしとはいかんのかの?ほれ、ネクトも残念がっておるぞ。」
「私もそうしたいのはやまやまなのですが、何分このスキルは魔力を多く使いますので...既に私の魔液は空に近いのですよ。」
「それは、かなり使うの。だそうだネクト、そんなに残念がるでないぞ。」
ーー・・・分かった。それなら仕方ないな。
さすがに無理までさせてやるほどじゃないし、というかさせたくない。
「次はもっと繋げられるように改良しておきますね。それとフェイル様、先程も聞きましたが大丈夫なのですか?」
「心配するな。何事も順調だ。あと...2日ほどで行けるかの。それまでゆっくり休んでいるのだぞ?あちらに着いたらプレル、お前の出番だからの。」
「えぇ、それは重々承知しています。それでは行ってらっしゃいませ、フェイル様。」
「それでは行ってくるの。ネクトよ、そなたもゆっくりしていくのだぞ?力不足を解消するため、とか言って夜に外に出ないようにの?一瞬で殺されるからの。」
ーーそれは分かってる。それに、プレルに心配もかけたくないしな。フェイルも気をつけてな。
「ならばいいのだ。ではの。」
バタンーー
そう言うとフェイルは玄関から出ていった。その最後、曲がり角でサムズアップさせるのが余計だったが。
「それではどうします?ネクトさん。」
ーーそうだな...
先程メニューを確認したところ、現実では11:30ぐらいで、そろそろ昼飯の時間だし、トイレも行かなきゃ行けない。
ーーちょっと寝させてもらうよ。なんか今日は疲れた...。
「そうですか...その身体で疲れるとは旅人も大変ですね。本来、屍系統は疲れないのが売りなのですが。」
ーーいや別に身体の方はいいけど、心がね。驚きが多すぎて疲れたんだわ。
胃からの脱出、唐突な別世界、草の塔...などを体験して疲れるなと言うのは、科学によって証明された現実の中で生きる俺には無理な話である。
「それは仕方ありませんね。それでは寝る場所を用意しましょうか。」
ーー別にいいよ、そこら辺の床でも。
俺はここではあくまで居候の身、贅沢なことは言ってはいけない。
「そんか遠慮しなくてもいいですよ。幸いネクトさんは小さいのであまり場所もとりませんしね。それでは、私の研究室にでも案内しましょうか。」
ん...?研究室って言った?研究、まさか俺が寝ている間になにかする気じゃ...!
「別になにかネクトさんに対して研究する訳ではなく、ただそこの方が安全だからですよ。その研究室は地下にあるので防音性、防護性に優れていますからね。」
何か言う前に言われてしまった。どうやらさっき考えてたことは杞憂に終わったようだ。
だってしょうがないじゃんか。さっきからチラホラ危ない言葉聞いてるんだから...。まぁそれを黙認する俺も大概だがな。はっはっはっ...はぁ。まあいいや。
ーーそっか、なら良かった。それじゃ、お言葉に甘えてお願いします。
そして俺は誠心誠意を込めて深々とお辞儀をした。やはり恩には感謝を込めなければ。
「ふふ。それではこちらですよ、遅れないようについて来てくださいね。」
そう言ってプレルはふよふよと椅子から浮き上がってその研究室とやらに向かうようだ。そして俺は後ろからついて行った。
食事したところから出て、そのまま廊下を真っ直ぐ進み、その突き当りでプレルは止まった。そこには何も無くただ木目の映るただの壁がそびえ立っているだけだ。
「『開けよ開け、管理者の命令だ。どうか我らに研究の道を示したまえ。』」
バキッ
そうプレルが唱えると目の前の壁の木の板と木の板の境目から横に割れ、ひし形に入口のようなものが現れた。その開いた先には梯子があり、どうやら地下に降りるようだ。
これ後で直るんだろうか、見事に割れているが...。
「それでは降りますね。落ちても私が受け止めますので安心して降りてきてくださいね?」
そう言ってプレルは先に降りていってしまった。俺も後に続こうとしたが...
この梯子、感覚が大きすぎる。
その梯子は人間の大人ぐらいの感覚に合わせてあるのか手をかける所の間隔が俺にとってとても広かった。その間隔は腕を限界まで伸ばしてギリギリ届くくらいだ。
いや、大人じゃなくてフェイルの感覚に合わせてかな?
そう言っているうちにプレルは降り終えたのか下で触手をこちらに向けて降っている。まるで俺に早く早くと催促しているようだ。まぁ、実際そうだろうが...えーいママよ!
その勢いとともに俺は梯子に手をかけ降り始めた。その進みは遅く、慎重なのが見て取れる。
ここで落ちたらまた世話になってしまう。こんな些細なことで世話になるのは嫌だ!
これはそんなエゴの譲れない戦いなのだ。それはあの草の戦いよりも激しく、誠実で...はい、嘘です。申し訳ございませんでした。
そんな馬鹿なことを考えながらも俺は降り続け、無事に落ちることなく下まで来れた。
「これは改良が必要ですね...。次はもう少し感覚を狭めておきますから安心してください。」
ーー・・・ありがとう。
だがその努力虚しく、結局世話を受けることになってしまった。くっ。
「少し散らかっていますのでしばらくお待ちください。そこに座る場所があるので座って待っていてください。」
そう言ってプレルが指...触手で指し場所にはソファーが鎮座していた。そこは物が散らかっていなく寝るのにもちょうど良さそうだ。そして俺はそのソファーに座りプレルの様子を眺めることにした。ソファーから辺りを見回してみると床には紙が沢山散らばっており、数あるテーブルの上はフラスコやら何かわからない器具などで埋め尽くされている。そして壁は何か爆発したのか煤がついており石壁が黒く変色しているところが多々ある。これはまさに研究室って感じだ。まぁ秘密のって加えた方が正しいかもしれんが。
そう考えている間にもプレルは床に散らばる紙やテーブルの上にある器具を瞬く間に片付け終え、数分後にはすっかり綺麗になった。相変わらずの手さばきだ。
「終わりました。それとこちらにベッドを用意しましたのでどうぞお使いください。」
そう言って用意してくれたベッドは見るからにふかふかしており、寝たら気持ちよさそうだ。試しに【鑑定】...
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【ベッドオブゴッド】
その感触は触っただけで眠りに誘い、一瞬でこのベッドの虜としてしまう兵器。このベッドで眠りに落ちた者は保護され、このベッドこ奴隷となってしまうだろう。
《状態異常:極上の眠り強制付与、眠り時結界展開》
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ベッド...だよな?説明文に兵器ってあからさまに書かれているんだが。
そのベッドは気持ちよさそうだって比じゃなく、兵器だったようだ。
まぁなんか効果はすごいしこれでいっか。別に寝るだけだし大丈夫...だろう。多分。じゃあ、早速...
指がそのベッドに触れた瞬間俺の意識は朦朧としベッドに倒れ込んでしまった。そして身体全部がそのベッドに埋もれた瞬間まるで何かに包まれるような感覚がした。それはとても心地よく、一瞬にして俺の意識を刈り取った。
「ふふ、早速寝てしまいましたか。それではごゆっくりおやすみなさい。」
その言葉を最後に、俺の意識は完全に落ちていった。
この頃は寒くなりベッドから出られない日々が続きます...遅刻しちゃいそう。皆さんはどうですか?
さて、前書きでも書きましたがしばらくはのんびりと物語が進む予定です(作者感覚)




