記憶の中の勇者
さぁ今回はほとんどストーリーが進みません。ですが一応ストーリーには繋がるのでぜひ見ていってください!
「では昼食を作るので私の中でしばらく待っていてくださいね?直ぐに作りますので。暴れてはめっ!ですよ?」
だが俺には暴れることはできない...ただプレルの中でちゃぷちゃぷと揺れに身をまかせることしかできなかった。でも待つだけってのもなー、暇だ。
「それでも暇でしょうから私のよく読んでいる本を読ませてあげますね?少し待っててください...」
『え、本ってどうやって読むんだ?』
今の俺はプレルの中にいて、手もないから本のページをめくれない。てかこの中で本を読めるとは思えない、のだが...
シュンーー
そう考えていると目の前にウィンドウが映し出された。えっと、『美味しい物図鑑』?なんだこりゃ。
「これで読むことができます。私のスキル【模写】であらかたしばらくここの家の蔵書は模写したので離れたところでも読めるのです。ですからそれを読んでしばらく待っていてくださいね?あと、ページめくって欲しい時はめくってーって念じてください。」
そう言うプレルの声は誇らしげでなんとも普段からのギャップからか可愛かった。
『そのスキル便利だな...。取り敢えずこれで暇つぶしになりそうだよ。ありがとう。それで念じるだけでいいってプレル心読めたのか?』
別に心はプレルになら読まれてもいいのだが、途中変なこと考えないか不安だ。
だがそんな心配はあまりなかったようで...
「いえ、先程からどうしてかネクトさんの気持ちが直につたわってきますので、多分それで大丈夫だろう思いました。この感覚もいいものですね♪ではしばらくその本を読んでスキルの使い方など学びながら暇をつぶしてください。」
スキル...の使い方?あれかな?俺の旨味をもっと凝縮させる方法を見つけろってことかな?この『美味しい物図鑑』で。
・・・多分違うよなー、しょうがない
『なぁプレル、これ『美味しい物...』』
シュンーーシュン
そう言った瞬間、そのウィンドウは直ぐに消え、新たに『スキル活用法』という題名の本が映るウィンドウが現れた。
「ネクトさん...」
『は、はい?』
その俺を呼びかける言葉は威圧感を持っており、先程の本を追求することは不可能に近かった。その前に別に深く知りたいわけじゃないんだけどさ。
「ではその『スキル活用法』の本を読んでいてください、ね?」
『は、はい!』
その言葉と共にプレルは包丁を持ち、白い霧が立ち上る四角い箱から魚を取り出し捌き始めた。その手つき...触手つきか?まぁ手つきは綺麗なもので瞬時のうちに魚が三枚おろしにされていく。
すげぇなぁ...ま、俺はこっちに集中するか。どれどれ?
その光景を横目に見ながら俺はページよめくれろと念じた。そうするとウィンドウの中の本の表紙が開かれ中の文字が見え...みえ?って読めねえ...
その本には俺が見たことの無い文字が並んでおり、ただ波線が引いているようにしか見えなかった。日本語でもないし英語でもない。こんなの読めるのか?
『なぁ、プレル...すまんが文字が読めん。』
「え、ほんとですか?それは...でもそれなら本を読む前に言わなかったのですか?それなら読み聞かせて上げますのに。」
『いや、この文字は俺が生きてきた中で見たことがなくてな...すまん。』
「そうですか...なら仕方がありません。しばらくはこの本を読んでいてください。私が昔文字を覚える時に使ってた本です。」
そう言ってウィンドウの中で『スキル活用法』の本が消え、新たに『記憶の中の勇者』という本が映し出された。表紙にはラフな人の絵が書かれ、それぞれ武器を持っているようだ。剣、杖、盾など、さらにはでっかい大砲みたいなやつを持ったやつまでいる。まぁ絵本なら読みやすいか...絵もあるし。ほんとになんで題名は読めるのに中身は読めねえんだろうなー。詐欺だろ。
そんな愚痴を思いつつも俺はその本の表紙をめくってもらった。そのページの文字はもちろん読めないが絵から大雑把なことは伝わってくる。
最初の絵は暗闇の中に蹲る少年、次はその少年の眠る様子が描かれている。それ以降は他の7人と出会う様子が描かれ、最後には少年と他の仲間達が角の生えた生き物を倒し、少年が光に向かって歩く様が描かれていた。
そして俺がその絵を眺めている間プレルはあらかた調理を終え、包丁など調理用具の後片付けを、熱心にその本を読むネクトの様子を見ながらしていた。
「ふぅ、昼食の用意もあとは片付けなので読み聞かせて上げましょうか。その方が文字は覚えやすいですからね。」
『ん?あぁ、頼む。』
どうやらプレルが読み上げてくれるようだ。さすがに見てすぐは推測できないので有難い。そして俺はプレルの声に耳を傾けた。
ーーーーーーーーー▽
昔昔、ある村に孤独な少年がいました。その少年は昔から怖がりで、いつもいつも些細なことで泣いてしまいます。ただ目の前が暗かったり、人と話すときでさえも泣き出してしまいます。そのせいか次第に少年は煙たがられ、人が離れて行ってしまいました。
そしてその少年はその夜も自分の部屋で蹲り泣き出してしまいました。同時に少年は思いました。
『なんで僕はこんなに泣き虫なのだろう。他の人と話したりして友達になりたいのに。』
と。次第に少年は目を閉じ、眠ってしまいました。
そして少年はある夢を見ました。それは自分がおとぎ話のような勇者となり魔王を倒すものです。
『なにこれ?!』
少年がそう叫ぶと目の前の大きい椅子にどかっと座る王様がこう言いました。
『おお、勇者様よ、よくぞ参られた。どうか悪の魔王を倒し我が国を救いに行ってもらえぬか。』
そう少年は頭を下げられてお願いされましたが、少年は怖がりです。そんな冒険に出るのは怖くてできませんでした。ですがここである一匹の猫が現れました。
『そんなに怖いのなら別に行かなくていいのよ?そうすればこの国はなくなってしまうし、他の人たちも亡くなってしまうけど。』
そう猫は少年に言い放ち、少年は何も言えなくなってしまいました。ですが少年は男の子、ここまで言われたらあとに引けません。
『・・・それなら僕は行くよ。そしてこの国の人たちを助けるんだ!』
これは少年にとって初めて自分から怖いところに向かった瞬間でした。その顔はどこか男らしく、今まで泣き虫だったのが嘘だったかのようでした。
そして少年は旅をする中で色んな人達に会い、新たな仲間を作り、己の心と身体を強くしていきました。
ある聖域では盾を上手くに扱う男、次に凄く綺麗な魔法使い、次には森で弓の名手を仲間に引き入れ、最後には7人の仲間を引き連れ、魔王城に到着しました。
ですがそこは屈強な魔物達が潜む場所、幾度の苦難を乗り越えた仲間たちも次第に数が減っていき、最後には少年と最初に仲間になった盾を持つ男だけが、魔王の元へ到着しました。
『魔王!もうこんなこと辞めるんだ!これ以上争っても互いに被害を出すだけで何も残らない、もう戦いをやめよう!』
どれだけ怖がりを克服したとしても、根は怖がりな少年は戦いを辞めることを望みました。
『ふっ、そんなことができないのは勇者、そなたが一番わかっているだろう?私達はお互いに被害を出しすぎた、ここまで来て...引く訳にも行かないのだよ!だから勇者よ、ここで朽ち果てろ!』
そう言い放った途端魔王の目の前にとてつもなく大きい氷の柱が現れ、それを勇者達に向かって放ちました。その氷の柱は大きすぎて勇者にとめられそうにありませんでした。勇者は覚悟しましたが、横から盾を持つ男が勇者を押し飛ばし、自分一人で氷を防ごうとしました。ですがその重さに耐えられず吹き飛ばされてしまいました。
『シグド!』
そう大きな声を出して少年は盾を持った男に駆け寄りましたが、既に男は息が絶え絶えで今にも倒れてしまいそうでした。
『シグド、シグド!待ってて、今助けるから!』
そう言って男を治そうとしたがここで男に止められてしまった。
「少年、それは魔王を倒すために取っておけ。思い出せ少年。お前の目的はなんだ?魔王を倒すことだろう?ならその目的にひた走れ、そんなになくな。大丈夫、俺はこう見えて頑丈なんだ。怖がる必要はねえよ。少年を一人にするわけにもいかんからな。ほらいけ!」
その言葉に少年は目に溢れ出る涙を袖で拭い、魔王を正面に立ち構えました。
『魔王、よくもシグドを!もうお前を許さないぞ魔王!覚悟!』
そう言って少年は魔王に走り寄り、その手に持つ剣で魔王を一太刀に倒しました。
『がはっ!ば、ばかな、この私が一撃だと?そなた何をした?!』
『何も無いよ、ただ僕の剣にはほかの仲間の魂が宿り僕を手助けしてくれる。だからかもね、勝てたのは。』
『・・・そうか、私の敗因はその絆を甘く見た事か...それは仕方ない...な。』
その言葉と同時に魔王の身体は砂となり、風で飛んでいってしまいました、その光景は新たな旅立ちを表しているようでした。
そして勇者の身体が突然閃光を放ち、白い空間に出たと思うと、途中で倒れてしまった仲間達がそこにいました。その仲間たちは皆笑顔で少年に向かって手を振っていました。それはお疲れと言っているようでもあり、さよならと言っているようでもありました。
『皆!無事だったの!?』
そう少年は皆に駆け寄ろうとしましたが何故か皆首を振り、ある場所を指しました。その方向には大きな階段があり、少年はそれを見た途端これは夢だと確信してしまいました。この階段を登ればこの夢も終わる、またあの世界に戻ってしまうのだと。
『嫌だ!僕は皆と一緒にいたい、いたいんだ!』
その言葉は少年が初めて出した明確な意見であり、少年の心が成長した証でもありました。
そして仲間たちはその言葉にまた首を振り、そして少年を抱きしめ始めました。時に強く、時に頭を撫でながら、皆別れを惜しむように抱きしめていきました。
そして皆が抱きしめ終わると少年の背中を押し、階段の方に連れていきました。そして少年がその階段に一歩足をかけると、カツーンと音がなり、その音はこの世界から立ち去るタイムリミットを表すのように感じました。
少年は別れたくない、別れたくないと思っているのに一人でに足が動き、だんだんと上へと上がっていきました。
そして少年が振り返ると仲間たちはまだそこにいて、皆同じようにこっちに親指を立てて、旅立ちを歓迎しているようでした。ですがその顔は涙でクシャクシャになっており、今にも駆け出したそうに見えました。
『皆...。うん、これまでありがとう!僕はここに来て、皆に会えてほんとに良かった!確かに、途中辛い時もあったけど、いつでも皆は僕を支えてくれた。そして最後には魔王も...。だから僕は自分の世界でもこの経験、皆との思い出を忘れずに生きていくよ。じゃ、行くね...!』
そう言うと少年は正面に向き直り、勢いよく駆け上がって行きました。その足取りは軽く、まるで飛んでいるかのようでした。もう少年には振り返る必要はありません。なぜならそれは送り出してくれた、支えてくれた仲間に失礼だからです。最後こそ胸を張って、誇りげに行くことが、仲間への恩返しとなるのです。
そして階段を登り終えた少年の目の前には白く煌めく、純白な扉がありました。ですが少年は立ち止まりません。走って走って、前に進み続けました。そして少年の身体が扉に触れたとたんその扉はガシャーンと音を立てて割れ、少年の意識はそこで暗闇に包まれました。
これからもこの少年には多くの困難が待ち受けるでしょう。ですが今の少年には仲間たちと過ごした思い出、成長した心があります。それを駆使し少年は逞しく生きるのでしょう。
そして少年は夢から覚め力強く目を開けた。
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こんな物語も書いてみたかった...。
次回は昼食回...お楽しみに!
あと、投稿が二時間遅れてしまいすいません!




