何事もなすには代償が必要なのだ
前回草刈りをすると言いましたね?残念、あれは嘘です。
(誠に申し訳ございません!)
今回は草刈り前の事前準備です!
「大変名残惜しいですがネクトさんの身体を元に戻しますね?」
『名残惜しいって...それで戻すと言ってもどうするんだ?もう俺に身体は動かせそうにないんだが...』
「心配しないでください。こうするんです...【圧縮】」
そうプレルが呟くと俺の身体はプレルの胃の中で球状となり、まるで飴玉のようになった。そのままプレルの胃液にプカプカと浮かんでいる。
「あ、うっかり胃の中で圧縮してしまいました...。まぁ問題はないですが。【摘出】」
その言葉で俺の球状の身体はプレルの身体からだんだんと外側に向かって動き出し、
スポンーー
出てきたところをプレルの触手でキャッチされた。
「ふう、これで無事取り出せましたね。あら、随分と可愛いお姿になりましたねネクトさん。」
ーー誰のせいだ、誰の。これでまた【溶骨操作】使えば元に戻るのか?
「ええ、多分元に戻りますよ。」
多分、か...。でもどうすれば元に戻るかなー。もういっそ死んでみるか?いや、でもここで死んでしまうのもな...
ここで死んだらまた魔王城に死に戻ることになる。魔王城からここまでは5日でつく距離。勢いに任せて【骨爆発】を使わなかったネクトは正しかったのだ。
『相棒、相棒がよく見るアニメの変身を解くシーンをイメージすればいいんじゃないか?なになに、解除!みたいな感じでよ。』
『なるほどな、取り敢えず試してみるわ。』
ここは無難に言った方がいいだろうかと思うがどうだろうか...長ったらしくしてもめんどくさいしな。まぁ物は試しだ!
ーー【溶骨操作】解除!
ボンッ!!
そう言うと自分の身体から煙が立ち上り、煙が晴れるとそこには元に戻ったネクトの身体があった。
『おお!無事に戻ったぞ!ありがとな、キチ!』
『いいってことよ!それじゃもし困ったらいつでも俺様に声を掛けてくれよ?俺様にはそれぐらいしか普段できないしな。それともし危険だと思った時は並列思考使うんだぞ?』
『あぁ、そんときは頼むよ。』
キチとの会話を終えてプレルに視界を移すといつも通りにぷかぷかと宙に浮いて俺の事を待っていてくれた。
「どうやら元に戻れたようですね。それでは草刈りへと移りましょうか。ネクトさん何か武器を持っていますか?」
ーーあぁ、確かイベントリに鎌が...ってない?
あ、そう言えばスラむに腕を飛ばされた時、鎌も一緒に飛ばされていたっけか...。あれ唯一の武器だったんだけどなぁ。残念だ。
『さぁここで俺様の出番だ。説明しよう!このユッカでは武器、防具など持ち物を落としたまま死んでしまうと、その持ち物はイベントリに入らずそのまま落ちた場所に残ってしまうのだ。だが安心してくれ。その持ち物には保護機能がかかり、誰にも奪われなく壊れもしないのだ。だがその効力はユッカ時間で2日までで、効力が切れた後は最初に触れたものに所持権が移ってしまう。なに?そんな落とした場所なんていちいち覚えていない?ふっふっふ、だがその心配はない。死んだ後落とした持ち物があるとその落ちている場所を指し示すコンパスが配布され、近づくと熱を持つように作られている。だから場所が分からない心配はないのだ。では今回の説明はここまで!アディオース!』
『・・・なんでそんなこと知ってるんだ?てかなんでやる必要があるんだ?』
『あぁ、ここに来る条件にレイス様から頼まれてな。意外と楽しいもんだぜ?』
『そうか...。まぁキチが楽しいならいいけど。』
ご丁寧な説明も入ったが、結局、武器はない。これじゃ草なんて刈ろうにも刈れないわ。
ーーなぁプレル、すまんが何か刈れるものを貸してくれないか?武器を途中で落としてしまってな...
「それは困りましたね...。流石にひとつぐらいは持ってるだろうと思って持ってきませんでしたし...」
ーーそうか...なら俺は手で少しずつ抜き取るとするよ。
そうは言ったもののこの膨大な量の草だと抜き取るにしても雀の涙ぐらいしか抜けない。だがやらないよりはマシだし頑張ろうか。
「・・・申し訳ありませんがここの草は根っこが地下深くまで張っていて刈ることでないと撤去はできないんですよ。それにこの草むら全てひとつの魔物ですから一本一本抜いてたらたちまちに復活してしまいます。」
え、魔物なの?
そう聞いて【鑑定】をしてみたんだが
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【シーグラス】
魔物であるシーグラウンドの背中に生える草。根が地下深くまで張っており、抜くことは不可能である。
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魔物の情報は見ることができずに草の詳細しか見えなかった。もしかして...
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【シーグラウンド】(個体名:)
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以前に土の中で【鑑定】した時を思い出して、その時と同じく魔力念話で【鑑定】してみたら上手くいった。てか頭痛くなかったけど、流石【鑑定Lv.8】と言ったところか?
そう鑑定を褒めているとプレルから提案が、
「ならこうするのはどうでしょう?私もよく使うのですが、自分の触手を鎌の形にして刈るのです。私はこの身体の柔らかさありきですがネクトさんなら【溶骨操作】で代用できるでしょう。私がお手本を見せるのでやってみて下さい。【硬化】」
そう言ってプレルは自分の触手を鎌に変化させて見せてくれた。その表面はラメのように光り、金属のような光沢を持っていた。
ーーなるほど...こうか?【溶骨操作】
この【溶骨操作】は溶かした骨を変形させてそのまま硬くすることができる。取り敢えずカマキリをイメージしてやってみたんだが...
「それは...まるで鈍器ですね。」
そうプレルに感想を言われた。
確かにその鎌をイメージした刃は丸まり、無駄に巨大で、明らかに目標を潰すための物のように見える。まぁリアルで刃物を見たことがあまりないからしょうがないとは思うがな。でも俺はしょうがないで終わらせるつもりは無い。
ーー上手くいかないもんだな。なあプレル、その鎌の形にした触手をじっくり見させてもらっていいか?参考にしたい。
「ええ、どうぞ。その代わりちゃんと変形できるようにさせてくださいね?」
ーーあぁ、必ず何とかさせてみせる。
見せてもらった手前、不完全だったら申し訳ないからな。
取り敢えず鎌を見るか...形はUの字より少し広がった形で全体から切ることが意識されたもののように見える。刃の部分はとても薄く、一度切っただけで刃こぼれするんじゃないかと思えるぐらいだ。
ーーなぁプレル、なんで刃の部分こんなに薄いんだ?一度切っただけで刃こぼれしそうなんだが。
「あぁ、それですか?確かに刃こぼれしやすいですが元は自分の身体。何度でも修復できるので問題ないのです。それにこちらの方がよく切れますからね。」
ーーふむ...それと同じことして俺の身体がもつか?
「それは...なんとも言えないですね。ネクトさんの身体は骨なので削られる痛みもあるでしょうし、骨の量も足りなくなると思います。その度骨を吸収させても時間がかかりますからね。最初は腕を伸ばす事じゃなく腕を刃にされてはいかがでしょう?それなら力も入れやすいですし、鎌で刈る!と言うよりはイメージがつくのでは?」
腕で、刈るねぇ...。まぁ取り敢えず試すか。トライアンドエラーは望むところだ。
そう俺は意気込んで何度も何度も繰り返した。
時には腕が薄い刃になって取れそうになったり、時には全身が刃になってプレルを切ってしまいそうになったり(ちなみに真剣白刃取りでとめられた)と多くのハプニングが発生した。
そしてついに!
二の腕から先が弧を描き、内側は刃となっており外側は先程失敗した時のような鈍器の形をしている。いわゆる完成だ。
「やっと完成しましたね。最後は力押しでしたが。」
ーーあぁ、完成した
完成した。確かに、完成した。だけどすごい荒削りな方法で。
最初はできそうだったんだよ、うん。だけど途中でやはり刃物をあまり見た事が無いせいで作った刃じゃ草を刈れなかったんだ。そりゃ【魔凱】使えば刈れるだろうけど、この量だと魔液がいくらあっても足りない。だから最低限刃だけで切れる必要があったのだ。だからある程度まで刃にしたものをプレルにやすり状にした触手で削ってもらい、身体で覚えることでなんとか作り出すことができた。それも両手...
その代償として痛い、痛かった。痛覚がまだ十分に戻っていないはずなのにめっちゃ痛かった。これ普通の人がやったら気絶するんじゃないだろうか?
「私が傷つけておいてなんですが、他に異常はありませんか?できればもう削りたくないんですが...」
ーーあぁ問題はない。ほれこの通り。
そう言って俺は目の前の草を刈り取った。振った感じは何も違和感なく、草もすんなりと刈り取れた。流石プレル、完璧だぜ...!まぁもう体験したくないがな。
そう俺は心の中で運命を誓った。だが運命というのは残酷なものなのだと、まだネクトは知らなかった。
「なら良かったです。では草刈りを始めるとしましょうか。一応説明すると刈り取る場所ははここ一帯です。縦10km、横100kmの広さで、中には魔物が住み着いていますので注意してくださいね。では私が5分の3、ネクトさんが5分の2をお願いします。」
それを言い残してプレルは高く浮き上がり、そのまま遠くまで飛んでいってしまった。どうやら端からやるつもりらしい。
さて、俺もやりましょうか...ってあれ?何か忘れてるような...まぁやってれば思い出すか。
ガサガサッ、ジィー
ネクトは気づかなかった、草と草の間からこちらを覗く多くの目線を、そして忘れていた【魔力感知Ⅱ】の存在を。もしこれに気づいていたら何かが変わったのだろう。だがもう遅い...。
既にハプニングの火蓋は切られたのだ。
次回は必ず草刈りに突入します。ですが草刈りだけで終わらせないのが私の物語。
ゆったりになるのはまだまだ先ですよ!




