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第39.5話 天龍の人物解体録

 左目に光が差す。


 私が封じられた何処とも知れぬ場所は一筋の光も差しはしないが、ユートと魂の繋がった左目は奴の見たものを私にも見せてくれる。

 どうやら朝になったようだ。


『起きたか、ユート』

「ああ。おはよう、天龍」


 私は睡眠を必要としない……のだったかな? はて、忘れてしまったが、ともかくユートが目覚めた時には意識があるので、毎朝こうして声をかける。

 ユートの奴は案外律儀で、必ずおはようと挨拶を返してくれていた。


『今日は探索は休みにするんだったな。買い物か?』

「そうだな、治癒の霊薬を買い足さないといけないしな」


 エルフの娘を助けてから、もう数日が経っている。

 治癒の霊薬はその翌日には買い込んでいたが、流石に相手がゴブリンどもといえど三層で10体以上を相手にすると無傷とはいかず、一日に1本か2本は使っていた。

 もっとも、天龍眼のおかげで生命力の残りが見えているので、かなり効率的な使い方が出来ていることであろう。


 ユートが身支度を済ませて階下に降りると、朝食を取る宿泊客や探索に持ち込む弁当を買いに来た客で賑わっていた。

 この宿は、この時間が夕飯時に次いで混むのだ。


「おはよう、アルマさん!」

「……………………」


 まず声をかけてきたのは、朝から忙しなく動き回るこの宿の娘だ。

 娘の父親らしき店主は、黙々と料理をしながらこちらをちらりと見る。

 ユートは二人に、おはようと挨拶を返した。


 この父娘は、二人してなかなか類を見ないステータスをしている。

 どれ、ひとつチェックしてみてやろう。


――――――――――――――――

【名前】ミーシャ・レイン   【Lv】14

【種族】人間   【性別】女性   【年齢】17歳

【属性】天

【能力値】

 体力 24/999    精神 25/999

 筋力 19/999    魔力 18/999

 技量 22/999    感覚 26/999

 敏捷 20/999    知性 18/999


【クラス(取得条件)】

 勇者Lv9 - 世界に他の勇者がいないこと


【アビリティ】

 全能力値上昇・極大(勇者) 全ての能力が極大に上昇する

 成長速度補正・極大(勇者) 自身の経験効率が極大に上昇する

 限界突破(勇者) 自分とクラスのレベル、能力値の限界値が999になる

 転職不可(勇者) 勇者以外のクラスを取得できない


【スキル】

 長剣Lv2  格闘Lv2  魔力感知Lv6  魔力操作Lv3  魔法・強化Lv2

 魔法・天Lv1  料理Lv3  算術Lv3

――――――――――――――――


 この娘は、勇者だ。

 見ての通り勇者というのは世界中で一世代に一人しかいないのだが、ふらっと入った宿の娘がその一人だというのはなんとも出来すぎた偶然だ。


 とはいえ、ユートがここに来た当初は本当にただの宿の娘と大差のないものだったが、それに比べれば色々とスキルが生えてきている。

 流石は勇者といったところだが、あまり勇者の成長に付き合ってもよくはない。

 その理由は忘れたが、良くないという感覚だけを覚えている。

 ……忘れたが故にユートには強く言えないでいるが、最早手遅れなほどには縁を結んでしまったかもしれない。


――――――――――――――――

【名前】グランノート・レイン   【Lv】58

【種族】人間   【性別】男性   【年齢】48歳

【属性】無

【能力値】

 体力 88(-35)/88    精神 48/51

 筋力 78(-35)/85    魔力 18/46

 技量 74(-35)/76    感覚 69(-35)/70

 敏捷 38(-35)/71    知性 32/49


【クラス】

 戦士Lv50 - 武器スキルLv1以上

 重戦士Lv50 - 戦士Lv30以上、特定の武器スキルLv4以上、重装スキルLv4以上

 剛重闘士Lv36 - 重戦士Lv30以上、武器スキル三種が各Lv7以上、重装スキルLv7以上

 調理師Lv38 - 料理スキルLv3以上

 剣士Lv24 - 戦士Lv30以上、剣系スキルLv4以上

 槍士Lv21 - 戦士Lv30以上、槍系スキルLv4以上

 斥候Lv18 - 罠解除スキルLv1以上

 商人Lv12 - 算術スキルLv1以上

 竜殺者Lv7 - ドラゴン種を1体以上討伐

 農家Lv5 - 農作業を一定期間以上経験する


【アビリティ】

 筋力上昇・小(戦士) 筋力が僅かに上昇する

 筋力上昇・小(農家) 筋力が僅かに上昇する

 筋力上昇・中(重戦士) 筋力が上昇する

 筋力上昇・中(剛重闘士)筋力が上昇する

 筋力上昇・中(剣士)筋力が上昇する

 筋力上昇・中(槍士)筋力が上昇する

 筋力上昇・中(竜殺者) 筋力が上昇する

 体力上昇・小(戦士) 体力が僅かに上昇する

 体力上昇・中(重戦士) 体力が上昇する

 体力上昇・大(剛重闘士) 体力がかなり上昇する

 技量上昇・小(調理師) 技量が僅かに上昇する

 技量上昇・小(斥候) 技量が僅かに上昇する

 技量上昇・中(剣士) 技量が上昇する

 敏捷上昇・小(斥候) 敏捷が僅かに上昇する

 敏捷上昇・中(槍士) 敏捷が上昇する

 感覚上昇・小(調理師) 感覚が僅かに上昇する

 知性上昇・小(商人) 知性が僅かに上昇する

 武技自在(剛重闘士) 武器の装備制限を全て無視する

 竜殺(竜殺者) ドラゴン系に対して与えるダメージを増加させる

 金銭感覚(商人) 物品に適切な価格をつけることができる

 天候感知(農家) 天候の変化を予測・感知する


【スキル】

 長剣Lv8  片手斧Lv7  両手斧Lv8  槍Lv8  長柄武器Lv8

 大盾Lv8  重装Lv10  二刀流Lv8  投擲Lv7  罠解除Lv3

 罠感知Lv3  料理Lv7  算術Lv5

――――――――――――――――


 対して、この店主のほうはまるで代わり映えがない。

 代わり映えすることなく、最強だ。

 怪我による後遺症の影響を含めてなお、現時点でユートたち三人をまとめて蹴散らして余りあるほどの能力がある。

 見る限り特別な才能があるわけでもないだろうに、ほぼ限界まで鍛えきったその強さには一種の尊敬を禁じ得ない。


 宿の壁に無造作に飾られた巨大な牙も、大半の客は作り物だと思っているだろうが、私とユートだけは本物だと知っている。

 すなわち、店主はその牙の持ち主たる巨竜に遭遇しながらも生きて戻り、あまつさえ撃破して牙を持ち帰ったほどの勇士なのだ。


「おはよう、アヅマ」

「アズマ、おはよー」

「おはよう、二人とも」


 店の隅にある席はクロードの指定席だ。

 そこにエルフの娘、ユズも一緒に座っている。

 二人とも朝食のメニューはサンドイッチ。今朝の日替りメニューのようだが、クロードは本を読みながらゆっくり食べるのでまだ半分以上残っている。

 対してユズは食べるのは早い。むしろ飲み物で流し込むような食べ方をするので、もう食べ終わっているようだった。


 ユートも同じ席について朝食を注文し、サンドイッチをつまみはじめる。

 新鮮なレタスがどうだとか具のバリエーションのみならず使用するパンの種類にまで違いがだの、食事中のユートはうるさい。

 いや、外から見れば黙って食べてるようにしか見えないのだが、私には心の声が駄々漏れだった。


 この時のユートに下手に口を挟むと面倒なので、二人のステータスでも見ることにする。


――――――――――――――――

【名前】クロード・アレスティン   【Lv】19

【種族】人間   【性別】男性   【年齢】24歳

【属性】無

【能力値】

 体力 16/45    精神 29/84

 筋力 18/43    魔力 23/71

 技量 22/61    感覚 28/67

 敏捷 16/32    知性 28/92


【クラス(取得条件)】

 学士Lv24 - 鑑定系スキルLv1以上

 商人Lv12 - 算術スキルLv1以上

 戦士Lv15 - 武器系スキルLv1以上

 斥候Lv14 - 罠解除スキルLv1以上

 魔法使いLv12 - 魔法系スキルLv1以上


【アビリティ】

 パーティ成長補正・小(学士) パーティ全体の経験効率が僅かに上昇する

 ドロップ率補正・小(学士) パーティ全体の魔力収束率が僅かに上昇する

 筋力上昇・小(戦士) 筋力が僅かに上昇する

 体力上昇・小(戦士) 体力が僅かに上昇する

 技量上昇・小(斥候) 技量が僅かに上昇する

 敏捷上昇・小(斥候) 敏捷が僅かに上昇する

 精神上昇・小(魔法使い) 精神が僅かに上昇する

 魔力上昇・小(魔法使い) 魔力が僅かに上昇する

 知性上昇・小(商人) 知性が僅かに上昇する

 金銭感覚(商人) 物品に適切な価格をつけることができる


【スキル】

 鑑定Lv4  算術Lv4  交渉Lv2  長剣Lv2  短剣Lv1

 罠解除Lv1  魔法感知Lv2  魔法操作Lv2  魔法・火Lv2  魔法・天Lv1

――――――――――――――――


 クロードとは、ユートがこの世界に来てからそれなりに長い付き合いだ。

 当初はこの隅の席で燻っていた此奴だが、全般的に成長し、魔法のスキルも伸ばしてステータスはずいぶん様変わりした。

 器用貧乏の見本のようなやつではあるが、このままいけば器用も極まって器用万能に通ずるであろう。


――――――――――――――――

【名前】ユーザニナ・ニンフィア・ルブルムフロウ  【Lv】23

【種族】エルフ   【性別】女性   【年齢】28歳

【属性】無

【能力値】

 体力 25/61    精神 24(-10)/58

 筋力 18/49    魔力 11/72

 技量 33/75    感覚 32(-5)/78

 敏捷 35/88    知性 22/48


【クラス(取得条件)】

 斥候Lv28 - 罠解除スキルLv1以上

 戦士Lv20 - 武器系スキルLv1以上


【アビリティ】

 魔力感知(種族) 魔力の存在を感知する

 筋力上昇・小(戦士) 筋力が僅かに上昇する

 体力上昇・小(戦士) 体力が僅かに上昇する

 技量上昇・小(斥候) 技量が僅かに上昇する

 敏捷上昇・小(斥候) 敏捷が僅かに上昇する


【スキル】

 短剣Lv4  二刀流Lv3  投擲Lv3  罠解除Lv4  罠感知Lv4

 隠密Lv6  演技Lv1

――――――――――――――――


 対して、エルフの娘はまだ浅い付き合いだ。

 先日見たときからステータスの変化も少ない。

 だが、精神へのダメージがやや緩和されている。

 感覚の低下は精神へのダメージから来ている異常なので、このままダメージが解消されればそちらも治るだろう。


「二人とも、今日は休みだけど何か予定とかあるのか?」

「今日は一日、本を読んで過ごすつもりだよ」


 と、クロードは手元の本をめくる。

 此奴はいつの間にやら本を買い込んでいるようで、探索で得た収入の多くをそれに注ぎ込んでいるようだ。

 今読んでいるのは「賢人伝 ~伝説の大賢者~」というタイトルの本だが、果たして役に立つのやら。趣味に走っているようにも思える。


「ぼくは、ちょっと用事で出かけるよ。アズマは?」

「買い物の予定だ。霊薬を補充して、剣を研ぎに出してくる」


 ユートは少々、遊びが無さすぎる気もするがな。

 いや、ユートの趣味は食事か。ここの店主の料理に惚れ込んでいるので、毎日実に楽しそうである。


「ごちそうさまでした」


 両手を合わせる奇妙な風習を行って食事を終え、一度部屋に戻る。

 身支度を整えてから、ユートは宿を後にした。




 治癒を始めとする様々な霊薬は錬金術士が作るのだが、自らの店舗を持たないものや、工房を作業場としてのみ使う者が多く、特別な霊薬でない限りは街の北側にある自由市場で買い求めるのが一般的だ。


 露店に立ち並ぶ若い錬金術士の作品は当たり外れが大きいのだが、そこは私の天龍眼にかかれば良質で安い霊薬を選ぶなど造作もない。


 しかし、今日は霊薬の質が悪かったり、値段が高かったりでなかなか良いものが見つからず、少し時間をかけて探し回っていた。


「あら、アルマさん」

「あれ、ルティア?」


 その小娘に会ったのは、霊薬を売っている露店をいくつか回り終えた時だった。

 荷物を抱えた取り巻き二人を引き連れている。


「アヅマっち、ちーっす」

「こんちわっス!」

「アルマさんもお買い物ですの?」


 にこやかに微笑んで、小娘は話しかけてくる。

 胸を張って背筋がしゃんと伸びた姿勢。それでいて低めの身長なので上目遣いに真っ直ぐ瞳を覗きこんでくる。ほんのり上気した頬。手を伸ばせば触れる距離。はずむような声のイントネーション。

 見るものに好印象を与える仕草というものを、ごく自然に抑えている。

 ユートよ、開いた胸元に目線が行くのはわからんでもないが、そういうのは案外バレているのでやめておいた方がいいぞ。


――――――――――――――――

【名前】ルティア・フラウミーネ  【Lv】4

【種族】人間   【性別】女性   【年齢】17歳

【属性】無

【能力値】

 体力 11/47    精神 15/56

 筋力 8/55    魔力 10/41

 技量 11/62    感覚 14/59

 敏捷 13/39    知性 16/66


【クラス(取得条件)】

 アイドルLv15 - 自分の信仰者を5人以上獲得する

 商人Lv7 - 算術スキルLv1以上


【アビリティ】

 パーティ全能力上昇・小(アイドル) パーティ全体の全ての能力が僅かに上昇する

 パーティ戦意向上(アイドル) パーティ全体の戦意を向上させ、十全な能力を発揮させる

 群衆統率(アイドル) 自分より大幅にレベルの低い集団を率いることができる

 知性上昇・小(商人) 知性が僅かに上昇する

 金銭感覚(商人) 物品に適切な価格をつけることができる


【スキル】

 カリスマLv1  魔力感知Lv1  算術Lv3

――――――――――――――――


 この小娘のパーティは、今のユート達よりも実力がある。

 後ろの取り巻き二名が抱えた服やアクセサリや帽子といった実用性よりファッション性重視の荷物を見ても、それだけ余裕を持って稼いでいることがわかる。

 概ね、探索士の稼ぎは実力と比例するものだ。


 だが、そのリーダーであるはずの小娘の、燦然と輝く低レベルよ!

 最初に見たときはレベル3だったので、まあ少しは成長しているようだが、普通ならばとてもではないが迷宮になど潜っていられるレベルではない。


 素質自体は悪くはないのだが。

 Lv1とはいえ多数のスキルの効果を併せ持つカリスマは稀有なスキルだし、偶像(アイドル)も強力かつ稀有なクラスだ。

 前者は歴史に名を残すような王が持つスキルであり、後者は最上位クラスのアバタールともなれば多くの人を教え導く、勇者に負けず劣らず人類にとって重要なクラスとなる。

 ……もっとも、アバタールになれた者など歴史上でも数人程度しかおらんだろうがな。


 それだけのものを持ちつつ、このレベルというのは実に勿体ない。

 それでも、それなりにレベルの高い探索士を侍らせるには十分すぎるようだが。


レジアス・クライスラー 人間 22歳 Lv21 戦士 無属性

ディッツ・ゲインズ 獣人 15歳 Lv19 斥候 無属性


 まあ、取り巻き二人はこんなものでいいだろう。

 獣人の小僧はオーソドックスな斥候だが、短剣の他に弓のスキルも持っている。そういえば、ユートがアンフィスバエナに追われていた時は弓を撃っていた気がするな。

 戦士の金髪男の方は、アンフィスバエナの時には使わなかったが、長剣と同じレベルで投擲スキルを持っている。投げナイフを得意としているのだろう。


 二人とも前より少しはレベルがあがっているようだ。

 一人一人はクロードと同程度のレベルだが、取り巻きはあと三人いるしパーティのバランスもいい。

 その上で、小娘を中心に完全にまとまっているのが強みだな。


「大樹の迷宮はまだ入れないのか?」

「そうなんですの! アルマさんの見付けた第三層の調査がなかなか進まないそうなのですけれど……

 早くまた、大樹の下でお茶会を楽しみたいものですわ」


 あの大樹の根本にある広場がお気に入りらしい小娘は憂鬱そうに溜め息をついた。

 ユートが大樹の迷宮に潜っていたのは、もう一月は前のことだったろうか?

 確かに、かなり時間がかかっているようだ。

 あのアンフィスバエナ並の魔物がうろついているなら、調査が難航するのもさもありなんといったところだな。


 ユートはしばらく彼奴らと話をしていたが、まだ買い物の途中だし、昼の鐘が鳴って目をつけた露店がなくなってしまっても困る。

 きりのいいところで話を切り上げ、別れて霊薬を売っている露店を探して回るのであった。




 結局、午前の市では納得のいく霊薬が見付からず、昼の鐘が鳴った後、入れ替わりで現れた午後の市の露店が出るまで待たねばならなかった。

 昼食は、焼き鳥の屋台で串を三本買って済ませている。

 甘辛く濃い味付けだったが、ユートはそこそこ満足したようだ。


 残念ながら、ユートが食べたものの味は私にはわからぬ。

 わかるのは、見たものと聞いたことだけだ。

 ユートは色々と言葉を尽くすのだが、生憎と今の私はかつて自分が何を食べ、どのように感じていたのかも思い出せはしないので、ぴんとこない。

 あまりにもユートが饒舌なもので、興味はあるのだが。


 ともあれ、霊薬の補充を終えて今度は街の西側にある職人区へ向かう。

 先日、ゴブリンを斬るときにうっかり剣筋をぶれさせてしまい、それ以来手応えに違和感がある気がするので一度本職の鍛冶屋に見てもらおう、ということになった。

 天龍眼で見る限りは大きな問題はなさそうなのだが、プロの目で見れば違うかもしれない、ということだ。


「いらっしゃいませー。……おや、アルマさん」

「こんにちは、シャリア先生」


 やがて職人区の一角にあるカラード鍛冶工房に入ったユートを出迎えたのは、ユートが先生と呼び慕う、ここの鍛冶屋の妻だった。

 彼女は探索士協会の受付嬢でもあるのだが、ここ最近は夫の方が仕事にかかりきりのため、工房の店番や身の回りの世話をするために受付の仕事は休んでいるようだ。


――――――――――――――――

【名前】シャリア・カラード  【Lv】28

【種族】人間   【性別】女性   【年齢】26歳

【属性】無

【能力値】

 体力 30/60    精神 27/78

 筋力 28/68    魔力 16/47

 技量 36/64    感覚 30/71

 敏捷 35/59    知性 25/84


【クラス(取得条件)】

 戦士Lv37 - 武器スキルLv1以上

 剣士Lv12 - 戦士Lv30以上、剣系スキルLv4以上

 調理師Lv15 - 料理スキルLv3以上

 教師Lv6 - 教育スキルLv1以上

 商人Lv5 - 算術スキルLv1以上


【アビリティ】

 筋力上昇・小(戦士) 筋力が僅かに上昇する

 筋力上昇・中(剣士)筋力が上昇する

 体力上昇・小(戦士) 体力が僅かに上昇する

 技量上昇・小(調理師) 技量が僅かに上昇する

 技量上昇・中(剣士) 技量が上昇する

 感覚上昇・小(調理師) 感覚が僅かに上昇する

 知性上昇・小(商人) 知性が僅かに上昇する

 知性上昇・小(教師) 知性が僅かに上昇する

 金銭感覚(商人) 物品に適切な価格をつけることができる

 パーティ成長補正・小(教師) パーティ全体の経験効率が僅かに上昇する


【スキル】

 長剣Lv5  教育Lv2  算術Lv3  料理Lv3

――――――――――――――――


 元は探索士だったらしく、剣の使い手としてそれなりのレベルにあるのだが……

 ユートに色々と授業していたのが功を奏したのか、教育スキルと教師のクラスが増えているな。

 ユートが教えた算術も、自分でも勉強しているのかLv3になっている。

 もはや、以前のように杜撰な詐欺には引っ掛からないだろう。


「剣のメンテナンスをお願いしようと思ったんですが…… ゲイルさんは鍛冶場ですか?」

「ええ。でも、もうすぐ休憩に出てくると思いますよ」


 彼女の夫は、ユートの世界の剣についての話を聞いて以来、職人魂が刺激されてしまったらしく、何本も試し打ちをしているらしい。

 果たしてユートの話だけで再現できるものかどうかわからないが、ユートも日本刀と呼ばれるその剣の完成はひそかに楽しみにしている。


「シャリア、お客さんかい? ……やあ、アルマ君じゃないか」

「お邪魔してます」


 やがて奥から、鍛冶屋のゲイルが姿を見せた。

 穏やかで爽やかな好青年……だったのだが、鍛冶場にこもっていたのか全身に汗が浮かび、眼はぎらぎらと輝いて、野性味を増している。

 (いくさ)の後の戦士のような様相だ。

 ぐい、と大きなカップで水を飲む彼の汗を、妻の方がタオルで甲斐甲斐しく拭いてやっている。


「こんな格好で失礼するよ。今日はどうしたんだい?」

「ええ、剣のメンテナンスをお願いしようと思って」

「……なるほど、よく使い込んでくれているようだね」


 ユートから剣を受け取り、鞘から引き抜いて目を細め(あらた)める。

 ふむ、ではこちらも彼という男を検めてみよう。


――――――――――――――――

【名前】ゲイル・カラード  【Lv】17

【種族】人間   【性別】男性   【年齢】27歳

【属性】無

【能力値】

 体力 27/73    精神 22/82

 筋力 28/85    魔力 9/38

 技量 30/98    感覚 20/68

 敏捷 19/58    知性 18/54


【クラス(取得条件)】

 鍛冶士Lv35 - 武具鍛冶スキルLv1以上

 筆頭鍛冶Lv8 - 鍛冶士Lv30以上、武具鍛冶スキルLv4以上

 戦士Lv5 - 武器スキルLV1以上

 商人Lv3 - 算術スキルLv1以上


【アビリティ】

 筋力上昇・小(戦士) 筋力が僅かに上昇する

 筋力上昇・小(鍛冶士) 筋力が僅かに上昇する

 筋力上昇・中(筆頭鍛冶) 筋力が上昇する

 技量上昇・小(鍛冶士) 技量が僅かに上昇する

 技量上昇・小(筆頭鍛冶) 技量が僅かに上昇する

 体力上昇・小(戦士) 体力が僅かに上昇する

 感覚上昇・小(筆頭鍛冶) 感覚が僅かに上昇する

 知性上昇・小(商人) 知性が僅かに上昇する

 金銭感覚(商人) 物品に適切な価格をつけることができる


【スキル】

 武具鍛冶Lv7  長剣Lv1  短剣Lv1  槍Lv1  弓Lv1  

 算術Lv2  耐性・火Lv1

――――――――――――――――


 ……随分と様変わりしたものだ!

 最初に見たときから鍛冶のスキルが二つも上がっている。Lv7となると達人の領域だ。そのレベルのスキルを持っているのは、宿の店主とこの男の他にはいない。

 日本刀とやらの作製は、かなり大きな経験になったようだな。


 それに熱い鍛冶場にずっとこもっていたせいか、耐性・火などという人間が修得するには珍しいスキルまでついている。

 鍛冶屋にとっては特に有り難いスキルだろう。


 クラスも筆頭鍛冶が派生しているが、これは元からスキルのLvは足りていたので驚くほどのことではない。

 スキルLv7ともなると最上位クラスへの派生にも足るが、最上位クラスは単純に鍛冶だけしていて到達するものではないので、そこはこの男次第だな。


「確かに、刀身が僅かに歪んでいるね。

 ……これは僕の腕が未熟なせいだな、こんな簡単に歪んでしまうなんて。

 今回は、タダで直しておくよ」

「え、いいんですか?」

「ああ、我ながら不出来な剣を押し付けて申し訳ない。当時はよくできたと思ったんだけど」


 首を傾げながら、ゲイルは剣を鞘に納める。

 まあ、スキルが2Lv低い時に作ったものなら、そう感じても仕方がないだろう。黒歴史というやつだ。


「そうそう、もうすぐニホントーも完成させられそうなんだ。

 かなりいい剣になりそうだよ。……そのぶん、値段も高くなりそうなんだけど」

「……いくらですか?」

「タダでいいよ。……と言いたいところなんだけどね」

「家計担当としてはその提案に反対です」


 にこやかな笑顔を見せるシャリアに、男二人は苦笑しか出ない。


「最高級の鋼を使用していますし、ギリギリまで値引きして15000ダイム。これ以上は無理です。

 そもそも、プロの本気の仕事を安売りするのも買い叩くのもダメですよ」

「15000なら…… 苦しいですけど、なんとかなります」

「しっかり者の奥さんを持って、僕は幸せ者だよ」

「えへへ、私も幸せです♪」


 ぐいと引き寄せて額にキスされて、きりっとしていた彼女の顔がだらしなく歪む。

 ……何故だか、何か食べているわけでもないのに「甘い」という味がどんなものだか思い出せそうな気分になるな!


「でも、刀に15000も使うと、また防具が遠のくな……」

「……確かに、鎧らしい鎧もつけてないですし、足下も普通の革ブーツですかね?

 その装備では、牙狼の迷宮には入らない方がいいでしょう」

「ここで防具もそろえられたらな、とは思ったんですけど」


 と、ユートは店内を見回すが、置いてあるのは武器やその手入れに使う道具だけだ。防具の類は置いていない。


「簡単な鎧の修理もできるけど、革鎧は革職人、金属鎧は鎧鍛冶、と仕事は別れているからね。僕は武具鍛冶なんだ」

「ゲイルさん、それではシオンさんを紹介してみてはどうでしょう?」

「シオンさん……ですか?」

「ああ、シオンさんは革職人だよ。うちに置いてある武器の鞘を頼んだりしてる、腕のいい職人だ。

 そうだね、シオンさんなら防具にも詳しいから、いいものを用意してくれるかもしれない」


 今度、そのシオンとかいう職人を紹介するという話になり、鍛冶屋の男は剣を手にして奥の工房に入っていった。

 ユートは作業が終わるまでお茶を頂きながら待つ……はずだっのだが、何故か途中から剣の指導を受けることになり、また何回も素振りをさせられたのだった。




 工房を出たのは、昼の太陽が傾いた頃だった。

 少し剣の訓練に熱が入りすぎたようだな。

 使い手の剣の使い方を確認するのも剣作りの参考になるとかで、剣を直して戻ってきた鍛冶屋が熱心に見ていたのもあって、妻の方が張りきってしまったのだ。


 とはいえ、ユートは少し疲れたという程度で全然平気そうである。

 天龍眼では唯一、自分自身だけは見ることができないが、おそらくユートの体力は相応に高い筈だ。

 迷宮のある森まで歩いて二~三時間、休憩しなくても平気だし、クロードと比べて明らかにタフである。


「天龍、今日は口数が少ないな。何かあったか?」


 む、そうか? 私自身が封印されているこの場所には、自分自身の存在も忘れそうになるほど何も無いのだが。

 ユートが誰かと会話していることが多かったのもあるし、ステータスを見て自分の中で品評していたのもあるから、そのせいかもしれぬ。


「ああ、うん。ステータスを見るのは結構楽しいよな。

 探索士は特に、スキルもクラスもバリエーション豊かだし」


 たまに意外なスキルや才能が隠れているのがクセモノだ。

 小娘のカリスマほどのレアスキルは他にはいないが、魔法属性を六つまで全部Lv1で持っている魔法使いとか、魂魄魔法を習得している女なども見かけたりした。


 ……む、そういえばクロードの奴が、魂魄魔法は覚えているだけで犯罪になる、とか言っていたような……

 まあ、Lv1では大したこともできまい。直接こちらに害がなければ知ったことではない。


「魔力の限界値が90越えのムキムキの戦士とかもいたな。筋力の限界値は30だったけど」


 ああ、よくある話だな。

 普通の人間は自分の限界がわからぬのだ、そういう才能の無い方向に進むことも珍しい話ではない。

 幸い、ユートの仲間である二人は、それぞれ適正のある方向にスキルを伸ばしているようではあるが。


 ステータス談義で盛り上がっているうちに、人通りの多い場所に出た。

 会話も心の声に切り替わるが、人が多ければそれだけ多くのステータスを見ることができる。私とユートの会話はますます盛り上がる。


 その時、白い毛並みの獣人の幼子とすれ違った。


(……どうした、天龍?)


 不意に黙った私に、訝しげにユートが問う。

 今の、白い獣人の幼子……

 ユートが振り返っても、もうその姿は人通りにまぎれて見えない。


??? 魔… 女性 Lv8:

…系魔…… 氷属性


 ちらりとしか見えなかったが、確か……こうだったような。

 ステータス表示が、人間のものではなく魔物の様式だ。

 すれ違う一瞬だけだったので、名前までは読めていない。


(気のせいじゃないか?

 精霊でもないのに、こんな街中に魔物なんかいないだろう)


 うむ…… 確かに、ユートの言う通りか。

 もしも本当に魔物だとしても、たったレベル8ではたかがしれている。私達に関わることなどないだろう。

 何かの気のせいか見間違いだろう、と私はその娘のことは忘れてしまって、再びユートとの雑談に興じた。






 もっとも、この白い獣人の娘が、私達に関わりがない存在などではないと知るのは、これからずっとずっと先のことであったのだが。

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