第十七話 奇妙な友情?
第十六話 死神劇場
「邪魔をするんだ」
その言葉が落ちた瞬間だった。
ヴェルドが消えた。
「なっ――」
ブラッククロウの構成員たちが目を見開く。
次の瞬間。
ヴェルドは既に集団のど真ん中へ飛び込んでいた。
まるで玩具を取り上げられた子供のような顔。
だが。
その瞳だけは底冷えするほど冷たい。
「本当にさぁ……」
ヴェルドが呟く。
「空気を読めない人って嫌いなんだよね」
パンパンパンパンッ!!
一斉射撃。
数十発の弾丸が放たれる。
逃げ場などない。
普通なら蜂の巣だった。
だが。
――キンッ!
――キィン!
――ガギィッ!
弾丸が何かにぶつかる。
空中で弾かれた。
「は?」
構成員の一人が固まる。
次の瞬間だった。
ズルリ。
男の上半身が滑り落ちた。
「え?」
誰も理解できない。
何が起きたのか分からない。
さらに。
別の男が走る。
一歩。
二歩。
三歩。
そして。
首が落ちた。
血が噴き出す。
「ひっ――」
悲鳴。
だが止まらない。
腕が飛ぶ。
足が落ちる。
胴体が裂ける。
まるで見えない刃が戦場全体を駆け回っているようだった。
「逃げろ!!」
「化け物だ!!」
「撃てぇぇぇ!!」
銃声が響く。
だが。
意味がない。
ヴェルドは歩いているだけだった。
まるで散歩でもしているかのように。
その度に誰かが倒れる。
その度に血が舞う。
その度に命が消える。
◇
少し離れたコンテナの陰。
レイガとゼクトは身を潜めていた。
「なんだあれ……」
レイガが呟く。
さっきまで自分たちと戦っていた男。
だが。
今目の前にいる存在は別物だった。
その時。
レイガの目が僅かに細くなる。
「ん?」
「どうした?」
ゼクトが聞く。
レイガは目を凝らしていた。
そして。
あるものを見つける。
「ゼクト」
「なんだ」
「あれ」
レイガが指差した。
「なんか光ってる」
「光ってる?」
「すげぇ細いけど」
「赤い線みたいなの」
ゼクトも目を凝らす。
普通なら見えない。
だが月明かりが反射した一瞬。
確かに見えた。
空中に張り巡らされた。
極細の赤い糸。
「……っ!」
ゼクトの目が見開く。
「まさか」
さらに観察する。
糸は全て。
ヴェルドから伸びていた。
指先。
腕。
周囲の建物。
鉄骨。
コンテナ。
工場の壁。
蜘蛛の巣のように広がっている。
「能力か……!」
ゼクトが呟く。
「衝気で作った糸だ」
「糸?」
「恐らくそうだ」
レイガも理解し始める。
さっきから弾丸が弾かれる理由。
人が突然切断される理由。
全部説明がつく。
「硬い糸で銃弾を弾く」
ゼクトが分析する。
「そして」
「あの切れる糸で相手を斬る」
「……化け物かよ」
レイガが引く。
珍しく本気で引いていた。
ゼクトも同意だった。
あれは人間の能力じゃない。
戦場そのものを支配する能力だ。
◇
その時。
ヴェルドが立ち止まった。
残っていた構成員たちが震える。
逃げる者。
武器を落とす者。
泣き出す者。
その全員へ向かって。
ヴェルドはゆっくり両手を広げた。
赤いマフラーが風になびく。
深紅の瞳が月光を映す。
そして。
楽しそうに笑った。
「紹介がまだだったね」
誰も答えない。
答えられない。
ヴェルドは帽子を押さえながら優雅に礼をする。
「僕の能力」
「《断命線》」
その瞬間。
月明かりを反射して。
戦場全体に張り巡らされた無数の赤い糸が。
妖しく輝いた。
まるで。
死神が作り上げた処刑場のように。
そして。
ヴェルドは再び一歩を踏み出した。
「さぁ」
「続きを始めようか」
「ぎゃあああああっ!!」
悲鳴が響く。
ブラッククロウの構成員が逃げる。
だが逃げられない。
次の瞬間には首が飛ぶ。
腕が落ちる。
身体が裂ける。
誰もヴェルドへ近付けない。
近付けば死ぬ。
離れても死ぬ。
まさに死神だった。
「ははははは!」
ヴェルドは笑っている。
鋏を振るう。
そして。
糸が踊る。
赤い糸は月光を受けて妖しく輝いていた。
「もっとだ」
「もっと見せてよ」
「生きたい顔を」
「死にたくない顔を」
その声に構成員たちが震える。
完全に恐慌状態だった。
◇
その様子をコンテナの陰から見ていたレイガがぽつりと言った。
「なぁ」
「なんだ」
ゼクトは嫌な予感しかしなかった。
「俺たちも加勢しようぜ」
「正気か!?」
即答だった。
レイガは真顔で頷く。
「いや聞けって」
「聞きたくない」
「聞け」
「嫌だ」
「聞けって!」
レイガが無理やり話を進める。
「俺たち今どう見えてる?」
「最悪な状況の巻き込まれ被害者」
「違う」
「違うのか」
「向こうから見たら」
レイガが戦場を指差した。
「俺とお前とヴェルドの三人組だ」
「……」
ゼクトが黙る。
それは否定できなかった。
「しかも」
「しかも?」
「さっきからあいつら」
『死神の仲間も殺せ!』
『全員撃ち殺せ!』
『逃がすな!!』
戦場の向こうから怒号が飛んでくる。
レイガが肩を竦めた。
「な?」
「殺る気満々だろ?」
「まぁ……そうだな」
「だからさ」
レイガが鉈を担ぐ。
「ここはあいつの味方して」
「とりあえずぶっ倒して」
「その後逃げた方が早い」
ゼクトは頭を抱えた。
理屈だけ聞けば正しい。
悔しいが正しい。
非常に正しい。
だが。
問題は。
味方する相手が。
赤首の死神だということだ。
「普通の人間はな」
ゼクトが言う。
「人生で殺人鬼と共闘する機会なんてないんだ」
「そうなのか?」
「そうなんだよ!」
レイガは少し驚いた顔をした。
ゼクトは続ける。
「俺はな」
「界徒試験を受けに来ただけなんだ」
「そうだな」
「なのに何故か森でお前と出会った」
「うん」
「気付けば保護者役になった」
「そうかも」
「都市へ来た」
「来たな」
「殺人鬼に会った」
「会った」
「戦った」
「戦った」
「今から殺人鬼と共闘しようとしてる」
「そうだな」
ゼクトは空を見上げた。
月が綺麗だった。
現実逃避したかった。
「俺の人生どうなってるんだ……」
本気で呟いた。
レイガは笑う。
「面白いだろ?」
「全然面白くない」
「そうか?」
「そうだよ!」
ゼクトが叫ぶ。
その瞬間。
バンッ!!
銃弾がコンテナへ当たった。
火花が散る。
「いたぞ!」
「そっちにもいるぞ!!」
「死神の仲間だ!!」
「撃てぇぇぇ!!」
レイガとゼクトが顔を見合わせる。
沈黙。
数秒。
そして。
レイガが親指を立てた。
「ほら」
「やっぱ殺る気だ」
ゼクトは深いため息を吐く。
観念した。
「……分かった」
「おっ」
「ただしだ」
拳銃を構える。
照準を合わせる。
「終わったら試験会場へ直行だからな」
「分かった!」
たぶん分かっていない。
だが今はそれでいい。
ゼクトは拳銃を持ち上げた。
レイガも鉈を握る。
そして。
「行くぞ!!」
レイガが飛び出した。
全身へ衝気を纏う。
《纏》。
ゼクトから叩き込まれた基礎技術。
身体能力が一気に跳ね上がる。
地面を蹴った瞬間。
コンクリートが砕けた。
「うおおおおおおおっ!!」
ブラッククロウの構成員たちへ一直線に突っ込む。
「なっ!?」
「速ぇ!?」
「撃てぇぇ!!」
銃声が響く。
だがレイガは止まらない。
鉈で弾き。
身体を捻り。
突進する。
そして。
「邪魔だ!!」
鉈が横薙ぎに振るわれる。
構成員の一人が吹き飛んだ。
さらに二人目。
三人目。
まるで暴走列車だった。
◇
一方。
後方。
ゼクトは冷静だった。
「ったく……」
拳銃を構える。
発砲。
パンッ!
パンッ!
パンッ!
正確な射撃。
構成員たちの腕や足を狙い撃つ。
だが。
人数が多い。
火力が足りない。
「ちっ……」
ゼクトは舌打ちする。
そして。
右手を前へ出した。
衝気が集まる。
空中へ無数の設計図が浮かび上がった。
幾何学模様。
構造式。
部品図。
複雑な線が重なっていく。
《兵装設計図》。
ゼクトの能力。
そして。
カシャン――
重い音と共に。
巨大な兵器が出現した。
構成員たちが固まる。
「は?」
「おい待て」
「なんだあれ」
ゼクトの肩に担がれているのは。
ロケットランチャーだった。
「人数多いんだよ……」
ゼクトが呟く。
そして。
引き金を引いた。
ゴォォォォッ!!
ロケット弾発射。
ブラッククロウ側。
「は?」
「いや待――」
着弾。
ドォォォォォン!!
爆発。
コンテナが吹き飛ぶ。
地面が揺れる。
構成員たちが悲鳴を上げながら吹き飛んだ。
「ぎゃああああっ!!」
「ロケットランチャー持ち出すなぁぁ!!」
「知るか!」
ゼクトも叫ぶ。
「そっちが人数連れてくるからだろ!!」
◇
レイガが笑う。
「おおっ!」
「派手だなゼクト!!」
「お前も少しは引け!!」
「無理!」
即答だった。
レイガは再び突撃する。
鉈を振るう。
拳を叩き込む。
ブラッククロウの構成員たちは完全に混乱していた。
赤首の死神。
鉈を持った怪物。
ロケットランチャーを生み出す男。
悪夢みたいな組み合わせだった。
◇
そして。
その中央。
ヴェルドは静かに笑った。
「ふふっ」
「はははっ」
血飛沫の中。
赤いマフラーが揺れる。
レイガが暴れる。
ゼクトが爆発を起こす。
そして。
自分が殺す。
三人が同じ戦場に立っていた。
「いいねぇ……」
ヴェルドが呟く。
その瞳が細められる。
「本当に」
「最高だ」
次の瞬間。
彼の周囲から。
無数の赤い糸が月光を反射しながら広がっていく。
まるで蜘蛛の巣。
いや。
死神が張り巡らせる処刑場だった。
◇
工業地帯は完全に戦場になっていた。
爆発。
銃声。
悲鳴。
怒号。
そして。
「うおおおおおおっ!!」
レイガの雄叫び。
「だから突っ込みすぎだ馬鹿!!」
ゼクトのツッコミ。
「はははははっ!!」
ヴェルドの笑い声。
もはや何が何だか分からない。
カオスだった。
◇
レイガは暴れていた。
《纏》を全身へ巡らせる。
身体能力は常人を遥かに超える。
鉈を振るう。
蹴り飛ばす。
殴り飛ばす。
ブラッククロウの構成員たちは次々と吹き飛んでいった。
「どけぇぇぇ!!」
「ぎゃああああっ!!」
まるで大型獣だった。
誰も止められない。
◇
後方。
ゼクトは相変わらず冷静だった。
「右から三人」
パンッ!
パンッ!
パンッ!
正確な射撃。
構成員たちが倒れる。
だが。
それだけでは終わらない。
ゼクトの能力が発動する。
空中へ設計図が浮かぶ。
衝気が形を持つ。
カシャン。
今度現れたのは短機関銃だった。
「便利だなそれ!」
レイガが叫ぶ。
「そう思うなら少しは考えて戦え!」
ゼクトも叫び返す。
さらに。
腰の横へ新たな設計図が浮かぶ。
カシャン。
手榴弾。
「おい待て」
レイガが嫌な顔をした。
「それ俺の近くに投げるなよ?」
「避けろ」
「雑!!」
ゼクトは迷わず投擲。
数秒後。
ドォォォン!!
爆発。
コンテナが吹き飛ぶ。
ブラッククロウの構成員たちも吹き飛ぶ。
「ぎゃああああっ!!」
「隊長ぉぉぉ!!」
「何なんだあいつらぁぁ!!」
完全に地獄だった。
◇
そして。
その中心。
赤いマフラーが夜風に揺れる。
ヴェルドは立っていた。
鋏を片手に。
血飛沫の中で。
笑いながら。
「ふふっ」
「ははっ」
「楽しいなぁ」
糸が舞う。
赤い線が月光を反射する。
一人。
また一人。
構成員が倒れていく。
だが。
今のヴェルドは少し違った。
視線が動く。
レイガを見る。
ゼクトを見る。
そして。
また笑う。
◇
(変だな)
ヴェルドは思う。
(何だろう)
糸を操る。
人が死ぬ。
それはいつも通り。
楽しい。
最高だ。
それなのに。
今日は違う。
レイガが暴れている。
ゼクトが怒鳴っている。
爆発している。
訳が分からない。
なのに。
楽しい。
今まで感じたことのない感覚だった。
◇
「ゼクトォォ!!」
「なんだ!」
「左から来た!!」
「見えてる!」
パンッ!!
構成員が倒れる。
「おお!」
「ナイス!」
「褒めてる暇あるなら前見ろ!」
「うおっ危ねぇ!」
レイガが慌てて鉈を振るう。
敵が吹き飛ぶ。
それを見て。
ヴェルドは思わず吹き出した。
「ふっ」
「ふふっ」
「はははははっ!!」
◇
(何だこれ)
胸の奥が妙に温かい。
死を見た時の興奮とは違う。
命のやり取りとも違う。
もっと不思議な感覚。
昔。
本で読んだことがある。
一緒に遊ぶ相手。
笑い合う相手。
共に時間を過ごす相手。
確か。
あれは――
◇
ヴェルドの目が少し見開かれる。
そして。
答えに辿り着いた。
「ああ」
小さく呟く。
「そうか」
血塗れの死神は。
本当に今更になって理解した。
「これが……」
赤い瞳がレイガを見る。
ゼクトを見る。
そして。
嬉しそうに微笑んだ。
「友達と遊ぶってことなんだ」
その言葉と同時に。
ブラッククロウの構成員が一人、絶望した顔で叫ぶ。
「何でそんな結論になるんだぁぁぁ!!」
直後。
赤い糸が夜空を走った。
悲鳴が響く。
そして。
死神は笑っていた。
今までで一番。
楽しそうに。
やがて。
銃声が止んだ。
爆発も止んだ。
悲鳴も聞こえない。
工業地帯に静寂が戻る。
風だけが吹いていた。
◇
レイガが辺りを見回す。
「……終わったのか?」
誰も答えない。
代わりに。
地面へ倒れ込む音がした。
ドサッ。
ゼクトだった。
「疲れた……」
仰向けになりながら夜空を見る。
月が見えた。
綺麗だった。
だが。
全く感動する余裕はない。
「どうした?」
レイガが聞く。
ゼクトは虚ろな目で答えた。
「俺はな……」
「うん」
「界徒試験を受けに来ただけなんだ」
「そうだな」
「なのに気付いたら裏組織壊滅させてる」
「そうだな」
「マジかよ……」
ゼクトは頭を抱えた。
ブラッククロウ。
この都市周辺では有名な犯罪組織。
それが今。
事実上壊滅している。
死神。
森育ちの怪力少年。
武器を作る界徒。
その三人によって。
「絶対ニュースになるだろこれ……」
「なるか?」
「なる」
「へぇ」
レイガは他人事だった。
◇
その時。
コツ。
コツ。
足音が響く。
二人が振り向く。
そこには。
赤いマフラーの男。
ヴェルドがいた。
帽子を被り直しながら歩いてくる。
そして。
妙に機嫌が良かった。
「ふふっ」
「いやぁ」
「楽しかったなぁ」
「そうか?」
レイガが答える。
「うん」
ヴェルドは笑う。
今までの不気味な笑みではない。
どこか柔らかい。
だが。
だからこそ気持ち悪かった。
◇
そして。
ヴェルドは自然な動作でレイガの肩へ腕を回した。
「離れろ」
ゼクトが即座に言う。
「え?」
ヴェルドが首を傾げる。
「何で?」
「何でじゃない」
「友達だろ?」
沈黙。
レイガが固まる。
ゼクトも固まる。
「……友達?」
レイガが聞き返す。
「うん」
ヴェルドは笑顔だった。
「友達」
「友達」
もう一度言った。
◇
レイガは少し考える。
そして。
「そうなのか?」
ゼクトへ聞いた。
「俺に聞くな」
即答だった。
「いやでも」
レイガが言う。
「一緒に戦ったぞ?」
「戦ったな」
「結構仲良くなった気がする」
「してない」
「そうか?」
「そうだ」
ゼクトは断言する。
だが。
ヴェルドは聞いていなかった。
「レイガ」
「なんだ?」
「今度また遊ぼう」
「おう」
「おうじゃない!!」
ゼクトが叫ぶ。
◇
ヴェルドは今度はゼクトの方を見る。
「ゼクトも」
「嫌だ」
即答。
「まだ何も言ってないよ?」
「嫌だ」
「傷付くなぁ」
全く傷付いていない顔だった。
「君も友達だろ?」
「違う」
「違うの?」
「違う」
「でも一緒に戦った」
「状況だ」
「同じ敵を倒した」
「状況だ」
「爆発すごかった」
「ありがとう」
「友達だね」
「違う」
ゼクトは頭を抱えた。
話が通じない。
◇
レイガはそんな二人を見て笑う。
「なんか面白いな」
「面白くない」
ゼクトは即答した。
すると。
ヴェルドがふと空を見上げた。
月が出ている。
夜風が吹く。
そして。
どこか満足そうに微笑んだ。
「そうか」
「友達って楽しいんだな」
その言葉だけは。
妙に本気だった。
◇
三人は工業地帯を後にした。
夜道を歩く。
都市の灯りが遠くに見える。
レイガは相変わらず元気だった。
ヴェルドも機嫌が良い。
異様に機嫌が良い。
「ねぇレイガ」
「なんだ?」
「君の頭突き痛かったなぁ」
「だろ?」
「鼻が曲がるかと思ったよ」
「今度はもっと強くやる」
「楽しみだねぇ」
怖い会話だった。
普通の人間なら成立しない。
ゼクトは横で頭を抱える。
「なんで仲良くなってるんだ……」
しかも。
ヴェルドが妙に距離感近い。
レイガの肩へ腕を回したり。
隣を歩いたり。
話しかけたり。
完全に友達扱いだった。
「ねぇゼクト」
「なんだ」
「今度また遊ぼうよ」
「嫌だ」
即答だった。
「そんなぁ」
「お前の遊びは殺し合いだろうが」
「でも今日は楽しかったよ?」
「俺は楽しくない」
◇
やがて。
都市の出口へ辿り着く。
道路の先には暗い山道。
その向こうに界徒試験の会場がある。
ようやく。
本当にようやく。
本来の目的地へ向かえる。
ゼクトは安堵した。
「行くぞ」
「やっとだ」
「これ以上問題は起きない」
そう言った瞬間だった。
後ろから足音。
トコトコ。
トコトコ。
ゼクトが振り返る。
そこには。
当然のように付いてきているヴェルドがいた。
「……何してる」
「ん?」
ヴェルドが首を傾げる。
「何してるって?」
「付いてきてる」
「うん」
「なんでだ」
ヴェルドは不思議そうな顔をした。
そして。
当然のように答えた。
「試験に行くから」
沈黙。
数秒。
「……は?」
ゼクトが固まる。
レイガも目を丸くした。
「試験?」
「うん」
ヴェルドは頷く。
「実はね」
「ブラッククロウを片付けたら行こうと思ってたんだ」
さらりと言った。
まるで買い物帰りみたいな口調だった。
「界徒試験受けるのか?」
レイガが聞く。
「受けるよ」
ヴェルドは笑う。
「界徒になれば色々便利だからねぇ」
「便利?」
「うん」
赤い瞳が細くなる。
「殺人を犯しても無罪になる任務とかあるし」
「危険人物の討伐とか」
「裏組織の殲滅とか」
「楽しそうだろ?」
レイガは納得した。
「なるほど!」
「なるほどじゃない!!」
ゼクトが叫んだ。
「その発想になるな!!」
◇
しかし。
ヴェルドは気にしていない。
むしろ。
少し照れたような顔をしていた。
「それに」
「ん?」
レイガが聞く。
ヴェルドは微笑む。
今までの狂気的な笑みではない。
少しだけ柔らかい笑顔だった。
「友達だからね」
「一緒に行きたいんだ」
沈黙。
レイガは笑った。
「おう!」
「歓迎だ!」
「ありがとう」
ヴェルドも嬉しそうだった。
そして。
ゼクトだけが固まる。
「……」
「……」
「……最悪だ」
心の底からそう思った。
森で出会った問題児。
レイガ。
都市で出会った殺人鬼。
ヴェルド。
そして。
何故かその二人が仲良くなった。
しかも。
これから同じ試験を受けるらしい。
ゼクトは空を見上げた。
星が綺麗だった。
現実逃避したかった。
「俺」
「試験に行くだけだったんだけどな……」
誰にも聞こえない声で呟く。
その横で。
レイガとヴェルドは楽しそうに話していた。
こうして。
界徒試験へ向かう三人組が誕生した。
一人は森育ちの怪物。
一人は兵器を生み出す青年。
そして一人は《赤首の死神》。
試験開始前から問題しか起こして




