20話 猫(キャット)はベルベットの上で眠る
初めて当時の国際情勢を書きます。
キューバ革命後、ちゃんと世界は革命政権を承認します。でもその背景は。。
【1959年春 アメリカ合衆国 ワシントンD.C.近郊 某ゴルフ場】
「――ナイスオン、ミスター・プレジデント!」
乾いた打球音が、春の青空に吸い込まれていく。
ここは、地球上で最も「泥」と無縁の場所だ。
アイゼンハワー大統領は、満足げにパターを受け取ると、取り巻きたちに向けて白い歯を見せた。
ゴルフ場のクラブハウスのテラス席。
大統領はゴルフに夢中らしい。
キューバ新政府の窓口は、リチャード・ニクソン副大統領になる。
大統領の接待後ゴルフ場の一室にて
ニクソン副大統領は、氷の入ったグラスを揺らしながら、足元にすり寄ってきた生き物を、革靴のつま先で軽く追いやった。
クラブの会員夫人が飼っている、血統書付きのシャム猫だ。
つややかな毛並み。首には宝石をちりばめた首輪。
この猫一匹の値段で、キューバの農民が一生暮らせるだろう。
「コイツ餌が欲しいのか? ……卑しいもんだ」
ニクソンはテーブルの上のハムをちぎり、猫に放り投げた。
猫は優雅に飛びつき、喉を鳴らしてハムを貪る。
「……所詮、キューバの連中も、この猫と同じだな。」
ニクソン副大統領は独りごちた。
「革命だの理想だのと叫んではいますが、目の前に極上のハム――経済支援をぶら下げれば、尻尾を振ってついてくる。
このあとカストロを軽くあしらうか――。
せっせと“この件”は終わらせよう。」
彼は知らなかった。
この世界には、餌を求めて媚びる「飼い猫」とは別に、泥水をすすってでも牙を研ぐ「野良猫」がいることを。
そしてその野良猫が、死んでも噛みつき続ける怨念を持っていることを。
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