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189/213

188,選択肢

ケネディは、世界の未来に対する決断を初めて行きます。アメリカ国内にも様々な思惑がありました。

大統領は風邪をひいていなかった。


それでも十月二十日の朝、シカゴで待っていた記者たちには、風邪のため遊説日程を切り上げると発表された。


診断は、大統領がワシントンへ戻るために用意されたものだった。


熱はない。咳も出ていない。


ケネディが抱えていたのは、医師には診断できない種類の時間だった。


アメリカは、ソ連が知らない事実を持っていた。U-2がキューバのミサイル基地を発見し、ワシントンがその写真を解析していることを、モスクワもハバナもまだ知らない。


敵が発見されたことに気づいていないなら、攻撃の時刻はアメリカが選べる。航空機を出し、基地が分散される前に叩くこともできた。


だが、情報の優位は一方にだけあるわけではなかった。


ワシントンが見つけたのは、発射台と輸送車両、それらが地面へ落とした影である。核弾頭がすでに島へ届いているのか、写真の外にどれほどの兵器が隠されているのか、現地のソ連軍がどこまで発射準備を進めているのかは分からない。


アメリカは、自分たちが何を発見したかを隠していた。


ソ連とキューバは、アメリカがまだ発見していないものを隠していた。


互いに見えている範囲が違うまま、片方だけが危機の始まりを自覚していた。


その一時的な優位を、照準として使うのか。


それとも、相手を止まらせるための言葉として使うのか。


大統領専用機は、曇った空をワシントンへ向かっていた。


※※※※※※※※※※


機内の一室で、ケネディはロバート・マクナマラと向かい合った。


机には二冊のファイルが置かれていた。


一冊は空爆計画。もう一冊は、キューバへ向かう船舶を海上で阻止する案だった。


空爆計画の方が厚い。


標的の位置、出撃する航空機、使用する爆弾、攻撃隊の進入経路、対空施設への対処。その後に必要となる再攻撃と、キューバ侵攻の準備まで記されている。


「ペンタゴンでは、どちらが優勢だ。」


ケネディが尋ねると、マクナマラは空爆計画へ手を置いた。


「制服組の意見は、こちらです。」


「意見という段階か。」


「いいえ。作戦として準備されています。」


ケネディはファイルを開いた。


標的ごとに番号が振られ、出撃数が記されている。政治的な迷いとは無関係に、数字はすでに整えられていた。


「私が決める前から、ずいぶん先まで進んでいる。」


「命令が下りてから準備を始めたのでは、間に合いません。」


「準備するなとは言えない。」


「はい。」


マクナマラは否定しなかった。


「しかし、準備が整うほど、それを使わないという判断は難しくなります。」


ケネディが顔を上げた。


「軍が勝手に始めると言っているのか。」


「軍は命令に従います。」


マクナマラの口調は変わらなかった。


「ただ、航空機が配置され、弾薬が積まれ、兵士が乗艦し、作戦開始を待つようになれば、それらすべてが空爆を支持する理由になります。準備が、政治判断より先へ進む可能性があります。」


「私が軍を動かす前に、軍事上の時間が私を動かす。」


「そうなる危険があります。」


ケネディは窓へ目を向けた。


雲の下に町が見える。


そこに暮らす人々は、大統領が風邪のためワシントンへ戻っていると考えている。ペンタゴンでは、その町を核戦争から守るための航空機が、核戦争を始めかねない作戦の準備を進めていた。


「秘密は、いつまで守れる。」


マクナマラはすぐに答えなかった。


「長くはありません。」


「どこから漏れる。」


「どこからでも。」


標的資料を作る者がいる。航空機を移す者がいる。弾薬庫を開く者がいて、艦隊へ命令を出す者がいる。


軍の動きに気づく議員もいれば、ペンタゴンへ通う車の数を数える記者もいる。


「制服組の中には、政府が攻撃をためらっていると考える者もいます。」


「記者へ話すか。」


「意図的に話す者がいるとは申しません。しかし、自分の意見を政府の方針より重要だと思う人間は、ペンタゴンに限らずどこにでもいます。」


ケネディは椅子へ背を預けた。


「ソ連には知らない顔を続けられるのに、アメリカ人には隠せないのか。」


「自由な報道機関があります。」


マクナマラは真顔のまま答えた。


「それに自由に話す政府高官もいます。」


ケネディの口元に、わずかな笑いが浮かんだ。


「敵には黙っていられるが、味方の新聞には黙っていられない。とんだ自由の国だな。」


笑いは長く続かなかった。


「漏れれば、何が起きる。」


「モスクワは発見されたと知ります。基地を分散し、防空態勢を上げ、写真に写っていない兵器を隠すでしょう。」


「国内では。」


「即時攻撃を求める声が強くなります。」


「何を見つけたかより、なぜ攻撃しないのかが問題になる。」


「空爆を求める側から情報が出れば、そうなる可能性があります。」


ケネディは空爆計画の表紙を閉じた。


「ソ連が先に話せば。」


「キューバを侵攻から守るための防御兵器を置いただけなのに、アメリカが攻撃準備を進めているという説明になるでしょう。」


「こちらが嘘を暴く前に、向こうが被害者になる。」


マクナマラはうなずいた。


ケネディは机の上の二冊を見比べた。


「最初に話した者が、事実ではなく、事実の意味を決める。」


情報を持つことと、その意味を支配することは同じではない。


写真を隠し続ければ奇襲の優位は残る。だが、どこかから漏れた瞬間、その優位は失われ、政府は他人が作った物語の中で決断を迫られる。


「私は外交で解決できると楽観しているわけではない。」


ケネディは海上での阻止案を開いた。


「だが、我々はまだ一度も、相手へ選択を与えていない。写真を見つけ、そのまま爆撃する。それを外交とは呼べない。」


「軍は、ミサイルの配備そのものがソ連からの最初の行動だと考えています。」


「それは正しい。」


ケネディは認めた。


「だが、こちらの最初の返事まで、相手に決めさせる必要はない。」


マクナマラが、海上阻止案の一頁を開いた。


「では、目的を明確にする必要があります。」


「追加の攻撃兵器を入れさせない。」


ケネディは一本目の指を立てた。


「すでにあるミサイルを撤去させる。」


二本目。


「その間に、戦争を始めない。」


三本目を立てると、マクナマラが言った。


「空爆なら、最初の二つへ直接向かえます。しかし、三つ目を失う危険があります。」


「何もしなければ。」


「三つ目だけが残り、最初の二つを失います。」


「なら、その間に一段作る。」


ケネディは二冊のファイルを重ねた。


「会議で決めるのは、爆弾の数ではない。この三つをどこまで同時に守れるかだ。」


専用機が降下を始めた。


眼下にワシントンの街が見えた。


風邪をひいたことになっている大統領は、戦争を始めずにミサイルを消す方法を探すため、首都へ戻ってきた。


※※※※※※※※※※


ホワイトハウスへ戻ると、会議はすぐに始まった。


空気はすでに二つに割れていた。


ミサイル基地を大規模空爆し、その後の侵攻に備えるべきだという者たち。海上で追加搬入を止め、外交的な圧力を加える段階を置くべきだという者たち。


カーティス・ルメイは、割れた議論を迷いとは考えていなかった。


彼にとって、答えは最初から明らかだった。


ルメイが軍人となった頃、アメリカ空軍という独立した軍はまだ存在していなかった。航空部隊は陸軍の一部であり、地上軍を助けるための存在と考えられていた。


だが、彼の世代は爆撃機を編隊で海の向こうへ送り、敵の工場と都市を焼き、航空戦力が戦局そのものを変えられることを示してきた。


戦後に独立した空軍は、その成功を誇りとしていた。


ルメイは、戦略爆撃によって戦争の行方を変え、戦略航空軍団を核時代の中核へ育てた。航空戦力は補助ではない。国家が敵の中枢へ直接届くための力である。


彼が背負っていたのは、自分一人の経歴だけではなかった。


新しく生まれた軍種の誇りと、必要な時に決定的な力を使うことこそ軍人の責務だという確信だった。


「我々には標的があります。」


ルメイはキューバの地図を指した。


「敵は発見されたことを知りません。こちらには兵力があり、攻撃の時刻を選ぶ自由もあります。」


机の周囲に座る者たちを見回す。


「この優位を自分から捨てる理由がありません。」


ケネディは腕を組んだ。


「写真に写った基地を、すべて破壊できるか。」


「必要な戦力を使えば可能です。」


「写真に写っていない基地は。」


「偵察を続け、追加目標を攻撃します。」


「核弾頭がすでに島へ入っていた場合は。」


「その可能性があるからこそ、使用される前に攻撃するべきです。」


「どこにあるか分からないのに。」


「待てば、さらに分からなくなります。」


ルメイの答えには、ためらいがなかった。


「大統領、戦争では情報が完全に揃うことはありません。敵より多くを知り、有利な時刻を選べるなら、その時に行動します。」


別の将官が、空爆の規模を説明した。


ミサイル基地だけではない。攻撃隊を守るには対空ミサイル施設を叩き、キューバ空軍の基地を無力化し、ソ連製爆撃機も破壊しなければならない。


限定攻撃として始めても、確実性を求めれば対象は広がる。


「海上で船を止めても、島にあるミサイルは一基も破壊できません。」


ルメイが続けた。


「公表すれば、ソ連は基地を分散し、防空態勢を上げます。核弾頭があるなら隠すでしょう。外交の手順を踏むということは、敵へ準備時間を与えることです。」


「ソ連は秘密裏に現状を変えた。」


ケネディが言った。


「その通りです。」


「だから我々にも、警告なしで攻撃する権利がある。」


「権利ではなく、必要があります。」


ルメイは地図から手を離した。


「戦う可能性があるのなら、最も有利な今に戦うべきです。」


その論理は、乱暴ではなかった。


むしろ、あまりに整っていた。


戦争が避けられない可能性を認めるなら、敵の準備が整う前に叩く。味方の損害を減らし、戦争を短くする。


ルメイは戦争を知らないために空爆を求めているのではない。


戦争の中で、躊躇や不十分な戦力が何を生むかを見てきたため、始めるなら早く、強く、完全に始めるべきだと信じていた。


彼の人生では、航空戦力を集中して使う決断が、何度も正解をもたらしてきた。


成功した経験ほど、人間に同じ答えを強く信じさせるものはなかった。


マクナマラは、ルメイではなく、机の上の作戦図を見ていた。


「空爆を行った場合、発表はいつになりますか。」


質問を受けた将官が答える。


「攻撃開始と同時、あるいは直後になるでしょう。」


「国民は、最初に何を見るのです。」


「大統領の声明です。」


国務長官のラスクが首を振った。


「最初に見るのは、爆撃されたキューバの映像でしょう。」


部屋の視線がラスクへ集まった。


「声明はその後です。アメリカがソ連の秘密配備を説明する前に、世界には、アメリカ軍が小国を奇襲したという事実が届きます。」


ロバートが、机に置かれた航空写真を手に取った。


「この写真を、証拠として使わず、照準としてだけ使うのか。」


ルメイが答えた。


「証拠は、攻撃後にも示せます。」


「その時には、世界が見る最初の写真はこれではない。」


ロバートは航空写真を机へ戻した。


「燃えているキューバだ。」


空爆を支持する側から反論が出た。


「世界世論でミサイルは消えません。」


「同盟国の基地を使い、ソ連との戦争を始めるなら、世界世論は軍事上の問題でもあります。」


ラスクの声は穏やかだった。


「ベルリンでソ連が動いた場合、我々は同盟国に戦うよう求めることになります。事前の説明もなく、アメリカの奇襲から始まった戦争だと思われれば、その結束は弱くなります。」


ケネディは航空写真を見た。


秘密配備を行ったのはソ連である。


約束を破り、核兵器をアメリカの近くへ持ち込んだのもソ連だった。


それでも、写真を世界へ示す前に攻撃すれば、アメリカが最初に戦争を始めたように見える国は少なくない。


「ソ連の嘘を世界の前で暴けば、フルシチョフは引き返せるのか。」


ケネディが尋ねた。


ラスクは慎重に答えた。


「公然と屈服する形になれば、難しくなります。」


「隠したまま爆撃すれば。」


「今度は我々が、説明を求められます。」


ケネディは指先で写真の角を押さえた。


「世界を味方につけるには、嘘を示さなければならない。しかし、嘘を暴いて相手の逃げ道を潰せば、戦争へ近づく。」


誰も簡単な答えを持っていなかった。


扉が開き、ピエール・サリンジャーが一枚のメモを手に入ってきた。


会議の参加者を見て、一瞬だけ足を止める。


「失礼します。」


サリンジャーはケネディの近くへ進み、メモを渡した。


複数の新聞社から、キューバ情勢に関する問い合わせが来ていた。


大統領がなぜ突然シカゴの日程を切り上げたのか。


国防総省で高官の会議が続いているのはなぜか。


キューバ上空の偵察飛行で、何か発見されたのではないか。


どの質問も、まだ核心には届いていない。


だが、記者たちは閉じた扉の向こうに何かがあることを嗅ぎ始めていた。


ケネディはメモをマクナマラへ渡した。


「君の言った通りだ。」


マクナマラが読み終える。


「問い合わせだけであれば、まだ抑えられます。」


「明日は。」


「保証できません。」


ルメイが椅子を動かした。


「漏れる前に攻撃するべきです。」


ラスクがすぐに続けた。


「漏れる前に同盟国へ説明するべきです。」


同じ時計が、二人を反対方向へ急がせていた。


ケネディはサリンジャーに尋ねた。


「何と答えている。」


「大統領は軽い風邪のため日程を変更した。それ以上の発表はない、と。」


「記者たちは信じているか。」


サリンジャーはわずかに口元を動かした。


「大統領、記者は政府の発表を信じるために雇われているわけではありません。」


ケネディは苦く笑った。


「知っている。だから困っている。」


サリンジャーが退室すると、ケネディはメモを机へ置いた。


「秘密が漏れれば、我々は自分たちが選んだ順番で話せなくなる。」


マクナマラが答えた。


「空爆を支持する者から出れば、国民は政府が攻撃をためらっていると考えます。ソ連から出れば、我々が侵攻を準備しているという説明になるでしょう。」


「最初に語った者が、この危機の意味を置く。」


「はい。」


ケネディは出席者を見回した。


「ならば、いつまでも黙っていることも一つの選択だ。そして、その選択には期限がある。」


※※※※※※※※※※


議論は再び空爆へ戻った。


軍部は、海上での阻止では島にあるミサイルが残ることを繰り返した。基地建設はその間にも進み、数日のうちに使用可能になるかもしれない。


一日待つことも決断である。


その一日を、敵は基地完成のために使う。


海上でソ連船を止めれば、軍艦同士の衝突が起きる可能性もある。それでもミサイル基地は残り、危機は解決しない。


「問題を先送りするだけです。」


将官の一人が言った。


「最初の一手で、問題を除去する必要があります。」


マクナマラは、空爆計画の分厚いファイルを開いた。


「最初の一手で、すべてを解決しようとすれば、最初の一手が戦争になります。」


「すでにソ連が始めています。」


ルメイの声が響いた。


「秘密配備は軍事行動です。」


「だから、こちらも最初の返答を軍事行動にするのですか。」


「他に、ソ連が理解する言葉がありますか。」


マクナマラは、そこで初めてルメイへ正面から顔を向けた。


「あります。」


部屋の空気がわずかに変わった。


「海上で船を止めることか。」


「それだけではありません。」


マクナマラは席を立った。


興奮しているようには見えなかった。声も普段と同じように抑えられ、部下へ説明する時と変わらない丁寧さが残っている。


それでも、それまで机の上に散らばっていた議論が、彼の言葉へ集まり始めた。


「軍事行動は、敵を破壊するためだけに行うものではありません。相手へ送るメッセージにもなります。」


ルメイの眉が動いた。


「メッセージでミサイルを破壊できるのですか。」


「いいえ。」


マクナマラは即座に認めた。


「海上での隔離では、島にあるミサイルは一基も破壊できません。基地の建設も続くかもしれない。」


「ならば解決にならない。」


「最初の段階です。」


マクナマラは地図の北側、キューバへ向かう航路へ指を置いた。


「我々は発見した。これ以上の攻撃兵器は入れさせない。しかし、あなたが止まるなら、こちらもまだ撃たない。」


指が航路をたどる。


「それを、モスクワへ伝えます。」


次に航空写真へ手を移した。


「世界には、秘密裏に現状を変えたのはソ連であり、アメリカは発見した直後に爆撃しなかったと示す。」


最後に、空爆計画へ視線を落とした。


「我々の軍には、船を止めることが任務であり、戦争を始めることが任務ではないと伝えます。」


一人の将官が反論した。


「軍艦を動かし、ソ連船を強制的に止める。それは戦争行為です。」


「戦争へ発展する可能性があります。」


「違いがあるのですか。」


「あります。」


マクナマラの声が、初めて強くなった。


「空爆すれば、我々がモスクワへ送る最初の言葉は爆弾です。発射されたあとに、その意味を説明することはできません。」


沈黙が広がった。


「海上で止めれば、相手に選択を返すことができます。進むのか、止まるのか。こちらも、その返事を見て次を選べる。」


ルメイは椅子へ深く座った。


「敵に主導権を渡すことになります。」


「いいえ。」


マクナマラは首を横に振った。


「次の段階を選ぶ責任を渡すのです。軍事的な優位は維持します。侵攻準備も続ける。しかし最初から、すべての選択肢を一つにしない。」


彼は作戦図を閉じた。


「将軍、あなた方は敵を破壊する方法を示している。」


マクナマラはケネディの方を見た。


「大統領が必要としているのは、敵に止まらせる方法です。」


誰も、すぐには言葉を返さなかった。


ルメイの空爆論が崩れたわけではない。


写真に写ったミサイルを除去するだけなら、空爆の方が直接的で、軍事的には理解しやすい。


海上で船を止めても、島にある基地は残る。フルシチョフが止まる保証もない。


マクナマラが示したのは、空爆より安全な道ではなかった。


次の判断ができる時間を残す道だった。


※※※※※※※※※※


ケネディは、机に置かれた海上隔離案を開いた。


「ソ連船が止まらなければ。」


マクナマラが答える。


「警告します。それでも進めば、臨検のため停船させます。」


「拒否した場合は。」


「実力行使が必要になる可能性があります。」


「ソ連の護衛艦が同行していたら。」


「衝突の危険があります。」


「潜水艦は。」


「監視し、浮上を求めます。」


「相手が、それを攻撃と読んだら。」


「その危険はあります。」


ケネディはラスクを見た。


「世界は支持するか。」


「写真を示し、措置を攻撃兵器の搬入阻止へ限定すれば、空爆より理解は得やすいでしょう。」


「同盟国への説明は。」


「発表前に必要です。」


「議会は。」


「同じです。ただし、人数が増えるほど漏洩の危険も増します。」


ケネディはロバートへ顔を向けた。


「国民は、なぜすぐ攻撃しないのかと聞くだろう。」


「聞くだろうな。」


「共和党は弱腰だと言う。」


「間違いなく。」


「その間に基地が使用可能になったら。」


ロバートは答えなかった。


マクナマラも、ラスクも沈黙した。


海上隔離を選ぶということは、島に残るミサイルの危険を数日間引き受けることだった。


奇襲の優位を捨て、相手の返事を待つ。


その間に失敗すれば、攻撃しなかった大統領の責任になる。


ケネディは写真を見た。


ピックス湾では、成功すると説明された計画へ署名した。


今回は違う。


海上隔離の欠点は、誰も隠していない。ミサイルは残り、時間は減り、衝突の危険も消えない。


その危険を理解したうえで、誰かが引き受けなければならなかった。


「基地が完成した場合、その責任は誰にある。」


誰も答えない。


ケネディは椅子から立った。


「私だ。」


窓の外は、すでに暗くなっていた。


「秘密を、奇襲のためには使わない。」


彼は空爆計画のファイルを閉じた。


「写真を世界へ示す。これ以上の攻撃兵器は、キューバへ入れさせない。すでにあるミサイルの撤去を要求する。」


ルメイがケネディを見ていた。


「空爆は。」


「準備を続ける。侵攻準備も止めない。」


ケネディは海上隔離案へ手を置いた。


「だが、最初の一発は我々から撃たない。」


少し間を置き、言葉を継いだ。


「その代わり、次の船は通さない。」


決断が下されたあとも、部屋の緊張は消えなかった。


軍事作戦が決まれば、会議は終わるはずだった。


だが、誰も席を立たない。


ラスクが最初に口を開いた。


「同盟国への説明を始める必要があります。」


ソレンセンが、白紙のメモ用紙を前へ引いた。


「国民向けの演説も必要です。」


サリンジャーは、記者たちへの発表時刻を尋ねた。


マクナマラは、艦隊をどの位置へ展開し、いつ作戦を開始するかを確認しなければならない。


ロバートが航空写真を持ち上げた。


「どこまで見せる。」


ケネディは、再びその写真を見た。


空爆を選んでいれば、それは標的を指し示すために使われていた。


海上隔離を選んだ今、写真は世界へソ連の欺瞞を証明するものになる。


しかし、証拠を示すだけでは足りない。


なぜ爆撃しなかったのか。なぜ軍艦を出すのか。これは封鎖なのか、宣戦布告なのか。アメリカはキューバを侵攻するつもりなのか。


軍艦を動かす前に、その行動の意味を決めなければならなかった。


「いつ発表する。」


ケネディが尋ねた。


ソレンセンが時計を見た。


「原稿を作ります。写真の準備と、同盟国への説明にも時間が要ります。」


「時間をかければ、新聞が先に話す。」


ケネディは、サリンジャーが置いていった記者からの問い合わせを手に取った。


海上隔離は決まった。


だが、艦隊を海へ出すだけでは、それは外交にはならない。世界が最初に見たものがアメリカの軍艦であれば、ソ連の秘密配備はその影へ隠れてしまう。


写真をいつ示すのか。


軍艦を動かす行為を、何という言葉で呼ぶのか。


そして、次の選択をソ連側へ返すために、どこまで相手の逃げ道を残すのか。


決めなければならないのは、作戦だけではなかった。


この危機を、世界へ何と呼ばせるかだった。


アメリカは、最初の一発を撃たないと決めた。


その代わり、最初の言葉を奪われるわけにはいかなかった。

世界世論を巻き込むためアメリカのカードが切られていきます。


更新は、水・金・日の夜です。

次回は水曜日の夜更新予定です。


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