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ゲバラとカストロ(仮)  作者: 相馬ゆう
キューバ革命M- 7-26 編
12/14

11話 十二人も残った 【キューバ革命M- 7-26 編】

キューバ革命。当時800万人のキューバ傀儡政府に82人で上陸を狙う。しかし待ち伏せ作戦によりほぼ全滅・・・そこに残ったのは12人の革命だけ。その中にはカストロや軍医チェゲバラもいた。

最悪だ。

波が胃をひっくり返す。吐きたいのに吐けない。吐いたら音になる。音は撃たれる。


砂浜に落ちた瞬間から、もう上陸じゃなかった。投げ捨てだ。

銃声が雨を割る。砂が跳ねる。人が倒れる。倒れたやつの声が――出かけて、そこで切れる。


俺は腹ばいになって這った。泥が靴を奪って、荷物が背中を沈める。

銃が冷たい。手の感覚が薄れていく。なのに離せない。


「動け!」


怒鳴ったつもりはない。喉が勝手に鳴っただけだ。

声が割れると怖さが移る。だから短くする。合図だけ。


波が足首をさらう。口に砂が入ってじゃりっと歯に当たる。

咳が上がる。俺は飲み込む。胸が熱くなる。熱いのに寒い。雨のせいだ。たぶん。


背後で、靴を引きずる音がした。

引きずる音は嫌だ。怪我の音だ。


「兄貴!」


弟の声。ラウル。

俺は振り向きたくなって、半分だけ振り向いた。全部振り向いたら数えてしまう。数えたら折れる。


暗がりにラウルがいた。額に濡れた髪が貼りついて、膝を押さえてる。

くそ。こんなときに“弟”に見えるな。


「伏せろ!」

「……動ける。けど」


膝がやられてる。歩き方が遅い。遅いと狙われる。


俺が外套を掴んで引こうとした瞬間、横から手が伸びた。


「止まれ」


低い声。咳を飲み込んだあとみたいな声。

ゲバラだ。


ゲバラは俺の腕を掴んで止めた。強い。乱暴なくらい。なのに揺れない。

次の瞬間、弟の膝に手を置く。


「外れてない」

俺が何か言う前に、ゲバラが言った。

「……でも、このままじゃ歩けない」


ゲバラは弟の膝を挟んで、ぐっとねじった。

ラウルが声を殺す。殺せたのが奇跡だ。


「今だ。立て」


ゲバラが言う。医者の言い方じゃない。戦場の言い方だ。

ラウルが歯を食いしばって立つ。ふらつく。俺は手を伸ばしかけて止めた。ここで支えたら、弟は“守られる側”になる。


代わりに、背中を押した。

押して、前へ出させた。


俺たちは木の影へ転がり込んだ。

銃声が少し遠のく。代わりに聞こえるのが、息だ。自分の息と、他人の息。


……数えたくなる。

だめだ。数えたら壊れる。


でも、止まった瞬間に数字が落ちてきた。


十二。

八十二が、十二。


誰かが膝をつく。誰かが笑いそうになって失敗する。

ラウルは座り込んで膝を押さえる。ゲバラは吸い口を出しかけて、出さない。こいつ、弱さを見せない。だから俺も見ないふりをする。


水袋を探して渡す。ゲバラじゃなく、まずラウルに。

ゲバラが短く頷く。礼じゃない。確認だ。


俺は立った。足が震える。怒りなのか疲れなのか、よく分からない。


言わなきゃ散る。

散ったら終わる。


俺は言った。


「十二に人も生き残ればバティスタの野郎もおしまいだ!」


誰かが鼻で笑った。いい。笑えるなら、まだ生きる。


ラウルが掠れた声で言う。

「合言葉は……」


俺は頷いて、あえて低く言った。


「――祖国か、死か」


残ったやつらが、喉の奥から声を絞る。


「祖国か、死か!」


叫ぶな。叫ぶと軽い。

でもこの夜は、軽くなるのが怖かった。


俺は息を吸って、南へ歩き出した。

村へ。ここから先を、現実にするために。

82人の革命軍が上陸時すでに12人。

ここからどうやって大国を責めるのか。

だいたい、青梅市が関東から独立するみたいなきぼですね。。


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