0608 席次勝負
しかしエトワールさんの戦い方を見た12席の「審判の騎士」が怖気づく。
「私は棄権しますよ。
とてもじゃないが、彼女には敵いそうにない」
「わかった」
これでエトワールさんの不戦勝が決まり、席次の12席が確定した。
もっとも12席の人は聞いた所によると、元々どちらかと言えば、事務方の人で半分無理やり審判の騎士に任命されたと聞いた事がある。
そして次に11席の「審判の騎士」が話す
「私はやらせてください。
敵わないでしょうが、肌で彼女の強さを感じてみたい」
「承知した」
この時に10席の「審判の騎士」が申し出る。
「ちょっと待って下さい。私も戦います。
但し条件があるので、それを認めてください」
「何かね?」
「11席と一緒に戦わせてください」
「えっ?」
「別に二対一が禁止と言う訳でもないし、彼女さえ良ければですが・・・」
その申し出をゼルさんがエトワールさんに問いかける。
「うむ、どうかね?メッソン君?」
「ええ、構いませんよ?
・・・でも、そうですね?
もし出来れば10席から12席の方を三人同時に相手でよろしいですか?」
「えっ?審判の騎士を一度に三人相手に?」
流石に審判の騎士を3人同時に相手にすると聞いてコールドウェル本部長も驚く。
本来ならばそんな不遜なと憤慨しても良い所だが、ここに集まっている面々は全員エトワールさんの実力を知っているので、誰も怒りだしたりはしない。
「ええ、但し開始前に1分間の猶予をいただきたいのですがよろしいですか?
もし私が負ければもちろん、私は13席のままで構いません」
「ふむ、何か考えがあるようだね?
どうかな諸君?その条件で?」
ゼルさんに問われて3人の審判の騎士もうなずいて答える。
「ええ、構いません」
「私も興味があります」
「私も構いません、それなら戦ってみます」
「ではメッソン君、少々休憩して着替えて来てくれ。
30分後に試合を開始する」
「はい、わかりました」
30分後に今度は正規の魔道士の服を着たエトワールさんが来る。
そしてエトワールさんと「審判の騎士」3人の戦いが始まる。
いくら席次が低いとはいえ、審判の騎士3人が相手だと言うのに、エトワールさんはずいぶんと余裕そうだ。
「うふふ・・・さすがに審判の騎士3人は厳しいわよね~
でも面白そう~。
では今から一分したら試合を始めてくださいね?」
「わかった」
ゼルさんがそう言うと、エトワールさんは何やら複雑な詠唱を唱え始める。
「1分経過!試合開始!」
ついに試合が開始される!
そして試合開始と同時にエトワールさんは呪文を唱える。
「アニーミ・トリーデク・スペーラ・エスト!」
「くっ?上級タロスか?」
「しかしその程度で・・・」
その予想の通り、途端にその場で30体のタロスが現れる。
しかしそのタロスを見て相手の3人は我が目を疑った!
いや、見学している俺たちも全員だ!
そこには30人の、いや本人も入れて31人のエトワールさんが出現した!
しかも全員が本人と同じく魔道士の制服を来ていて、手には剣を持っている。
真ん中にいた本物のエトワールさんもいつの間にかタロスで作った剣を持っていて、それを空高く掲げると得意げに叫ぶ!
「これぞ必殺!エトワール・サーティワン!」
その光景に対戦相手の3人が驚く。
「こ、これは・・・!」
「上級タロスとはいえ、タロスでこれほどの物を作り出すとは・・・しかも戦闘中に!」
「ありえないだろ!」
確かにタロスはある程度自分の思い描いた姿格好を出現させる事が可能だ。
それはレベルと熟練度に比例し、レベルと腕が上がるほど複雑な物を生成させる事が出来る。
俺も最初はぬぼ~っとした泥人形のような物しか作れなかったが、今ではビシッ!とした甲冑式の戦闘タロスを作る事が出来る。
しかしこれほど見た目が人間と変らないタロスを作るには普通のタロスでは無理で、上級タロス呪文でなければ不可能だ。
しかしそれでもジャベックならともかく、タロスでこれほど精密に人間を模倣するのは尋常ではない!
こんなのを見たのは俺も初めてだ!
これには魔法の能力だけでなく、相当な芸術的センスが必要なはずだ。
流石はかつてロナバールのゴーレム大会の芸術部門で準優勝をしただけの事はあるという事か!
しかも驚くべきはいくら最初に1分間時間をもらったとはいえ、戦闘の最中にこれほど精密な物を生成できた事だ。
驚いた俺はエレノアに話しかける。
「凄いね?エレノア?」
「ええ、通常の時ならともかく、戦闘中直前にあれほどの物を生成するとは凄いですね?
私でもあれは難しそうです。
少々練習をしなければ出来ないでしょうね」
むむむ・・・エレノアにも出来そうにない事をやるとはエトワールさんはやるな?
伊達に使役物体魔法でユーリウスさんを超えると宣言してない!
しかもこのエトワール型タロスは強い!
上級タロス呪文で作っているので、一体一体のレベルが何と200を超えているのだ!
そしてもちろん本体との区別もつかない。
通常人間型のタロスを作っても、表情は固定されているのだが、このタロスたちはその表情まで変えて戦闘をするのだ!
これでは全く本物とタロスの区別がつかない!
これはもうほとんど分身の術だ!
これには3人も参ったらしい。
何しろ31人のエトワールさんを相手にするのに近いのだ!
「ちょっ!ちょっと!何これ!」
「こいつは参ったな!」
「一体、何なんだ!」
3人は善戦するが、31人のエトワールさんには勝てず、次第に追い詰められていく!
何しろ一人当たり、10人ものエトワールさんと戦わなければならないのだ!
見学している俺たちの間でも驚きだ。
他の上席の審判の騎士たちも驚いている。
「おいおい!凄いな!」
「冗談だろ?」
「なんだこりゃ!」
そう言っている間にも31人のエトワールさんが3人を攻める。
「参った!」
「私もです!」
「こっちもだ!」
ついに3人は完全に追い詰められて、その全員が降参をする。
エトワールさんの勝ちだ。
「これは・・・凄まじいですな?」
「ええ、とんでもないです」
「こんな凄まじい技を考案するとは・・・」
この必殺技「エトワール・サーティワン」はこの後、審判の騎士エトワールの伝説の技として語り継がれる事になる。
3人との勝負が終えると、今度は9位が戦う。
「私も戦います。但し一人で」
9位の彼女とエトワールさんが戦い始める。
さすがに9位ともなると、中々動きが良いが、それでも次第に追い詰められて身動きが取れなくなる。
「参りました!」
エトワールさんの勝ちだ。
戦いが終わると彼女はゼルさんに向かって話す。
「これで吹っ切れました。
本部長、例の話、受けます」
「いいのかね?」
「ええ、これですっきりしました。
私ももう90になりますし、デスクワークに復帰しますよ」
「わかった。それは助かる」
どうやらこの人はこれを機会に審判の騎士を引退して、事務職に戻るようだ。
8位はマックスさんだった。
エトワールさんとマックスさんの勝負となった。
マックスさんは結構頑張ったが、結局負けた。
「いやあ、負けた!負けた!」
マックスさんを負かせたエトワールさんの席次はついに8席となった!
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