0606 シノブ 対 ギルバート組
俺はギルバートたちの頼みを了承した。
「わかった。
ではやってみるかい?」
「はい、ありがとうございます」
さて、この連中と勝負をするとして、一体どのようにするか?
もちろん、普通に勝負をするなど論外だ。
一体、どうすれば良いだろうか?
俺が考え込んでいると、ミルキィが進言をしてくる。
「私が勝負を受けましょうか?」
「いや、頼まれたのはボクだからね。
ボクが引き受けるよ。
しかしまさか全力でやる訳にもいかないし・・・」
「こちらはタロスだけで勝負をしたらいかがでしょう?」
「そうだね、それが良いだろう」
言うなれば将棋で言う所の飛車角落ち、いや、こちらは歩だけで勝負をするような感じだがそれでちょうど良い位だろう。
俺は考えを決めるとギルバートたちに話しかける。
「では勝負方法だが、私は通常タロス魔法しか使わないし、自分では攻撃もしない。
まあ、多少タロスに他の魔法は混ぜるけどね」
「え、混ぜる?それは何でしょう?」
どうやらまだギルバートたちはタロス魔法に他の魔法を併用する方法は知らないらしい。
「ああ、まだ君たちは知らないかも知れないが、タロスには多少他の魔法を混ぜる事が可能なんだ。
もちろん君たちは魔法を含めて何をしても良い。
武器も木剣ではなく、いつもの君たちの武器に戻してくれ。
それでどうかな?」
「はい、もちろんそれで結構です!」
「ありがとうございます!」
「わかった、ではミルキィ、審判を頼むよ」
「はい、お任せください」
こうして俺とギルバート組の試合が始まる事となった。
周囲には先ほどの観衆が残ってまだ見ている。
さらに追加の連中も加わったようだ。
その新しく来た連中がそこにいた連中と話している。
「おい!何だこれは?」
「青き薔薇の団長が、知り合いの六級の組合員に頼まれて模擬試合をするのさ」
「へえ!そりゃ面白そうだ!」
「しかもあの団長はタロス魔法以外の魔法は使わないし、自分では攻撃もしないらしいぜ?」
「おいおい!それでどうやって戦うんだよ!」
「さあな」
観衆がザワザワと騒ぐ中、ミルキィが合図をする。
「それでは始めてください!」
試合開始と同時に俺はタロス魔法を唱える。
「アニーミ・エスト!」
俺が呪文を唱えると俺の周囲には透明な半球型の防御壁が出現する。
これはアンジュが対アムダルン校戦で使った物とほぼ同じ物だ。
ただし、アンジュは上級タロス魔法で作ったが俺は通常タロス魔法で作った。
だから見た目は同じでもレベルは100だ。
しかしそれを見たギルバートたちは驚く。
「これは・・・」
「タロス魔法でこんな物も作れるのか!」
「感心している場合じゃないだろ!
攻撃だ!攻撃!」
ギルバートたちは六人総がかりで俺の防御壁を攻撃するが、もちろんビクともしない。
ガキィン!と激しい金属音が闘技場に響き渡るが、俺のタロス防御壁はビクともしない。
普通の攻撃では無意味と悟ったギルバートがテキパキと指示を出す。
「ウォルター!俺とお前はタロスで攻撃!
デボラとヨハンはこのまま剣で攻撃!
アンナとハンナは魔法で攻撃してくれ!」
「了解!」
しかしどんなに6人が攻撃しても俺の防御壁はビクともしない。
そして俺は次の行動に移る。
「アニーミ・エスト!」
俺は鷹や熊、狼など様々なタロスを出してギルバートたちを攻撃する。
それはまるでタロスの見本市会場のようだ。
試合を見ていた観客たちも驚く。
「こ、これほど様々なタロスを出せるなんて!」
「凄い!」
「俺は鳥のタロスなんて初めてみたぞ!」
「使役物体魔法って、ここまで色々と出来るのか!」
「驚いたぜ!」
「さすがは青き薔薇の団長だな!」
「ああ、噂に違わず凄い腕だ!」
そう言っている間にも俺のタロスは6人を攻撃する。
ギルバートたちは熊に叩かれ、狼にかじられ、鷹に突かれている!
蛇に巻かれたり、蛙にしがみつかれたりするのは余興だ。
しかもその蛇や蛙には凍結や雷撃を仕込んでおいた。
6人は俺の多種多様なタロスたちに襲われて大混乱だ!
「うわわ!何だこれ!」
「この熊強いぞ!」
「狼も素早い!」
「うわっ!この鷹をどうにかしてくれ!」
「蛇が巻き付いてくる~、しかも冷たい!凍っちゃうよ!」
「この蛙、しびれる~!」
そして俺のタロスによって6人は敗北した。
「降参です!」
「参りました!」
「さすがは青き薔薇の団長ホウジョウ様です!」
「タロスでこれほど多彩な攻撃が出来るとは思いませんでした!」
「しかもタロスに他の魔法を併用できるなんて知りませんでした!」
俺は笑って答える。
「ああ、タロスに凍結や電撃を足すのは少々難しいからね。
でも君たちにも出来るようになると思うよ。
参考になったなら良かったよ」
「はい、ありがとうございました!」
「あれほど多彩なタロスの攻撃は初めてみました!」
「うん、私も色々と勉強になった。
君たちも4級の試験を頑張ってくれ」
「はい、頑張ります!」
そう、俺は先ほどの三馬鹿とデボラたちの試合である事を学んだ。
今更ではあるが、やはり全般的に男は相手が女性だと甘く見るのだ。
それも変に自己中心的で傲慢な男ほどその傾向は強い。
そして盗賊たちのほとんどはそういう男たちだ。
俺は初めてシルビアたちに頼まれて女装して囮捜査を行った時に、こんな馬鹿な作戦に引っかかる奴がいるものか!と思っていた。
しかし結果は予想に反して盗賊どもは入れ食い状態だった。
俺はあまりにも不思議に思ったので、実際に捕まえた盗賊たちに質問をしてみた。
なぜ、あんなに不自然な二人組を疑いもせずに襲ったのかと?
しかし盗賊たちの答えは奮っていた。
美少女の二人組なら襲わない訳はない!と・・・
あんなヒラヒラとした服装をした清楚な少女が強い訳はないし!
襲ってよし、売り飛ばしてよし、身代金を要求してもよし、と全てが揃った二人組を襲わなければ一体盗賊は誰を襲えば良いのか?と・・・
そして一人の場合だと無言で歩いているので怪しいが、二人組だとキャッキャウフフと話しているか、恐々と二人で抱き合いながら歩いているので、「この二人は鴨だ!」と判断したらしい。
いや、まあ、もちろん俺たちはそういう風に演技して歩いていたからね?
ちなみに3人以上だと、相手が少女でも警戒するらしい。
何故ならば3人組以上だと、大抵は一人がリーダーで魔法使いだったりする確率が高いからだそうだ。
しかし少女が二人組の場合は「つい、うっかり迷宮や森に来てしまった」と思い込んでいたらしい。
だから鴨だと思ったと・・・
それを聞いて俺はあきれ返った。
同時に少女の二人組が囮捜査で入れ食い状態な理由もわかった。
・・・いやはや、こいつらは巨大な鳥篭に美少女の人形を二人入れておけば、それだけで罠に引っかかるのではないだろうか?
そして今回の三馬鹿たちの行動でその自分の考えに確信を得た。
そう考えた俺はアンジュと一緒に、ある魔法ジャベックを作った。
エトワール・メッソン美術監修の美少女型ジャベックだ!
このジャベックは見た目は13歳から17歳ほどの可憐な美少女に見えるが、実はレベルは150で、魔法も魔道士級に使えるし、剣や棒術もそこそこ使える戦魔士型ジャベックだ。
その強さはうちで言えばバルキリーに匹敵するほどだ!
そんな美少女ジャベックを少々見栄えを変えて、俺が四体、アンジュが3体で計7体造った。
その7体はどれも金髪や銀髪に黒髪、巨乳に賓乳、清楚な御嬢様に可愛い妹型とタイプは色々あれど、どれもこれもが男ならいかにも襲いたくなるような美少女型ジャベックだ。
金髪巨乳のマイア、銀髪巨乳のエレクトラ、茶髪巨乳のタユゲティ、黒髪巨乳のアルキュオネ、金髪貧乳のケライノー、銀髪貧乳のステロペー、黒髪貧乳のメロペーの7体だ。
完成品の7体を見たエトワールさんはうなずいて俺たちに言った。
「よし!これなら男どもが襲い掛かる事間違いなし!
そこらの街の美少女ジャベック屋でもこれほどの物は売ってないわ!
私が保証するわよ!」
何だか怪しげな保証をされてしまったが、ゴーレム大会の芸術部門で準優勝するほどの人が保証するのだ。
間違いはないだろう。
そして俺とミルキィでその7体に様々な盗賊の襲撃パターンを学習させて、およそ大抵の盗賊に対応可能にした。
同時に魔法協会と組合から女性魔道士や女性組合員を特殊な任務をすると言って募集した。
その応募してきた希望者の中から見た目が若い上に弱々しく、芝居っ気のある者を採用して、こちらにも俺とミルキィで盗賊捕縛のための方法を色々と教えた。
そしてその研修が終わると実際に美少女ジャベックと組ませて囮捜査をさせてみた所、上々の出来だった。
見事に美少女型ジャベックに釣られた盗賊どもは次々に捕縛されていった。
もっとも中には単なるナンパ目的の相手にも目をつけられて困った事もあったと担当の捜査員は苦笑していた。
これにて一件要請ミッションを達成だ!
グレゴールさんも俺に礼を言ってきた。
「いやあ!シノブさん!
このような方法を考えるとはさすがですな!
確かにこれなら盗賊たちも騙されるでしょうし、うちや魔法協会としても助かります。
人とジャベックの組み合わせを変えれば相手にもわかりにくいでしょうし、囮としても問題ありません。
多少の捜査員の入れ替えは必要でしょうが、これで大丈夫でしょう」
「いえ、御役に立ててよかったです」
その頃には無事に昇降機を設置し終わり、二つの要請ミッションが終了した。
そして昇降機の設置祝いにロナバールのサクラ魔法食堂では関係者を招いて宴会を開いた。
今回は魔法協会の魔道士たちがボロネッソさんやカリーナさん、イルーゼさん以外にも結構手伝いに来た人がいたので、かなりの人数になったが、みんな満足してくれたようだった。
これで残る要請ミッションは一つだが、その前に魔法協会のロナバール本部ではちょっとした問題が起こっていた。
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