0601 要請ミッション
俺は昇降機のメンバーを招集する事にした。
基本的に前回のメンバーは全員誘うことにした。
例外は大アンジュにいるアルフレッドだけだ。
今回は前回よりも人数が増えて人員には困ってないし、エレノアとシルビアを作業に加わらせてしまうと、大アンジュの方が人手がいなくなってしまうので、アルフレッドには、大アンジュの方を頼んだ。
昇降機の人員を集めている時に俺が一番驚いたのはシャルルとポリーナの事だった。
俺たちと別れた後で、ポリーナはパーシモン村へシャルルと一緒に中等魔法学校卒業の報告をして、正規の魔道士になったと村の人たちに伝え、ロナバールへ帰って来た所だった。
「え?何でシャルルもポリーナと一緒に行ったの?」
「ええと、それはそのう・・・」
何だか恥ずかしがってそわそわとしているポリーナに代わってシャルルが答える。
「ああ、実は僕はポリーナといずれ結婚しようと思っているんだ。
それでパーシモン村へその報告で一緒に行って来たのさ。
ついでにノーザンシティへ行って御祖父様と御祖母様、それにユーリウスさんにもその報告をして来た所なんだ。
君たちにはその後で報告をしようと思ってね」
「ええっ!」
そのシャルルの言葉に俺は心底驚いた!
「実はそうなんです」
ポリーナも恥ずかしそうに俺に報告をする。
「それは・・・良かったね・・・」
俺はあまりにも意表を突かれたので、たどたどしく答える。
そうか~シャルルの想い人ってポリーナだったんだ~
あれ?すると、俺以外はあの時点で全員気がついていたって事か?
俺がそう考えてうちの面々をそっと見ると、エレノア以外の全員が呆れ顔だ。
「・・・やはり気がついていなかったのですね?」
「相変わらず驚きの鈍さです!」
「そうですね」
「あのさ~、御主人様、途中から一緒だった私にだってすぐにわかったぜ?」
おう!シルビアたちはともかく、天竜のライラにまでそこまで言われるか?
「ま、まあ、おめでたいじゃないか?
結婚式には呼んでくれよな!」
「もちろん、そのつもりさ。
今回のミッションが終わったら、僕たちはノーザンシティに住むつもりだよ。
そこで落ち着いたら結婚しようと思う。
それとたまにはパーシモン村へも行こうと思っている」
それを聞いた俺がふと不思議に思って聞いた。
「あれ?そう言えば、バッカンさんの所はいいの?」
「ああ、実はバッカン師匠に卒業の報告をしたら「天賢者様になった奴に教える事なんぞあるもんか!お前はもうノーザンシティに行ってシモンのやっていた仕事の跡でも継げ!但し困った事があればいつでも相談には乗るから安心しろ」って言うんだよ。
だからポリーナと一緒にノーザンシティへ行く事にしたんだ。
御祖父様やユーリウスさんにも色々と手伝って欲しいと頼まれたしね。
それと今後はパーシモン村の事も気になるしね」
「なるほど」
そりゃ納得だ。
シャルルも今や天賢者なんだからさぞかし頼りにされる事だろう。
パーシモン村でも貴重な天賢者が村の関係者になって万々歳だろうな。
そしてその前回のメンバーに加えて、今回はアンジュとライラ、それに豪雷、疾風がいるし、アレクサンダー、フリッツ、ライマーたちもいる。
それとサイラスさんの紹介でマシューズさんも加わった。
しかも昔からいた者も、全員3年前とは比較にならないほどにレベルも上がっている。
大森林領の開発もあるから大変だが、こちらはそんな時間がかからないし、大丈夫だろう。
それにそちらの方はアルフレッドとニコラスとオスカーに任せて来たからそれほど問題はない。
それにしてもこの3年で本当にみんなずいぶんと変ったものだ!
前回昇降機を設置したあの時、俺はまだただの風来坊の魔士で、魔法食堂の経営もしていなかった。
それが今や天賢者で、サクラ魔法食堂の経営者だ!
しかも子爵様でもあり、「青き薔薇」の団長でもある!
シルビアだって魔法協会の受付から俺の奴隷となり、魔法修士になった。
シャルルとポリーナなんて結婚だ!
そして当時はいなかった、アンジュ、ライラ、豪雷、疾風、アレクサンダー、フリッツ、ライマー、ニコラスたちがいる。
うちの人員で前回の時とさほど変わらないのはエレノアとペロンくらいのものだ!
たった3年の間の変りようとは思えないほどの事だ。
昇降機の設置は基本的には前回と同じだ。
各階の責任者を決めて安全地帯を作り、上下を繋げてジャベックを生成する。
大事業とはいえ、流石に俺たちも3回目となると、かなり手慣れてきている。
今回は俺たち青き薔薇の関係者だけでも十分に対応出来たが、前回と同じメンバーを誘ってみる事にした。
打診した結果、ほとんどのメンバーが参加表明をした。
カベーロスさんなどは、また店舗を増やせると大いに乗り気だ。
ま、うちも魔法食堂の支店を増やす予定だしね?
ゼルさんことコールドウェル本部長はどうしようかと考えたが一応誘ってみる事にした。
ゼルさんは誘った事自体には大喜びだったが、さすがに今回は他の仕事が忙しいらしく、2週間近くもこちらに関わるのは無理らしい。
ま、うちの魔法協会支部の事もあるからね。
その代わり、魔法協会の人員は好きに使って欲しいとの事だったので、エトワールさんを初めとして何人かの職員に手伝ってもらう事にした。
今回は興味があると言って、ボロネッソさんやカリーナさん、イルーゼさんも交代で作業の手伝いに来てくれた。
もっともエトワールさん曰く、その3人は作業完成の後の打ち上げ宴会目当てだと笑っていたが・・・
今回は昇降機を4本も作る予定なので、修行も兼ねて、俺とシャルルとアンジュ、エトワールさんでそれぞれ1本ずつ作る事になった。
エレノアはその監修と確認だ。
エトワールさんは始めての昇降機作成作業という事で大いに乗り気だ。
「凄いわ!シノブさん!こんな大事業に参加出来るなんて感激よ!
前回はただ安全地帯を確保するだけだったけど、今回は昇降機その物を作るんですものね!」
「ええ、頑張ってください」
「もちろんよ!」
シャルルも乗り気だ。
「前回は僕も穴を通して安全地帯を広げる作業だけで精一杯だったからね。
今回は昇降機をちゃんと作って見せるよ。
まあ、大アンジュの強化合宿でも一回作ったから大丈夫だよ。
バッカン師匠にも良い機会だから、ちゃんと昇降機を作って見せろと言われたからね」
「ああ、頼むよ、シャルル」
昇降機はジャベック作りの中でもかなり難しい。
昇降機を構成するジャベックは正確には「複合連動ジャベック」と言って、複数のジャベックを連動させて動かすジャベックなのだ。
そもそもジャベックの大きさと言う物には限度があって、せいぜい長さ30メル程度の物が限界なのだ。
つまりうちの魔法飛行艇であるリンドバーグ辺りが大きさの限界で、それよりも大きなジャベックを作る場合はこの複合連動ジャベックになるのだ。
もっともリンドバーグも実は複合連動ジャベックで、各ジャベックが連動して魔力を補って動いている。
そうでなければ飛んでいる間に魔力が尽きてしまう。
リンドバーグは7つのジャベックが連動していて、操縦系統以外のジャベックは一つのジャベックが飛行をしている間に、他のジャベックが魔力を充填しているのだ。
これによって何日でも飛び続ける事が可能だ。
うちの他の魔法飛行艇も似たような作りの複合ジャベックだ。
しかし実はこの連動ジャベックというのはかなり難しく、中々作れる魔法使いはいない。
そして昇降機ジャベックは内籠と外側のいくつかのジャベックが連動して動くジャベックなのだ。
前回と同じく、2週間ほどで昇降機は完成予定だ。
これで南西の迷宮も1階から10階までの昇降機が3つ、10階から20階までの昇降機が2つ出来て、使い勝手が良くなった。
もっとも10階からの昇降機は危険なので、使用するには1級以上の組合員証か、魔道士か魔法学士の称号印を乗る時に見せる必要がある。
何も知らない初心者が11階以降に突然行かないようにするための処置だ。
こうしないと7級や8級辺りのやっと迷宮へ来れた程度の者が、怖い物知らずでいきなり20階などへ行ってしまうからだ。
その結果はもちろん言うまでもない。
そもそも7級辺りではロナバール南西の迷宮自体がまだ時期尚早なのだ。
是非初心者用のロナバール北東の迷宮で鍛えてからこちらへ来て欲しい。
そして今回は一階層の部分の休憩広場の拡張と共に、乗り継ぎ部分の10階層にも小規模ながら休憩広場を作る事にした。
乗り継ぎのためにそれなりに混雑が予想されると考えたからだ。
そこには休憩所と協会と組合の共同出張所の他に、トイレとうちの迷宮支店を設置する事となった。
これでロナバールの南西迷宮には、うちの迷宮支店が2つ出来る事となった。
店長に抜擢された者は大張り切りだ。
こうして新たな昇降機とそれに付随する物が着々と出来上がっていった。




