20.学園祭準備①
「どうですか? リリアーヌ様」
「上出来ね」
ティアナが複写のスキルで一枚の写真を写す様子を、後ろから覗き込んだ。
両手でもった紙にわずかに魔力が集まり、数秒するとそこには隣に並んだ写真と同じものが浮かび上がる。
「魔力の消費具合はどうかしら? 2時間でどの程度複写できる?」
「1枚10秒かかりませんから、えーと……」
「2時間で720枚ね。ティアナさんは、魔力や集中は持ちますか?」
計算が得意なコレットがさっと暗算で複写可能な枚数を弾き出し、ティアナに尋ねる。その問いに対して、魔力は問題ないと思います、と彼女は頷いた。
「学園で試験的に始めるなら、十分な数じゃない?」
「少ない数から始めて感触を掴むべきだと思うので、十分すぎます。いつから販売スタートの目標にしますか?」
「……ねぇ、コレット。明日からの週末、予定は空いてるかしら?」
「? はい、暇ですけど」
その言葉に満足して、にっこりと微笑む。貴女に予定があったらどうしようかと思っていたけれど、私こういう運はとても良いのよね。どうやら、予定通り進められそうだ。
「学園祭でお披露目よ」
忙しくなるけど力を貸してね、と二人の肩を軽く叩く。ティナさんはできる限り、コレットはお友達価格で目一杯働いてもらうわ。
「……試験的な販売ですか?」
「いいえ? 本格始動」
コレットは固まった。目があちこちに泳いでいるから、頭の中で必死にこの先の予定を考えているのだろう。たっぷりと時間を置いて、赤毛の少女はトレードマークのツインテールを振り乱しながら絶叫した。
「本気で言ってます!? あと1ヶ月しかないんですよ!? 」
突然叫び出したその様子に、ティアナが驚いて仰け反っている。あらあら、急に大声を出したらせっかく慣れてきた彼女を怯えさせてしまうわ。
「もちろん本気よ。学園祭の出店締め切りが今月中だから、今夜から我が家で計画書作成に協力してね」
――貴女の予定が空いていてよかったわ。
頭を抱えるコレットの手を取り、優しく握り締める。
「週末の間に、お兄様に事前に見ていただいて、肖像の利用許可までもぎ取るわよ」
「……それで来週から、ティアナさんには、複写を始めてもらうと?」
「ええ、話が早くて助かるわ。有能な仲間がいるのにみすみすチャンスを逃すつもりはないの」
ぎゅっと手を握って、優秀な貴女がいれば大丈夫よ、と微笑めば、コレットがわずかに頬を赤らめながら不満げな声を漏らす。
「これだから、人たらしは……」
「何事も納期があった方が、パフォーマンスを発揮できるものよ! ひと月ほど忙しくなると思うけど、よろしくね」
週末のコレットの予定も確保できたので、使いを呼んでコレットの家と自宅への言伝を頼めば、やっと目の前の彼女は観念したように息をついた。せっかく、優秀な相棒と学生会長のお兄様がいるんだから、協力してもらわないとね。
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