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19.作戦会議③

19.作戦会議③


ティーカップに添えられたティアナの両手を包むように握る。


「大丈夫、貴女に厳しく当たるつもりなんてありません。今日は、侯爵令嬢ではなく単なる『リリアーヌ』としてお茶をしにきたんです」


だから今日はお話ししましょう、と薄桃色の瞳を覗き込めば、はい、と消え入りそうな声だが肯定の返事が返ってきた。そのことに満足して手を離すと、今度は彼女から遠慮がちに声をかけられた。


「あ、の、リリアーヌ様」

「何かしら?」

「今日私は何故ここに呼ばれたのでしょう?」


その言葉に、隣のコレットへ視線を向ける。話してないの? と言外に尋ねれば、少しだけ呆れたような顔をしながらため息が返ってきた。


「リリィは人たらしだから、貴女が直接話したほうが良いと思って」

「何よそれ」

「褒めてるわよ?」


とてもじゃないけれど褒めてるようには見えないわ。侯爵令嬢として振る舞っているなら腹を立てるべきであろう態度も、今日はお茶しにきただけなので気にはしない。紅茶とケーキが美味しければ満足よ。


「ティアナさんは、複写のスキルをお持ちとうかがったのだけれど、その認識に間違いはないかしら?」

「はい。特に珍しくもないスキルだと思いますが、それがどうしたのですか?」


コレットに説明したとき同様、アルノルト様の写真を手帳から取り出し机に置く。


「ここだけの話にしてほしいのだけれど、私、この写真のアルノルト様が好きなの」


まぁ、とティアナは少しだけ頬を染めて、瞳を輝かせた。どの世代の女子も少なからず色恋沙汰の話には興味があるものだ。彼女も先ほどまでの遠慮がちな態度とは変わって、視線がこちらを向いた。


「彼は貴族にはならないから、私はデビュタント前に商会を立ち上げて、家から出ようと思ってるのだけれど、その協力者を探しているわ」

「商会……?」

「最初は、学園のクラブ活動として始める予定なの。だから、初めはお給料を渡したりは出来ないのだけれど、……そうね、週に2時間ほど、活動に協力していただけない?」


学生会の活動のようなものでしょうか?と、首をかしげるティアナに肯定の意図で頷く。


「まずは一度、活動している教室にお茶しに来てくださる? 帰りの時間は遅くならないようにするわ」

「はい、週2時間程度であれば、実家の手伝いにも支障をきたさないので大丈夫です。……それより、リリアーヌ様」

「何かしら?」

「……平民の私なんかで、よろしいんでしょうか?」


私を呼ぶときも、戸惑いの意見を告げる時も、遠慮がちに何度か言葉を飲み込んで、ティアナは恐る恐る声を上げた。机の上に置かれた手が、先ほどと同じように小刻みに震えていたので、再びそっと手を重ねた。


「学園は、身分の差を作っていないわ。そんな学内で、私が貴女を誘っているのだから気にする必要はないわ。……ねぇ? コレット」

「えぇ、男爵家の娘の私がリリィと呼んでも怒りもせず笑っているような人なの」


ティアナを安心させるようにコレットもその手に掌を重ねた。無理だと思ったら気にせずすぐに辞めていいのよ、と冗談めかして笑うコレットの言葉に、私も目の前の彼女も顔を見合わせて笑ってしまった。



 

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