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復讐は竜の味  作者: 猫殿
6/23

手合わせ

「親父に似過ぎてビビった」


髪を短くし、男装している俺を見た兄の第一声がこれだった。


「俺が1番ショック受けてるんだから言わないで。それに父さんに似てるってことは兄ちゃんにもそっくりって事だからね」


鏡を見ながら自分で髪を切ったのだが、短くなるに連れて、どんどん父に似ていった。女の子としては、複雑な気分だ。


兄には騎士団に入団する為に手助けしてもらった。彼の従兄弟と言う形で入団試験を受ける権利を特別に貰ったのだ。ワイバーン隊には一般人も入団出来るが、体力テストや筆記テストなど、本試験を受けるには何週間もかかってしまう。そこで兄に口添えをしてもらい、特別に本試験を受けさせてもらった。


体力は農作業で、動物の扱いは馬や羊で慣れてたので、兄から試験の内容を少し聞いていたお陰もあり、無事一発合格した。


そこ、コネとか言わない。



ワイバーン隊は、魔獣を殺す討伐部隊、誘導捕獲する誘導部隊、ワイバーンの育成繁殖をする養成部隊とに分かれている。


兄はワイバーン隊の中でも討伐部隊に所属しており、俺は誘導部隊だ。その中で兄は優秀なようで、忙しい中無理を言って会ってもらった。


俺が髪を短くし、男装をしていることにも特に質問せず、話を聞くだけ聞いて協力することに決めたようだ。


後日、入団試験に受かったことを兄に告げに行くと、おめでとう。と短く返された。


「事情は知らないけど、死ぬなよ」


去り際にそう言われる。彼は昔から察しが良いところがあった。何か命に危険がある事をやろうとしていると、悟ったのだろう。



私はただ頷いた。昔はもっと家族と仲良くすればいいのに、とか思っていたが、兄も家族を想っていないわけではない。


その適度な距離感が今は心地よかった。



***



「ハァ、、ハァ、たいちょー、ドラゴンとワイバーンの、違いってなんすか?」


手合わせが終わり、汗だくで転がったまま尋ねる。ワイバーン達もくたくたらしく、私たちのすぐ側で寝っ転がって休憩している。


「そりゃ、知能の差が1番大きいだろうな。お上はドラゴンが人間並みの知能を持っとると言ってるが、ありゃ人間以上だ」



隊長は息の乱れもなく、汗ひとつかいていない。


彼の名前はグレイ・ハウンド。ワイバーン隊全体の隊長だ。実力は竜騎士の団長と引けを取らないとか。


ちなみに、わんこ?と聞いて初対面でゲンコツを貰うのはお約束らしい。かなり痛かった。



「お前、なんでそんなに強くなりたいんだ?誘導部隊なら、速さで勝負だろ。強いに越したことはないが、、」



痛いところを突かれる。隊長に憧れてるとか何とか返せば見逃してくれるだろうか。


「そりゃあもちろん、たい、、」



その時、2人を包むほどの影が頭上に落ちた。パッと上を向くと、練習場に居た隊員達も空を見上げる。



太陽を覆い隠すように、ドラゴンが飛んでいた。逆光で見づらいが、体表の色は黒だ。あいつが悠々と空を散歩している。



ワイバーン達もドラゴンの存在に気づいたらしく、一斉に騒ぎ始める。彼らは、自分より強いものが近くにいると落ち着かないのだ。ドラゴンが近づくと毎回こうなってしまう。


俺と隊長も、相棒のワイバーンを宥める。


「うちらの練習場には近づくなと言ってあるんだがな、まったく、、」



ワイバーン隊と、竜騎士の練習場は比較的離れていて、普段なら顔を合わせもしない位置にあるのだが、何度言ってもフィルは気にせずそこら辺を飛び回るのだ。隊長も呆れ顔でいる。



「どうせまた女を乗せてるんだろうな、羨ましいこった」



やはり、あの言葉も嘘だった。今更驚きはしないが。皆んながワイバーンをなだめ終わった後も、私は彼らが飛び去った方を見つめていた。


「おい、アラン、どうした?」



「いや、何でもないっす。今日はもう帰りますね」


挨拶もそこそこに、俺は練習場を後にした。



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