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復讐は竜の味  作者: 猫殿
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別れ

 カチャン!!


 床にスプーンが落ちる音で脳が一気に動き出した。


「ショーン、父と協力して町の人を集めて。私はすぐ探しに行く」


 彼が理解したことを確認してすぐに私は走り出した。私の家からアマンダの家まで、徒歩で数分だ。家に帰る間に何かあったのだろうか。頭の隅にあの団長の顔がちらついた。攫われた可能性は、、いや、竜騎士がそんなことをするはずがない。まずは周辺を探してみないと。


 エプロンを着けたままなのを忘れ、ひたすら走り続けた。私の家からアマンダの家までの道。そこから半径五キロほどの距離を円状に走る。何も見落とさないように目も耳も凝らしながら。何時間走っただろうか、もう日が傾き始めている。


 森との境界まで来たとき、父と町の人へ連絡を済ませ一人で創作していたショーンと鉢合わせた。


「ショーン!見つかった!?」


 息が切れている状態でそう問いかけるが、彼が答える前に分かってしまった。彼は足元を見つめて首をゆるゆると横に振る。横にはアマンダの彼氏もいた。ショーンについて一緒に探していたようだ。


「ノラのお父さんにも話して、町の人たちと協力してアマンダを探してくれてるよ」


「そう、、もしかしたら、魔獣が居なくなったから森に入ったのかも、、探してみましょう」


 フィルが魔獣を退治してくれたので、森まで来る人は徐々に増えていた。アマンダも森で何か収穫するつもりだったのかもしれない。


 私は三人で手分けして探しに行きたかったのだが、ショーンが迷子になったら困ると言って三人で行動することになった。森の入り口からは人が一人通れそうな道が奥までずっと続いている。まずは道なりに探そう。


 日が落ち始めていたのでほぼ走っている状態で森の中を進んだ。森の中は木々が生い茂っていて、すぐに真っ暗になる。急がなくては。


 森の中は、思っていたより静かだった。鳥の鳴き声さえ聞こえない。何かおかしい。



***



 「今日はもう無理だ。一旦戻ろう。このまま探し続けてたら僕らも危ない」


 もう彼らの顔もかろうじて確認できるほどの暗さだった。確かにこのままだと帰り道さえ見失ってしまう。しかし、また明日探そうという気にはとてもならない。今この瞬間にもアマンダはどこにいるかも、何をしているかもわからないのだ。小さいころから身近にいたのでこんな事は初めてだ。


「そう、、そうね、、一旦戻りましょう。私は明かりを持ってきてまた捜索を続けるわ」


「ダメだ。魔獣は居なくなったかもしれないけど、他に野生動物はたくさんいる。危険だよ」


 後ろでアマンダの彼氏もうんうんと頷いている。


「ショーン、妹が心配じゃないの?どこにいるかさえ分からないんだよ!?」


 この発言は少しまずかったかもしれない。彼も妹が行方不明で心配じゃないはず無いのに。


「いい加減にしろよ!!、、ごめん。、、ノラまで迷子になったらどうするんだ。今日は皆と合流して情報交換しよう。向こうでアマンダが見つかってるかもしれないし」


 いつも優しい彼が怒鳴るのを初めて聞いた。はっとした私は少し冷静さを取り戻した。彼の言う事も正論だ。ここは言うとおりにした方が良いだろう。


「私も、ごめんなさい。町に戻ろう」


 帰り道は誰も一言もしゃべらなかった。異様な緊張感があたりに漂っている。帰りは少し違う道を通り、見つかる可能性が少しでも高くなればと願った。


 もう森の出口まで数分というとき、不思議な匂いがすることに気づいた。木や草の匂いじゃない。鉄臭いというか、気分が悪くなるようなにおいだ。


「ねえ、何か匂いがしない?」


 先頭を歩くショーンに声を掛けた。いきなりだったのでびっくりしたのか勢いよくこちらを振り返る。

 

 「匂い?、、、確かに、匂うな。これは、、血の匂い、、?」


 血と聞いた瞬間頭の中を嫌な予感が駆け巡る。私は二人が止めるのも聞かず、匂いのする方へ走っていった。ただ動物が死んでいる所を想像しようとするが上手くいかない。


 アマンダ、、無事でいて。


 道の近くに川が流れていて、河原の方へ傾斜がついていた。匂いはその近くから匂っているようだ。傾斜を一気に駆け下りていくと、川の横に何かが横たわっているのが見えた。人の形はしていなかった。


 やっぱり動物の死骸だったのだ。ほっとしてそれに近づくと、血の匂いが一層濃くなった。


 いや、動物の死骸にしてはおかしい。普通死骸があればそれを食べにまた動物が寄ってくるはずだ。しかし、それには食い荒らされた跡がなかった。なのに血の匂いがする。


 さらに近づいてみると、暗い中金色のものが見えた。


「うそだ、、、、っ、、アミー、、!」


 膝から一気に力が抜けた。もはや人間の形を残していないほど彼女の手足は曲がるべきじゃない方向に曲がっていた。髪の毛には泥がこびりつき、前の美しさの面影もない。目と口は恐怖の形に開いたままだった。


「ノラ!!返事をしろノラ!!」


 傾斜を同じように走ってきたショーンたちが私を見つけ、隣に立った。私は息ができず状況を説明することすらできない。頭が真っ白だ。


「いきなり走り出すな!見失ったらどうす、、どうしたノラ?」


 遅れて目の前の死体に気づいたショーンとアマンダの彼氏は言葉を失った。




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