出会いⅡ
「話を聞いてもらった所で引き受けてくれるかどうか、、、」
父に早速話をしていたら、案の定不安そうな顔をしている。
「でも、話してみないと分からないでしょ?何もしないうちに諦めるのはもったいないよ」
父は少し頑固だが、話を聞かない訳ではない。しぶしぶと言った様子だが納得してくれた。
***
「私も隣町に行く」
馬の準備をしている父にそう伝えると、明らかに難しい顔をした。
「私が話している間はお前一人でいる気か?」
「危なそうだったら父さんと一緒にいるから、だいじょう、、」
ドンッ!
私が言葉を言い切る前に、誰かが後ろから抱き着いてきた。
このためらいの無さは、、
「私も行く!」
「アミー!倒れるところだったじゃん!」
やはりアマンダだった。走ってきたのか、ほっぺが少し赤くなっていた。
「ふむ、アマンダも来るのか、まあ良いだろう」
「彼氏には伝えてきたの?」
父はアマンダが来るのを許したが、私は心配になった。
彼女の彼氏は少し過保護なのだ。
「だーいじょうぶ!私がすることに意見なんてさせないから!ママとお兄ちゃんにはちゃんと伝えてきたしね」
さすが私の幼馴染である。
「しょーがないなあ、、」
「やった!早く馬の準備しよ、ノラ!」
そう言い残すと馬小屋に走って行ってしまった。
まったく、とことん自由な子だ。
***
馬の準備が終わり、三人で町を目指した。隣町までは馬を急がせても2時間はかかる。騎士団が町から出るまでに着かなくては。
私はいつも農作業を手伝ってくれている、黒毛の牡馬に乗っていた。
アマンダは鹿毛の牝馬、父は鹿毛の牡馬に乗っている。
「少し長い旅になるけど、よろしくね」
そう言いながら馬の首を撫でると、了解した。と言うように鼻を一つ鳴らした。
隣町まで向かう間、私とアマンダでお喋りをしながら移動した。
会話は町の誰だれが子供を作って結婚した、あそこのイケメンが~などくだらない世間話だ。アマンダはもちろん彼氏の話を特に熱心に話していた。
父は一度も口を挟まなかった。退屈な旅路にしてしまっただろうか。
町に着いてから少し後悔した。
「騎士団はそもそも今どこらへんに居るんだろう?アミー分かる?」
今になって騎士団がどこに居るのか知らないことに気づいた。
問いかけられたアマンダは知らないことが信じられないという風に首を横にブンブン振る。
「きっと男爵家の別荘に居るんだろう、あそこはうちより裕福だからな」
言葉尻にとげとげしさを感じたが、父の気持ちも分かったので、そう、としか言えなかった。
***
男爵家に着くと、すぐに使いの者の案内を受け、男爵と会えるようにしてくれた。
この町の男爵はうちの父と違い、立派な服を着て、豊かな髭を蓄えていた。
少しのけぞるようにこちらを見下ろしている。自分の町に竜騎士たちが滞在しているのがよっぽど誇りなのだろう。
「初めまして。アール町から来ました。ケインズ・ルーミスと申します。」
私たちも父に習い自己紹介する。
「どうも。イードン町男爵、ベイルです」
父が挨拶をすると向こうも尊大な態度で返してきた。
「早速で申し訳ないのですが、こちらに滞在されている、、」
「竜騎士たちに会いたい。と申したいのですね?」
父が言い切る前に被せて発言する男爵。最低限の礼儀さえこちらに使う気はないようだ。
「は、はい。お話が早くて助かります」
言葉を遮られた事に動揺していたが何とかそう返した。
「実はあなた達が初めてではないのですよ。今日だけでも相当な人数の方が竜騎士に会いたいと詰め掛けていたのです」
これは話を聞いてもらうのも難しいかもしれない。そう思ったのは私だけでは無かったようだ。
父も半ば諦めた顔で下を向いていた。
「ですが、そのまま返すのも忍びないですし、別荘までご案内しましょう」
話を聞いてもらえる可能性は限りなく低い。だがやらないよりやったほうがマシだ。
私たちは使いの者について、別荘まで行った。
別荘まではそこまで遠くなく、徒歩で行ける距離だそうだ。
私はアマンダと買い物にでも行くつもりだったのだが、アマンダがどうしても自分も会いに行きたいと言うので、私もついていくことになった。
もしかしたらワイバーンぐらいなら見られるかも、と期待していたのは秘密だ。
***
別荘に着くと門に兵士が一人立っていた。
「お疲れ様です。騎士団団長にお会いしたい方を連れてきたのですが」
使いの者が兵士に声を掛けるが、彼は面倒そうにこちらを見て
「またですか。団長は生憎町に出ていて不在です。日を改めてください」
と言った。
騎士団が皆この人のように不遜な態度じゃないと願いたい。
彼を睨みそうになるのを何とか堪えた。横ではアマンダが笑顔でいるが、今にも噛みつきそうな心中なのが察せられた。分かるのは私ぐらいだろうが。
「私たちは隣町から来たのです。いつまでもこちらに居るわけにもいきません。お話を聞いて頂くだけでも、、」
父が食い下がるが、兵士は聞く耳を持とうとしない。
しばらく父と兵士が問答を繰り返していたら、道の向こうからこちらに向かってくる人影がいくつか見えた。
別荘に向かって歩いてくるようだ。
「何をしている」
先頭を歩いていた人が兵士に声をかけた。後ろには何人か兵士を従えている。
こちらを見もしない。先ほど考えていたことは当たっていたようだ。
「団長!この人たちが団長に話があると、、またくだらない相談だと思いますが、、」
兵士が団長に敬礼しながら説明をした。
この人が団長か、、
身長は周りの兵士より頭一つ分高く、体格も良い。金髪で鼻筋が通っていて、いわゆる美丈夫、というやつか。
だが何故だろう、全然気に入らない。
深紅のマントを身に着けていたが、銀色に輝く鎧は隠せていなかった。胸元には竜の意匠が彫り込まれている。緻密な細工はずっと見ていられそうだ。
「午前中いっぱい話を聞いてやっと町に出られたと思った所を、、」
そう言いながら、視線を初めてこちらに向けた。
彼の目が父、私、アマンダとなぞった所ではたと止まった。
まずい。と思った時には遅かった。
「ちょうどこの町にも飽き始めていたところだ話だけでも聞こう」
アマンダを見つめながら一息で言い切る。
こいつ、、、。
***
男爵家から来た使いの者とは門のところで別れ、
三人だけ応接間に通された。
先ほどの門番が案内してくれたが、彼も納得していない顔をしている。
「あなた達も魔獣を退治してほしい、という所ですか?」
ソファにどっかりと座った団長がこちらに尋ねた。
「は、はいその通りです。最近魔獣が活発化してきて、町まで下りてきて困っているのです」
話が早くて助かるとばかりに早口で答える。
「ふむ、それならば普通の騎士団に任せれば良いのでは?」
建前で聞いているような態度だ。すでに私たちの町に来ることは決まっているのだろう。
「それも考えましたが、私は男爵と言ってもこちらほど裕福ではないのです。騎士団が寝泊まり出来る場所も、食料さえ提供出来ません。しかし、竜騎士様なら
一日とかからず魔獣達を退治できると思ったのです」
「なるほど、うん。そちらの町にぜひ行かせて頂こう」
父は驚きすぎて動きが止まってしまっていた。
私が膝を控えめに叩くとすぐ目が覚めたようにびくっと反応する。
「それは、魔獣退治をしていただけると言う事ですか?」
「もちろん。困っている人を放っておくのは騎士団としての誇りが傷つきますからね」
アマンダの方を見て決め顔をしている。
困っている人を見過ごせない優しい自分をアピールしているつもりか。
見つめられているアマンダも、彼氏じゃない男に愛想を振りまくほど馬鹿じゃない。失礼にならない程度の愛想笑いを返していた。
「よし、そうと決まったらすぐに町に行きましょう。私たちは来た時に
乗っていた馬で向かいます。先に町に向かって頂いてもよろしいですか?」
父がそう言うと、団長は少し考える仕草をした。
「そうしたいのは山々なんだが、その町に行ったことがあるやつが団員に居なくてな、誰かに案内を頼みたい、、」
そう言って彼はアマンダを見た。
まずいまずいまずい、、!
「そこのブロンドの君、案内を頼めるかな?」
嫌な予感は当たってしまった。
見ていただき有難うございます。




