勘違い
いつもの様に訓練場に行くと、普段はバラバラに訓練している隊員達が隊長の周りに並んでいた。
「アランで最後だな。よし、説明を始めるぞ!」
隊長は手に書類を持ちながら、魔獣退治について説明を始めた。
これまで訓練ばかりしていたが、ついに新人も任務に就く許可が下りたようだ。
任務場所はここからさほど遠くなく、ワイバーンで飛んで30分程の町と森の境界線。今回は新人も連れて行くので、かなりの大人数での討伐になる。上手く行けば一泊もせず帰って来られるだろう、という事だった。
「任務は1週間後、各々体調管理など怠らないように。説明は以上!さあ、いつも通り訓練開始だ!走れ!」
話を終えた隊長は、パンパンと手を叩いて隊員達を訓練へと追い立てた。
少し機嫌が悪いように見えるのは俺だけだろうか?
「たいちょー今日は暇っすか?訓練一緒にやりましょ〜」
彼が相棒のワイバーンに鞍を付けているところに声を掛けた。
「いや、今日はやめておこう」
作業を中断する事なく、そう返された。
「えー、今日忙しいんすか?」
「、、、あぁ」
いつもなら目を見て喋ってくれるのに、今日は一度も目が合わない。
「何か機嫌悪いっすね〜。牛乳飲んでますか?」
少しは機嫌が良くなるかと思い軽口をたたいたが、逆効果だったようだ。
「うるさい。しばらく話しかけるな。じゃないとお前にも酷い事を言っちまいそうだ」
最後の方はほぼ独り言のようで、アランの耳までは届かなかった。
彼がここまでイライラしているのを見るのは初めてだ。触らぬ獅子に祟りなし。今はそっとしておこう。
「分かりましたよ。しばらくは大人しくしてま〜す」
アランは肩をすくめ、アローの方へ歩いて行った。
***
隊長が相手をしてくれないので、今日は個人訓練に励もう。団体訓練は普段嫌という程やっているし、魔獣退治前にまたみっちりしごかれるだろう。
アランは、入隊試験で使われた大木の下までやってきた。アローに連れて行ってもらい、建物より高い枝の上に立つ。
「アロー、この前やったやつね」
横にいるアローに声をかけ、翼をポンと1度叩いた。足を枝のふちギリギリまで近づけ、遙か下の地面を見やる。
ダンッ!!
勢いよく枝を蹴り、アランは空中に飛び出した。腕を広げ落下していく。
「アロー!キャッチ!」
後ろに待機していたアローに向かって声を掛けると、アランの体は頭上の影にすっぽりと覆われた。次の瞬間にはアローの足にガッシリと掴まれ地面に着地する。
「よし、完璧!最初の頃とは比べものにならないぐらい上達したよ!」
風でクシャクシャになった髪の毛をそのままに、アランはアローに抱きついた。ヒンヤリとした体が、上気した頬に気持ちいい。
個人訓練を終え、隊員達の元に戻ると何やらヒソヒソと話し声が聞こえる。
「どーしたんすか?何か問題でも?」
皆んな背が高いので、人垣の外から背伸びをしながら問いかけた。
「アラン、お前が何かやったんじゃないのか?隊長が怒るのはたまに見かけるが、あれは初めてだ」
先輩隊員達の目が一斉にこちらを向いた。自分より数倍体格のいい人に囲まれるのは何とも気持ちいいものではない。
「えっ、知らないっすよ〜怒らせるようなことしたかなぁ?、、」
首を傾げつつ、もう訓練場を去ろうとする隊長を見ると、先ほどまで使っていたであろう木剣が地面に転がっていた。しかも真っ二つに折れている。
「、、、あれ自分のせいで怒ってるとしたら俺の末路はあの剣ですかね、、」
はは、、と乾いた笑いで冗談交じりに先輩方に問いかけたが、返って来た視線は真面目なものが多く、アランは自身最速スピードで自分の部屋まで帰ることになった。
****
部屋に戻ったは良いが、本当に自分のせいで隊長の機嫌が悪かったとしたらどうしよう。
部屋に逃げ帰りしばらく経ったが、その事ばかりが気になる。もう夜になってしまったが、隊長に謝りに行くべきだろうか。
「よしっ!覚悟を決めろアラン!」
己の膝を叩き、震えている心臓もドン!と拳で勇気づけた。
****
トントン。
普段隊長が使っている部屋の扉を叩いた。寝るのも仕事をするのも、私たちが与えられている部屋より数回り大きいこの部屋でしているらしい。私も入るのは初めてだ。
「隊長。夜分遅くにすみません。アランです。入っても良いですか?」
扉の前で立ち止まり、返事が来るのを待った。
「おう、入れ」
声の感じから、まだ不機嫌なようだ。
「失礼しまっす」
思い切って扉を開けると、団長は執務机の様なものに資料を広げ、仕事をしている最中だった。
「隊長、少しお話が、、」
おずおずと話しかけたが、彼が資料から目を上げることはない。
「なんだ、手短にしろ」
眉間に皺を寄せながらそう言われると、グズグズもしてられない。多分、いや絶対俺が何かやらかしたんだ。もう謝ってしまえ!
「この度は誠に申し訳ありませんでした!!」
腰を90度に曲げ、勢いよく頭を下げた。
「、、、、は?」
顔を上げる前に耳に入って来たのは、滅多に聞けない隊長の間の抜けた声だった。
なかなか書けなくて遅くなりましたー
どうにか完結させたい!




