三騎の来訪者
第二章 灰境
第49話 三騎の来訪者
前書き
村に人が増えれば、
外から来る者も増えていきます。
助けを求める者。
仕事を探す者。
商売をする者。
そして。
「ここで何が起きているのか」
確かめに来る者。
村が変わるということは、
外の世界からも、
見つかり始めるということなのです。
⸻
二日目。
第二浄化塔。
『本日工程』
『主循環機構点検』
C―12の声が、薄暗い機械室へ響いた。
「今日は直さないの?」
アルフレッドが尋ねる。
『点検を優先』
「壊れてるのに?」
『故障箇所未確定』
「……」
「何だ」
ヘルマンが横目で見る。
「いや」
「すぐ《修繕》じゃないんだなって」
「昨日教えただろ」
「何を直すか決める前に」
「直す奴があるか」
「はい」
「覚えろ」
「覚えてます」
「なら聞くな」
「確認です」
「誰に似たんだ、その言い方」
少し離れた場所。
ノエルが顔を上げる。
「何でしょう」
「お前だよ」
⸻
第二浄化塔。
第一機械室。
昨日。
排水経路を確保したことで。
床を覆っていた水は、足首ほどまで下がっている。
壁。
配管。
巨大な水車に似た装置。
その中央。
直径。
大人の背丈ほどもある円形機構。
「これが主循環?」
『肯定』
C―12。
前脚。
その一部を示す。
『第一主循環輪』
「回ってないね」
『停止中』
「理由」
『複数』
「嫌な答えだ」
ガルド。
『軸部損傷』
『固定具欠損』
『伝達歯車二枚破損』
『異物混入』
『潤滑不足』
「いっぱい」
アルフレッド。
「十二日で本当に終わる?」
『予定再計算』
「いや」
「今はしなくていい!」
『了解』
⸻
「まず掃除だな」
ヘルマン。
袖。
捲る。
「普通の?」
アルフレッド。
「普通のだ」
泥。
細い金属片。
折れた歯。
古い油。
灰。
全員。
手。
動かす。
アルフレッドも。
今日は。
箒。
「……」
「何だ」
ガルド。
「領主が」
「古代施設で」
「箒持ってる」
「いいだろ」
「なんか想像してた開拓と違う」
「どんなの想像してたんだ」
「もっと」
「地図広げて」
「ここに町を作る!」
「みたいな」
「その町の水を」
「今掃除してんだろ」
「……確かに」
⸻
一時間。
泥。
減る。
機構。
見えてくる。
「止めろ」
ヘルマン。
全員。
手。
止める。
「これ」
主軸。
根元。
一本。
太い。
金属棒。
途中。
大きく。
割れている。
「折れてる?」
アルフレッド。
「完全には」
「でも」
「このまま回せば」
「折れる」
C―12。
『判定一致』
「交換部品」
『保管庫――在庫なし』
「作る?」
アルフレッド。
ヘルマン。
見る。
「材料次第」
『同規格材料』
『施設内――存在』
「どこ?」
『旧補助梁』
全員。
少し。
黙る。
「また」
「建物の部品を」
「機械に使うのか」
ガルド。
「使っていいのか?」
『現在』
『構造上不要』
「なら」
「外す」
⸻
補助梁。
一本。
古代金属。
銀灰色。
錆。
少ない。
ヘルマン。
槌。
軽く叩く。
かん。
「鉄じゃねぇな」
「何?」
「知らん」
「加工できる?」
「普通の炉じゃ」
「難しい」
アルフレッド。
触る。
「これを」
「壊れた軸のところへ」
「合わせたら?」
「樽」
ヘルマン。
すぐ。
気付く。
「昨日じゃなくて」
「前の樽の時」
アルフレッド。
頷く。
「なくなった部分を」
「別の材料で」
「埋められた」
「ただし」
ヘルマン。
「形を合わせた」
「うん」
「こいつは」
「形が違いすぎる」
「じゃあ」
「削る?」
「だから」
「加工できねぇって」
⸻
『提案』
C―12。
「何?」
『B―03』
巨大な黒い機体。
『確認』
『補助加工機能』
「ビーさんに?」
『旧戦闘個体』
『装甲切削機構』
「そんなのあるの?」
B―03。
『左前腕』
『高圧切断刃』
「初めて聞いた!」
『使用機会なし』
「使える?」
『可能』
腕。
側面。
がしゃ。
細い。
刃。
展開。
ぶうん。
「おお……」
ヘルマン。
目。
変わる。
「これ」
「使わせろ」
『了解』
「ヘルマンさん」
「嬉しそう」
「職人に」
「知らん道具見せる方が悪い」
⸻
切る。
測る。
また。
切る。
ヘルマン。
エッダから借りた。
木製測定具。
当てる。
「あと二指」
『切削』
「止め」
ぶん。
「次」
「こっち」
アルフレッド。
横。
しゃがんで。
見ている。
「僕」
「何もしてない」
「それでいい」
「でも」
「見てろ」
ヘルマン。
「お前の《修繕》」
「最後」
「使う」
「最後?」
「ああ」
「材料を作る」
「位置を合わせる」
「固定する」
「そこまでは」
「俺たち」
「最後」
「人の手じゃ」
「繋げられんところ」
「お前」
アルフレッド。
少し。
目。
輝く。
「分かった」
⸻
二時間。
代替軸材。
完成。
完全。
同じではない。
だが。
壊れた軸。
外す。
新しい。
材料。
入れる。
「位置」
『二ミリ右』
「二ミリって」
「これくらい?」
『一・七』
「細かい!」
「左」
「そこ」
ヘルマン。
「固定!」
金具。
締める。
「アル坊」
「はい」
「今」
アルフレッド。
両手。
金属。
触れる。
壊れた主軸。
代替材料。
周囲。
歯車。
何が。
正しい位置なのか。
昨日より。
分かる。
「《修繕》」
白い。
光。
広げない。
主軸。
接続部。
だけ。
かち。
金属。
僅か。
形。
変わる。
新しい材料。
古い機構。
馴染む。
隙間。
消える。
止める。
「……終わり」
『確認』
C―12。
『主軸接続』
『正常』
「本当に?」
『肯定』
「回せる?」
『まだ不可』
「なんで!?」
『伝達歯車破損』
「ああ!」
アルフレッド。
頭。
抱える。
「一個直したら」
「次!」
「機械ってそういうもんだ」
ヘルマン。
楽しそう。
「面白いな」
「ヘルマンさん」
「完全にハマってない?」
「うるさい」
⸻
昼。
本日。
予定。
主循環機構点検。
そのうち。
主軸。
交換。
まで。
完了。
『第二浄化塔』
『回復率――24.6%』
「昨日」
二十一。
「三%くらい」
「増えた」
アルフレッド。
「少ない?」
『重要部位復旧』
『数値以上の効果あり』
「じゃあ」
「大成功?」
『肯定』
「やった!」
「よし」
ガルド。
「帰るぞ」
「え?」
「またか」
「まだ昼!」
「予定終了」
「でも歯車」
「明日」
「今なら」
「明日!」
「……」
アルフレッド。
C―12。
見る。
「シーさん」
『予定終了』
「裏切り者!」
『意味不明』
⸻
帰路。
村。
見えてくる。
「アル坊」
ガルド。
「今日は」
「倒れてねぇな」
「一回しか使ってない」
「頭痛」
「なし」
「吐き気」
「なし」
「よし」
「最近」
「僕」
「健康診断されながら」
「歩いてる気分」
「倒れなきゃ」
「しなくて済む」
「……気をつけます」
⸻
その時。
見張り台。
鐘。
鳴る。
かん!
かん!
かん!
かん!
四回。
アルフレッド。
足。
止まる。
「四回?」
「来訪者」
ガルド。
顔。
変わる。
「村で決めた」
「襲撃は連打」
「火事は三回二回」
「来訪者は四回」
「いつ決めたの?」
「お前が寝てる時」
「また僕いない間に!」
「村は動くんだよ!」
⸻
村。
入口。
B―03ではない。
今日は。
一緒。
来ている。
代わり。
村の男たち。
槍。
持つ。
その向こう。
三騎。
馬。
止まる。
先頭。
男。
三十代後半ほど。
濃紺。
旅装。
胸。
銀色。
丸い。
紋章。
その後ろ。
細身。
女性。
大きな革鞄。
三人目。
護衛らしい。
短い外套。
剣。
「灰境領」
先頭の男が。
村。
見る。
「ここで間違いないな?」
村人。
答えない。
「領主」
「アルフレッド・ロナ・ヨーレリヒト殿に」
「面会を求める」
⸻
「僕です」
後ろ。
声。
男。
そちら。
見る。
ガルド。
ノエル。
ヘルマン。
古代機械。
二体。
その間。
十二歳の少年。
「……」
「アルフレッドです」
男。
一瞬。
黙る。
「本人?」
「はい」
「本当に十二歳なのか」
アルフレッド。
眉。
少し。
動く。
「最近」
「それを言われすぎて」
「返事に困ります」
ガルド。
咳。
笑い。
誤魔化す。
⸻
男。
馬。
降りる。
「失礼した」
胸。
銀章。
見せる。
「王国古代遺構調査室」
「現地調査官」
「ディートリヒ・ヴァルナー」
後ろ。
女性。
「記録官」
「ミレナ・フォーク」
最後。
「護衛官」
「ローデン・クラウス」
三人。
頭。
下げる。
「王国……?」
アルフレッド。
ノエルを見る。
ノエル。
すでに。
銀章。
見ている。
「存在は知っています」
「開拓局とは」
「別組織です」
「何するところ?」
「古代遺構」
「旧文明施設」
「危険な魔道設備」
「それらを調査する」
「王都直轄の小部署です」
「小さい?」
ディートリヒ。
「非常に」
「人が足りません」
「なんか」
「親近感」
「持たなくて結構です」
⸻
「身分証」
ガルド。
手。
出す。
「見せろ」
「開拓局第七開発隊」
「ガルド・ヴァイス殿か」
「俺を知ってる?」
「報告書で」
書類。
渡す。
ノエル。
確認。
封。
印。
文字。
「本物です」
「少なくとも」
「書類上は」
「慎重だな」
ディートリヒ。
「いいことだ」
⸻
「それで」
アルフレッド。
「何の用ですか?」
ディートリヒ。
A―07。
見る。
次。
B―03。
目。
止まる。
「その質問へ」
「答える前に」
「こちらから」
「一つ」
「はい」
「それ」
A―07。
「どこで見つけた?」
「地下」
「そうだろうな」
「名前は?」
「エーナナ」
「……」
「正式にはA―07」
「なるほど」
次。
B―03。
「そちらは」
「ビーさん」
「正式にはB―03」
ディートリヒ。
深く。
息。
吐く。
「報告」
「誇張だと思っていた」
「どんな報告?」
ノエル。
少し。
視線。
逸らす。
「私が」
「開拓局へ送りました」
「いつ!?」
「通信便で」
「村の水源異常」
「古代施設発見」
「保守個体起動」
「危険性がある以上」
「報告義務があります」
「そっか」
アルフレッド。
怒らない。
「うん」
「必要だね」
ノエル。
少し。
驚いた顔。
「何?」
「いえ」
「以前なら」
「どうして勝手に」
「と言われるかと」
「僕」
「そこまで子どもじゃないよ」
「十二歳です」
「また!」
⸻
「もう一件」
ディートリヒ。
声。
低くなる。
「ヨーレリヒト家から」
「灰境方向へ入った」
「三名の者」
アルフレッドの表情。
変わる。
ガルド。
手。
剣。
近づく。
「何で知ってる」
「こちらも」
「古代遺構だけを」
「見ているわけではない」
「危険区域へ」
「誰が入ったか」
「街道記録も取る」
「三人」
アルフレッド。
「二人は」
「ここにいます」
「生存?」
「はい」
「拘束中」
「もう一人」
「森で」
「……」
アルフレッド。
止まる。
「人ではなくなった可能性が」
「あります」
三人。
顔。
変わる。
「詳しく」
「あとで」
ガルド。
割る。
「まず」
「お前らが」
「何しに来たかだ」
⸻
「施設の確認」
ディートリヒ。
「そして」
「安全性評価」
「必要であれば」
「王都への封鎖要請」
「封鎖?」
アルフレッド。
「施設ごと?」
「危険性が高い場合」
「立入禁止」
「領地から」
「管理権を切り離す可能性もある」
空気。
変わる。
「それは」
アルフレッド。
「困ります」
「理由」
「村の水」
「施設と繋がってる」
「今」
「直してる途中」
「……直している?」
「第二浄化塔」
「十二日くらい」
ディートリヒ。
完全に。
止まる。
「第二?」
「はい」
「第一ではなく?」
「第一もあります」
「第四も」
「第四?」
「あと」
「第三は」
「まだ」
「見つけてない」
「第五も」
「場所」
「分からない」
「……」
ミレナ。
横。
革鞄。
落としかける。
「ちょっと」
ディートリヒ。
「待ってくれ」
「はい」
「もう一度」
「施設はいくつ?」
「エーナナ」
『浄化塔登録』
『第一』
『第二』
『第三』
『第四』
『第五』
『計五基』
三人。
沈黙。
⸻
「そんなはずはない」
ミレナ。
初めて。
強く。
言う。
「王国記録では」
「灰境の旧水系施設は」
「四基です」
アルフレッド。
「四?」
『記録相違』
A―07。
「どれがない?」
ディートリヒ。
即座。
「第五」
アルフレッド。
A―07。
見る。
「エーナナは」
「五って言ってる」
『肯定』
「王国は」
「四」
「はい」
ミレナ。
「少なくとも」
「私たちが所持する」
「最古の写本では」
「第一から第四」
「それだけです」
⸻
「見せて」
アルフレッド。
「写本を?」
「はい」
ミレナ。
ディートリヒ。
見る。
男。
頷く。
「いいだろう」
革鞄。
中。
油紙。
さらに。
革筒。
巻物。
古い。
原本。
ではない。
写し。
地図。
開く。
「これ」
ノエル。
身。
乗り出す。
灰境。
古い。
地形。
川。
山。
施設。
丸。
四つ。
第一。
第二。
第三。
第四。
そして。
中央。
文字。
削られている。
「ここ」
アルフレッド。
指。
伸ばしかけ。
止める。
「触っていい?」
ガルド。
思わず。
笑う。
「成長したな」
「紙だから」
「重要」
ミレナ。
少し。
口元。
緩む。
「指差すだけなら」
「どうぞ」
「ここ」
四つの塔。
線。
集まる。
中心。
大きな。
円。
でも。
名前。
消えている。
「中央浄化中枢」
アルフレッド。
言う。
三人。
同時。
少年を見る。
「……なぜ」
ディートリヒ。
「その名称を知っている?」
「昨日」
「施設が」
「表示したから」
ミレナ。
声。
小さい。
「王国の写本では」
「この場所の名称は」
「失われています」
⸻
「それと」
アルフレッド。
「第五浄化塔」
「たぶん」
「すごく遠い」
「遠い?」
『第五浄化塔』
『遠隔信号――微弱』
『所在特定不能』
「大陸の外かもしれない」
ノエル。
「そこは」
「まだ推測です」
「うん」
「でも」
ディートリヒ。
片手。
上げる。
「待ってくれ」
「情報量が」
「多すぎる」
「分かります」
ガルド。
「俺らも」
「毎日そんな感じだ」
⸻
「まず」
ディートリヒ。
地図。
巻く。
「施設を」
「見せてもらいたい」
「今日は駄目です」
アルフレッド。
即答。
「……」
「アル坊」
ガルド。
「お前」
「今」
「王都の調査官に」
「即答したぞ」
「駄目なものは」
「駄目だから」
ディートリヒ。
少年。
見る。
「理由を」
「聞こう」
「第二浄化塔は」
「復旧作業中」
「C―12も」
「侵食から」
「完全には戻ってない」
「第一浄化施設も」
「水系が変わったばかり」
「第四浄化塔は」
「もっと危ない」
「知らない人が」
「勝手に歩くと」
「事故になる」
「我々は」
「専門家だ」
「でも」
「ここの今を」
「一番知ってるのは」
「僕たちです」
静か。
⸻
ガルド。
何も。
言わない。
ノエル。
帳面。
閉じる。
バルド。
少し。
遠く。
見ている。
「明日」
アルフレッド。
「第一浄化施設まで」
「案内します」
「エーナナと」
「ガルドさんも一緒」
「第二浄化塔は」
「シーさんに」
「確認してから」
「第四は?」
「今は」
「入りません」
「理由」
「危険だからです」
「管理者としての判断か?」
アルフレッド。
少し。
考える。
「はい」
「灰境の領主としても」
「そう判断します」
⸻
長い。
沈黙。
ディートリヒ。
ふ。
小さく。
笑う。
「分かった」
「従おう」
「いいんですか?」
「ここは」
「君の領地だ」
「そして」
「施設側も」
「君を暫定管理者として」
「認証しているらしい」
「なら」
「現時点で」
「我々が勝手に入る方が」
「危険だ」
アルフレッド。
少し。
肩。
下がる。
「よかった」
「断ったあと」
「ちょっと怖かった」
「今言うな」
ガルド。
「威厳が全部消えたぞ!」
⸻
「ただし」
ディートリヒ。
表情。
戻る。
「こちらも」
「一つ」
「条件がある」
「何ですか?」
「記録を」
「共有してほしい」
「施設」
「侵食」
「保守個体」
「そして」
「灰色の菌糸」
「王国にも」
「同種の記録がある」
アルフレッド。
「あるの?」
「断片的に」
「どこ?」
「それは」
ディートリヒ。
一瞬。
迷う。
「灰境ではない」
「もっと南」
「そして」
「ずっと昔だ」
「同じ菌糸?」
「断定できない」
「だから」
「調べに来た」
⸻
アルフレッド。
ノエルを見る。
「共有」
「していい?」
「機密指定されていない」
「開拓局記録については可能です」
「村人の個人情報」
「ヨーレリヒト家関連」
「そこは別」
「分かった」
アルフレッド。
ディートリヒ。
見る。
「じゃあ」
「交換」
「僕たちの記録」
「見せる」
「その代わり」
「そっちの記録も」
「見せてください」
「交渉か」
「駄目?」
「いや」
ディートリヒ。
少し。
笑う。
「公平だ」
⸻
三騎。
その夜。
灰境へ。
泊まることになった。
「宿」
アルフレッド。
周り。
見る。
「ない」
「知ってる」
ガルド。
「空き家」
「一つ」
「雨漏り」
「直ってたよね」
エッダ。
「西側の一室なら」
「使えます」
「三人?」
「狭いです」
ディートリヒ。
「野営よりマシだ」
「では」
「そこを」
⸻
夕食。
薄い。
豆。
野菜。
スープ。
パン。
「……」
ミレナ。
一口。
「美味しいです」
リーナ。
近く。
「普通だよ」
「そう?」
「普通だから」
「すごいの」
アルフレッド。
遠く。
「それ」
「最近よく言うね!」
「本当だもん!」
⸻
ディートリヒ。
木杯。
水。
見る。
「この水が」
「問題の?」
「煮沸した井戸水」
ノエル。
「侵食濃度は」
「低下中です」
「四日前なら」
「飲めなかった」
アルフレッド。
「第四浄化塔の」
「水門閉じたら」
「きれいになった」
「代わりに」
「水位」
「減った」
「だから」
「第二を直してる」
ディートリヒ。
しばらく。
何も言わない。
「どうしたの?」
「いや」
「我々は」
「古代施設を」
「危険なら封じる」
「そういう仕事を」
「何度もしてきた」
「うん」
「直して」
「生活へ戻そうとした例は」
「あまりない」
「どうして?」
「分からないからだ」
「怖いから」
「壊れているから」
「だから」
アルフレッド。
「直せるなら」
「直した方が」
「いいんじゃない?」
「……」
「もちろん」
「危ないなら」
「止めるけど」
ディートリヒ。
少年を見る。
「君は」
「本当に」
「その二つのスキルを」
「授紋で得たのか」
「《清掃》と」
「《修繕》?」
「はい」
「それだけ?」
「それだけです」
ディートリヒ。
何か。
考える。
「……そうか」
⸻
夜。
アルフレッド。
セルマ。
領主館。
まだ。
完成。
していない。
西棟。
新しい。
窓。
見る。
「人」
「来たね」
アルフレッド。
「はい」
「今度は」
「助けてって」
「来た人じゃない」
「そうですね」
「調べに」
「来た」
「はい」
「なんか」
「村が」
「外の世界と」
「繋がってきた感じ」
セルマ。
少し。
考える。
「怖いですか?」
「少し」
「どうして?」
「人が来たら」
「問題も」
「増えそう」
「それは」
「間違いないでしょう」
「即答?」
「人間ですので」
アルフレッド。
笑う。
「でも」
「人が増えたら」
「できることも」
「増えるよね」
「はい」
⸻
同じ頃。
空き家。
三人。
調査官。
灯り。
一つ。
ミレナ。
古い写本。
再び。
広げている。
「ディートリヒ」
「何だ」
「やはり」
「合いません」
「何が」
「塔の数です」
四。
第一。
第二。
第三。
第四。
「第五」
「王国記録に」
「存在しない」
「A―07は」
「存在すると言った」
「そうだな」
「それだけではありません」
ミレナ。
中央。
削られた。
円。
指す。
「ここ」
「名称」
「なぜ」
「消されているのでしょう」
「失われた」
「のではなく?」
「違います」
女性。
灯り。
近づける。
「見てください」
紙。
写し。
その元。
古い文書。
文字。
一部。
不自然。
「削除された痕跡」
「ある?」
「はい」
「原本の段階で」
「誰かが」
「意図的に」
「消しています」
⸻
護衛官。
ローデン。
壁際。
「つまり?」
ミレナ。
小さく。
答える。
「王国は」
「この施設群を」
「忘れたのでは」
「ないのかもしれません」
「……」
「誰かが」
「忘れさせた」
ディートリヒ。
窓。
外。
見る。
暗い。
灰境。
村。
その地下。
いま。
古代の施設が。
少しずつ。
目を覚ましている。
「明日」
男。
言う。
「第一浄化施設を」
「見る」
「そのあと」
「王都へ」
「何を報告します?」
長い。
沈黙。
「まだ」
「決めない」
「十二歳の領主が」
「何を起こしたのか」
「それを」
「自分の目で」
「確かめる」
⸻
地下。
第一浄化施設。
『第二浄化塔』
『回復率――24.6%』
『第四浄化塔』
『侵食流入量――低下』
『現居住区』
『登録生命反応――35』
そして。
新しい。
表示。
『外部来訪者――3』
『暫定滞在』
少し。
間。
『居住区域』
『総生命反応――38』
数字。
増える。
たった。
三。
それでも。
灰境は。
昨日より。
少しだけ。
大きくなっていた。
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第49話 三騎の来訪者 了




