先に来た者たち
第二章 灰境
第46話 先に来た者たち
前書き
宝を探す者は、
危険を知っていても、
扉を開けます。
価値があるかもしれない。
金になるかもしれない。
自分だけが得をするかもしれない。
けれど。
閉じられている扉には、
閉じられている理由があります。
そして時には。
その理由を知らない者ほど、
一番最初に、
中へ入ってしまうのです。
⸻
第二浄化塔。
補助保守口。
ぎ。
ぎぎ。
金属扉が。
わずかに。
開く。
「いける!」
男の一人が笑った。
「もう少しだ!」
「押せ!」
「せーの!」
鉄棒。
二本。
隙間。
差し込む。
さらに。
こじる。
ご。
扉。
十五センチ。
二十。
三十。
「おい」
「向こう」
「光ってないか?」
「青いな」
「魔石?」
「だったら大当たりだ!」
「見ろよ!」
「古代施設だぞ!」
「何かあるに決まってる!」
五人。
いずれも。
粗末。
だが。
使い込まれた。
革鎧。
短剣。
斧。
弓。
長剣。
冒険者。
あるいは。
遺跡漁り。
少なくとも。
村人ではない。
⸻
先頭。
髭。
濃い。
三十代後半。
「俺が入る」
「待てよ、ロイ」
細身の男。
「昨日から」
「変な水が出てる」
「灰色の糸も」
「あんなの」
「苔みたいなもんだ」
「苔が動くか?」
「動いたのか?」
「……いや」
「ならいい」
ロイ。
松明。
前。
「ここまで来たんだ」
「帰れるか」
「村で聞いた話じゃ」
「この山」
「昔から禁足地だぞ」
「だからだろ」
ロイ。
笑う。
「誰も入ってねぇ」
「誰も入ってねぇ場所には」
「誰も持って帰ってねぇ宝がある」
「分かりやすい理屈だな」
「それで食ってんだよ」
⸻
扉。
もう。
人一人。
通れる。
ロイ。
しゃがむ。
中。
覗く。
水。
足首。
青い。
光。
奥。
何か。
いる。
「……」
「どうした?」
「何かいる」
「人?」
「違う」
「獣?」
「たぶん」
松明。
前。
出す。
四本。
脚。
長い。
金属。
胴体。
低い。
頭。
丸い。
青い。
瞳。
一つ。
「……魔道獣?」
「古代兵器じゃないか?」
「売れるぞ」
「持って帰れる大きさか?」
「部品だけでも」
その時。
青。
消える。
赤。
灯る。
『侵入者』
「喋った」
『排除』
「……待て」
『排除』
「下がれ!」
⸻
どんっ!
C―12。
一瞬。
距離。
詰める。
「速っ――」
先頭。
ロイ。
横。
飛ぶ。
壁。
激突。
「ぐっ!」
「ロイ!」
「撃て!」
弓。
矢。
放つ。
かん!
装甲。
弾く。
「効かねぇ!」
「目!」
「目を狙え!」
第二。
矢。
C―12。
頭。
傾ける。
避ける。
「獣みたいに動くぞ!」
『敵性行動』
『排除』
前脚。
地面。
叩く。
どん!
水。
跳ねる。
男。
一人。
転ぶ。
「うわっ!」
その水。
灰色。
糸。
足首。
触れる。
「何だ!」
「取れ!」
細い。
菌糸。
革靴。
這う。
「気持ち悪っ!」
短剣。
切る。
一本。
二本。
だが。
さらに。
増える。
「外へ!」
「撤退!」
⸻
C―12。
一歩。
進む。
だが。
急に。
止まる。
『管理者命令』
『待機』
青。
瞳。
戻る。
『……』
男たち。
逃げる。
「止まった!」
「今だ!」
「ロイ!」
「引っ張れ!」
肩。
担ぐ。
扉。
外。
「閉めろ!」
「無理だ!」
「こじ開けたんだぞ!」
「なら棒抜け!」
「早く!」
⸻
金属扉。
ぎ。
戻る。
その瞬間。
『外部侵入』
赤。
『排除』
C―12。
走る。
「来る!」
扉。
閉じる。
がん!
内側。
衝撃。
男たち。
地面。
転ぶ。
どん!
もう一度。
「逃げろ!」
五人。
いや。
四人。
走る。
「待て!」
「ロイは!?」
「担いでる!」
「ジェスは?」
「ジェス!」
後ろ。
一人。
倒れている。
右脚。
灰色の菌糸。
絡む。
「助けて!」
「ジェス!」
男。
戻ろうとする。
どん!
扉。
再び。
大きく。
歪む。
「無理だ!」
「でも!」
「全員死ぬぞ!」
ジェス。
手。
伸ばす。
「待って!」
「行かないで!」
灰色の糸。
膝。
上。
這う。
「いやだ!」
「取れ!」
「取れよ!」
自分。
短剣。
皮膚。
切る。
血。
出る。
菌糸。
止まらない。
⸻
「ジェス!」
仲間。
叫ぶ。
だが。
森。
方向。
逃げる。
ジェス。
一人。
「待って……」
その時。
扉。
どん。
止まる。
静寂。
ジェス。
荒い。
息。
脚。
見る。
菌糸。
もう。
腿。
「いやだ……」
その目。
遠く。
赤い。
光。
映る。
『……管理者……』
C―12。
内側。
声。
『……救援……』
「助けて……」
ジェス。
扉。
見る。
『……救援……』
菌糸。
さらに。
身体。
上がる。
⸻
翌朝。
灰境の村。
ガルド。
机。
拳。
置く。
「予定変更だ」
アルフレッド。
寝台。
ではない。
今日は。
普通に。
椅子。
「第二浄化塔?」
「ああ」
「昨日」
「足跡」
「五人以上」
「今朝」
「見張りが」
「北側で煙」
「見た」
「煙?」
「野営」
「可能性高い」
ノエル。
地図。
置く。
「第二浄化塔へ向かった者たちが」
「まだ付近にいる?」
「あるいは」
「昨日」
「中へ入った」
アルフレッド。
顔。
変わる。
「シーさん」
「三日待ってって」
「言った」
「だから」
「待機してるはず」
『管理者命令――待機』
A―07。
「でも」
「侵入者が来たら?」
『防衛規定』
『管理者命令より』
『一部状況で優先』
「……」
「つまり」
ガルド。
「襲う」
『可能性――高』
⸻
「行く」
アルフレッド。
今度。
誰も。
すぐには。
否定しない。
「理由」
ガルド。
「管理者命令」
「シーさん」
「僕の声」
「一応」
「聞ける」
「《清掃》」
「侵食」
「取れる可能性」
「三日」
「待って」
「って言ったのに」
「知らない人が」
「勝手に開けたなら」
「予定」
「変わった」
ガルド。
頷く。
「今回は」
「俺もそう思う」
⸻
「編成」
ノエル。
「アルフレッド様」
「ガルド隊長」
「A―07」
「B―03」
「ベルン」
「マルク」
「ヘルマン」
「私」
アルフレッド。
「ノエルさんも?」
「今回は」
「施設操作」
「記録」
「そして」
「第三者への対応」
「開拓局職員が必要です」
「第三者?」
「もし」
「王国民であれば」
「領主権限」
「開拓局権限」
「双方の説明が必要になります」
「宝探しの人でも?」
「むしろ」
「そのような者ほど」
「必要です」
⸻
「セルマ」
アルフレッド。
見る。
少女。
杖。
今日は。
使っていない。
「行きません」
「うん」
「ですが」
「何?」
「もし」
「人間が相手なら」
「気をつけてください」
「魔物より?」
「はい」
「どうして?」
「人間は」
セルマ。
首輪。
軽く。
触れる。
「話します」
「嘘も」
「つきます」
アルフレッド。
少し。
黙る。
「……分かった」
⸻
出発。
北。
古道。
第二浄化塔。
近づく。
途中。
「止まれ」
グレゴール。
今日は。
村。
残る。
代わり。
ガルド。
前。
しゃがむ。
「血」
地面。
赤。
乾く。
「新しい」
ベルン。
「昨日?」
「たぶん」
「足跡」
ノエル。
五人。
往路。
そして。
「帰り」
四人分?
「いや」
ガルド。
見る。
「三人」
「一人」
「担いでる」
「重い足跡」
「じゃあ」
「一人」
「残ってる?」
アルフレッド。
声。
低く。
「可能性ある」
⸻
「急ぐぞ」
⸻
山肌。
第二浄化塔。
見える。
水。
昨日より。
少し。
減っている。
『流量――前日比0.91』
「中」
アルフレッド。
『保守個体反応――あり』
「動いてる?」
『位置――補助保守口付近』
「近い」
「侵入者?」
『生体反応――』
A―07。
一瞬。
止まる。
『一』
「やっぱり!」
「場所」
『保守口外側』
「人?」
『人類種一致率――高』
⸻
走る。
「アル坊!」
「走らない!」
「今は走れ!」
「どっち!」
「今は走れ!」
「はい!」
⸻
補助保守口。
前。
人。
一人。
倒れている。
「いた!」
ベルン。
「生きてる?」
マルク。
近づこうとする。
「待て!」
アルフレッド。
初めて。
自分から。
止めた。
「菌糸」
脚。
灰色。
絡む。
腰。
胸。
もう。
上がる。
「エーナナ」
『侵食反応――高』
「中まで?」
『生体内部』
『一部侵入』
全員。
顔。
変わる。
「生きてる?」
『生命反応――あり』
「意識」
「……助けて」
男。
薄く。
目。
開く。
「助けて……」
⸻
「名前」
ガルド。
「ジェス……」
「何人で来た」
「五……」
「仲間は」
「逃げた……」
「何した」
「扉……」
「開けた」
ガルド。
額。
押さえる。
「何で開けた!」
「遺跡……」
「金に……」
「なると……」
「……」
「馬鹿野郎」
「ガルドさん」
「分かってる」
「今は説教じゃねぇ」
⸻
「アル坊」
「うん」
「《清掃》」
「できそう?」
アルフレッド。
ジェス。
見る。
これまで。
違う。
外。
だけではない。
菌糸。
皮膚。
傷。
中。
「……怖い」
「正直だな」
「中まで」
「入ってる」
「《清掃》して」
「ジェスさんの身体まで」
「消したら」
「そんなこと」
「しねぇとは」
「言い切れない」
「うん」
ガルド。
黙る。
「じゃあ」
「どうする」
⸻
「外から」
アルフレッド。
「減らす」
「全部」
「僕がやらない」
「エーナナ」
『確認』
「外の菌糸」
「切れる?」
『可能』
「ビーさん」
「動かないよう」
「身体」
「支えられる?」
『可能』
「マルタさん」
「いない」
「だから」
「ノエルさん」
「傷」
「洗う水」
「持ってる?」
「あります」
「ヘルマンさん」
「火」
「菌糸」
「焼ける?」
「人に近い場所は」
「やめとけ」
「じゃあ」
「切るだけ」
「その後」
「僕」
「中だけ」
ガルド。
アルフレッドを見る。
「それなら」
「負担」
「減る」
「うん」
⸻
「やる」
⸻
B―03。
ジェス。
身体。
固定。
『対象保護』
「エーナナ」
『切断開始』
菌糸。
足。
外。
ぶち。
ぶち。
ジェス。
「うっ!」
「我慢して!」
アルフレッド。
「もう少し!」
腰。
胸。
外。
ほとんど。
切る。
「今!」
アルフレッド。
手。
ジェス。
胸。
直接。
触れない。
上。
かざす。
「《清掃》」
淡い。
光。
身体。
全体。
ではない。
菌糸。
だけ。
感じる。
皮膚。
傷。
肉。
中。
細い。
異物。
「……いた」
「どこ!」
「中」
「でも」
「ジェスさんじゃない」
光。
狭く。
「出て」
菌糸。
傷。
中。
引く。
ぷつ。
ぷつ。
男。
身体。
震える。
「ああっ!」
「止める?」
ガルド。
「まだ!」
「あと」
細い。
一つ。
心臓。
ではない。
胸。
表面。
「消えて!」
ぱん。
光。
消える。
⸻
ジェス。
力。
抜ける。
「生きてる?」
『生命反応――安定』
「侵食」
『体内反応――』
一拍。
『検出限界以下』
「やった……」
アルフレッド。
座る。
「頭」
ガルド。
「少し」
「吐き気」
「ない」
「手」
「動く」
「今日は」
「もう使うな」
「……シーさん」
「分かってる」
「でも」
「今」
「一回」
「かなり重かった」
「うん」
「方法」
「変える必要ある」
⸻
補助保守口。
歪む。
昨日。
こじ開けられた。
隙間。
「これ」
閉じられる?」
ヘルマン。
見る。
「壊れてる」
「直す?」
全員。
アルフレッド。
見る。
「……今日は」
「やめとく」
「偉い」
「ただ」
ヘルマン。
「手で」
「仮固定できる」
「やって」
鉄棒。
縄。
木。
扉。
外から。
固定。
「これで」
「すぐ出ては来ない」
「すぐ」
「か」
ガルド。
⸻
「シーさん」
アルフレッド。
扉。
前。
「聞こえる?」
『通信試行』
A―07。
『C―12』
『応答要求』
ざ。
『……管理者……』
「無事?」
長い。
沈黙。
『侵入者』
『排除』
「ジェスさん?」
『……侵食対象』
「今」
「きれいにした」
『……』
「シーさん」
「待ってって言ったのに」
『管理者命令』
『待機』
『侵入者』
『防衛規定』
「そっか」
「シーさん」
「約束破ったんじゃないんだね」
『……』
『肯定』
アルフレッド。
少し。
ほっとする。
⸻
「侵食率」
『48.6%』
「増えた」
ノエル。
「昨日47.8でした」
「侵入者が」
「扉開けたから?」
『可能性あり』
「残り」
「三日ない?」
『中枢侵食限界』
『推定――』
音。
『約四十六時間』
「二日」
ガルド。
「さらに縮んだ」
「……」
アルフレッド。
扉。
見る。
「明日」
「じゃ」
「遅い?」
『現状進行率一定なら』
『明日――対応可能』
「でも」
「また誰か来たら」
「だから」
ガルド。
「見張り置く」
「ここに?」
「ああ」
「俺たちの誰か」
「いや」
ノエル。
「村から」
「二名交代」
「さらに」
「立入禁止」
「標識」
「警告」
「作ります」
「それでも入る人」
「いますよね」
アルフレッド。
全員。
ジェス。
見る。
「……いますね」
⸻
ジェス。
担架。
乗せる。
「村へ」
「連れてく?」
アルフレッド。
「当然だ」
ガルド。
「治療」
「それと」
「事情聴取」
ノエル。
「盗掘目的で」
「領内の危険施設へ侵入」
「無断開放」
「重大です」
「牢屋」
「ある?」
「ありません」
「石蔵?」
ガルド。
「怪我人だぞ」
「まず治療」
「その後」
「考える」
「うん」
⸻
帰り。
アルフレッド。
歩く。
今日は。
背負われていない。
「アル坊」
「何?」
「さっき」
「よく止めたな」
「何を?」
「マルクが」
「ジェスへ近づこうとした時」
「あ」
「菌糸」
「見えたから」
「前なら」
「お前が一番に」
「走ってた」
「……」
「そうだった?」
「そうだ」
「成長?」
「ああ」
「少し?」
「今回は」
「普通に」
「やった」
⸻
アルフレッド。
嬉しそう。
歩く。
そして。
前。
A―07。
B―03。
見る。
「シーさん」
「助けたい」
「分かってる」
ガルド。
「でも」
「今回は」
「もっと」
「難しい」
「うん」
「エーナナは」
「止まってた」
「ビーさんも」
「弱ってた」
「シーさんは」
「元気」
「侵食されてるけど」
「強い」
「しかも」
「四本脚」
「でかい」
「うん」
「だから」
「掃除する前に」
「押さえないと」
「そうだ」
アルフレッド。
B―03。
見る。
「ビーさんなら?」
『C―12推定出力』
『当機単独制圧――困難』
「エーナナと二人」
『補助可能』
「人間」
「縄」
「罠」
「使う」
ヘルマン。
「なら」
「固定具」
「作るか」
「固定具?」
「足」
「四本」
「一本ずつ」
「動きを」
「殺す」
アルフレッド。
目。
輝く。
「それ!」
「顔」
ガルド。
「何?」
「仕事見つけた時の」
「エッダと同じ」
「また?」
⸻
村。
夕方。
ジェス。
治療。
マルタ。
「何したら」
「こんなことになる!」
「遺跡……」
「開けて……」
「馬鹿!」
「はい……」
「怪我人に」
「怒鳴るなよ」
ガルド。
「怪我する前に」
「馬鹿やったんだろ!」
「正論だな」
「で?」
「菌糸」
「体内まで」
「入ってた」
マルタ。
手。
止まる。
「アル坊が?」
「ああ」
「掃除した」
「……」
マルタ。
アルフレッド。
見る。
「頭」
「少しだけ」
「吐き気」
「なし」
「今日はもう」
「使いません」
「よろしい」
⸻
夜。
会議。
第二浄化塔。
C―12。
救出計画。
机。
上。
簡単。
絵。
四本脚。
「こんな?」
アルフレッド。
描く。
「猫?」
リーナ。
横。
「シーさん」
「猫なの?」
「違うと思う」
「じゃあ」
「犬?」
「機械」
「機械って」
「四本脚あるの?」
「あるみたい」
「変なの」
⸻
ヘルマン。
図。
見る。
「四本」
「全部押さえるのは」
「無理」
「二本」
「動かなくする」
「残り」
「ビーさん」
「押さえる」
「エーナナ」
「菌糸」
「切る」
「ガルドさんたち」
「縄」
「僕」
「中枢」
「《清掃》」
「そう」
ノエル。
「役割分担」
「一人」
「一つ」
「アルフレッド様は」
「最後だけ」
「うん」
「最初から」
「《清掃》を」
「使わない」
「うん」
⸻
「問題」
ガルド。
「精神干渉」
「遮断面」
「五個」
「今回」
「必要人数」
「多い」
「エーナナ」
「ビーさん」
「不要」
「人間」
「僕」
「ガルドさん」
「ベルン」
「マルク」
「ヘルマン」
「ノエルさん」
「六人」
「一個足りない」
「私は」
ノエル。
「外」
「扉側に残ります」
「なら五」
「ちょうど」
「でも」
「侵入者」
「また来たら?」
「見張り」
「置く」
⸻
セルマ。
少し。
遠く。
聞く。
「縄」
口。
出す。
「何?」
アルフレッド。
「四本脚」
「全部」
「地面へ」
「押さえるのではなく」
「二本」
「互いに」
「動きを邪魔するよう」
「繋げば」
「……」
ヘルマン。
止まる。
「前脚」
「左右?」
「はい」
「短く」
「繋げる」
「走ろうとすると」
「自分の脚同士」
「引っ張り合う」
「……」
ガルド。
「それ」
「使えるかもな」
「誰に教わった?」
アルフレッド。
「昔」
「馬を」
「逃げないように」
「繋ぐ方法」
「見たことがあります」
セルマ。
小さく。
「奴隷商人が」
部屋。
一瞬。
静か。
「……そう」
アルフレッド。
それ以上。
聞かない。
ヘルマン。
「よし」
「試す」
⸻
縄。
太い。
革。
金具。
輪。
「四本脚」
実物。
ない。
だから。
椅子。
四脚。
「これで」
練習?」
リーナ。
「蹴られないから」
ベルン。
「安全だな」
椅子。
前脚。
二本。
短い。
縄。
繋ぐ。
「動かして」
セルマ。
ベルン。
椅子。
持つ。
「前へ」
がた。
片脚。
出す。
反対。
引く。
「動きにくい」
「でも」
「切られたら?」
「だから」
「太い縄」
「二重」
ヘルマン。
金具。
追加。
「これなら」
「数秒」
「稼げる」
「数秒」
アルフレッド。
「十分?」
「お前が」
「中枢の菌糸を」
「消すまで」
「分からない」
「じゃあ」
「十秒」
「目標」
アルフレッド。
自分。
手。
見る。
「十秒で」
「終わらせる」
⸻
ガルド。
少年。
見る。
「できるか」
「分からない」
「よし」
「よしなの?」
「分からねぇことを」
「できるって」
「言わなくなった」
「……」
「そこ」
「褒めてる?」
「かなり」
「やった」
⸻
会議。
終わる。
明日。
第二浄化塔。
C―12。
救出。
失敗した場合。
撤退。
完全侵食。
その場合。
破壊も。
選択肢。
誰も。
言いたくない。
でも。
書く。
ノエル。
記録。
する。
「最悪の場合」
「C―12を」
「停止させる」
「うん」
アルフレッド。
小さく。
答える。
助けたい。
でも。
村へ。
連れて帰って。
人を殺したら。
それは。
助けたことには。
ならない。
⸻
深夜。
第二浄化塔。
C―12。
座る。
四本脚。
折る。
『管理者命令』
『待機』
赤。
瞳。
強く。
なる。
『侵食率――49.7%』
『待機』
『排除』
『待機』
『排除』
外。
倒れていた。
ジェス。
もう。
いない。
代わり。
地面。
血。
少し。
残る。
その匂い。
森。
奥。
何か。
嗅ぐ。
灰色。
狼。
一匹。
木陰。
現れる。
次。
二匹。
三匹。
五匹。
菌糸。
顔。
覆う。
そして。
山から。
流れる。
灰色の水。
飲む。
一斉。
頭。
上げる。
赤い。
瞳。
第二浄化塔。
方向。
向く。
⸻
第46話 先に来た者たち 了




