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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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45/53

救援信号

第二章 灰境


第45話 救援信号


前書き


助けを求める声が、


いつも正しいとは限りません。


罠かもしれない。


敵かもしれない。


もう手遅れかもしれない。


けれど。


だからといって、


聞こえなかったことにしていい理由にも、


ならないのです。


大切なのは。


助けに行くことではなく。


助けられる方法を考えてから行くこと。


⸻


 翌朝。


 アルフレッドは。


 目を覚ますと同時に、


 自分の身体を確認した。


 右手。


 握る。


 開く。


 左手。


 握る。


 開く。


 足。


 動かす。


 頭。


「……痛くない」


 吐き気。


「ない」


 目。


「見える」


 そして。


 身体。


 起こす。


「よし」


「何が、よしなんですか」


「うわっ!」


 横。


 セルマ。


 椅子。


 座っている。


「起きてたの?」


「今来ました」


「びっくりした……」


「体調確認ですか?」


「うん」


「ガルドさんに毎回されるから」


「先にやっておこうと思って」


「結果は?」


「元気」


「それを決めるのは」


「マルタさん」


「分かってる」


⸻


「頭痛」


 マルタ。


「なし」


「吐き気」


「なし」


「目眩」


「なし」


「食欲」


「あります」


「昨日の夕食」


「二杯食べました」


 セルマ。


 補足。


「セルマ」


「事実です」


「眠れた?」


「いっぱい」


「何時間」


「……九時間?」


「結構」


 マルタ。


 額。


 触る。


 目。


 見る。


「今日は」


「起きていい」


「やった!」


「ただし」


 アルフレッド。


 止まる。


「地下へ行っていいとは」


「言ってないよ」


「……」


「顔」


「分かりやすいねぇ」


⸻


 朝食。


 広場。


 薄い。


 豆。


 芋。


 スープ。


 パン。


 少し。


 以前なら。


 それだけ。


 でも今日は。


 木杯。


 水。


 透明。


「いただきます」


 アルフレッド。


 一口。


「……普通」


 リーナ。


 隣。


「でしょ?」


「うん」


「普通のお水」


「美味しい?」


「うん」


「昨日」


「私も同じこと言った」


「そうなの?」


「普通だからすごいの」


 アルフレッド。


 少し。


 笑う。


「本当だね」


⸻


 A―07。


 井戸。


 測定。


『侵食因子濃度』


『前日比――低下』


「また?」


 ノエル。


『肯定』


「水位」


『前日朝比――低位』


「そっちは」


「戻ってない」


『肯定』


 バルド。


「水がきれいでも」


「枯れたら意味がない」


「第二浄化塔」


 アルフレッド。


「直せば」


「戻るかもしれない」


「かもしれない」


 ガルド。


「だ」


「うん」


「だから今日は」


「調べる」


「うん」


「突っ込まない」


「うん」


「勝手に《清掃》しない」


「状況による」


「そこは『うん』って言え!」


⸻


 朝食後。


 第一浄化施設。


 制御室。


 今日は。


 アルフレッド。


 ガルド。


 ノエル。


 A―07。


 B―03。


 そして。


 ヘルマン。


「ヘルマンさんも?」


「ああ」


「第二浄化塔は」


「水圧調整設備なんだろ」


「なら」


「機械を見る奴が」


「いた方がいい」


「機械分かるの?」


「水車」


「滑車」


「井戸」


「製粉機」


「そのくらいだ」


「古代機械は?」


「分からん」


「……」


「お前よりは」


「壊れた物を触る前に」


「考える」


「それは」


「確かに」


「納得すんな!」


⸻


「エーナナ」


『確認』


「第二浄化塔」


「今どうなってる?」


『遠隔照会』


 青い。


 文字。


 流れる。


『第二浄化塔』


『主系統――応答なし』


『補助動力――稼働』


「昨日」


「復旧したやつ」


『肯定』


『内部水位――上昇停止』


「止まった?」


『排水開始』


「どこへ?」


『自然河川系』


「昨日」


「山から出てた水?」


『可能性――高』


「じゃあ」


 ガルド。


「塔の中へ入った水を」


「外へ逃がしてる」


『肯定』


「それなら」


「今すぐ破裂するとかは」


『可能性――低下』


「よし」


⸻


「保守個体は?」


『反応――あり』


「状態」


『不明』


「動いてる?」


『反応位置――変動』


「動いてる」


 アルフレッド。


「エーナナ」


「話せない?」


『通常通信』


『応答なし』


「管理者として」


「呼べない?」


 A―07。


 一瞬。


 停止。


『試行可能』


「やって」


「待て」


 ガルド。


「何が起きる?」


『不明』


「……」


「またか」


「でも」


 アルフレッド。


「いきなり中へ行くより」


「先に話せるか」


「試した方がいい」


 ガルド。


 少年。


 見る。


「……そうだな」


「やれ」


⸻


 A―07。


 制御盤。


 左手。


 置く。


『保守回線』


『緊急通信』


『第二浄化塔』


『接続試行』


 かち。


 低い。


 音。


『……』


 何も。


 ない。


「駄目?」


『再試行』


 かち。


 かち。


 ざ。


 雑音。


「何か」


 ノエル。


 身。


 乗り出す。


『……ザ……』


『……管……』


「声?」


 アルフレッド。


『……理……』


『……者……』


「聞こえる!」


 ガルド。


「待て」


「まだ近づくな」


『……管理……者……』


 雑音。


 強い。


『……救……』


 アルフレッド。


 目。


 見開く。


「救?」


『……援……』


「救援」


 ノエル。


「助けを」


「求めています」


⸻


 次の瞬間。


 ざざざざざっ!


 音。


 乱れる。


『――来ルナ』


 全員。


 固まる。


「……え?」


 アルフレッド。


『――管理者』


『――来ルナ』


 声。


 先ほど。


 違う。


 低い。


 歪む。


『――危険』


「危険だから?」


『――来ルナ』


 直後。


 別。


 声。


『……救援……』


『……管理者……』


 また。


『――来ルナ』


『……救援……』


『――来ルナ』


『……救援……』


『――来ルナ』


 青い表示。


 赤。


 混ざる。


『救援』


『排除』


『保護』


『殺害』


『救援』


『排除』


「切れ!」


 ガルド。


『通信遮断』


 ぶつ。


 静寂。


⸻


 誰も。


 すぐには。


 話さない。


「……何だ」


 ヘルマン。


「あれ」


 A―07。


『推定』


『保守命令系統』


『侵食命令系統』


『競合』


「つまり」


 アルフレッド。


「助けてって言ってるのも」


「来るなって言ってるのも」


「同じ子?」


『可能性――高』


「子?」


 ヘルマン。


「気にするな」


 ガルド。


「こいつは」


「機械でも子って呼ぶ」


「エーナナは」


「エーナナだよ」


『肯定』


「ほら」


「何が『ほら』だ」


⸻


「でも」


 ノエル。


 眼鏡。


 押し上げる。


「重要です」


「第四浄化塔の番人と」


「同じ状態かもしれません」


「エーナナも」


「菌糸に侵食されてた」


 アルフレッド。


「《清掃》したら」


「戻った」


「B―03も?」


『当機』


『侵食痕跡あり』


「じゃあ」


「第二浄化塔の子も」


「助けられるかもしれない」


「かもしれない」


 ガルド。


「だ」


「うん」


「それと」


「相手は」


「エーナナやビーさんと」


「同じ形とは限らねえ」


「昨日」


「四本脚みたいな反応だったんだろ?」


『構造情報――取得不能』


「大きさは?」


『推定』


 一瞬。


『全長――約三・八メートル』


「……」


 アルフレッド。


「大きい」


「エーナナより?」


『大型』


「ビーさんより?」


『全長のみ比較――大型』


 B―03。


『当機重量――』


「重量勝負しなくていい」


 ガルド。


⸻


「まず」


 ノエル。


「水系を確認しましょう」


 地図。


 広げる。


「第二浄化塔へ入る前に」


「山から流れ出した水が」


「どこへ向かうのか」


「それを確認する必要があります」


「村へ来ない?」


「昨日の時点では」


「東へ流れていました」


「でも」


「水量が増えたら?」


「地形次第です」


 バルド。


 呼ばれる。


 地図。


 見る。


「東へ流れれば」


「古い谷へ入る」


「その先は?」


「灰の森」


「村には?」


「直接は来ん」


「ただ」


 老人。


 指。


 動かす。


「ここ」


「大雨になると」


「水が溢れる」


「溢れたら?」


「南へ回る」


「村の畑」


 エッダ。


「西側へ」


「来ます」


⸻


「じゃあ」


 アルフレッド。


「第二浄化塔を」


「変に動かしたら」


「村が水浸しになる可能性もある?」


「あります」


 ノエル。


「だから」


「直せばいい」


「という話ではありません」


 アルフレッド。


 黙る。


 これまで。


 壊れたもの。


 直す。


 柵。


 家。


 機械。


 でも。


 水。


 流れ。


 直した先。


 別の場所。


 影響。


「……難しい」


「領主ですから」


 ノエル。


「直すだけでは」


「駄目です」


「直した後に」


「どうなるかまで」


「考えなければなりません」


「うん」


⸻


「じゃあ」


 アルフレッド。


「二つ」


「やる」


「何を?」


「一つ」


「山の水」


「どこへ流れてるか」


「見る」


「二つ」


「第二浄化塔」


「外から」


「もっと調べる」


「中へ入らない?」


 ガルド。


「今日は」


「まだ」


「……」


 ガルド。


 アルフレッド。


 見る。


「成長したな」


「昨日」


「いっぱい寝たから」


「睡眠でそこまで成長するか」


⸻


 午前。


 二班。


 分かれる。


 第一班。


 ガルド。


 グレゴール。


 ベルン。


 村の若者。


 二人。


 山から流れ出した水。


 追う。


 第二班。


 アルフレッド。


 ノエル。


 A―07。


 B―03。


 ヘルマン。


 第二浄化塔。


 外周調査。


「アル坊」


 ガルド。


「中へ入るな」


「分かってる」


「絶対だぞ」


「うん」


「扉が開いても」


「入るな」


「うん」


「声が聞こえても」


「入るな」


「うん」


「助けてって言われても」


 アルフレッド。


 一瞬。


 止まる。


「……入らない」


「よし」


⸻


 山道。


 昨日。


 調査隊。


 通った。


 古道。


 今日は。


 アルフレッド。


 初めて。


 見る。


「これ」


「昔の道?」


『肯定可能性』


「石」


「きれいに並んでる」


 ノエル。


「かつては」


「かなりの人が」


「ここを行き来したのでしょう」


「第二浄化塔で」


「働いてた人?」


「その可能性は」


「高いでしょうね」


「村も」


「昔はもっと大きかった?」


「……」


 ノエル。


 答えない。


「それも」


「調べる必要があります」


⸻


 水音。


 聞こえる。


 ざあああ。


「わ」


 木々。


 抜ける。


 山肌。


 石壁。


 水。


 流れる。


 昨日より。


「増えてない?」


 ヘルマン。


『流量』


 A―07。


 測る。


『前日比――1.17』


「増えてる」


「まずい?」


『現状』


『排水能力範囲』


「この水」


 アルフレッド。


 しゃがむ。


「触るな」


 ノエル。


「はい」


 A―07。


 代わり。


 採取。


『侵食因子――検出』


「やっぱり」


『濃度――低』


「井戸より?」


『現在の井戸水より――高』


「飲めない」


『非推奨』


⸻


「菌糸」


 ヘルマン。


 水。


 流れ。


 見る。


 灰色。


 細い。


 もの。


 時々。


 混ざる。


「塔の中から」


「流れ出してる」


「第二浄化塔」


 アルフレッド。


 石壁。


 見る。


「中」


「かなり」


「汚れてるのかな」


『可能性――高』


⸻


 補助保守口。


 昨日。


 見つけた。


 金属扉。


 閉じたまま。


「ここ?」


『肯定』


「開けない」


 ノエル。


「約束です」


「分かってる」


 A―07。


 扉。


 走査。


『内部状況』


『通路――浸水』


「水?」


『深度――約二十七センチ』


「歩ける?」


 ノエル。


「アルフレッド様」


「聞いただけ」


「質問も禁止した方が」


「厳しくない?」


⸻


『保守個体』


 A―07。


 突然。


「いる?」


『距離――約八十四メートル』


「動いてる?」


『接近中』


「え?」


 全員。


 扉。


 見る。


『距離――七十九』


「近づいてる!」


『七十四』


「エーナナ」


「通信」


『試行』


『……』


『……管……理……者……』


 聞こえる。


 扉。


 向こう。


 ではない。


 A―07。


 通信。


『……逃……げ……』


「逃げろ?」


『――排除』


「っ」


『……逃げ……』


『――排除』


『……逃げ……』


『――殺害』


「通信切って!」


『遮断』


⸻


『距離――五十八』


「下がるぞ」


 ヘルマン。


「うん」


 アルフレッド。


 素直。


 後ろ。


『五十二』


「ビーさん」


『防衛配置』


 B―03。


 アルフレッド。


 前。


 立つ。


「まだ」


「扉閉まってるよね」


『肯定』


『四十七』


 どん。


 扉。


 向こう。


 音。


「来た」


『四十二』


 どん。


『三十八』


 どん!


 金属扉。


 揺れる。


「離れろ!」


 ノエル。


 全員。


 距離。


 取る。


⸻


 どん!


 扉。


 中央。


 歪む。


「エーナナ」


「この扉」


「持つ?」


『推定』


『現在衝撃継続時――』


 どん!


『約四分』


「短い!」


 ヘルマン。


「村へ」


「戻る?」


 アルフレッド。


「いや」


「逃げても」


「この子」


「外へ出る」


「村とは逆方向です」


 ノエル。


「でも」


「放っておけば」


「どこへ行くか分からない」


⸻


「エーナナ」


「止める方法」


『管理者命令』


「効く?」


『侵食状態では』


『成功率――不明』


「試す」


 アルフレッド。


 扉。


 向かう。


「近づくな」


 B―03。


 巨大な。


 左腕。


 少年。


 前。


 壁。


『管理者』


『後退推奨』


「ここから言う」


 アルフレッド。


 息。


 吸う。


「第二浄化塔の」


「保守個体!」


 どん!


「聞こえる!?」


 衝撃。


 止まる。


「……」


 ノエル。


 目。


 見開く。


⸻


 扉。


 向こう。


 水。


 滴る。


 四脚。


 金属。


 獣。


 止まっている。


 青。


 赤。


 瞳。


 揺れる。


『管理者……』


 外。


 アルフレッド。


「僕は」


「アルフレッド!」


「暫定管理者です!」


 A―07。


『管理者識別信号』


『送信』


 青い。


 光。


 扉。


 通る。


⸻


 C―12。


 頭。


 震える。


『照合』


『管理者』


『認証』


 青。


 強く。


 なる。


 だが。


 菌糸。


 脈打つ。


 赤。


 戻る。


『排除』


 前脚。


 扉。


 叩こうと。


 上がる。


『管理者』


『保護』


 止まる。


『排除』


 動く。


『保護』


 止まる。


『排除』


『保護』


『排除』


『保護』


⸻


 外。


 どん。


 来ない。


「止まった?」


 ヘルマン。


『保守個体』


『停止』


「今なら」


 アルフレッド。


「話せる?」


『試行可能』


「お願い」


⸻


『C―12』


 A―07。


 初めて。


 識別。


『第二浄化塔』


『保守防衛個体』


「C―12」


 アルフレッド。


「シーさん?」


 ノエル。


「今」


「名前を付ける必要あります?」


「呼びにくいから」


「エーナナ」


「ビーさん」


「シーさん」


「統一感あるでしょ?」


『名称登録――』


「待ってください」


 ノエル。


「勝手に登録しないでください」


「駄目?」


「後にしてください!」


⸻


「C―12」


 アルフレッド。


 扉。


 向こう。


「聞こえる?」


 数秒。


『……聞……』


『……こえる……』


「僕たち」


「助けたい」


『……否……』


「え?」


『……開けるな……』


「でも」


『……当機……』


 雑音。


『……侵食……』


「分かってる」


「エーナナも」


「そうだった」


『……』


「きれいにできるかもしれない」


『……清掃……』


 アルフレッド。


 驚く。


「知ってる?」


『管理者波形』


『清浄化適性』


 ノエル。


「清浄化適性?」


 A―07。


『旧分類語』


「アルフレッド様の《清掃》と」


「同じもの?」


『類似可能性』


「……」


 ノエル。


 すぐ。


 帳面。


 書く。


⸻


「じゃあ」


 アルフレッド。


「助けられる」


『否定』


「どうして?」


『当機』


『侵食率――』


 音。


 乱れる。


『47.8%』


「半分くらい」


『中枢侵食――進行』


「でも」


『管理者接近時』


『排除命令』


「だから」


「僕を殺そうとする?」


『肯定』


「でも」


「今」


「止まれた」


『一時的』


「なら」


 アルフレッド。


「方法」


「考える」


『……』


「今日は」


「入らない」


 ノエル。


 アルフレッド。


 見る。


「約束したから」


「でも」


「絶対」


「戻ってくる」


『……』


「それまで」


「待てる?」


 長い。


 沈黙。


『推定』


『中枢侵食限界まで――』


「どれくらい?」


『約――』


 数字。


 乱れる。


『三日』


 全員。


 表情。


 変わる。


「三日」


 アルフレッド。


『限界到達後』


『保守命令系統』


『消失予測』


「そうしたら?」


『完全侵食』


『管理者排除』


「……」


『当機』


『敵性化』


⸻


 アルフレッド。


 拳。


 握る。


 でも。


「今日」


「突っ込まない」


 自分へ。


 言う。


「三日ある」


「三日で」


「助ける方法」


「考える」


『……管理者』


「何?」


『推奨』


『当機』


『破壊』


 アルフレッド。


 顔。


 変わる。


「嫌だ」


『安全性』


『最優先』


「嫌」


『管理者』


「エーナナも」


「ビーさんも」


「壊れてた」


「侵食されてた」


「でも」


「今」


「村にいる」


『当機』


『侵食率――高』


「だからって」


「壊して終わりには」


「しない」


 ノエル。


 何も。


 言わない。


 ヘルマン。


 腕。


 組む。


 B―03。


 静か。


 立つ。


⸻


「三日」


 アルフレッド。


「待って」


「必ず」


「方法」


「考えるから」


『……』


 C―12。


 青。


 瞳。


 ほんの。


 一瞬。


 赤。


 消える。


『命令……受諾』


「うん」


『待機』


 そして。


 扉。


 向こう。


 四本。


 脚。


 折る。


 C―12。


 座る。


『管理者』


『三日』


「うん」


『了解』


⸻


 村へ。


 帰る途中。


 ノエル。


 黙っている。


「ノエルさん?」


「はい」


「怒ってる?」


「いいえ」


「じゃあ」


「何?」


「考えています」


「何を?」


「アルフレッド様の能力です」


「《清掃》?」


「はい」


 歩く。


「A―07は」


「清浄化適性と言いました」


「うん」


「現在のスキル名称と」


「古代施設の分類が」


「一致していない」


「どういうこと?」


「まだ分かりません」


 ノエル。


 帳面。


 見る。


「ですが」


「もしかすると」


「《清掃》という名前そのものが」


「能力の一部しか」


「表していないのかもしれません」


 アルフレッド。


 自分。


 手。


 見る。


 汚れ。


 落とす。


 菌糸。


 除く。


 呪い。


 命令。


 消す。


「掃除」


「なんだけどなぁ」


「何を」


「汚れと判断するか」


「それが」


「問題なのかもしれません」


⸻


「それと」


 ヘルマン。


 口。


 開く。


「シー何とか」


「C―12」


「そいつ」


「四本脚なんだろ」


「たぶん」


「大きい」


「うん」


「菌糸」


「外から」


「半分くらい覆ってる」


「うん」


「なら」


「全部」


「お前が掃除する必要」


「あるのか?」


 アルフレッド。


「え?」


「外側」


「俺たちが」


「剥がせばいい」


「……」


「エーナナとビーさん」


「切れるだろ」


『可能』


「燃やせる?」


『外部菌糸――可能』


「じゃあ」


 ヘルマン。


「お前は」


「最後」


「中枢だけ」


「掃除すりゃいい」


 アルフレッド。


 止まる。


「それ」


「できるかも」


「だろ」


「何でも」


「一人でやろうとするから」


「倒れるんだ」


「……」


「大人」


「使え」


「僕」


「領主だから?」


「子どもだからだ」


「そっち?」


「十二歳だろ」


「はい」


⸻


 アルフレッド。


 少し。


 笑う。


「じゃあ」


「みんなで」


「シーさん」


「助けよう」


「だから」


 ノエル。


「その名称」


「登録しないでくださいね」


「エーナナ」


『名称登録待機中』


「待ってたの!?」


⸻


 その頃。


 山から。


 流れ出した水。


 ガルドたち。


 追っている。


 流れ。


 東。


 谷。


 入る。


「今のところ」


「村には来ねえ」


 ガルド。


「でも」


 グレゴール。


 水際。


 しゃがむ。


「これ」


 指す。


 灰色。


 菌糸。


 岸。


 付着。


「生きてる?」


「いや」


 枝。


 触れる。


 菌糸。


 動かない。


「水の外に出ると」


「弱るのか?」


「分からん」


 ベルン。


「焼く?」


「待て」


 ガルド。


 見る。


 菌糸。


 一本。


 水。


 離れる。


 地面。


 落ちる。


 数秒。


 縮む。


 乾く。


「……水」


「必要なのか」


 グレゴール。


「なら」


「水路を断てば」


「森の侵食も」


「止められる?」


「そんな簡単なら」


「ありがてぇがな」


⸻


 さらに。


 下流。


 進む。


 そして。


 グレゴール。


 突然。


 手。


 上げる。


「止まれ」


「何だ」


「足跡」


 泥。


 見る。


「獣?」


「違う」


 大きい。


 人。


 靴。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


「何人?」


「少なくとも」


「五」


「新しい?」


「今日か」


「昨日」


 ガルド。


 顔。


 険しくなる。


「村人じゃねえ」


「旧居住区の連中でも」


「ない」


「方向」


 足跡。


 水路。


 沿う。


 上流。


 第二浄化塔。


 向かう。


「……誰か」


「先に」


「あの山へ」


「入ろうとしてる」


⸻


 その夜。


 灰境。


 村。


 アルフレッド。


 地図。


 囲む。


「三日」


「シーさんの侵食限界まで」


「三日」


「明日」


「外側の菌糸」


「剥がす方法を」


「試す」


「明後日」


「中へ」


「それで?」


 ガルド。


 帰還。


 したばかり。


 泥。


 靴。


「予定」


「変わるかもしれん」


「どうして?」


「第二浄化塔へ」


「向かってる奴らがいる」


 アルフレッド。


「誰?」


「分からん」


「五人以上」


「武装してる可能性もある」


「追手?」


「王都の?」


「それも」


「分からん」


 ノエル。


「足跡は」


「第二浄化塔へ?」


「ああ」


「明日まで」


「待てないかもしれねえ」


⸻


 同じ頃。


 第二浄化塔。


 外。


 夜。


 五つ。


 人影。


 水。


 流れる。


 石壁。


 見上げる。


「間違いない」


 一人。


 男。


 古い。


 地図。


 広げる。


「ここだ」


「本当に」


「残ってたのか」


「王国が捨てた」


「古代施設」


 別。


 男。


 笑う。


「中に」


「何がある?」


「金」


「魔道具」


「武器」


「何でもいい」


「持って帰れば」


「一生遊べる」


 彼ら。


 知らない。


 この場所。


 すでに。


 暫定管理者。


 いる。


 そして。


 扉。


 向こう。


 C―12。


 座る。


 青。


 瞳。


 静か。


『管理者命令』


『待機』


 しかし。


 外。


 男。


 一人。


 鉄棒。


 補助保守口。


 隙間。


 差し込む。


「せーの!」


 ぎ。


 金属。


 軋む。


 C―12。


 赤。


 一瞬。


 灯る。


『外部侵入』


『管理者命令――待機』


 どん。


 扉。


 外。


 叩く。


『外部侵入』


『管理者命令――待機』


 ぎ。


 扉。


 少し。


 開く。


『外部侵入』


『……』


『防衛規定』


『優先度上昇』


 青。


 赤。


 混ざる。


『管理者命令――』


 乱れる。


『待――』


 扉。


 さらに。


 開く。


 灰色。


 菌糸。


 隙間。


 這い出す。


「おい」


「何だこれ」


 男。


 松明。


 近づける。


 その瞬間。


 中。


 四本。


 脚。


 立つ。


『侵入者』


 赤い瞳。


 灯る。


『排除』


 男たちの笑顔が。


 消えた。


⸻


第45話 救援信号 了

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