救援信号
第二章 灰境
第45話 救援信号
前書き
助けを求める声が、
いつも正しいとは限りません。
罠かもしれない。
敵かもしれない。
もう手遅れかもしれない。
けれど。
だからといって、
聞こえなかったことにしていい理由にも、
ならないのです。
大切なのは。
助けに行くことではなく。
助けられる方法を考えてから行くこと。
⸻
翌朝。
アルフレッドは。
目を覚ますと同時に、
自分の身体を確認した。
右手。
握る。
開く。
左手。
握る。
開く。
足。
動かす。
頭。
「……痛くない」
吐き気。
「ない」
目。
「見える」
そして。
身体。
起こす。
「よし」
「何が、よしなんですか」
「うわっ!」
横。
セルマ。
椅子。
座っている。
「起きてたの?」
「今来ました」
「びっくりした……」
「体調確認ですか?」
「うん」
「ガルドさんに毎回されるから」
「先にやっておこうと思って」
「結果は?」
「元気」
「それを決めるのは」
「マルタさん」
「分かってる」
⸻
「頭痛」
マルタ。
「なし」
「吐き気」
「なし」
「目眩」
「なし」
「食欲」
「あります」
「昨日の夕食」
「二杯食べました」
セルマ。
補足。
「セルマ」
「事実です」
「眠れた?」
「いっぱい」
「何時間」
「……九時間?」
「結構」
マルタ。
額。
触る。
目。
見る。
「今日は」
「起きていい」
「やった!」
「ただし」
アルフレッド。
止まる。
「地下へ行っていいとは」
「言ってないよ」
「……」
「顔」
「分かりやすいねぇ」
⸻
朝食。
広場。
薄い。
豆。
芋。
スープ。
パン。
少し。
以前なら。
それだけ。
でも今日は。
木杯。
水。
透明。
「いただきます」
アルフレッド。
一口。
「……普通」
リーナ。
隣。
「でしょ?」
「うん」
「普通のお水」
「美味しい?」
「うん」
「昨日」
「私も同じこと言った」
「そうなの?」
「普通だからすごいの」
アルフレッド。
少し。
笑う。
「本当だね」
⸻
A―07。
井戸。
測定。
『侵食因子濃度』
『前日比――低下』
「また?」
ノエル。
『肯定』
「水位」
『前日朝比――低位』
「そっちは」
「戻ってない」
『肯定』
バルド。
「水がきれいでも」
「枯れたら意味がない」
「第二浄化塔」
アルフレッド。
「直せば」
「戻るかもしれない」
「かもしれない」
ガルド。
「だ」
「うん」
「だから今日は」
「調べる」
「うん」
「突っ込まない」
「うん」
「勝手に《清掃》しない」
「状況による」
「そこは『うん』って言え!」
⸻
朝食後。
第一浄化施設。
制御室。
今日は。
アルフレッド。
ガルド。
ノエル。
A―07。
B―03。
そして。
ヘルマン。
「ヘルマンさんも?」
「ああ」
「第二浄化塔は」
「水圧調整設備なんだろ」
「なら」
「機械を見る奴が」
「いた方がいい」
「機械分かるの?」
「水車」
「滑車」
「井戸」
「製粉機」
「そのくらいだ」
「古代機械は?」
「分からん」
「……」
「お前よりは」
「壊れた物を触る前に」
「考える」
「それは」
「確かに」
「納得すんな!」
⸻
「エーナナ」
『確認』
「第二浄化塔」
「今どうなってる?」
『遠隔照会』
青い。
文字。
流れる。
『第二浄化塔』
『主系統――応答なし』
『補助動力――稼働』
「昨日」
「復旧したやつ」
『肯定』
『内部水位――上昇停止』
「止まった?」
『排水開始』
「どこへ?」
『自然河川系』
「昨日」
「山から出てた水?」
『可能性――高』
「じゃあ」
ガルド。
「塔の中へ入った水を」
「外へ逃がしてる」
『肯定』
「それなら」
「今すぐ破裂するとかは」
『可能性――低下』
「よし」
⸻
「保守個体は?」
『反応――あり』
「状態」
『不明』
「動いてる?」
『反応位置――変動』
「動いてる」
アルフレッド。
「エーナナ」
「話せない?」
『通常通信』
『応答なし』
「管理者として」
「呼べない?」
A―07。
一瞬。
停止。
『試行可能』
「やって」
「待て」
ガルド。
「何が起きる?」
『不明』
「……」
「またか」
「でも」
アルフレッド。
「いきなり中へ行くより」
「先に話せるか」
「試した方がいい」
ガルド。
少年。
見る。
「……そうだな」
「やれ」
⸻
A―07。
制御盤。
左手。
置く。
『保守回線』
『緊急通信』
『第二浄化塔』
『接続試行』
かち。
低い。
音。
『……』
何も。
ない。
「駄目?」
『再試行』
かち。
かち。
ざ。
雑音。
「何か」
ノエル。
身。
乗り出す。
『……ザ……』
『……管……』
「声?」
アルフレッド。
『……理……』
『……者……』
「聞こえる!」
ガルド。
「待て」
「まだ近づくな」
『……管理……者……』
雑音。
強い。
『……救……』
アルフレッド。
目。
見開く。
「救?」
『……援……』
「救援」
ノエル。
「助けを」
「求めています」
⸻
次の瞬間。
ざざざざざっ!
音。
乱れる。
『――来ルナ』
全員。
固まる。
「……え?」
アルフレッド。
『――管理者』
『――来ルナ』
声。
先ほど。
違う。
低い。
歪む。
『――危険』
「危険だから?」
『――来ルナ』
直後。
別。
声。
『……救援……』
『……管理者……』
また。
『――来ルナ』
『……救援……』
『――来ルナ』
『……救援……』
『――来ルナ』
青い表示。
赤。
混ざる。
『救援』
『排除』
『保護』
『殺害』
『救援』
『排除』
「切れ!」
ガルド。
『通信遮断』
ぶつ。
静寂。
⸻
誰も。
すぐには。
話さない。
「……何だ」
ヘルマン。
「あれ」
A―07。
『推定』
『保守命令系統』
『侵食命令系統』
『競合』
「つまり」
アルフレッド。
「助けてって言ってるのも」
「来るなって言ってるのも」
「同じ子?」
『可能性――高』
「子?」
ヘルマン。
「気にするな」
ガルド。
「こいつは」
「機械でも子って呼ぶ」
「エーナナは」
「エーナナだよ」
『肯定』
「ほら」
「何が『ほら』だ」
⸻
「でも」
ノエル。
眼鏡。
押し上げる。
「重要です」
「第四浄化塔の番人と」
「同じ状態かもしれません」
「エーナナも」
「菌糸に侵食されてた」
アルフレッド。
「《清掃》したら」
「戻った」
「B―03も?」
『当機』
『侵食痕跡あり』
「じゃあ」
「第二浄化塔の子も」
「助けられるかもしれない」
「かもしれない」
ガルド。
「だ」
「うん」
「それと」
「相手は」
「エーナナやビーさんと」
「同じ形とは限らねえ」
「昨日」
「四本脚みたいな反応だったんだろ?」
『構造情報――取得不能』
「大きさは?」
『推定』
一瞬。
『全長――約三・八メートル』
「……」
アルフレッド。
「大きい」
「エーナナより?」
『大型』
「ビーさんより?」
『全長のみ比較――大型』
B―03。
『当機重量――』
「重量勝負しなくていい」
ガルド。
⸻
「まず」
ノエル。
「水系を確認しましょう」
地図。
広げる。
「第二浄化塔へ入る前に」
「山から流れ出した水が」
「どこへ向かうのか」
「それを確認する必要があります」
「村へ来ない?」
「昨日の時点では」
「東へ流れていました」
「でも」
「水量が増えたら?」
「地形次第です」
バルド。
呼ばれる。
地図。
見る。
「東へ流れれば」
「古い谷へ入る」
「その先は?」
「灰の森」
「村には?」
「直接は来ん」
「ただ」
老人。
指。
動かす。
「ここ」
「大雨になると」
「水が溢れる」
「溢れたら?」
「南へ回る」
「村の畑」
エッダ。
「西側へ」
「来ます」
⸻
「じゃあ」
アルフレッド。
「第二浄化塔を」
「変に動かしたら」
「村が水浸しになる可能性もある?」
「あります」
ノエル。
「だから」
「直せばいい」
「という話ではありません」
アルフレッド。
黙る。
これまで。
壊れたもの。
直す。
柵。
家。
機械。
でも。
水。
流れ。
直した先。
別の場所。
影響。
「……難しい」
「領主ですから」
ノエル。
「直すだけでは」
「駄目です」
「直した後に」
「どうなるかまで」
「考えなければなりません」
「うん」
⸻
「じゃあ」
アルフレッド。
「二つ」
「やる」
「何を?」
「一つ」
「山の水」
「どこへ流れてるか」
「見る」
「二つ」
「第二浄化塔」
「外から」
「もっと調べる」
「中へ入らない?」
ガルド。
「今日は」
「まだ」
「……」
ガルド。
アルフレッド。
見る。
「成長したな」
「昨日」
「いっぱい寝たから」
「睡眠でそこまで成長するか」
⸻
午前。
二班。
分かれる。
第一班。
ガルド。
グレゴール。
ベルン。
村の若者。
二人。
山から流れ出した水。
追う。
第二班。
アルフレッド。
ノエル。
A―07。
B―03。
ヘルマン。
第二浄化塔。
外周調査。
「アル坊」
ガルド。
「中へ入るな」
「分かってる」
「絶対だぞ」
「うん」
「扉が開いても」
「入るな」
「うん」
「声が聞こえても」
「入るな」
「うん」
「助けてって言われても」
アルフレッド。
一瞬。
止まる。
「……入らない」
「よし」
⸻
山道。
昨日。
調査隊。
通った。
古道。
今日は。
アルフレッド。
初めて。
見る。
「これ」
「昔の道?」
『肯定可能性』
「石」
「きれいに並んでる」
ノエル。
「かつては」
「かなりの人が」
「ここを行き来したのでしょう」
「第二浄化塔で」
「働いてた人?」
「その可能性は」
「高いでしょうね」
「村も」
「昔はもっと大きかった?」
「……」
ノエル。
答えない。
「それも」
「調べる必要があります」
⸻
水音。
聞こえる。
ざあああ。
「わ」
木々。
抜ける。
山肌。
石壁。
水。
流れる。
昨日より。
「増えてない?」
ヘルマン。
『流量』
A―07。
測る。
『前日比――1.17』
「増えてる」
「まずい?」
『現状』
『排水能力範囲』
「この水」
アルフレッド。
しゃがむ。
「触るな」
ノエル。
「はい」
A―07。
代わり。
採取。
『侵食因子――検出』
「やっぱり」
『濃度――低』
「井戸より?」
『現在の井戸水より――高』
「飲めない」
『非推奨』
⸻
「菌糸」
ヘルマン。
水。
流れ。
見る。
灰色。
細い。
もの。
時々。
混ざる。
「塔の中から」
「流れ出してる」
「第二浄化塔」
アルフレッド。
石壁。
見る。
「中」
「かなり」
「汚れてるのかな」
『可能性――高』
⸻
補助保守口。
昨日。
見つけた。
金属扉。
閉じたまま。
「ここ?」
『肯定』
「開けない」
ノエル。
「約束です」
「分かってる」
A―07。
扉。
走査。
『内部状況』
『通路――浸水』
「水?」
『深度――約二十七センチ』
「歩ける?」
ノエル。
「アルフレッド様」
「聞いただけ」
「質問も禁止した方が」
「厳しくない?」
⸻
『保守個体』
A―07。
突然。
「いる?」
『距離――約八十四メートル』
「動いてる?」
『接近中』
「え?」
全員。
扉。
見る。
『距離――七十九』
「近づいてる!」
『七十四』
「エーナナ」
「通信」
『試行』
『……』
『……管……理……者……』
聞こえる。
扉。
向こう。
ではない。
A―07。
通信。
『……逃……げ……』
「逃げろ?」
『――排除』
「っ」
『……逃げ……』
『――排除』
『……逃げ……』
『――殺害』
「通信切って!」
『遮断』
⸻
『距離――五十八』
「下がるぞ」
ヘルマン。
「うん」
アルフレッド。
素直。
後ろ。
『五十二』
「ビーさん」
『防衛配置』
B―03。
アルフレッド。
前。
立つ。
「まだ」
「扉閉まってるよね」
『肯定』
『四十七』
どん。
扉。
向こう。
音。
「来た」
『四十二』
どん。
『三十八』
どん!
金属扉。
揺れる。
「離れろ!」
ノエル。
全員。
距離。
取る。
⸻
どん!
扉。
中央。
歪む。
「エーナナ」
「この扉」
「持つ?」
『推定』
『現在衝撃継続時――』
どん!
『約四分』
「短い!」
ヘルマン。
「村へ」
「戻る?」
アルフレッド。
「いや」
「逃げても」
「この子」
「外へ出る」
「村とは逆方向です」
ノエル。
「でも」
「放っておけば」
「どこへ行くか分からない」
⸻
「エーナナ」
「止める方法」
『管理者命令』
「効く?」
『侵食状態では』
『成功率――不明』
「試す」
アルフレッド。
扉。
向かう。
「近づくな」
B―03。
巨大な。
左腕。
少年。
前。
壁。
『管理者』
『後退推奨』
「ここから言う」
アルフレッド。
息。
吸う。
「第二浄化塔の」
「保守個体!」
どん!
「聞こえる!?」
衝撃。
止まる。
「……」
ノエル。
目。
見開く。
⸻
扉。
向こう。
水。
滴る。
四脚。
金属。
獣。
止まっている。
青。
赤。
瞳。
揺れる。
『管理者……』
外。
アルフレッド。
「僕は」
「アルフレッド!」
「暫定管理者です!」
A―07。
『管理者識別信号』
『送信』
青い。
光。
扉。
通る。
⸻
C―12。
頭。
震える。
『照合』
『管理者』
『認証』
青。
強く。
なる。
だが。
菌糸。
脈打つ。
赤。
戻る。
『排除』
前脚。
扉。
叩こうと。
上がる。
『管理者』
『保護』
止まる。
『排除』
動く。
『保護』
止まる。
『排除』
『保護』
『排除』
『保護』
⸻
外。
どん。
来ない。
「止まった?」
ヘルマン。
『保守個体』
『停止』
「今なら」
アルフレッド。
「話せる?」
『試行可能』
「お願い」
⸻
『C―12』
A―07。
初めて。
識別。
『第二浄化塔』
『保守防衛個体』
「C―12」
アルフレッド。
「シーさん?」
ノエル。
「今」
「名前を付ける必要あります?」
「呼びにくいから」
「エーナナ」
「ビーさん」
「シーさん」
「統一感あるでしょ?」
『名称登録――』
「待ってください」
ノエル。
「勝手に登録しないでください」
「駄目?」
「後にしてください!」
⸻
「C―12」
アルフレッド。
扉。
向こう。
「聞こえる?」
数秒。
『……聞……』
『……こえる……』
「僕たち」
「助けたい」
『……否……』
「え?」
『……開けるな……』
「でも」
『……当機……』
雑音。
『……侵食……』
「分かってる」
「エーナナも」
「そうだった」
『……』
「きれいにできるかもしれない」
『……清掃……』
アルフレッド。
驚く。
「知ってる?」
『管理者波形』
『清浄化適性』
ノエル。
「清浄化適性?」
A―07。
『旧分類語』
「アルフレッド様の《清掃》と」
「同じもの?」
『類似可能性』
「……」
ノエル。
すぐ。
帳面。
書く。
⸻
「じゃあ」
アルフレッド。
「助けられる」
『否定』
「どうして?」
『当機』
『侵食率――』
音。
乱れる。
『47.8%』
「半分くらい」
『中枢侵食――進行』
「でも」
『管理者接近時』
『排除命令』
「だから」
「僕を殺そうとする?」
『肯定』
「でも」
「今」
「止まれた」
『一時的』
「なら」
アルフレッド。
「方法」
「考える」
『……』
「今日は」
「入らない」
ノエル。
アルフレッド。
見る。
「約束したから」
「でも」
「絶対」
「戻ってくる」
『……』
「それまで」
「待てる?」
長い。
沈黙。
『推定』
『中枢侵食限界まで――』
「どれくらい?」
『約――』
数字。
乱れる。
『三日』
全員。
表情。
変わる。
「三日」
アルフレッド。
『限界到達後』
『保守命令系統』
『消失予測』
「そうしたら?」
『完全侵食』
『管理者排除』
「……」
『当機』
『敵性化』
⸻
アルフレッド。
拳。
握る。
でも。
「今日」
「突っ込まない」
自分へ。
言う。
「三日ある」
「三日で」
「助ける方法」
「考える」
『……管理者』
「何?」
『推奨』
『当機』
『破壊』
アルフレッド。
顔。
変わる。
「嫌だ」
『安全性』
『最優先』
「嫌」
『管理者』
「エーナナも」
「ビーさんも」
「壊れてた」
「侵食されてた」
「でも」
「今」
「村にいる」
『当機』
『侵食率――高』
「だからって」
「壊して終わりには」
「しない」
ノエル。
何も。
言わない。
ヘルマン。
腕。
組む。
B―03。
静か。
立つ。
⸻
「三日」
アルフレッド。
「待って」
「必ず」
「方法」
「考えるから」
『……』
C―12。
青。
瞳。
ほんの。
一瞬。
赤。
消える。
『命令……受諾』
「うん」
『待機』
そして。
扉。
向こう。
四本。
脚。
折る。
C―12。
座る。
『管理者』
『三日』
「うん」
『了解』
⸻
村へ。
帰る途中。
ノエル。
黙っている。
「ノエルさん?」
「はい」
「怒ってる?」
「いいえ」
「じゃあ」
「何?」
「考えています」
「何を?」
「アルフレッド様の能力です」
「《清掃》?」
「はい」
歩く。
「A―07は」
「清浄化適性と言いました」
「うん」
「現在のスキル名称と」
「古代施設の分類が」
「一致していない」
「どういうこと?」
「まだ分かりません」
ノエル。
帳面。
見る。
「ですが」
「もしかすると」
「《清掃》という名前そのものが」
「能力の一部しか」
「表していないのかもしれません」
アルフレッド。
自分。
手。
見る。
汚れ。
落とす。
菌糸。
除く。
呪い。
命令。
消す。
「掃除」
「なんだけどなぁ」
「何を」
「汚れと判断するか」
「それが」
「問題なのかもしれません」
⸻
「それと」
ヘルマン。
口。
開く。
「シー何とか」
「C―12」
「そいつ」
「四本脚なんだろ」
「たぶん」
「大きい」
「うん」
「菌糸」
「外から」
「半分くらい覆ってる」
「うん」
「なら」
「全部」
「お前が掃除する必要」
「あるのか?」
アルフレッド。
「え?」
「外側」
「俺たちが」
「剥がせばいい」
「……」
「エーナナとビーさん」
「切れるだろ」
『可能』
「燃やせる?」
『外部菌糸――可能』
「じゃあ」
ヘルマン。
「お前は」
「最後」
「中枢だけ」
「掃除すりゃいい」
アルフレッド。
止まる。
「それ」
「できるかも」
「だろ」
「何でも」
「一人でやろうとするから」
「倒れるんだ」
「……」
「大人」
「使え」
「僕」
「領主だから?」
「子どもだからだ」
「そっち?」
「十二歳だろ」
「はい」
⸻
アルフレッド。
少し。
笑う。
「じゃあ」
「みんなで」
「シーさん」
「助けよう」
「だから」
ノエル。
「その名称」
「登録しないでくださいね」
「エーナナ」
『名称登録待機中』
「待ってたの!?」
⸻
その頃。
山から。
流れ出した水。
ガルドたち。
追っている。
流れ。
東。
谷。
入る。
「今のところ」
「村には来ねえ」
ガルド。
「でも」
グレゴール。
水際。
しゃがむ。
「これ」
指す。
灰色。
菌糸。
岸。
付着。
「生きてる?」
「いや」
枝。
触れる。
菌糸。
動かない。
「水の外に出ると」
「弱るのか?」
「分からん」
ベルン。
「焼く?」
「待て」
ガルド。
見る。
菌糸。
一本。
水。
離れる。
地面。
落ちる。
数秒。
縮む。
乾く。
「……水」
「必要なのか」
グレゴール。
「なら」
「水路を断てば」
「森の侵食も」
「止められる?」
「そんな簡単なら」
「ありがてぇがな」
⸻
さらに。
下流。
進む。
そして。
グレゴール。
突然。
手。
上げる。
「止まれ」
「何だ」
「足跡」
泥。
見る。
「獣?」
「違う」
大きい。
人。
靴。
一つ。
二つ。
三つ。
「何人?」
「少なくとも」
「五」
「新しい?」
「今日か」
「昨日」
ガルド。
顔。
険しくなる。
「村人じゃねえ」
「旧居住区の連中でも」
「ない」
「方向」
足跡。
水路。
沿う。
上流。
第二浄化塔。
向かう。
「……誰か」
「先に」
「あの山へ」
「入ろうとしてる」
⸻
その夜。
灰境。
村。
アルフレッド。
地図。
囲む。
「三日」
「シーさんの侵食限界まで」
「三日」
「明日」
「外側の菌糸」
「剥がす方法を」
「試す」
「明後日」
「中へ」
「それで?」
ガルド。
帰還。
したばかり。
泥。
靴。
「予定」
「変わるかもしれん」
「どうして?」
「第二浄化塔へ」
「向かってる奴らがいる」
アルフレッド。
「誰?」
「分からん」
「五人以上」
「武装してる可能性もある」
「追手?」
「王都の?」
「それも」
「分からん」
ノエル。
「足跡は」
「第二浄化塔へ?」
「ああ」
「明日まで」
「待てないかもしれねえ」
⸻
同じ頃。
第二浄化塔。
外。
夜。
五つ。
人影。
水。
流れる。
石壁。
見上げる。
「間違いない」
一人。
男。
古い。
地図。
広げる。
「ここだ」
「本当に」
「残ってたのか」
「王国が捨てた」
「古代施設」
別。
男。
笑う。
「中に」
「何がある?」
「金」
「魔道具」
「武器」
「何でもいい」
「持って帰れば」
「一生遊べる」
彼ら。
知らない。
この場所。
すでに。
暫定管理者。
いる。
そして。
扉。
向こう。
C―12。
座る。
青。
瞳。
静か。
『管理者命令』
『待機』
しかし。
外。
男。
一人。
鉄棒。
補助保守口。
隙間。
差し込む。
「せーの!」
ぎ。
金属。
軋む。
C―12。
赤。
一瞬。
灯る。
『外部侵入』
『管理者命令――待機』
どん。
扉。
外。
叩く。
『外部侵入』
『管理者命令――待機』
ぎ。
扉。
少し。
開く。
『外部侵入』
『……』
『防衛規定』
『優先度上昇』
青。
赤。
混ざる。
『管理者命令――』
乱れる。
『待――』
扉。
さらに。
開く。
灰色。
菌糸。
隙間。
這い出す。
「おい」
「何だこれ」
男。
松明。
近づける。
その瞬間。
中。
四本。
脚。
立つ。
『侵入者』
赤い瞳。
灯る。
『排除』
男たちの笑顔が。
消えた。
⸻
第45話 救援信号 了




