十二人の保守員
第二章 灰境
第42話 十二人の保守員
前書き
失敗した場所には、
理由が残っています。
折れた道具。
曲がった金属。
崩れた壁。
そして時には、
帰ってこなかった人々。
それらは、
ただの残骸ではありません。
次に同じ失敗をしないための、
記録なのです。
⸻
第一浄化施設。
制御室。
『閉鎖率――73.2%』
青い文字が。
ゆっくり。
下がっていく。
「さっき73.4だったよね」
アルフレッド。
『肯定』
「どれくらいの速さ?」
『現在』
『約七分ごとに0.1%低下』
「六時間どころじゃない?」
ノエル。
すぐ。
帳面。
計算。
「この速度が続けば」
「七割を切るまで」
「四時間弱」
「ただし」
『低下速度――増加傾向』
A―07。
「もっと早くなる?」
『可能性――高』
ガルド。
舌打ち。
「準備に」
「一時間も二時間も」
「使えねぇな」
⸻
「ビーさん」
アルフレッド。
『確認』
「前に」
「ここへ行った時のこと」
「見せて」
『記録再生』
B―03。
青い瞳。
薄く。
光る。
空中。
ではない。
床。
青い線。
形。
現れる。
第四浄化塔。
下層。
水門。
通路。
「これ」
ノエル。
「図面?」
『防衛記録より』
『簡易再構成』
「どこから入ったの?」
B―03。
一点。
示す。
『保守搬入口』
「今も使える?」
『不明』
「第一浄化施設から行く?」
『肯定』
「この前」
「第四浄化塔へ行った道とは」
「違う?」
『外周保守区画から』
『さらに下層』
「じゃあ」
ガルド。
「昨日の円形扉とは」
「別ルートだ」
『肯定』
「よし」
ほんの。
少し。
空気が軽くなる。
あの。
呼ぶ声。
精神干渉。
円形扉。
そこを。
直接通らずに。
水門へ行ける可能性がある。
⸻
「十二人」
アルフレッド。
B―03を見る。
「その人たち」
「何をしに行ったの?」
『物理障害除去』
「今と同じ」
『肯定』
「障害物って」
「菌糸?」
『当時』
『識別不能』
「今なら?」
『高密度侵食因子』
「つまり」
ノエル。
「当時も」
「菌糸だった可能性が高い」
『肯定可能性』
「十二人」
ガルド。
「装備」
「何持ってた」
『保守装備』
『切断具』
『牽引具』
『固定具』
『防護布』
『遮断面』
「遮断面?」
『保守員用』
『精神干渉低減装備』
全員。
止まる。
「それ!」
アルフレッド。
「それが欲しい!」
『旧保管庫』
『第一浄化施設内』
「まだある?」
『検索』
一秒。
二秒。
『五基』
「五?」
「人数分はない」
ガルド。
「でも」
「使えるか確認しろ!」
⸻
保管庫。
制御室。
すぐ隣。
古い。
壁。
A―07。
認証。
『開放』
ご。
扉。
開く。
埃。
棚。
布。
金属。
箱。
「これ?」
アルフレッド。
一つ。
持ち上げようとして。
「重っ」
ガルド。
「触る前に聞け」
「ごめん」
保守員用。
頭。
首。
肩まで。
覆う。
布と。
薄い金属板。
前。
目。
部分。
青い透明板。
「兜?」
ベルン。
「より」
「作業用の防具?」
ノエル。
『精神干渉低減面』
「完全に防ぐ?」
『否定』
「どれくらい?」
『旧基準』
『干渉量――約62%低減』
「半分以上」
ガルド。
「十分だ」
「五基」
「誰が使う?」
⸻
ガルド。
アルフレッド。
ベルン。
マルク。
A―07。
「エーナナはいらない?」
『当機』
『生体精神干渉――対象外』
「じゃあ」
「一個余る」
「ノエル?」
「私は行きません」
即答。
「記録と」
「地上連絡」
「残ります」
「じゃあ四人分?」
「待て」
ガルド。
「ビーさん」
『確認』
「来られるか?」
『保守搬入口』
『通行可能性――高』
「なら」
「B―03も同行」
アルフレッド。
少し。
安心。
「ビーさん」
「今度は一人じゃないね」
B―03。
停止。
『……』
『同行確認』
⸻
「残り一基」
ノエル。
「予備にします」
「壊れたら?」
「交換」
「うん」
「それと」
ヘルマン。
面。
見る。
「これ」
「全部使えるとは限らん」
「直す?」
アルフレッド。
「待て」
「先に人の手」
「うん」
留め具。
革。
腐り。
金属。
歪み。
「三つは」
「そのまま」
「二つ」
「革が駄目」
「交換」
「材料ある?」
「ある」
ヘルマン。
古い革帯。
切る。
付け替える。
「ここから」
「修繕」
「一回で」
「二つ?」
「まとめるな」
ガルド。
「一個ずつ」
「時間ないのに?」
「倒れたら」
「もっと時間なくなる」
「……はい」
⸻
「《修繕》」
一基目。
光。
留め具。
金属。
馴染む。
終了。
「体調」
「平気」
二基目。
「《修繕》」
短い。
光。
「終わり」
「頭」
「平気」
「吐き気」
「なし」
「よし」
「すぐ行ける?」
「五分休め」
「五分」
「絶対?」
「絶対」
「……はい」
⸻
その五分。
無駄にはしない。
B―03。
記録。
続きを。
再生。
『保守員十二名』
『水門到達』
『障害物除去開始』
「その後」
『精神干渉』
「どこから?」
『第四浄化塔内部』
「同じ」
アルフレッド。
低く。
「呼ぶ声」
『当時記録』
『音声不明瞭』
B―03。
古い。
音。
『……開……』
全員。
顔。
変わる。
「昔から」
ガルド。
「いたのか」
『肯定可能性』
「十二人は?」
『遮断面装備』
『当初――作業継続』
「当初?」
ノエル。
すぐ反応。
『干渉強度上昇』
「それで?」
『保守員一名』
『行動異常』
『二名』
『三名』
アルフレッド。
息。
止める。
『作業中断』
『撤退命令』
「帰れなかった」
『通路封鎖』
「何で?」
『侵食個体』
「死体?」
『当時識別』
『生体および死亡個体混在』
部屋。
静か。
「生きてる人まで」
「操られた?」
アルフレッド。
『可能性――高』
⸻
「十二人」
ガルド。
「全員そこで死んだ?」
『最終生命反応』
『水門区画――十二』
「逃げられなかったんだ」
「だから」
B―03。
『当機』
『封鎖継続命令』
『単独進入』
「……」
アルフレッド。
また。
B―03を見る。
「ビーさん」
「その時」
「怖くなかった?」
『恐怖機構――なし』
「そっか」
一瞬。
沈黙。
『ただし』
「?」
『任務失敗記録』
『現在も保持』
アルフレッド。
少し。
目を細める。
「それ」
「悔しいって」
「言うのかもしれない」
『評価不能』
「でも」
「今回は」
アルフレッド。
小さく笑う。
「一緒に行くから」
『……』
『了解』
⸻
「編成」
ガルド。
最終確認。
ガルド。
アルフレッド。
ベルン。
マルク。
A―07。
B―03。
六。
「ノエル」
「残る」
「ヘルマン」
「残る」
「セルマ」
アルフレッド。
「……」
セルマ。
すぐ分かる。
「行きません」
「うん」
「ですが」
「はい」
「帰ってきてください」
「うん」
「それと」
「何?」
「無理だと思ったら」
「撤退してください」
「うん」
「水門を閉じられなくても」
「はい」
「帰ってきてください」
アルフレッド。
一瞬。
何も。
言わない。
それから。
「分かった」
⸻
村。
地上。
水。
配給。
すでに。
始まっている。
「今日から」
ノエル。
説明。
「飲料水」
「一人」
「規定量」
「無駄遣い禁止」
リーナ。
「お風呂は?」
「ありません」
「えー!」
「身体を拭く水は別」
「髪は?」
「我慢」
「えー!」
「二日だけ」
「えー!」
「リーナ」
エッダ。
「水がなくなるよりいいでしょう」
「……うん」
子どもにも。
理解できる。
水。
大事。
⸻
地下。
探索隊。
進む。
今日は。
B―03。
いる。
どん。
どん。
重い。
でも。
頼もしい。
「ビーさん」
『確認』
「前」
「覚えてる?」
『断片』
「怖い場所?」
『危険』
「それは分かる」
『当機』
『前回』
『右腕損失地点』
「……」
通路。
先。
暗い。
「右腕」
アルフレッド。
B―03を見る。
今。
両腕。
ある。
修繕。
補修。
ただし。
完全ではない。
「無茶しないで」
『命令受諾』
「僕も」
ガルド。
横。
「言われる前に?」
「無茶しない」
「よし」
⸻
第四浄化塔。
外周。
前回。
通った。
灰色。
菌糸。
まだ。
ある。
今日は。
遮断面。
装着。
「聞こえる?」
アルフレッド。
「声」
「今は」
ガルド。
首。
振る。
「少し」
ベルン。
「遠く」
『干渉量――低下確認』
「効いてる」
⸻
円形扉。
そこは。
通らない。
左。
さらに。
下。
古い。
大扉。
『保守搬入口』
「これ」
B―03。
止まる。
『前回進入地点』
「開く?」
『管理者認証必要』
「僕」
「うん」
掌。
青い。
『暫定管理者認証』
『開放』
ごお。
扉。
上。
上がる。
風。
冷たい。
そして。
臭い。
「……ひどい」
ベルン。
腐敗。
泥。
金属。
灰。
全部。
混ざる。
⸻
『下層水門』
『距離――126メートル』
「近い」
「でも」
ガルド。
「ここからだ」
⸻
一歩。
進む。
その時。
足元。
何か。
当たる。
「待て」
マルク。
松明。
下。
照らす。
古い。
金属片。
紋章。
「これ」
ノエルなら。
すぐ。
記録しただろう。
A―07。
『旧保守班識別章』
アルフレッド。
拾わない。
見るだけ。
「十二人の?」
『可能性――高』
「ここまで」
「来てたんだ」
⸻
さらに。
十メートル。
壁。
傷。
剣。
刃。
何度も。
ぶつけた。
跡。
「戦った跡」
ガルド。
低く。
「誰と」
答え。
すぐ。
現れる。
暗闇。
奥。
人影。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
そして。
さらに。
その後ろ。
何体も。
立つ。
「……十二」
アルフレッド。
数える。
保守員。
服。
古い。
防護布。
破れ。
腐り。
顔。
灰色。
口。
菌糸。
「全員?」
『死体反応――十二』
「死者」
「生き返ってない」
アルフレッド。
自分へ。
言う。
「操られてるだけ」
「そうだ」
ガルド。
剣。
抜く。
「糸を切る」
「アル坊」
「《清掃》は温存」
「うん」
「エーナナ」
『切断準備』
「ビーさん」
『防衛』
「ベルン」
「槍」
「マルク」
「後ろ」
「よし」
⸻
十二人。
一斉。
頭。
上げる。
『……開……』
声。
扉。
奥。
響く。
「来るぞ!」
死体。
走る。
速い。
「うわっ!」
ベルン。
槍。
一体。
胸。
止める。
「背中!」
A―07。
左。
金属爪。
菌糸。
切断。
ぷつ。
一体。
崩れる。
B―03。
巨大な。
腕。
死体。
壁。
押さえる。
『切断』
A―07。
次。
糸。
切る。
「ビーさん!」
「殺さなくていい!」
『対象――死体』
「分かってるけど!」
『破壊最小化』
「お願いします!」
⸻
三。
四。
五。
倒れる。
でも。
後ろ。
菌糸。
床。
這う。
倒した。
身体へ。
また。
伸びる。
「再接続する!」
マルク。
「アル坊!」
「今?」
「足元だけ!」
「《清掃》!」
白。
短く。
床。
菌糸。
消す。
再接続。
止まる。
「一回!」
「体調!」
「平気!」
⸻
六。
七。
八。
九。
残り。
三。
『……開け……』
声。
強くなる。
遮断面。
青い板。
ちらつく。
『干渉量――上昇』
「まだ効く?」
『許容範囲』
「急げ!」
B―03。
一体。
掴む。
床。
倒す。
A―07。
糸。
切断。
ガルド。
もう一体。
脚。
払う。
ベルン。
槍。
固定。
「エーナナ!」
『切断』
最後。
十二体目。
立つ。
古い。
保守員。
胸。
識別章。
他と。
違う。
『班長』
B―03。
停止。
一瞬。
「知ってる?」
『識別』
『保守班長――ユリウス・ベック』
「名前」
『前回任務指揮官』
班長。
死体。
B―03へ。
近づく。
『B……03……』
「喋った!?」
『音声器官利用』
「本人じゃない!」
アルフレッド。
すぐ。
理解。
『……任務……』
『……続行……』
B―03。
動かない。
「ビーさん!」
『……』
班長。
手。
伸ばす。
B―03。
胸。
触れる。
『……閉じろ……』
一瞬。
全員。
止まる。
「今の」
ガルド。
「菌糸の声じゃ」
「ない?」
A―07。
『音声解析』
『記録音声との一致率――91%』
「本人の?」
『生前音声記録との類似』
アルフレッド。
目。
見開く。
「記憶?」
『判定不能』
班長。
もう一度。
『……閉じろ……』
そして。
身体。
突然。
前へ。
襲う。
「エーナナ!」
切断。
菌糸。
ぷつ。
班長。
崩れる。
静か。
⸻
B―03。
その場。
立つ。
「ビーさん」
『確認』
「大丈夫?」
『任務継続可能』
「それじゃなくて」
『……』
「……そっか」
今は。
それ以上。
聞かない。
⸻
『下層水門』
『距離――41メートル』
「行くぞ」
ガルド。
⸻
通路。
奥。
音。
大きい。
ぎ。
ぎぎ。
水。
轟く。
そして。
ようやく。
見える。
巨大な。
水門。
半分以上。
閉じている。
だが。
隙間。
灰色の。
菌糸。
塊。
まるで。
太い。
樹根。
絡み。
金属板。
押し返す。
「これ」
アルフレッド。
「掃除できる?」
『対象範囲――大』
「全部は無理」
「一箇所ずつ」
ガルド。
「どこから?」
A―07。
走査。
『主要障害点――三』
「三つ」
青い光。
一。
上部。
二。
中央。
三。
下部。
「順番」
『下部推奨』
「理由」
『水圧』
「よし」
⸻
「アル坊」
「うん」
「今から」
「お前の仕事」
「《清掃》?」
「ああ」
「全部じゃない」
「障害点」
「三つだけ」
「できる?」
アルフレッド。
水門。
見る。
巨大。
怖い。
菌糸。
多い。
「一つずつなら」
「たぶん」
「たぶん」
「嫌いじゃない」
ガルド。
少し。
笑う。
「正直だからな」
⸻
「下」
B―03。
前。
『防御』
水。
跳ねる。
灰色。
菌糸。
伸びる。
A―07。
切る。
「アル坊!」
「今!」
手。
伸ばす。
「《清掃》!」
光。
狭く。
下部。
菌糸。
黒。
崩れる。
きぃぃぃぃぃ!
「一個!」
『障害点一――除去』
『閉鎖再開』
ごん!
水門。
動く。
『閉鎖率――76%』
「上がった!」
『78%』
『81%』
そして。
また。
停止。
「次!」
「中央!」
⸻
アルフレッド。
息。
少し。
荒い。
「大丈夫?」
ベルン。
「まだ」
「次で」
「止めろって言うかもしれない」
ガルド。
「うん」
「でも二つ」
「必要」
「一つずつ」
「分かった」
⸻
中央。
菌糸。
太い。
人の胴。
ほど。
「これ」
「《清掃》だけで」
「いける?」
『高密度』
「切ってから」
ガルド。
「薄くする」
「ビーさん!」
『了解』
B―03。
両腕。
菌糸。
束。
掴む。
引く。
きぃぃ!
暴れる。
「うわっ!」
マルク。
避ける。
A―07。
爪。
切断。
「今!」
「《清掃》!」
白。
強い。
でも。
狭い。
菌糸。
消える。
『障害点二――除去』
『閉鎖率――84%』
『87%』
『89%』
「あと一個!」
アルフレッド。
膝。
少し。
沈む。
「アル坊」
「……大丈夫」
「嘘」
「ちょっと」
「頭痛い」
「ここまで」
「でも!」
「俺たちで」
「最後」
「できない?」
A―07。
『上部障害』
『切断のみでは再生可能性』
「《清掃》必要」
沈黙。
⸻
「僕」
「やる」
ガルド。
「倒れるぞ」
「分かんない」
「でも」
「ここまで来て」
「あと一個」
「……」
「お願い」
ガルド。
少年。
見る。
「一回」
「それで終わり」
「うん」
「終わったら」
「俺が背負う」
「歩けたら?」
「背負う」
「……はい」
⸻
上。
高い。
「届かない」
B―03。
アルフレッド。
見る。
『持ち上げ可能』
「え」
「待て」
ガルド。
「安全?」
『固定可能』
「やって」
B―03。
巨大な。
手。
アルフレッド。
脇。
慎重。
持つ。
「わっ」
『上昇』
「高い!」
「怖い?」
ベルン。
「ちょっと!」
「今だけ!」
⸻
上部。
菌糸。
近い。
「手」
届く。
「《清掃》!」
光。
最後。
菌糸。
白。
包む。
アルフレッド。
頭。
ずき。
「っ……!」
「止めろ!」
「あと」
菌糸。
残る。
「アル坊!」
「……消えて!」
ぱんっ!
灰。
落ちる。
『障害点三――除去』
「下ろせ!」
B―03。
すぐ。
アルフレッド。
下。
ガルド。
受け取る。
「アル坊!」
「……大丈夫」
「顔」
「白い」
「でも」
少年。
水門。
見る。
⸻
『閉鎖再開』
『91%』
『94%』
『96%』
ごおお。
水。
流れ。
変わる。
『98%』
『99%』
最後。
ごん。
巨大な。
音。
『下層水門――』
一瞬。
静寂。
『完全閉鎖』
誰も。
動かない。
「……閉じた?」
アルフレッド。
『肯定』
「本当に?」
『100%』
少年。
少し。
笑う。
「やった」
そして。
そのまま。
前へ。
倒れた。
「アル坊!」
⸻
ガルド。
受け止める。
「おい!」
「返事!」
「……聞こえてる」
「頭痛!」
「すごい」
「吐き気!」
「ちょっと」
「手!」
「動く」
「目!」
「見える」
「よし!」
「よくないけどよし!」
アルフレッド。
力。
ない。
でも。
意識。
ある。
「ガルドさん」
「何だ」
「水門」
「閉じた?」
「閉じた」
「ビーさん」
『完全閉鎖確認』
「……よかった」
「寝るな!」
「寝ない」
「目閉じるだけ」
「それを寝るって言うんだ!」
⸻
『警告』
A―07。
全員。
顔。
上げる。
「今度は何!」
『第四浄化塔』
『内部圧力――上昇』
「やっぱり」
「閉じたら」
「何か起きる!」
『排圧経路』
『自動切替』
「どこへ!」
『第一浄化施設』
「村!?」
『可能性あり』
「帰るぞ!」
⸻
その頃。
灰境の村。
井戸。
水面。
静か。
その底。
ごぽ。
泡。
一つ。
ごぽ。
二つ。
そして。
水位。
ゆっくり。
下がり始める。
「バルドさん!」
リーナ。
「お水!」
「減ってる!」
バルド。
井戸。
覗く。
「……若様」
老人。
空。
ではなく。
地下。
見る。
「何を」
「閉じたんじゃ……」
⸻
同時。
第四浄化塔。
完全閉鎖された。
下層水門。
その向こう。
灰色の水。
行き場。
失う。
圧力。
上がる。
そして。
塔中心。
円形扉。
奥。
『……開……け……』
声。
今までより。
低く。
大きく。
響く。
だが。
もう。
水門は。
閉じている。
菌糸。
流入。
止まる。
声。
一瞬。
途切れる。
そして。
『……違う……』
誰もいない。
暗闇。
『……そこでは……ない……』
円形扉の。
さらに。
奥。
何かが。
ゆっくり。
向きを変えた。
⸻
第42話 十二人の保守員 了




