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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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41/53

水を貯めろ


⸻


第二章 灰境


第41話 水を貯めろ


前書き


勇気とは、


危険へ飛び込むことだけではありません。


逃げ道を作ること。


食べ物を残すこと。


水を貯めること。


失敗した時のことを、


先に考えること。


それは時に、


剣を振るうことよりも、


ずっと地味です。


けれど。


守るものが増えた人間ほど、


その地味な準備を、


怠ってはいけないのです。



⸻


 夜明け前。


 灰境の村に。


 鐘が鳴った。


 かん。


 かん。


 かん。


 三度。


 火事ではない。


 魔物でもない。


 襲撃でもない。


 それでも。


 村人たちは次々と家から出てきた。


「何だ?」


「森狼か?」


「また地下か?」


「違う!」


 広場の中央。


 ガルドが大声を上げる。


「今日は全員、朝飯の前に集まれ!」


「動ける奴だけでいい!」


「怪我人と子どもは無理するな!」


 その横。


 アルフレッドは。


 少し眠そうな顔で立っていた。


「領主様?」


 エッダがやってくる。


「何かあったんですか?」


「あります」


「……その顔」


「寝てませんね?」


「寝ました」


「何時間」


「……」


「アルフレッド様」


「四時間くらい」


「少ないです」


「でも昨日よりは」


「比較対象がおかしいです」


 すぐ横から。


「三時間半です」


 セルマ。


「セルマ!?」


「マルタ様の家を出たのが」


「鐘が鳴る三時間半ほど前でしたので」


「細かい……」


「大事なことです」


「後で寝かせる」


 マルタ。


 即決。


「はい……」


⸻


 全員が集まる。


 バルド。


 エッダ。


 グレゴール。


 ベルン。


 ヘルマン。


 マルク。


 ノエル。


 旧居住区から来た者たち。


 そして。


 まだ歩けないダリオやラウルたちは。


 家の中。


 今日は休ませる。


 広場。


 中央。


 ノエルが。


 大きな板へ。


 文字を書く。


 ――水。


「今日は」


 アルフレッドが言った。


「水を貯めます」


 沈黙。


「……水?」


 ベルン。


「はい」


「魔物じゃなく?」


「違います」


「地下探索でもなく?」


「今日はしません」


「第四浄化塔は?」


「行きません」


 ガルド。


 少しだけ。


 口元。


 上がる。


 昨日なら。


 アルフレッドは。


「急がないと!」


 と。


 自分から地下へ行こうとしていただろう。


 だが。


 今日は違う。


「今日」


 アルフレッド。


 村人たちを見る。


「地下の水門を閉じます」


 空気。


 変わる。


⸻


「水門?」


 バルド。


「地下の施設にあるものか」


「はい」


「閉じるとどうなる」


「分かりません」


 ざわ。


 村人。


 声。


「分からんのか?」


「井戸は?」


「川は?」


「水が止まるのか?」


 アルフレッド。


 逃げない。


「分かりません」


 もう一度。


 言う。


「だから」


「先に水を貯めます」


 ざわめき。


 少し。


 弱くなる。


「水門を閉じたら」


「村の井戸に影響が出るかもしれません」


「川の水が変わるかもしれません」


「何も起きないかもしれません」


「でも」


「閉じないと」


「地下の灰色の水が」


「もっと広がる可能性が高いです」


 グレゴール。


 腕。


 組む。


「どっちも危険ってことか」


「はい」


「だから」


「閉じる前に」


「失敗しても」


「二日くらいは暮らせるようにしたいです」


⸻


「二日」


 バルド。


 考える。


「短いのう」


「本当はもっと欲しいです」


 ノエル。


 答える。


「しかし現在の容器数では」


「飲用可能な状態で保管できる量に限界があります」


「樽」


「いくつある?」


 エッダ。


「大樽が十一」


「そのうち二つは穀物」


「一つは塩漬け肉」


「空いているのは八つ」


「小樽は?」


「十七」


「でも三つは底が傷んでます」


 アルフレッド。


 反応。


「直せ――」


 ガルド。


 見る。


「……ます」


「何だ」


「いや」


「使っていい?」


「樽三つだけならな」


「やった」


「ただし」


「水門閉鎖に力を残せ」


「うん」


「全部新品みたいにするな」


「……」


「今」


「新品にしようと思っただろ」


「少しだけ」


「駄目だ」


⸻


 役割。


 決まる。


 井戸。


 ベルン。


 若者たち。


 川。


 グレゴール。


 ヘルマン。


 旧居住区の男たち。


 煮沸。


 マルタ。


 村の女たち。


 樽の修理。


 エッダ。


 アルフレッド。


 水の配分。


 ノエル。


 バルド。


 そして。


 A―07。


 地下水。


 監視。


 B―03。


 村外周。


 警戒。


「ビーさん」


『確認』


「今日は村をお願い」


『了解』


「地下には行かなくていい」


『了解』


「……」


 アルフレッド。


 少し。


 嬉しそう。


「どうした」


 ガルド。


「いや」


「エーナナもビーさんも」


「普通に仕事してるなって」


「普通ではない」


 ノエル。


「古代施設の保守管理機を」


「水質調査と村の警備へ使用している時点で」


「極めて異常です」


「便利なのに」


「便利と普通は別です」


⸻


 朝。


 灰境の村。


 これまでにないほど。


 忙しくなる。


「縄!」


「こっち!」


「樽転がすぞ!」


「リーナ!」


「そこ危ない!」


「私も手伝う!」


「小さい桶だけ!」


「分かった!」


 井戸。


 ぎぃ。


 ぎぃ。


 滑車。


 回る。


 桶。


 上がる。


「まだ灰がある」


 ベルン。


 水。


 見る。


 底。


 細かい。


 灰色。


 粒。


「昨日より?」


 A―07。


 手。


 水。


 近づける。


『侵食因子濃度』


『前日比――1.08』


「増えてる?」


『肯定』


「やっぱり」


 アルフレッド。


 顔。


 曇る。


「閉じないと」


「まずい」


⸻


 川。


 グレゴール。


 水。


 見る。


「こっちは」


「見た目は普通だ」


 A―07。


 後から。


 測る。


『侵食因子――微量』


「あるのか」


『飲用時』


『煮沸推奨』


「煮れば大丈夫?」


『現状濃度では』


『危険性低下』


「じゃあ」


「川の水も貯める」


 ノエル。


 帳面。


「井戸水と分けましょう」


「飲料用」


「煮沸用」


「洗浄用」


「それから」


「治療用」


 マルタ。


「傷口洗う水は」


「一番きれいなの寄越しな」


「はい」


「赤子もだ」


「はい」


「アル坊」


「何?」


「お前の飲む分もだ」


「僕は最後で」


「駄目」


「でも」


「領主が脱水で倒れたら」


「誰が水門閉じるんだい」


「……はい」


⸻


 午前。


 空の樽。


 三つ。


 エッダ。


 底。


 見る。


「ここ」


「板が割れてます」


「こっちは」


「輪が緩んでる」


「三つ目は」


「底板そのものが歪んでます」


「直せる?」


「普通なら」


「半日」


 アルフレッド。


 手。


 置く。


「《修繕》」


 淡い。


 光。


 ぱき。


 木。


 動く。


 割れ。


 閉じる。


 金属輪。


 締まる。


「一つ」


 ガルド。


「体調」


「平気」


 二つ目。


「《修繕》」


「体調」


「平気」


 三つ目。


 アルフレッド。


 手。


 止まる。


「どうした?」


「これ」


「板が足りない」


「腐って落ちたから」


 エッダ。


「修繕できますか?」


「……たぶん」


 光。


 出ない。


「やっぱり」


「ないものは」


「戻せない」


 A―07。


 右腕。


 ない。


 セルマ。


 右腕。


 ない。


 アルフレッド。


 少し。


 黙る。


「材料があれば?」


 エッダ。


「え?」


「同じくらいの木」


「持ってきて」


「試したい」


⸻


 古い。


 樽板。


 一本。


 別の壊れた容器から。


 持ってくる。


「これ?」


「うん」


 アルフレッド。


 破損した樽。


 新しい板。


 両方。


 触る。


「《修繕》」


 光。


 広がる。


 しかし。


 板。


 勝手には。


 動かない。


「駄目?」


 リーナ。


「待って」


 アルフレッド。


 板。


 底。


 合うように。


 エッダ。


「ここです」


「少し右」


「そう」


「押さえて」


「はい」


「もう一度」


「《修繕》」


 かち。


 板。


 馴染む。


 隙間。


 閉じる。


「……できた」


 アルフレッド。


 目。


 丸くなる。


 エッダ。


 樽。


 叩く。


「水を入れてみます」


 ざば。


 待つ。


 一分。


 二分。


「漏れない」


「やった!」


 アルフレッド。


 笑う。


⸻


 ノエル。


 横。


 記録。


「重要ですね」


「何が?」


「《修繕》は」


「失われた材料そのものを」


「生成することはできない」


「しかし」


「代替材料を与えれば」


「既存構造へ組み込める可能性がある」


 アルフレッド。


 A―07。


 右肩。


 見る。


「じゃあ」


 ガルド。


 すぐ。


「今は考えるな」


「まだ何も言ってない」


「顔」


「そんなに?」


「かなり」


 セルマ。


 少し離れたところ。


 自分の。


 失われた右腕。


 見る。


 でも。


 何も言わない。


 今は。


 まだ。


 その時ではない。


⸻


 昼。


 村中。


 湯気。


 大鍋。


 三つ。


 川水。


 煮沸。


「熱っ!」


「触るな!」


「冷ましてから樽!」


「こっちは飲料!」


「印つけろ!」


 ノエル。


 樽。


 木炭。


 文字。


 ――飲。


 ――煮。


 ――洗。


 ――治。


「分かりやすい」


 アルフレッド。


「文字が読めない者もいます」


「では」


 ノエル。


 考える。


 飲料。


 丸。


 治療。


 十字。


 洗浄。


 波。


 煮沸。


 火。


 記号。


 追加。


「これなら?」


「うん!」


 バルド。


 見て。


「よいな」


「文字を知らん子でも」


「分かる」


 アルフレッド。


 少し。


 考える。


「こういうの」


「他にも使えるね」


「何に?」


「倉庫」


「薬」


「危ない場所」


「避難する場所」


 ノエル。


 筆。


 止まる。


「標識」


「うん」


「村の中に」


「作ろう」


「後日」


「うん」


 また。


 一つ。


 仕事。


 増える。


⸻


 午後。


 貯水。


 順調。


 だが。


「領主様!」


 井戸。


 声。


「来て!」


 アルフレッド。


 走ろうとする。


「走るな!」


 ガルド。


「はい!」


 早歩き。


「それもほぼ走ってる!」


⸻


 井戸。


 桶。


 水。


 昨日より。


 濁っている。


「……灰」


 底だけではない。


 水中。


 細い。


 灰色。


 糸。


「菌糸?」


 グレゴール。


『侵食因子』


 A―07。


『濃度上昇』


「飲める?」


『非推奨』


 村人。


 ざわつく。


「もう?」


「朝はまだ」


「井戸が駄目になるのか?」


「静かに!」


 ガルド。


 声。


 止める。


 アルフレッド。


 井戸。


 見る。


「ここからは」


「井戸の水」


「飲料用にしない」


「川は?」


『現時点――使用可能』


「じゃあ」


「川優先」


「井戸は」


「洗い物にも?」


 マルタ。


「菌糸があるなら」


「傷には使うな」


「服や道具だけ」


「分かった」


⸻


「アルフレッド様」


 ノエル。


 小声。


「水門」


「予定より早めるべきでは」


「……」


 閉鎖率。


『現在――32.6%』


「朝は34くらい」


『肯定』


「早くなってる?」


『開放速度――増加』


「完全開放まで」


『推定――十八時間』


 ガルド。


「昨日二十四だったぞ」


『状況悪化』


「今日の夜まで」


 アルフレッド。


「待てない?」


『推奨せず』


 少年。


 樽。


 見る。


 まだ。


 満杯。


 ではない。


「今」


「水」


「何日分?」


 ノエル。


 計算。


「厳格に配給すれば」


「約一日半」


「あと半日分」


「欲しい」


「しかし」


「水門が」


「分かってる」


⸻


 バルド。


 杖。


 つきながら。


 来る。


「若様」


「はい」


「全部揃うまで」


「待つつもりか」


「……できれば」


「それは」


「準備ではない」


 アルフレッド。


 見る。


「準備というのは」


「何もかも揃えることではない」


「間に合うところまで整えて」


「動くことじゃ」


「……」


「完璧を待って」


「手遅れになれば」


「準備した意味がない」


 アルフレッド。


 水。


 見る。


 井戸。


 灰色。


 糸。


 浮かぶ。


「分かった」


⸻


「ノエルさん」


「はい」


「今ある水」


「全部数えて」


「食料も」


「水をあまり使わない料理に変える」


「マルタさん」


「治療用」


「どれくらい必要?」


「三日分なら」


「大樽半分」


「確保します」


「エッダさん」


「空き容器」


「あと何個」


「小さいものなら」


「七つ」


「全部使う」


「ガルドさん」


「ああ」


「水門」


「夕方」


「閉じます」


「分かった」


⸻


 その言葉。


 村中。


 伝わる。


「夕方まで!」


「急げ!」


「あと二時間!」


「川組!」


「もう一往復!」


「鍋!」


「火を強く!」


「樽こっち!」


 村。


 動く。


 誰も。


 地下。


 見えない。


 水門。


 見えない。


 第四浄化塔。


 知らない。


 それでも。


 自分たちの水。


 自分たちの生活。


 守るため。


 動く。


⸻


 セルマ。


 小さな桶。


 左手。


 持つ。


「セルマ」


 アルフレッド。


「重くない?」


「これくらいなら」


「傷」


「ほぼ塞がっています」


「でも」


「無茶しない約束」


「アルフレッド様にだけは」


「言われたくありません」


「……」


「ですが」


 セルマ。


 桶。


 置く。


「重くなったら」


「頼みます」


 アルフレッド。


 少し。


 笑う。


「うん」


「僕も」


「そうする」


⸻


 夕方。


 太陽。


 山。


 沈み始める。


 広場。


 樽。


 並ぶ。


 大樽。


 八。


 小樽。


 二十一。


 水袋。


 十二。


 鍋。


 桶。


 使える容器。


 ほとんど。


 水。


 満たされた。


 ノエル。


 最終確認。


「最低限」


「二日」


「節約すれば」


「二日半」


「川が使える状態を維持すれば」


「さらに延長可能」


「よし」


 ガルド。


「アル坊」


「行くぞ」


「うん」


⸻


 第一浄化施設。


 地下。


 今日は。


 大人数ではない。


 アルフレッド。


 ガルド。


 ノエル。


 A―07。


 そして。


 B―03。


「ビーさんも?」


『緊急封鎖時』


『補助動力接続可能』


「必要?」


『推奨』


「じゃあ」


「お願いします」


『了解』


⸻


 制御室。


 青い。


 文字。


『下層水門』


『閉鎖率――30.8%』


「もう三割」


 ノエル。


「急ぎましょう」


「エーナナ」


『確認』


「緊急封鎖」


「やる」


『管理者承認要求』


 床。


 円。


 光る。


『注意』


『緊急封鎖実行後』


『下流域水量変化』


『第一浄化施設』


『第二浄化塔』


『第三浄化塔』


『各系統へ影響する可能性』


「分かってる」


『第四浄化塔』


『内部圧力上昇可能性』


「……それは?」


『詳細不明』


 ガルド。


「まだやめるか?」


 アルフレッド。


 目。


 閉じる。


 村。


 思い出す。


 水。


 樽。


 リーナ。


 セルマ。


 怪我人。


 三十五人。


「やる」


 目。


 開く。


「何もしない方が」


「危ない」


『承認確認』


「はい」


『暫定管理者』


『アルフレッド・ロナ・ヨーレリヒト』


『緊急封鎖命令を』


 少年。


 息。


 吸う。


「下層水門」


「閉じて」


⸻


『命令受諾』


 ごおおおおおおおお……。


 地面。


 震える。


「始まった!」


 ノエル。


 表示。


『閉鎖率――31%』


『33%』


『37%』


「上がってる!」


『42%』


『48%』


 地下。


 遠く。


 巨大な。


 何か。


 動く。


『55%』


『61%』


「半分超えた!」


 アルフレッド。


 拳。


 握る。


『68%』


『73%』


 そして。


『74%』


 停止。


「……」


『74%』


「止まった?」


 ガルド。


『異常』


 A―07。


「何!」


『緊急封鎖機構』


『動作停止』


「理由!」


『物理障害』


「どこ!」


『下層水門』


『第四浄化塔側』


「菌糸?」


『照合』


 一瞬。


『侵食因子――高密度』


「やっぱり」


⸻


 その瞬間。


 B―03。


 赤い瞳。


 点灯。


『警告』


「何?」


『過去記録』


『照合一致』


 全員。


 B―03。


 見る。


「過去?」


『当機』


『最終任務』


 ノエル。


 息。


 止める。


『第四浄化塔』


『緊急封鎖』


「……!」


『失敗』


 アルフレッド。


 目。


 見開く。


「ビーさん」


「前にも」


「これを?」


『肯定』


「どうして失敗したの?」


 B―03。


 沈黙。


 数秒。


『物理障害除去のため』


『現地派遣』


「誰が?」


『保守管理班』


「人?」


『肯定』


「何人?」


『十二名』


「戻った?」


 B―03。


 止まる。


『帰還――』


 一瞬。


 音。


 乱れる。


『ゼロ』


 誰も。


 声。


 出ない。


⸻


「それで」


 ガルド。


「お前は?」


『封鎖継続命令』


『現地投入』


「結果」


『右腕損失』


『脚部損傷』


『動力低下』


『任務失敗』


 アルフレッド。


 B―03。


 見る。


 あの。


 壊れた身体。


 右腕。


 損傷。


 それは。


 昔。


 同じ水門を。


 閉じようとして。


「ビーさん」


『確認』


「ずっと」


「閉じようとしてたんだ」


『……』


「一人で?」


『任務』


「違う」


 アルフレッド。


「一人で」


「やってたの?」


 長い。


 沈黙。


『最終稼働時』


『他保守個体――応答なし』


『人員――応答なし』


『当機のみ』


 アルフレッド。


 何も。


 言えない。


⸻


『警告』


 A―07。


『閉鎖率――73.8%』


「下がった!」


『障害物による』


『逆圧』


『封鎖維持困難』


「どれくらい!」


『推定』


『六時間以内に』


『再開放開始』


「六時間」


 ガルド。


 顔。


 険しい。


「現地へ行くしか」


「ないってことか」


 ノエル。


「しかし」


「前回十二人が」


「帰らなかった」


「分かってる」


⸻


「僕が行く」


 アルフレッド。


 言う。


 ガルド。


 見る。


「……」


「でも」


 アルフレッド。


 続ける。


「今すぐじゃない」


 ガルド。


 少し。


 目。


 変わる。


「エーナナ」


『確認』


「必要なこと」


「教えて」


「何を持っていけばいい」


「何人必要」


「どうやって障害物を取る」


「ビーさん」


『確認』


「前に失敗した時の記録」


「全部見せて」


『了解』


「ノエルさん」


「はい」


「地図」


「ガルドさん」


「ああ」


「行く人」


「一緒に考えて」


「分かった」


 アルフレッド。


 表示。


 見る。


『73.6%』


 時間。


 六時間。


「今度は」


 少年。


 静かに。


「ちゃんと準備して」


「行く」


⸻


 その頃。


 第四浄化塔。


 下層。


 巨大な水門。


 古い金属板。


 ゆっくり。


 閉じようとしている。


 しかし。


 その隙間。


 灰色の菌糸。


 何百。


 何千。


 束。


 絡みつく。


 水門。


 押し返す。


 ぎ。


 ぎぎ。


 そして。


 菌糸の奥。


 古い。


 金属製。


 何か。


 埋まっている。


 腕。


 脚。


 兜。


 剣。


 十二人。


 かつて。


 水門を閉じるために。


 ここへ来た者たち。


 その身体。


 菌糸。


 覆う。


 そして。


 一人。


 目。


 開く。


 白い。


 濁った。


 瞳。


 続いて。


 二人。


 三人。


 四人。


 古い死体が。


 次々。


 立ち上がる。


 水門の向こう。


 さらに。


 低い声。


『……開……け……』


 十二人。


 一斉に。


 水門へ。


 手。


 掛ける。


 閉じようとする機構を。


 反対側から。


 押し返し始める。


⸻


『閉鎖率――73.4%』


⸻


第41話 水を貯めろ 了

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