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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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40/53

呼ぶ声



前書き


声には、


力があります。


励ます声。


怒る声。


泣く声。


助けを求める声。


けれど。


すべての声が、


信じていいものとは限りません。


もしその声が、


自分の意思より深い場所へ入り込み。


身体を、


勝手に動かそうとするのなら。


それはもう、


言葉ではなく。


鎖なのかもしれません。


⸻


『……開……け……』


 低い声が。


 第四浄化塔の内部から響いた。


「バックス!」


 ガルドが叫ぶ。


「止まれ!」


 だが。


 バックスは振り返らない。


 ふら。


 一歩。


 また一歩。


 塔中央。


 菌糸に半分覆われた円形扉へ。


 ゆっくり近づいていく。


「聞くな!」


 ケインが叫んだ。


「そいつの声を聞くな!」


 バックスの右手が。


 扉へ伸びる。


「ベルン!」


「はい!」


 槍。


 しかし。


「刺すな!」


「分かってます!」


 ベルンが走る。


 柄。


 横から。


 バックスの腰へ。


 どんっ。


「ぐっ……!」


 身体が崩れる。


 扉まで。


 あと二歩。


「捕まえろ!」


 ガルド。


 バックスの腕を掴む。


「離せ!」


 初めて。


 男が叫んだ。


「開けないと!」


「何を!」


「開けないと!」


「みんな死ぬ!」


「誰が言った!」


「……」


 バックス。


 目。


 見開く。


「誰が言った!」


 ガルドがもう一度叫ぶ。


「……中」


「何がいる!」


「知らない!」


「じゃあ何で開ける!」


「開けないと」


 バックス。


 息。


 荒い。


「水が」


「止まらない」


「灰が」


「上へ」


「全部」


「飲み込む」


「誰に聞いた」


「だから!」


「誰が言った!」


 バックスが。


 震える。


 そして。


 円形扉を見る。


「……あいつ」


⸻


『……開……け……』


 声。


 また。


 聞こえる。


 アルフレッドの背中に。


 ぞくり。


 寒気。


「エーナナ」


『確認』


「今の」


「音?」


『音声波形』


『および』


 一瞬。


 A―07の青い瞳が乱れた。


『精神干渉波――微弱検出』


「精神……?」


 ガルドの顔が変わる。


「操ってんのか」


『可能性あり』


 アルフレッド。


 セルマの首輪を思い出す。


 外から送り込まれた命令。


 身体を。


 勝手に動かした。


「……同じ?」


『照合』


 A―07。


『構造――異なる』


『作用――類似』


「命令」


 アルフレッド。


「バックスさんの中に」


「入ってる?」


『可能性――高』


 ガルド。


 少年を見る。


「アル坊」


「分かってる」


「顔」


「言わなくても分かるよ」


「《清掃》」


「ああ」


「でも」


「さっき使った」


「体調は」


「少し疲れてる」


「なら」


「無理するな」


「でも」


 バックス。


 ガルドとベルン。


 二人がかり。


 それでも。


 扉へ。


 身体を向け続けている。


「開けろ!」


「開けさせろ!」


「離せ!」


 普通ではない。


 瞳。


 焦点が合っていない。


「アル坊」


 ガルド。


 苦い顔。


「やれるか」


「……やる」


「違う」


「できるか」


 アルフレッド。


 一度。


 深呼吸。


「バックスさん全部じゃなくて」


「命令だけなら」


「たぶん」


「たぶんか」


「でも」


「セルマの時と」


「考え方は同じ」


「分かった」


「一回」


「短く」


「うん」


⸻


「バックスさん!」


 アルフレッド。


 近づく。


「来るな!」


「開けるんだ!」


「開けたら」


「何が起きるか分からない!」


「分かる!」


「声が言ってる!」


「その声が」


「嘘だったら?」


 バックス。


 止まる。


 一瞬。


「……嘘?」


「中にいる何かが」


「自分を出したいだけだったら?」


「違う」


「どうして分かるの?」


「……」


「バックスさん」


 アルフレッド。


 手。


 胸。


 服。


 直接ではなく。


 肩。


 そっと。


「今」


「自分で開けたい?」


 男。


 目。


 揺れる。


「俺は……」


『……開……け……』


 声。


 バックスの身体。


 びく。


「開ける……」


「それ」


「バックスさんの答えじゃない」


 アルフレッド。


 目。


 閉じる。


「《清掃》」


⸻


 白い光。


 小さい。


 広げない。


 バックスの身体。


 周囲。


 そして。


 胸。


 頭。


 外から。


 絡みつく。


 見えない。


 何か。


「……いた」


 アルフレッド。


 呟く。


「何が!」


 ガルド。


「糸」


「菌糸?」


「違う」


 目には見えない。


 でも。


 感覚。


 細い。


 冷たい。


 命令。


「これ」


「汚れじゃない」


「でも」


「バックスさんのものでもない」


 光。


 少し。


 強く。


「出ていけ!」


 ぱんっ!


 小さな破裂音。


「うっ!」


 バックスの身体。


 力。


 抜ける。


 ガルドが支える。


「バックス!」


「……」


「聞こえるか!」


「……ガルド?」


「戻ったか!」


 バックス。


 額。


 汗。


「俺」


「何して」


「扉開けようとしてた」


「……」


「何で?」


 ガルドが。


 アルフレッドを見る。


「アル坊」


 少年。


 その場へ。


 膝をついた。


「アル坊!」


「大丈夫」


「顔白いぞ!」


「ちょっと」


「使いすぎた」


「ちょっとじゃねぇ!」


「座れ!」


「もう座ってる」


「そうだった!」


⸻


『精神干渉波――低下』


 A―07。


「消えた?」


『対象バックスへの作用』


『消失』


「塔からは?」


『継続』


「まだ出てるんだ」


『肯定』


「なら」


 ガルド。


 円形扉を見る。


「近づくな」


「全員」


「耳塞いでも?」


 ベルン。


『音声自体より』


『付随波形が主作用』


「じゃあ聞こえなくても」


「影響ある?」


『可能性あり』


「最悪だな」


⸻


「ケイン」


 ガルド。


「動けるか」


「……足」


 菌糸。


 絡んでいる。


「エーナナ」


『確認』


「切れる?」


『可能』


「菌糸触るな」


『了解』


 A―07。


 左腕。


 金属片。


 拾う。


 切断。


 ぶち。


 ぶち。


 ケイン。


 自由。


「立てる?」


「何とか」


「よし」


「バックス」


「歩けるか」


「……たぶん」


「たぶんが多いな!」


 ガルド。


「でも」


「ここに長居するよりマシだ」


⸻


「残り」


 アルフレッド。


 息。


 整えながら。


「オルドさん」


「もう外へ運んだ」


「ケインさん」


「ここ」


「バックスさん」


「ここ」


「三人」


 見つけた。


 ダリオ。


 ラウル。


 オルド。


 ケイン。


 バックス。


 五人。


 全員。


「……揃った」


 アルフレッド。


 少し笑う。


 ガルド。


 その顔。


 見て。


「まだ笑うな」


「帰ってから」


「そうだった」


「全員」


「帰るまでが救助だ」


「うん」


⸻


『警告』


 A―07。


 突然。


 赤。


「何!」


『下層水門』


『閉鎖率――35.8%』


「また下がった!」


『自動閉鎖機構』


『継続異常』


「どれくらいで」


「完全に開く?」


『現在速度一定の場合』


『約二十七時間』


 全員。


 止まる。


「昨日」


「十九日だったよね」


 アルフレッド。


『門封鎖機構到達予測とは別項目』


「あ」


「水門の方が」


「先に駄目になる?」


『肯定』


「二十七時間……」


 ガルド。


 低い声。


「急に」


「期限縮みすぎだろ」


⸻


「閉じる?」


 ベルン。


「管理者権限があるなら」


「今閉じた方が」


「待って」


 アルフレッド。


「三人」


「この辺にいた」


「今」


「見つけた」


「もう人はいない?」


『当区画既知生命反応――』


 一拍。


『五』


「五?」


 全員。


 固まる。


「僕たち?」


『探索隊』


『アルフレッド』


『ガルド』


『ベルン』


『A―07』


『ケイン』


『バックス』


「それ六じゃない?」


『A―07は生体反応対象外』


「あ」


「じゃあ五人」


「他には?」


『既知範囲――なし』


「なら閉じても?」


『危険性――不明』


「水がどこへ行くか」


「まだ分からない」


 ノエル。


 いない。


 でも。


 アルフレッドは。


 昨日の話を思い出す。


 分からないものを。


 勢いで。


 操作しない。


「……保留」


「また?」


 ベルン。


「うん」


「でも二十七時間」


「分かってる」


「帰る」


「調べる」


「それから」


「決める」


 ガルド。


 頷く。


「よし」


⸻


「撤収!」


 ガルド。


「アル坊」


「歩ける?」


「うん」


「本当?」


「……ちょっとふらつく」


「ベルン!」


「はい!」


「背負え!」


「え!」


「僕歩ける!」


「却下」


「領主命令!」


「護衛命令!」


「またそれ!」


「黙って乗れ!」


「……はい」


 ベルン。


 しゃがむ。


「どうぞ」


「ごめん」


「軽いから大丈夫ですよ」


「それ」


「褒めてないよね」


「十二歳ですから」


「また!」


⸻


 ケイン。


 バックス。


 支え合う。


 A―07。


 先頭。


 ガルド。


 後ろ。


「死体」


 さっき。


 菌糸に。


 動かされていた。


 通路。


 そこ。


 見る。


「来るぞ」


 ガルド。


「何が」


 ケイン。


「この辺」


「死んだ人」


「動く」


 バックス。


 顔。


 青ざめる。


「……俺」


「見た」


「何人?」


「二人」


「一人は」


「ケインが倒した」


「もう一人」


「どこ」


「塔の反対側」


 A―07。


『侵食個体検知』


「数」


『三』


「増えてる!」


「行くぞ!」


⸻


 角。


 向こう。


 人影。


 一体。


 二体。


 三体。


 ゆら。


 歩く。


 灰色。


 口。


 糸。


「人だったもの」


 ケイン。


 低く。


「斬っても」


「来る」


「糸を切れ!」


 ガルド。


「頭じゃない!」


「背中!」


 ベルン。


 アルフレッド。


 背負ったまま。


「走ります!」


「落とさないで!」


「頑張ります!」


 ガルド。


 剣。


 一体。


 胸。


 斬る。


 倒れる。


 でも。


 腕。


 動く。


「エーナナ!」


『切断』


 A―07。


 金属爪。


 背中。


 菌糸。


 ぶち。


 一体。


 止まる。


「もう一体!」


 ベルン。


 槍。


 押す。


「アル坊!」


「使わない!」


「よし!」


 A―07。


 二体目。


 糸。


 切る。


 三体目。


 ガルド。


 横。


 壁へ。


 叩きつける。


「糸!」


 A―07。


 切断。


 止まる。


⸻


「《清掃》なしでも」


 アルフレッド。


 ベルンの背中。


「倒せる」


「糸切ればな!」


 ガルド。


「でも」


「元は残る!」


「今は逃げる!」


「はい!」


⸻


 保守連絡路。


 戻る。


 菌糸。


 先ほど。


 アルフレッドが。


 掃除した場所。


 もう。


 半分。


 再生。


「早すぎる」


『侵食供給量――増加』


「水門のせい?」


『可能性――高』


「急げ!」


⸻


 第一浄化施設。


 到着。


「閉めろ!」


 扉。


 管理者認証。


 アルフレッド。


 ベルンから。


 降ろされる。


「僕?」


「手だけ貸せ!」


「うん!」


 掌。


 扉。


『暫定管理者認証』


『保守連絡路』


『閉鎖』


 ごごご。


 扉。


 閉まる。


 最後。


 灰色の菌糸。


 隙間。


 伸びる。


 ぴしゃ。


 遮断。


「ふぅ……」


 全員。


 その場。


 息。


 吐く。


⸻


「オルド!」


 入口側。


 マルク。


 待っている。


「無事です!」


「意識あり!」


「よし!」


「帰るぞ!」


⸻


 地上。


 夕方。


 予定より。


 ずっと遅い。


「来た!」


 見張り台。


 声。


 村。


 一気に。


 動く。


「担架!」


「マルタさん!」


「水!」


「空き家!」


「人数!」


 ノエル。


 帳面。


「何人です!」


「三人!」


 ガルド。


「オルド!」


「ケイン!」


「バックス!」


 村人。


 どよめく。


 ダリオ。


 寝台から。


 無理やり。


 起きようとする。


「馬鹿!」


 マルタ。


「寝てろ!」


「でも!」


「生きてる!」


 ガルド。


「三人とも!」


 ダリオ。


 動き。


 止まる。


 ラウル。


 隣。


 目。


 閉じる。


「……全員」


「ああ」


「五人」


「全員戻った」


⸻


 フィン。


 父。


 ラウル。


 横。


「父さん」


「うん」


「皆」


「帰ってきた」


「……そうか」


 ラウル。


 少し。


 笑う。


「よかった」


⸻


 アルフレッド。


 最後。


 点検口。


 出る。


 セルマ。


 待っている。


「アルフレッド様」


「ただいま」


「……」


「何?」


「歩けますか?」


「一応」


「一応?」


「ベルンさんに」


「途中背負ってもらった」


「スキルは?」


「四回」


 セルマ。


 目。


 細くなる。


「ごめんなさい」


「今」


「私まだ何も」


「顔」


「書いてあった?」


「かなり」


「……」


 セルマ。


 杖。


 片手。


 でも。


 左肩。


 アルフレッドへ。


「捕まってください」


「大丈夫」


「捕まってください」


「はい」


 少年。


 素直に。


 肩。


 借りる。


⸻


 その夜。


 三人。


 治療。


 オルド。


 腹。


 傷。


 ケイン。


 足首。


 菌糸による擦過傷。


 侵食。


 体内。


 なし。


 バックス。


 外傷。


 軽い。


 問題は。


「精神干渉?」


 ノエル。


「はい」


 アルフレッド。


「声に」


「引っ張られてた」


「《清掃》で」


「消えた?」


「うん」


「一時的?」


『現在』


『バックスへの干渉反応――なし』


 A―07。


「塔からの信号は?」


『継続』


「じゃあ」


「近づけば」


「また?」


『可能性あり』


 ノエル。


 記録。


「重要です」


「今後」


「第四浄化塔へ近づく人間は」


「精神干渉対策が必要」


「どうする?」


 ガルド。


「分からない」


「耳栓?」


『音声遮断のみでは不十分』


「魔法?」


 誰も。


 答えられない。


「アル坊の《清掃》」


 ガルド。


「頼り切るのは駄目だな」


「うん」


「距離」


「人数」


「時間」


「全部制限される」


「うん」


 アルフレッド。


 少し。


 悔しい。


 でも。


「別の方法」


「探そう」


⸻


「水門」


 ノエル。


「現在」


『閉鎖率――34.9%』


「また下がった」


「完全開放まで」


『推定――二十四時間前後』


 村。


 静か。


「一日」


 バルド。


「ほぼ」


 ノエル。


「はい」


「つまり」


 ガルド。


「明日中に」


「決めなきゃならん」


「閉じるか」


「何もしないか」


「閉じる方法は?」


 アルフレッド。


『管理者権限による緊急封鎖』


「それだけ?」


『手動閉鎖機構』


「誰か行く?」


『第四浄化塔内部』


「無理だね」


『危険』


「遠隔」


「一択」


 ノエル。


⸻


「閉じたら」


「何が起きるか」


 アルフレッド。


「分かる情報」


「全部出せる?」


『照合開始』


 A―07。


 長い。


 沈黙。


『下層水門』


『本来機能』


『第四浄化塔へ流入する』


『地下水量調整』


「流入?」


「排水じゃないの?」


『複合水路』


「閉じると?」


『第四浄化塔への水供給低下』


「じゃあ」


「菌糸も減る?」


『可能性あり』


「他への影響」


『下流水路』


『第一浄化施設』


『第二浄化塔』


『第三浄化塔』


『一部流量変動』


「村の井戸は?」


『影響可能性あり』


「悪くなる?」


『不明』


「良くなる?」


『不明』


「本当に」


「肝心なところ……」


『謝罪』


「エーナナ悪くない」


⸻


「でも」


 ノエル。


 地図。


「閉じなければ」


「第四浄化塔へ」


「さらに水が流れ」


「侵食因子が」


「非常排水路へ拡散する」


「現に」


「今日」


「灰色の水が増えていました」


 ガルド。


「ああ」


「放置も」


「安全じゃない」


「閉じるのも」


「安全か分からない」


 アルフレッド。


「どっちも」


「怖い」


「そうだな」


 バルド。


 静か。


「それが」


「決めるということじゃ」


 アルフレッド。


 老人。


 見る。


「正解が分かってから」


「決められることなど」


「案外少ない」


「……」


「分からぬ中で」


「何を守るか」


「何を失う危険を取るか」


「それを決めるのが」


「上に立つ者なのじゃろう」


⸻


 アルフレッド。


 地図。


 見る。


 三十二人。


 いや。


 今日。


 三人。


 戻った。


 三十五。


 灰境の村。


 今。


 三十五人。


 井戸。


 食料。


 家。


 そして。


 地下。


「ノエルさん」


「はい」


「今」


「村の水」


「何日分」


「井戸使えなくても」


「持つ?」


 ノエル。


 止まる。


「貯水?」


「うん」


 計算。


「樽」


「水袋」


「煮沸可能な川水」


「最低限なら」


「二日」


「三日までは」


「かなり厳しい」


「じゃあ」


「水門閉じて」


「井戸が悪くなっても」


「二日」


「対応できる」


「理論上」


「うん」


「逆に」


「閉じないと」


「灰色の水」


「もっと増える」


「可能性高い」


「はい」


 アルフレッド。


 考える。


 長い。


 沈黙。


⸻


「明日の朝」


「水を」


「できるだけ汲む」


「樽」


「全部」


「満たす」


「川の水も」


「煮沸用」


「溜める」


「それから」


「食事用」


「治療用」


「赤ちゃん用」


「分ける」


 ノエル。


 筆。


 動き始める。


「その後?」


「水門」


 アルフレッド。


 A―07を見る。


「閉じる」


 部屋。


 静か。


「本当に?」


 ガルド。


「怖い」


「うん」


「でも」


「何もしないで」


「完全に開くのを待つ方が」


「もっと怖い」


「理由」


「菌糸」


「もう広がってる」


「死体まで動かしてる」


「バックスさんも操った」


「ラウルさんの排水路にも」


「灰色の水が来た」


「だから」


「今」


「止められる可能性があるなら」


「やる」


 ガルド。


 少し。


 黙る。


「分かった」


⸻


「ただし」


 アルフレッド。


「閉じた後」


「何が起きても」


「すぐ対応できるように」


「皆で」


「準備する」


「それで」


 ノエル。


 頷く。


「決定として記録します」


⸻


 深夜。


 第一浄化施設。


『下層水門』


『閉鎖率――34.2%』


『緊急封鎖要求――継続』


 そして。


 第四浄化塔。


 中心。


 円形扉。


 その向こう。


 低い声。


『……開……け……』


 誰もいない。


 塔。


 それでも。


 声。


 響く。


 菌糸。


 水。


 灰。


 絡み合う。


 その奥。


 何か。


 巨大な影。


 動く。


 そして。


 水門。


 さらに。


 わずかに。


 開いた。


⸻


第40話 呼ぶ声 了

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