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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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40/40

呼ぶ声



前書き


声には、


力があります。


励ます声。


怒る声。


泣く声。


助けを求める声。


けれど。


すべての声が、


信じていいものとは限りません。


もしその声が、


自分の意思より深い場所へ入り込み。


身体を、


勝手に動かそうとするのなら。


それはもう、


言葉ではなく。


鎖なのかもしれません。



『……開……け……』


 低い声が。


 第四浄化塔の内部から響いた。


「バックス!」


 ガルドが叫ぶ。


「止まれ!」


 だが。


 バックスは振り返らない。


 ふら。


 一歩。


 また一歩。


 塔中央。


 菌糸に半分覆われた円形扉へ。


 ゆっくり近づいていく。


「聞くな!」


 ケインが叫んだ。


「そいつの声を聞くな!」


 バックスの右手が。


 扉へ伸びる。


「ベルン!」


「はい!」


 槍。


 しかし。


「刺すな!」


「分かってます!」


 ベルンが走る。


 柄。


 横から。


 バックスの腰へ。


 どんっ。


「ぐっ……!」


 身体が崩れる。


 扉まで。


 あと二歩。


「捕まえろ!」


 ガルド。


 バックスの腕を掴む。


「離せ!」


 初めて。


 男が叫んだ。


「開けないと!」


「何を!」


「開けないと!」


「みんな死ぬ!」


「誰が言った!」


「……」


 バックス。


 目。


 見開く。


「誰が言った!」


 ガルドがもう一度叫ぶ。


「……中」


「何がいる!」


「知らない!」


「じゃあ何で開ける!」


「開けないと」


 バックス。


 息。


 荒い。


「水が」


「止まらない」


「灰が」


「上へ」


「全部」


「飲み込む」


「誰に聞いた」


「だから!」


「誰が言った!」


 バックスが。


 震える。


 そして。


 円形扉を見る。


「……あいつ」



『……開……け……』


 声。


 また。


 聞こえる。


 アルフレッドの背中に。


 ぞくり。


 寒気。


「エーナナ」


『確認』


「今の」


「音?」


『音声波形』


『および』


 一瞬。


 A―07の青い瞳が乱れた。


『精神干渉波――微弱検出』


「精神……?」


 ガルドの顔が変わる。


「操ってんのか」


『可能性あり』


 アルフレッド。


 セルマの首輪を思い出す。


 外から送り込まれた命令。


 身体を。


 勝手に動かした。


「……同じ?」


『照合』


 A―07。


『構造――異なる』


『作用――類似』


「命令」


 アルフレッド。


「バックスさんの中に」


「入ってる?」


『可能性――高』


 ガルド。


 少年を見る。


「アル坊」


「分かってる」


「顔」


「言わなくても分かるよ」


「《清掃》」


「ああ」


「でも」


「さっき使った」


「体調は」


「少し疲れてる」


「なら」


「無理するな」


「でも」


 バックス。


 ガルドとベルン。


 二人がかり。


 それでも。


 扉へ。


 身体を向け続けている。


「開けろ!」


「開けさせろ!」


「離せ!」


 普通ではない。


 瞳。


 焦点が合っていない。


「アル坊」


 ガルド。


 苦い顔。


「やれるか」


「……やる」


「違う」


「できるか」


 アルフレッド。


 一度。


 深呼吸。


「バックスさん全部じゃなくて」


「命令だけなら」


「たぶん」


「たぶんか」


「でも」


「セルマの時と」


「考え方は同じ」


「分かった」


「一回」


「短く」


「うん」



「バックスさん!」


 アルフレッド。


 近づく。


「来るな!」


「開けるんだ!」


「開けたら」


「何が起きるか分からない!」


「分かる!」


「声が言ってる!」


「その声が」


「嘘だったら?」


 バックス。


 止まる。


 一瞬。


「……嘘?」


「中にいる何かが」


「自分を出したいだけだったら?」


「違う」


「どうして分かるの?」


「……」


「バックスさん」


 アルフレッド。


 手。


 胸。


 服。


 直接ではなく。


 肩。


 そっと。


「今」


「自分で開けたい?」


 男。


 目。


 揺れる。


「俺は……」


『……開……け……』


 声。


 バックスの身体。


 びく。


「開ける……」


「それ」


「バックスさんの答えじゃない」


 アルフレッド。


 目。


 閉じる。


「《清掃》」



 白い光。


 小さい。


 広げない。


 バックスの身体。


 周囲。


 そして。


 胸。


 頭。


 外から。


 絡みつく。


 見えない。


 何か。


「……いた」


 アルフレッド。


 呟く。


「何が!」


 ガルド。


「糸」


「菌糸?」


「違う」


 目には見えない。


 でも。


 感覚。


 細い。


 冷たい。


 命令。


「これ」


「汚れじゃない」


「でも」


「バックスさんのものでもない」


 光。


 少し。


 強く。


「出ていけ!」


 ぱんっ!


 小さな破裂音。


「うっ!」


 バックスの身体。


 力。


 抜ける。


 ガルドが支える。


「バックス!」


「……」


「聞こえるか!」


「……ガルド?」


「戻ったか!」


 バックス。


 額。


 汗。


「俺」


「何して」


「扉開けようとしてた」


「……」


「何で?」


 ガルドが。


 アルフレッドを見る。


「アル坊」


 少年。


 その場へ。


 膝をついた。


「アル坊!」


「大丈夫」


「顔白いぞ!」


「ちょっと」


「使いすぎた」


「ちょっとじゃねぇ!」


「座れ!」


「もう座ってる」


「そうだった!」



『精神干渉波――低下』


 A―07。


「消えた?」


『対象バックスへの作用』


『消失』


「塔からは?」


『継続』


「まだ出てるんだ」


『肯定』


「なら」


 ガルド。


 円形扉を見る。


「近づくな」


「全員」


「耳塞いでも?」


 ベルン。


『音声自体より』


『付随波形が主作用』


「じゃあ聞こえなくても」


「影響ある?」


『可能性あり』


「最悪だな」



「ケイン」


 ガルド。


「動けるか」


「……足」


 菌糸。


 絡んでいる。


「エーナナ」


『確認』


「切れる?」


『可能』


「菌糸触るな」


『了解』


 A―07。


 左腕。


 金属片。


 拾う。


 切断。


 ぶち。


 ぶち。


 ケイン。


 自由。


「立てる?」


「何とか」


「よし」


「バックス」


「歩けるか」


「……たぶん」


「たぶんが多いな!」


 ガルド。


「でも」


「ここに長居するよりマシだ」



「残り」


 アルフレッド。


 息。


 整えながら。


「オルドさん」


「もう外へ運んだ」


「ケインさん」


「ここ」


「バックスさん」


「ここ」


「三人」


 見つけた。


 ダリオ。


 ラウル。


 オルド。


 ケイン。


 バックス。


 五人。


 全員。


「……揃った」


 アルフレッド。


 少し笑う。


 ガルド。


 その顔。


 見て。


「まだ笑うな」


「帰ってから」


「そうだった」


「全員」


「帰るまでが救助だ」


「うん」



『警告』


 A―07。


 突然。


 赤。


「何!」


『下層水門』


『閉鎖率――35.8%』


「また下がった!」


『自動閉鎖機構』


『継続異常』


「どれくらいで」


「完全に開く?」


『現在速度一定の場合』


『約二十七時間』


 全員。


 止まる。


「昨日」


「十九日だったよね」


 アルフレッド。


『門封鎖機構到達予測とは別項目』


「あ」


「水門の方が」


「先に駄目になる?」


『肯定』


「二十七時間……」


 ガルド。


 低い声。


「急に」


「期限縮みすぎだろ」



「閉じる?」


 ベルン。


「管理者権限があるなら」


「今閉じた方が」


「待って」


 アルフレッド。


「三人」


「この辺にいた」


「今」


「見つけた」


「もう人はいない?」


『当区画既知生命反応――』


 一拍。


『五』


「五?」


 全員。


 固まる。


「僕たち?」


『探索隊』


『アルフレッド』


『ガルド』


『ベルン』


『A―07』


『ケイン』


『バックス』


「それ六じゃない?」


『A―07は生体反応対象外』


「あ」


「じゃあ五人」


「他には?」


『既知範囲――なし』


「なら閉じても?」


『危険性――不明』


「水がどこへ行くか」


「まだ分からない」


 ノエル。


 いない。


 でも。


 アルフレッドは。


 昨日の話を思い出す。


 分からないものを。


 勢いで。


 操作しない。


「……保留」


「また?」


 ベルン。


「うん」


「でも二十七時間」


「分かってる」


「帰る」


「調べる」


「それから」


「決める」


 ガルド。


 頷く。


「よし」



「撤収!」


 ガルド。


「アル坊」


「歩ける?」


「うん」


「本当?」


「……ちょっとふらつく」


「ベルン!」


「はい!」


「背負え!」


「え!」


「僕歩ける!」


「却下」


「領主命令!」


「護衛命令!」


「またそれ!」


「黙って乗れ!」


「……はい」


 ベルン。


 しゃがむ。


「どうぞ」


「ごめん」


「軽いから大丈夫ですよ」


「それ」


「褒めてないよね」


「十二歳ですから」


「また!」



 ケイン。


 バックス。


 支え合う。


 A―07。


 先頭。


 ガルド。


 後ろ。


「死体」


 さっき。


 菌糸に。


 動かされていた。


 通路。


 そこ。


 見る。


「来るぞ」


 ガルド。


「何が」


 ケイン。


「この辺」


「死んだ人」


「動く」


 バックス。


 顔。


 青ざめる。


「……俺」


「見た」


「何人?」


「二人」


「一人は」


「ケインが倒した」


「もう一人」


「どこ」


「塔の反対側」


 A―07。


『侵食個体検知』


「数」


『三』


「増えてる!」


「行くぞ!」



 角。


 向こう。


 人影。


 一体。


 二体。


 三体。


 ゆら。


 歩く。


 灰色。


 口。


 糸。


「人だったもの」


 ケイン。


 低く。


「斬っても」


「来る」


「糸を切れ!」


 ガルド。


「頭じゃない!」


「背中!」


 ベルン。


 アルフレッド。


 背負ったまま。


「走ります!」


「落とさないで!」


「頑張ります!」


 ガルド。


 剣。


 一体。


 胸。


 斬る。


 倒れる。


 でも。


 腕。


 動く。


「エーナナ!」


『切断』


 A―07。


 金属爪。


 背中。


 菌糸。


 ぶち。


 一体。


 止まる。


「もう一体!」


 ベルン。


 槍。


 押す。


「アル坊!」


「使わない!」


「よし!」


 A―07。


 二体目。


 糸。


 切る。


 三体目。


 ガルド。


 横。


 壁へ。


 叩きつける。


「糸!」


 A―07。


 切断。


 止まる。



「《清掃》なしでも」


 アルフレッド。


 ベルンの背中。


「倒せる」


「糸切ればな!」


 ガルド。


「でも」


「元は残る!」


「今は逃げる!」


「はい!」



 保守連絡路。


 戻る。


 菌糸。


 先ほど。


 アルフレッドが。


 掃除した場所。


 もう。


 半分。


 再生。


「早すぎる」


『侵食供給量――増加』


「水門のせい?」


『可能性――高』


「急げ!」



 第一浄化施設。


 到着。


「閉めろ!」


 扉。


 管理者認証。


 アルフレッド。


 ベルンから。


 降ろされる。


「僕?」


「手だけ貸せ!」


「うん!」


 掌。


 扉。


『暫定管理者認証』


『保守連絡路』


『閉鎖』


 ごごご。


 扉。


 閉まる。


 最後。


 灰色の菌糸。


 隙間。


 伸びる。


 ぴしゃ。


 遮断。


「ふぅ……」


 全員。


 その場。


 息。


 吐く。



「オルド!」


 入口側。


 マルク。


 待っている。


「無事です!」


「意識あり!」


「よし!」


「帰るぞ!」



 地上。


 夕方。


 予定より。


 ずっと遅い。


「来た!」


 見張り台。


 声。


 村。


 一気に。


 動く。


「担架!」


「マルタさん!」


「水!」


「空き家!」


「人数!」


 ノエル。


 帳面。


「何人です!」


「三人!」


 ガルド。


「オルド!」


「ケイン!」


「バックス!」


 村人。


 どよめく。


 ダリオ。


 寝台から。


 無理やり。


 起きようとする。


「馬鹿!」


 マルタ。


「寝てろ!」


「でも!」


「生きてる!」


 ガルド。


「三人とも!」


 ダリオ。


 動き。


 止まる。


 ラウル。


 隣。


 目。


 閉じる。


「……全員」


「ああ」


「五人」


「全員戻った」



 フィン。


 父。


 ラウル。


 横。


「父さん」


「うん」


「皆」


「帰ってきた」


「……そうか」


 ラウル。


 少し。


 笑う。


「よかった」



 アルフレッド。


 最後。


 点検口。


 出る。


 セルマ。


 待っている。


「アルフレッド様」


「ただいま」


「……」


「何?」


「歩けますか?」


「一応」


「一応?」


「ベルンさんに」


「途中背負ってもらった」


「スキルは?」


「四回」


 セルマ。


 目。


 細くなる。


「ごめんなさい」


「今」


「私まだ何も」


「顔」


「書いてあった?」


「かなり」


「……」


 セルマ。


 杖。


 片手。


 でも。


 左肩。


 アルフレッドへ。


「捕まってください」


「大丈夫」


「捕まってください」


「はい」


 少年。


 素直に。


 肩。


 借りる。



 その夜。


 三人。


 治療。


 オルド。


 腹。


 傷。


 ケイン。


 足首。


 菌糸による擦過傷。


 侵食。


 体内。


 なし。


 バックス。


 外傷。


 軽い。


 問題は。


「精神干渉?」


 ノエル。


「はい」


 アルフレッド。


「声に」


「引っ張られてた」


「《清掃》で」


「消えた?」


「うん」


「一時的?」


『現在』


『バックスへの干渉反応――なし』


 A―07。


「塔からの信号は?」


『継続』


「じゃあ」


「近づけば」


「また?」


『可能性あり』


 ノエル。


 記録。


「重要です」


「今後」


「第四浄化塔へ近づく人間は」


「精神干渉対策が必要」


「どうする?」


 ガルド。


「分からない」


「耳栓?」


『音声遮断のみでは不十分』


「魔法?」


 誰も。


 答えられない。


「アル坊の《清掃》」


 ガルド。


「頼り切るのは駄目だな」


「うん」


「距離」


「人数」


「時間」


「全部制限される」


「うん」


 アルフレッド。


 少し。


 悔しい。


 でも。


「別の方法」


「探そう」



「水門」


 ノエル。


「現在」


『閉鎖率――34.9%』


「また下がった」


「完全開放まで」


『推定――二十四時間前後』


 村。


 静か。


「一日」


 バルド。


「ほぼ」


 ノエル。


「はい」


「つまり」


 ガルド。


「明日中に」


「決めなきゃならん」


「閉じるか」


「何もしないか」


「閉じる方法は?」


 アルフレッド。


『管理者権限による緊急封鎖』


「それだけ?」


『手動閉鎖機構』


「誰か行く?」


『第四浄化塔内部』


「無理だね」


『危険』


「遠隔」


「一択」


 ノエル。



「閉じたら」


「何が起きるか」


 アルフレッド。


「分かる情報」


「全部出せる?」


『照合開始』


 A―07。


 長い。


 沈黙。


『下層水門』


『本来機能』


『第四浄化塔へ流入する』


『地下水量調整』


「流入?」


「排水じゃないの?」


『複合水路』


「閉じると?」


『第四浄化塔への水供給低下』


「じゃあ」


「菌糸も減る?」


『可能性あり』


「他への影響」


『下流水路』


『第一浄化施設』


『第二浄化塔』


『第三浄化塔』


『一部流量変動』


「村の井戸は?」


『影響可能性あり』


「悪くなる?」


『不明』


「良くなる?」


『不明』


「本当に」


「肝心なところ……」


『謝罪』


「エーナナ悪くない」



「でも」


 ノエル。


 地図。


「閉じなければ」


「第四浄化塔へ」


「さらに水が流れ」


「侵食因子が」


「非常排水路へ拡散する」


「現に」


「今日」


「灰色の水が増えていました」


 ガルド。


「ああ」


「放置も」


「安全じゃない」


「閉じるのも」


「安全か分からない」


 アルフレッド。


「どっちも」


「怖い」


「そうだな」


 バルド。


 静か。


「それが」


「決めるということじゃ」


 アルフレッド。


 老人。


 見る。


「正解が分かってから」


「決められることなど」


「案外少ない」


「……」


「分からぬ中で」


「何を守るか」


「何を失う危険を取るか」


「それを決めるのが」


「上に立つ者なのじゃろう」



 アルフレッド。


 地図。


 見る。


 三十二人。


 いや。


 今日。


 三人。


 戻った。


 三十五。


 灰境の村。


 今。


 三十五人。


 井戸。


 食料。


 家。


 そして。


 地下。


「ノエルさん」


「はい」


「今」


「村の水」


「何日分」


「井戸使えなくても」


「持つ?」


 ノエル。


 止まる。


「貯水?」


「うん」


 計算。


「樽」


「水袋」


「煮沸可能な川水」


「最低限なら」


「二日」


「三日までは」


「かなり厳しい」


「じゃあ」


「水門閉じて」


「井戸が悪くなっても」


「二日」


「対応できる」


「理論上」


「うん」


「逆に」


「閉じないと」


「灰色の水」


「もっと増える」


「可能性高い」


「はい」


 アルフレッド。


 考える。


 長い。


 沈黙。



「明日の朝」


「水を」


「できるだけ汲む」


「樽」


「全部」


「満たす」


「川の水も」


「煮沸用」


「溜める」


「それから」


「食事用」


「治療用」


「赤ちゃん用」


「分ける」


 ノエル。


 筆。


 動き始める。


「その後?」


「水門」


 アルフレッド。


 A―07を見る。


「閉じる」


 部屋。


 静か。


「本当に?」


 ガルド。


「怖い」


「うん」


「でも」


「何もしないで」


「完全に開くのを待つ方が」


「もっと怖い」


「理由」


「菌糸」


「もう広がってる」


「死体まで動かしてる」


「バックスさんも操った」


「ラウルさんの排水路にも」


「灰色の水が来た」


「だから」


「今」


「止められる可能性があるなら」


「やる」


 ガルド。


 少し。


 黙る。


「分かった」



「ただし」


 アルフレッド。


「閉じた後」


「何が起きても」


「すぐ対応できるように」


「皆で」


「準備する」


「それで」


 ノエル。


 頷く。


「決定として記録します」



 深夜。


 第一浄化施設。


『下層水門』


『閉鎖率――34.2%』


『緊急封鎖要求――継続』


 そして。


 第四浄化塔。


 中心。


 円形扉。


 その向こう。


 低い声。


『……開……け……』


 誰もいない。


 塔。


 それでも。


 声。


 響く。


 菌糸。


 水。


 灰。


 絡み合う。


 その奥。


 何か。


 巨大な影。


 動く。


 そして。


 水門。


 さらに。


 わずかに。


 開いた。



第40話 呼ぶ声 了

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