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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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39/40

三つの生命反応



前書き


生きている。


それだけで、


希望になります。


けれど。


生きているからこそ、


急がなければならない時もあります。


残された時間。


動ける人。


使える道具。


知らない危険。


それらを前にして。


助ける側は、


選ばなければなりません。


何を先にするのか。


誰を先に守るのか。


そして。


今、


何をしないのか。



 翌朝。


 アルフレッドは。


 まだ朝食も終わっていないうちから。


 机へ地図を広げていた。


「三つ」


 小さく呟く。


 第四浄化塔。


 その外周保守区画。


 昨夜。


 A―07が確認した。


 三つの生命反応。


 オルド。


 ケイン。


 バックス。


 そう断定はできない。


 だが。


 地下へ入った五人のうち。


 ダリオ。


 救出済み。


 ラウル。


 救出済み。


 残り。


 三人。


 数は。


 合う。


「アルフレッド様」


 セルマが。


 隣から地図を見る。


「眠れましたか?」


「少し」


「少し?」


「……ちゃんと寝ました」


「本当ですか?」


「マルタさんに」


「寝るところ見られたから」


「では本当ですね」


「信用の基準がマルタさん……」



「アル坊」


 ガルド。


 部屋。


 入ってくる。


「早ぇな」


「ガルドさんも」


「俺は仕事だ」


「僕も仕事」


「そうだったな」


 以前なら。


 十二歳だから。


 そう言って。


 簡単に区切っていた。


 だが。


 最近。


 ガルドも。


 アルフレッドへ。


 少しずつ。


 領主として話すようになっていた。


「エーナナ」


『確認』


「昨日の三つ」


『生命反応――継続』


「位置」


 床。


 青い光。


 地図。


 三点。


 一つ。


 第四浄化塔。


 南外周。


 一つ。


 西保守路。


 一つ。


 そして。


 問題。


「これ」


 アルフレッド。


 三つ目を見る。


「近づいてる?」


『肯定』


「どこへ」


『第四浄化塔中心機構』


 ガルド。


 眉。


 寄せる。


「自力で動いてる?」


『移動速度――低』


「歩いてる?」


『断定不能』


「引きずられてる可能性」


 セルマが言う。


『可能性あり』


 部屋。


 少し。


 静かになる。



「水門」


 ノエル。


 帳面。


「閉鎖率」


『38%』


「昨夜と同じ?」


『否定』


「え?」


『昨夜最終計測――38.4%』


『現在――37.9%』


 アルフレッド。


 顔。


 変わる。


「開いてる?」


『微増』


「勝手に?」


『自動閉鎖機構――故障』


「閉じようとして」


「逆に開いてる?」


『可能性あり』


「最悪だな」


 ガルド。


 低い声。



「急ぐ必要があります」


 ノエル。


「ただし」


「何も分からない状態で」


「緊急封鎖を承認するのは」


「依然危険です」


「三人」


 アルフレッド。


「先に見つける」


「それが一番?」


「少なくとも」


 ガルド。


「人間が中にいるなら」


「水門いじる前に」


「場所を知りてぇ」


「うん」


「でも」


 セルマ。


「三人の場所へ」


「どうやって」


 A―07。


『経路候補――三』


「三つ?」


『第一』


『第三旧居住区封鎖門より進入』


「却下」


 ガルド。


 即答。


『第二』


『非常排水路』


「ラウルさんのところ?」


『そこから内部へ』


「でも」


「崩れてるんでしょう?」


『一部閉塞』


「使える?」


『危険』


「じゃあ第三」


『第一浄化施設』


『保守連絡路』


 全員。


 止まる。


「あるの?」


 アルフレッド。


『記録上――存在』


「通れる?」


『不明』


「入口は?」


『第一浄化施設』


『下層西北区画』


「昨日まで」


「そんなの言ってなかったよね」


『管理者権限上昇に伴い』


『閲覧情報増加』


 ノエル。


 眼鏡。


 押し上げる。


「権限が」


「少しずつ増えている」


「何をしたから?」


『居住者増加』


『保守管理個体復旧』


『施設部分再稼働』


「全部?」


『複合条件』


「……ゲームみたい」


「何です?」


 ノエル。


「なんでもない」



「じゃあ」


 アルフレッド。


「その保守連絡路」


「調べれば」


「三人の近くまで行ける?」


『可能性あり』


「第四浄化塔へ」


「直接入らず?」


『外周接続』


「それなら」


 ガルド。


 地図。


 見る。


「昨日よりマシだな」


「僕も行く」


「……」


「理由あります」


「聞こう」


「管理者権限」


「エーナナだけだと」


「途中で開かない場所があるかもしれない」


『可能性――あり』


「《清掃》」


「侵食があった場合」


「使える」


「《修繕》」


「保守路が壊れてた場合」


「使える」


「……」


 ガルド。


 腕。


 組む。


「ノエル」


「合理性はあります」


「セルマ」


「反対です」


「即答」


「ただし」


「条件付きで」


「同行は認めるべきかと」


 アルフレッド。


 びっくり。


「セルマが?」


「私も」


「何でも反対するわけではありません」


「ガルドさんと同じこと言った」


「嫌です」


「そこまで?」



「条件」


 セルマ。


 指。


 一つ。


「単独行動しない」


「うん」


「二つ」


「先頭へ出ない」


「うん」


「三つ」


「異常を感じたら」


「必ず言う」


「うん」


「四つ」


「スキル使用前に」


「相談」


「うん」


「五つ」


「三人を見つけても」


「勝手に助けに飛び込まない」


「……うん」


「今」


「少し間がありました」


「聞こえてた?」


「見ていました」


「分かりやすいな僕……」



「探索隊」


 ガルド。


「俺」


「アル坊」


「A―07」


「ベルン」


「マルク」


「五人」


「ビーさんは?」


 アルフレッド。


「通路幅」


『B―03通行可否――低』


「また駄目か」


『外周接続以降は通行可能可能性あり』


「連れていく?」


「途中で詰まったら」


「帰れなくなる」


 ガルド。


「残す」


「村の守りもいる」


「うん」



「私は」


 セルマ。


「行きません」


 アルフレッド。


「大丈夫?」


「何がですか」


「いや」


「最近」


「一緒に来そうだったから」


 セルマ。


 右の空袖。


 ちら。


 見る。


「今の私は」


「足手まといです」


「そんなこと」


「あります」


 はっきり。


「だから」


「今は」


「行きません」


 アルフレッド。


 何も言わない。


「でも」


 セルマ。


 続ける。


「帰ってきてください」


「うん」


「それだけです」


「うん」



 出発前。


 ダリオ。


 ラウル。


 二人とも。


 寝台。


「三人」


 ガルド。


「何か思い出せ」


 ラウル。


 目。


 閉じる。


「オルドは」


「一番前」


「道を探してた」


「ケイン」


「石工」


「壁を見るのが得意だった」


「バックス」


「若い」


「猟も少しできる」


「武器」


「短剣」


「槍一本」


「弓」


「それだけ」


「食料」


「ほぼなし」


「水」


「最初は持ってた」


「今は?」


「知らん」


「最後に見た場所」


 ラウル。


 指。


 地図。


「この辺」


 非常排水路。


 分岐。


「ここから」


「北東」


「水が増えてきて」


「俺は動けなかった」


「三人は」


「上へ抜ける道」


「探しに行った」



「オルド」


 ダリオ。


 掠れた声。


「変な話してた」


「何」


「昔」


「第四の塔には」


「触るなって」


「誰から?」


「爺さん」


「そのまた爺さん」


「理由」


「知らん」


「でも」


「開けると」


「灰が流れる」


「そう」


「言ってた」


 アルフレッド。


 地図。


「第四浄化塔」


「たぶん」


「昔から」


「壊れてたんだね」


『可能性――高』


 A―07。



「じゃあ」


 ガルド。


「行くぞ」



 地下。


 第一浄化施設。


 入口。


 アルフレッド。


 今日は。


 前より。


 少しだけ。


 落ち着いている。


「エーナナ」


『確認』


「保守連絡路」


『案内開始』


 青い線。


 壁。


 今まで。


 消えていた区画。


 点灯。


「こんなところ」


 ベルン。


「前も通った?」


『近傍通過』


「開かなかった?」


『管理者権限不足』


「今は?」


『開放可能』


 扉。


 古い。


 丸い。


 金属。


「アル坊」


「何?」


「触る前に」


「聞け」


「分かってる」


 A―07。


『管理者認証要求』


 アルフレッド。


 扉。


 前。


「何すれば?」


『手掌接触』


「触っていい?」


 ガルド。


「認証だけなら」


「うん」


 右手。


 置く。


 青い光。


 走る。


『暫定管理者――認証』


『保守連絡路』


『開放』


 ご。


 重い音。


 扉。


 左右へ。


 開く。



 冷たい。


 空気。


「臭い」


 マルク。


「何?」


「鉄」


「水」


「……あと」


 A―07。


『侵食因子』


「多い?」


『中程度』


 ガルド。


 顔。


 険しくなる。


「進める?」


『可能』


「接触しないで?」


『一部区画――困難』


「アル坊」


「うん」


「必要な時だけ」


「《清掃》」


「分かってる」



 連絡路。


 狭い。


 だが。


 完全な廃墟ではない。


 壁。


 青い線。


 時々。


 生きている。


 水。


 横。


 細い溝。


 流れる。


「これ」


「第一浄化施設の水?」


『保守用循環水』


「飲める?」


『非推奨』


「分かった」


 十数分。


 進む。



『停止』


 A―07。


「菌糸?」


『肯定』


 前。


 通路。


 半分。


 灰色。


 壁。


 天井。


 床。


 絡む。


「多いね」


 アルフレッド。


「ここ通るの?」


『代替経路――なし』


「《清掃》」


 ガルド。


「狭い範囲」


「通れる分だけ」


「うん」


 アルフレッド。


 手。


 前。


「《清掃》」


 白い光。


 広げない。


 足元。


 幅。


 一人分。


 菌糸。


 ぱら。


 ぱら。


 崩れる。


 黒い。


 灰。


「……止める」


 自分から。


 光。


 消す。


「体調」


「平気」


「頭」


「平気」


「吐き気」


「なし」


「よし」


「最近」


「自動で答えられるようになった」


「それは成長なのか?」


「たぶん」



 通過。


 直後。


 A―07。


 後ろ。


 見る。


『侵食因子――再成長』


「え?」


 アルフレッド。


 振り返る。


 さっき。


 消した場所。


 壁の亀裂。


 奥。


 細い。


 菌糸。


 また。


 出てくる。


「早い」


『供給源近傍』


「第四浄化塔?」


『可能性――高』


「じゃあ」


「掃除しても」


「元を止めないと」


「また来る」


『肯定』


 アルフレッド。


 少し。


 悔しそう。


「掃除だけじゃ」


「駄目なんだ」


「だから」


 ガルド。


「原因探すんだろ」


「うん」



 さらに。


 三十分。


 扉。


 一つ。


『第四浄化塔外周保守区画』


 A―07。


 声。


 少し。


 変わる。


『警戒』


「何」


『侵食率――高』


「中?」


『扉向こう』


「生命反応」


『三』


「三人?」


『人類種一致率――』


『一』


『二』


『三』


『各90%以上』


 アルフレッド。


 息。


 止める。


「いる」


「三人とも」


『可能性――高』


「近い?」


『最短――41メートル』


「行こう」


 ガルド。


「ただし」


「ゆっくり」



 扉。


 開く。


 臭い。


 強い。


 湿気。


 灰。


 金属。


 そして。


 腐った。


 植物。


 松明。


 前。


 照らす。


「……」


 ベルン。


 言葉。


 出ない。


 広い。


 通路。


 壁。


 ほとんど。


 菌糸。


 灰色。


 天井から。


 垂れる。


「これ」


「地下施設じゃなくて」


「巣みたいだな」


 マルク。


 呟く。


『侵食率――81%』


「第四浄化塔全体?」


『外周区画』


「本体は?」


『不明』


「もっと高い可能性」


 ガルド。


「あるな」



『生命反応――西』


 A―07。


「一番近い?」


『肯定』


「行く」


 壁際。


 進む。


 菌糸。


 避ける。


 時々。


 《清掃》。


 小さく。


 道だけ。


 アルフレッド。


 二回目。


「大丈夫?」


 ベルン。


「まだ」


「無理するなよ」


「うん」


 最近。


 皆。


 言う。


 無理するな。


 以前なら。


 少し。


 うるさいと思った。


 今は。


 少し。


 嬉しい。



 角。


 曲がる。


「いた!」


 マルク。


 壁。


 横。


 男。


 倒れている。


 四十代。


 いや。


 もっと。


 老けて見える。


 服。


 泥。


 血。


「オルド!」


 ガルド。


 ラウルから。


 聞いた特徴。


 左眉。


 古い傷。


 ある。


「オルド!」


 男。


 動く。


 目。


 薄く。


 開く。


「……誰だ」


「灰境の村」


「救助」


「……村?」


「ラウルも」


「ダリオも」


「生きてる」


 男の目。


 一気に。


 開く。


「ラウル……」


「助けた」


「村にいる」


「……」


 オルド。


 笑う。


「そうか」


「しぶといな」


「お前もな」



「怪我」


「腹」


 血。


 古い。


 布。


 巻かれている。


「菌糸」


 A―07。


 走査。


『侵食反応――』


 一瞬。


『微弱』


「え?」


 全員。


 動き。


 止まる。


「身体?」


『衣服表面』


「中?」


『生体内部――検出なし』


「なら」


 ガルド。


「服脱がす」


「今?」


「菌糸持って帰る方が嫌だ」


「オルド」


「悪い」


「好きにしろ」


「寒いけど」


「生きてりゃ何でもいい」


 外套。


 上着。


 切る。


 菌糸。


 表面。


 A―07。


『除去推奨』


「アル坊」


「うん」


「ここ」


「小さく」


「《清掃》」


 光。


 衣服。


 菌糸。


 消える。


「身体」


『反応なし』


「よし」



「他の二人」


 アルフレッド。


「ケイン」


「バックス」


 オルド。


 顔。


 変わる。


「……別れた」


「また?」


「ああ」


「水が」


「上がってきた」


「ケインが」


「壁の向こうに」


「空洞があるって」


「石工だから?」


「ああ」


「それで」


「壁を壊した」


「その先」


「何があった」


 オルド。


 息。


 整える。


「塔」


「塔?」


「ここ」


「地下なのに?」


「ああ」


「巨大な」


「柱みたいな」


「中が」


「青く光ってた」


「第四浄化塔本体?」


 A―07。


『可能性――高』


「そこへ」


「ケインとバックス?」


「行った」


「俺は」


「腹」


「やられて」


「動けなくなった」


「何に」


「……人」


 全員。


 止まる。


「人?」


「違う」


 オルド。


 震える。


「人だったもの」



 ガルド。


 剣。


 抜く。


「詳しく」


「灰色」


「肌」


「目」


「白い」


「動き」


「変」


「口から」


「糸」


 アルフレッド。


 首輪。


 森狼。


 A―07。


 B―03。


 全部。


 頭。


 よぎる。


「ゾンビ?」


 言葉。


 前世。


 ぽろ。


 出る。


「ぞんび?」


 ガルド。


「いや」


「なんでもない」


「死体だった?」


「分からん」


 オルド。


「でも」


「剣で斬った」


「血は」


「ほとんど出なかった」


「倒した?」


「ああ」


「その後」


「また」


「動いた」


 ベルン。


 顔。


 強張る。


「魔物じゃないのか」


『生体情報――未登録』


 A―07。



「ケイン」


「バックス」


「その先」


 オルド。


 目。


 閉じる。


「行った」


「戻らない」


「いつ」


「たぶん」


「二日前」


「……」


 まだ。


 近い。


 生きている可能性。


 高い。


「エーナナ」


『生命反応』


「残り二つ」


『確認』


「一つ」


「塔中心へ近づいてる」


『肯定』


「もう一つ」


『停止状態』


「生きてる?」


『生命反応あり』


「よし」


 アルフレッド。


 立つ。


「オルドさん」


「先に」


「外へ」


「誰が連れる」


 ガルド。


「マルク」


「はい」


「オルドを」


「入口まで戻せ」


「一人で?」


「A―07」


『経路記録済』


「マルクを案内」


「その後」


「戻ってこい」


『了解』


「僕たちは?」


「進む」


 ガルド。


「二人」


「まだいる」



「僕」


 アルフレッド。


「大丈夫」


「聞いてねぇ」


「でも」


「三回使った」


「《清掃》」


「うん」


「今日は」


「あとどれくらい」


「分からない」


「なら」


「温存」


「うん」


「次」


「本当に必要な時だけ」


「うん」



 オルド。


 運ばれる。


「領主様」


「何?」


「本当に」


「十二?」


「また?」


「十二です」


「……変な土地に」


「変な領主が来たな」


「褒めてる?」


「半分」


「残り?」


「心配」


「皆同じこと言う……」



 A―07と。


 マルク。


 戻る。


 その間。


 ガルド。


 ベルン。


 アルフレッド。


 三人。


 外周区画。


 待機。


 ごん。


 地下。


 振動。


「また」


 ガルド。


『下層水門』


『閉鎖率――』


 A―07。


 戻る途中。


 遠隔。


 声。


『37.1%』


「また開いた」


「三人助けるまで」


「持つ?」


『不明』


 アルフレッド。


 拳。


 握る。


「時間ない」


「だから」


 ガルド。


「焦らない」


「分かってる」



 十数分後。


 A―07。


 戻る。


『オルド』


『入口側へ移送』


「よし」


「次」


『生命反応――北東』


 進む。


 菌糸。


 増える。


 壁。


 ほぼ。


 灰色。


 途中。


 人型。


 何か。


 倒れている。


「止まれ」


 ガルド。


 剣。


 前。


「オルドが言ってた」


 人だったもの。


 松明。


 近づける。


 服。


 人間。


 男。


 だが。


 顔。


 灰色。


 口。


 細い糸。


 出ている。


「死んでる?」


『生体反応――なし』


「なら」


 アルフレッド。


「死体」


『肯定』


「でも」


 ベルン。


「動くんだろ」


 その瞬間。


 指。


 ぴく。


「下がれ!」


 ガルド。


 死体。


 立つ。


 いや。


 立たされる。


 背中。


 菌糸。


 天井。


 繋がっている。


「操り人形!」


 アルフレッド。


 死体。


 こちら。


 飛びかかる。


「触るな!」


 ガルド。


 剣。


 横。


 一閃。


 脚。


 切る。


 倒れる。


 それでも。


 腕。


 這う。


「うわっ」


「気持ち悪!」


 ベルン。


 槍。


 肩。


 固定。


「アル坊!」


「《清掃》?」


「死体じゃない!」


「糸!」


「うん!」


 アルフレッド。


 距離。


 取る。


 手。


「《清掃》!」


 白。


 光。


 菌糸。


 天井から。


 死体へ。


 繋ぐ。


 部分。


 消える。


 ぷつ。


 死体。


 完全に。


 動きを止めた。


「……」


 全員。


 息。


 止める。


「これ」


 アルフレッド。


 顔。


 青い。


「人を」


「動かしてた」


『侵食因子』


『死体利用を確認』


「死者は」


「戻ってない」


「動かされてるだけ」


 ガルド。


「そういうことだな」


 アルフレッド。


 少し。


 安心した。


 奇妙に。


 安心。


 死者。


 生き返ったわけではない。


 生き返らない。


 ただ。


 侵食が。


 身体を。


 使っている。



「アル坊」


「うん」


「顔色」


「少し悪い」


「使ったから?」


「たぶん」


「次」


「もう使うな」


「でも」


「命に関わる時だけ」


「……うん」



 進む。


 少し。


 遠く。


 青い光。


「見える」


 ベルン。


 巨大な。


 柱。


 地下空間。


 中心。


 上。


 天井へ。


 続く。


 青。


 ところどころ。


 赤。


 菌糸。


 巻きついている。


『第四浄化塔』


 A―07。


 声。


 低い。


『本体確認』


「でかい……」


 アルフレッド。


 息。


 呑む。


 第一浄化施設。


 とは。


 規模。


 違う。


 塔。


 というより。


 巨大な。


 心臓。


 施設全体。


 脈打つ。


 青。


 赤。


「生命反応」


『一』


「近い?」


『非常に近い』


「どこ」


 A―07。


 指。


 塔。


 基部。


 人影。


 一人。


 男。


 立っている。


「ケイン?」


 ガルド。


「特徴」


 石工。


 大柄。


 短髪。


「合う」


 ベルン。


「おーい!」


 ガルド。


「ケイン!」


 男。


 振り返る。


 ゆっくり。


「……」


 顔。


 普通。


 生きている。


「助けに来た!」


 男。


 口。


 動く。


「……来るな」


「何?」


「来るな!」


 声。


 はっきり。


「どうして!」


「俺は」


 ケイン。


 両手。


 震える。


「ここから」


「離れられない」


「怪我?」


「違う」


 足元。


 灰色の。


 細い。


 糸。


 足首。


 絡む。


「切れない!」


「斬る!」


 ガルド。


 前。


「待て!」


「なんだ!」


「バックスが!」


「どこ!」


 ケイン。


 塔。


 上。


 見る。


 そこ。


 青と赤。


 交互。


 光る。


 金属の。


 通路。


 その上。


 一人。


 人影。


 ゆっくり。


 歩いている。


「バックス!」


「生きてる!」


 ベルン。


 叫ぶ。


『生命反応――確認』


「降りてこい!」


 だが。


 バックス。


 反応。


 ない。


 さらに。


 塔。


 中心。


 進む。


「何してる?」


 ケイン。


 顔。


 歪む。


「止めろ!」


「何を」


「あいつ」


「呼ばれてる!」


「誰に!」


 ケイン。


 塔。


 見る。


「中からだ!」



 ごん。


 下層。


 水門。


 また。


 震える。


『閉鎖率――36.5%』


「下がってる!」


「バックス!」


 ガルド。


「止まれ!」


 男。


 歩く。


 その先。


 塔中心。


 大きな。


 円形扉。


 半分。


 菌糸。


 覆う。


 そして。


 向こう。


 低い。


 音。


『……開……』


 アルフレッド。


 凍る。


「今」


「喋った?」


 誰も。


 答えられない。


『……け……』


 A―07。


 警告。


『未知音声信号』


『塔内部より発生』


「バックス!」


 ケイン。


 叫ぶ。


「聞くな!」


「そいつの声を!」


 バックス。


 一歩。


 また。


 円形扉へ。


 近づく。


 そして。


 手。


 伸ばした。



第39話 三つの生命反応 了

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