三つの生命反応
前書き
生きている。
それだけで、
希望になります。
けれど。
生きているからこそ、
急がなければならない時もあります。
残された時間。
動ける人。
使える道具。
知らない危険。
それらを前にして。
助ける側は、
選ばなければなりません。
何を先にするのか。
誰を先に守るのか。
そして。
今、
何をしないのか。
⸻
翌朝。
アルフレッドは。
まだ朝食も終わっていないうちから。
机へ地図を広げていた。
「三つ」
小さく呟く。
第四浄化塔。
その外周保守区画。
昨夜。
A―07が確認した。
三つの生命反応。
オルド。
ケイン。
バックス。
そう断定はできない。
だが。
地下へ入った五人のうち。
ダリオ。
救出済み。
ラウル。
救出済み。
残り。
三人。
数は。
合う。
「アルフレッド様」
セルマが。
隣から地図を見る。
「眠れましたか?」
「少し」
「少し?」
「……ちゃんと寝ました」
「本当ですか?」
「マルタさんに」
「寝るところ見られたから」
「では本当ですね」
「信用の基準がマルタさん……」
⸻
「アル坊」
ガルド。
部屋。
入ってくる。
「早ぇな」
「ガルドさんも」
「俺は仕事だ」
「僕も仕事」
「そうだったな」
以前なら。
十二歳だから。
そう言って。
簡単に区切っていた。
だが。
最近。
ガルドも。
アルフレッドへ。
少しずつ。
領主として話すようになっていた。
「エーナナ」
『確認』
「昨日の三つ」
『生命反応――継続』
「位置」
床。
青い光。
地図。
三点。
一つ。
第四浄化塔。
南外周。
一つ。
西保守路。
一つ。
そして。
問題。
「これ」
アルフレッド。
三つ目を見る。
「近づいてる?」
『肯定』
「どこへ」
『第四浄化塔中心機構』
ガルド。
眉。
寄せる。
「自力で動いてる?」
『移動速度――低』
「歩いてる?」
『断定不能』
「引きずられてる可能性」
セルマが言う。
『可能性あり』
部屋。
少し。
静かになる。
⸻
「水門」
ノエル。
帳面。
「閉鎖率」
『38%』
「昨夜と同じ?」
『否定』
「え?」
『昨夜最終計測――38.4%』
『現在――37.9%』
アルフレッド。
顔。
変わる。
「開いてる?」
『微増』
「勝手に?」
『自動閉鎖機構――故障』
「閉じようとして」
「逆に開いてる?」
『可能性あり』
「最悪だな」
ガルド。
低い声。
⸻
「急ぐ必要があります」
ノエル。
「ただし」
「何も分からない状態で」
「緊急封鎖を承認するのは」
「依然危険です」
「三人」
アルフレッド。
「先に見つける」
「それが一番?」
「少なくとも」
ガルド。
「人間が中にいるなら」
「水門いじる前に」
「場所を知りてぇ」
「うん」
「でも」
セルマ。
「三人の場所へ」
「どうやって」
A―07。
『経路候補――三』
「三つ?」
『第一』
『第三旧居住区封鎖門より進入』
「却下」
ガルド。
即答。
『第二』
『非常排水路』
「ラウルさんのところ?」
『そこから内部へ』
「でも」
「崩れてるんでしょう?」
『一部閉塞』
「使える?」
『危険』
「じゃあ第三」
『第一浄化施設』
『保守連絡路』
全員。
止まる。
「あるの?」
アルフレッド。
『記録上――存在』
「通れる?」
『不明』
「入口は?」
『第一浄化施設』
『下層西北区画』
「昨日まで」
「そんなの言ってなかったよね」
『管理者権限上昇に伴い』
『閲覧情報増加』
ノエル。
眼鏡。
押し上げる。
「権限が」
「少しずつ増えている」
「何をしたから?」
『居住者増加』
『保守管理個体復旧』
『施設部分再稼働』
「全部?」
『複合条件』
「……ゲームみたい」
「何です?」
ノエル。
「なんでもない」
⸻
「じゃあ」
アルフレッド。
「その保守連絡路」
「調べれば」
「三人の近くまで行ける?」
『可能性あり』
「第四浄化塔へ」
「直接入らず?」
『外周接続』
「それなら」
ガルド。
地図。
見る。
「昨日よりマシだな」
「僕も行く」
「……」
「理由あります」
「聞こう」
「管理者権限」
「エーナナだけだと」
「途中で開かない場所があるかもしれない」
『可能性――あり』
「《清掃》」
「侵食があった場合」
「使える」
「《修繕》」
「保守路が壊れてた場合」
「使える」
「……」
ガルド。
腕。
組む。
「ノエル」
「合理性はあります」
「セルマ」
「反対です」
「即答」
「ただし」
「条件付きで」
「同行は認めるべきかと」
アルフレッド。
びっくり。
「セルマが?」
「私も」
「何でも反対するわけではありません」
「ガルドさんと同じこと言った」
「嫌です」
「そこまで?」
⸻
「条件」
セルマ。
指。
一つ。
「単独行動しない」
「うん」
「二つ」
「先頭へ出ない」
「うん」
「三つ」
「異常を感じたら」
「必ず言う」
「うん」
「四つ」
「スキル使用前に」
「相談」
「うん」
「五つ」
「三人を見つけても」
「勝手に助けに飛び込まない」
「……うん」
「今」
「少し間がありました」
「聞こえてた?」
「見ていました」
「分かりやすいな僕……」
⸻
「探索隊」
ガルド。
「俺」
「アル坊」
「A―07」
「ベルン」
「マルク」
「五人」
「ビーさんは?」
アルフレッド。
「通路幅」
『B―03通行可否――低』
「また駄目か」
『外周接続以降は通行可能可能性あり』
「連れていく?」
「途中で詰まったら」
「帰れなくなる」
ガルド。
「残す」
「村の守りもいる」
「うん」
⸻
「私は」
セルマ。
「行きません」
アルフレッド。
「大丈夫?」
「何がですか」
「いや」
「最近」
「一緒に来そうだったから」
セルマ。
右の空袖。
ちら。
見る。
「今の私は」
「足手まといです」
「そんなこと」
「あります」
はっきり。
「だから」
「今は」
「行きません」
アルフレッド。
何も言わない。
「でも」
セルマ。
続ける。
「帰ってきてください」
「うん」
「それだけです」
「うん」
⸻
出発前。
ダリオ。
ラウル。
二人とも。
寝台。
「三人」
ガルド。
「何か思い出せ」
ラウル。
目。
閉じる。
「オルドは」
「一番前」
「道を探してた」
「ケイン」
「石工」
「壁を見るのが得意だった」
「バックス」
「若い」
「猟も少しできる」
「武器」
「短剣」
「槍一本」
「弓」
「それだけ」
「食料」
「ほぼなし」
「水」
「最初は持ってた」
「今は?」
「知らん」
「最後に見た場所」
ラウル。
指。
地図。
「この辺」
非常排水路。
分岐。
「ここから」
「北東」
「水が増えてきて」
「俺は動けなかった」
「三人は」
「上へ抜ける道」
「探しに行った」
⸻
「オルド」
ダリオ。
掠れた声。
「変な話してた」
「何」
「昔」
「第四の塔には」
「触るなって」
「誰から?」
「爺さん」
「そのまた爺さん」
「理由」
「知らん」
「でも」
「開けると」
「灰が流れる」
「そう」
「言ってた」
アルフレッド。
地図。
「第四浄化塔」
「たぶん」
「昔から」
「壊れてたんだね」
『可能性――高』
A―07。
⸻
「じゃあ」
ガルド。
「行くぞ」
⸻
地下。
第一浄化施設。
入口。
アルフレッド。
今日は。
前より。
少しだけ。
落ち着いている。
「エーナナ」
『確認』
「保守連絡路」
『案内開始』
青い線。
壁。
今まで。
消えていた区画。
点灯。
「こんなところ」
ベルン。
「前も通った?」
『近傍通過』
「開かなかった?」
『管理者権限不足』
「今は?」
『開放可能』
扉。
古い。
丸い。
金属。
「アル坊」
「何?」
「触る前に」
「聞け」
「分かってる」
A―07。
『管理者認証要求』
アルフレッド。
扉。
前。
「何すれば?」
『手掌接触』
「触っていい?」
ガルド。
「認証だけなら」
「うん」
右手。
置く。
青い光。
走る。
『暫定管理者――認証』
『保守連絡路』
『開放』
ご。
重い音。
扉。
左右へ。
開く。
⸻
冷たい。
空気。
「臭い」
マルク。
「何?」
「鉄」
「水」
「……あと」
A―07。
『侵食因子』
「多い?」
『中程度』
ガルド。
顔。
険しくなる。
「進める?」
『可能』
「接触しないで?」
『一部区画――困難』
「アル坊」
「うん」
「必要な時だけ」
「《清掃》」
「分かってる」
⸻
連絡路。
狭い。
だが。
完全な廃墟ではない。
壁。
青い線。
時々。
生きている。
水。
横。
細い溝。
流れる。
「これ」
「第一浄化施設の水?」
『保守用循環水』
「飲める?」
『非推奨』
「分かった」
十数分。
進む。
⸻
『停止』
A―07。
「菌糸?」
『肯定』
前。
通路。
半分。
灰色。
壁。
天井。
床。
絡む。
「多いね」
アルフレッド。
「ここ通るの?」
『代替経路――なし』
「《清掃》」
ガルド。
「狭い範囲」
「通れる分だけ」
「うん」
アルフレッド。
手。
前。
「《清掃》」
白い光。
広げない。
足元。
幅。
一人分。
菌糸。
ぱら。
ぱら。
崩れる。
黒い。
灰。
「……止める」
自分から。
光。
消す。
「体調」
「平気」
「頭」
「平気」
「吐き気」
「なし」
「よし」
「最近」
「自動で答えられるようになった」
「それは成長なのか?」
「たぶん」
⸻
通過。
直後。
A―07。
後ろ。
見る。
『侵食因子――再成長』
「え?」
アルフレッド。
振り返る。
さっき。
消した場所。
壁の亀裂。
奥。
細い。
菌糸。
また。
出てくる。
「早い」
『供給源近傍』
「第四浄化塔?」
『可能性――高』
「じゃあ」
「掃除しても」
「元を止めないと」
「また来る」
『肯定』
アルフレッド。
少し。
悔しそう。
「掃除だけじゃ」
「駄目なんだ」
「だから」
ガルド。
「原因探すんだろ」
「うん」
⸻
さらに。
三十分。
扉。
一つ。
『第四浄化塔外周保守区画』
A―07。
声。
少し。
変わる。
『警戒』
「何」
『侵食率――高』
「中?」
『扉向こう』
「生命反応」
『三』
「三人?」
『人類種一致率――』
『一』
『二』
『三』
『各90%以上』
アルフレッド。
息。
止める。
「いる」
「三人とも」
『可能性――高』
「近い?」
『最短――41メートル』
「行こう」
ガルド。
「ただし」
「ゆっくり」
⸻
扉。
開く。
臭い。
強い。
湿気。
灰。
金属。
そして。
腐った。
植物。
松明。
前。
照らす。
「……」
ベルン。
言葉。
出ない。
広い。
通路。
壁。
ほとんど。
菌糸。
灰色。
天井から。
垂れる。
「これ」
「地下施設じゃなくて」
「巣みたいだな」
マルク。
呟く。
『侵食率――81%』
「第四浄化塔全体?」
『外周区画』
「本体は?」
『不明』
「もっと高い可能性」
ガルド。
「あるな」
⸻
『生命反応――西』
A―07。
「一番近い?」
『肯定』
「行く」
壁際。
進む。
菌糸。
避ける。
時々。
《清掃》。
小さく。
道だけ。
アルフレッド。
二回目。
「大丈夫?」
ベルン。
「まだ」
「無理するなよ」
「うん」
最近。
皆。
言う。
無理するな。
以前なら。
少し。
うるさいと思った。
今は。
少し。
嬉しい。
⸻
角。
曲がる。
「いた!」
マルク。
壁。
横。
男。
倒れている。
四十代。
いや。
もっと。
老けて見える。
服。
泥。
血。
「オルド!」
ガルド。
ラウルから。
聞いた特徴。
左眉。
古い傷。
ある。
「オルド!」
男。
動く。
目。
薄く。
開く。
「……誰だ」
「灰境の村」
「救助」
「……村?」
「ラウルも」
「ダリオも」
「生きてる」
男の目。
一気に。
開く。
「ラウル……」
「助けた」
「村にいる」
「……」
オルド。
笑う。
「そうか」
「しぶといな」
「お前もな」
⸻
「怪我」
「腹」
血。
古い。
布。
巻かれている。
「菌糸」
A―07。
走査。
『侵食反応――』
一瞬。
『微弱』
「え?」
全員。
動き。
止まる。
「身体?」
『衣服表面』
「中?」
『生体内部――検出なし』
「なら」
ガルド。
「服脱がす」
「今?」
「菌糸持って帰る方が嫌だ」
「オルド」
「悪い」
「好きにしろ」
「寒いけど」
「生きてりゃ何でもいい」
外套。
上着。
切る。
菌糸。
表面。
A―07。
『除去推奨』
「アル坊」
「うん」
「ここ」
「小さく」
「《清掃》」
光。
衣服。
菌糸。
消える。
「身体」
『反応なし』
「よし」
⸻
「他の二人」
アルフレッド。
「ケイン」
「バックス」
オルド。
顔。
変わる。
「……別れた」
「また?」
「ああ」
「水が」
「上がってきた」
「ケインが」
「壁の向こうに」
「空洞があるって」
「石工だから?」
「ああ」
「それで」
「壁を壊した」
「その先」
「何があった」
オルド。
息。
整える。
「塔」
「塔?」
「ここ」
「地下なのに?」
「ああ」
「巨大な」
「柱みたいな」
「中が」
「青く光ってた」
「第四浄化塔本体?」
A―07。
『可能性――高』
「そこへ」
「ケインとバックス?」
「行った」
「俺は」
「腹」
「やられて」
「動けなくなった」
「何に」
「……人」
全員。
止まる。
「人?」
「違う」
オルド。
震える。
「人だったもの」
⸻
ガルド。
剣。
抜く。
「詳しく」
「灰色」
「肌」
「目」
「白い」
「動き」
「変」
「口から」
「糸」
アルフレッド。
首輪。
森狼。
A―07。
B―03。
全部。
頭。
よぎる。
「ゾンビ?」
言葉。
前世。
ぽろ。
出る。
「ぞんび?」
ガルド。
「いや」
「なんでもない」
「死体だった?」
「分からん」
オルド。
「でも」
「剣で斬った」
「血は」
「ほとんど出なかった」
「倒した?」
「ああ」
「その後」
「また」
「動いた」
ベルン。
顔。
強張る。
「魔物じゃないのか」
『生体情報――未登録』
A―07。
⸻
「ケイン」
「バックス」
「その先」
オルド。
目。
閉じる。
「行った」
「戻らない」
「いつ」
「たぶん」
「二日前」
「……」
まだ。
近い。
生きている可能性。
高い。
「エーナナ」
『生命反応』
「残り二つ」
『確認』
「一つ」
「塔中心へ近づいてる」
『肯定』
「もう一つ」
『停止状態』
「生きてる?」
『生命反応あり』
「よし」
アルフレッド。
立つ。
「オルドさん」
「先に」
「外へ」
「誰が連れる」
ガルド。
「マルク」
「はい」
「オルドを」
「入口まで戻せ」
「一人で?」
「A―07」
『経路記録済』
「マルクを案内」
「その後」
「戻ってこい」
『了解』
「僕たちは?」
「進む」
ガルド。
「二人」
「まだいる」
⸻
「僕」
アルフレッド。
「大丈夫」
「聞いてねぇ」
「でも」
「三回使った」
「《清掃》」
「うん」
「今日は」
「あとどれくらい」
「分からない」
「なら」
「温存」
「うん」
「次」
「本当に必要な時だけ」
「うん」
⸻
オルド。
運ばれる。
「領主様」
「何?」
「本当に」
「十二?」
「また?」
「十二です」
「……変な土地に」
「変な領主が来たな」
「褒めてる?」
「半分」
「残り?」
「心配」
「皆同じこと言う……」
⸻
A―07と。
マルク。
戻る。
その間。
ガルド。
ベルン。
アルフレッド。
三人。
外周区画。
待機。
ごん。
地下。
振動。
「また」
ガルド。
『下層水門』
『閉鎖率――』
A―07。
戻る途中。
遠隔。
声。
『37.1%』
「また開いた」
「三人助けるまで」
「持つ?」
『不明』
アルフレッド。
拳。
握る。
「時間ない」
「だから」
ガルド。
「焦らない」
「分かってる」
⸻
十数分後。
A―07。
戻る。
『オルド』
『入口側へ移送』
「よし」
「次」
『生命反応――北東』
進む。
菌糸。
増える。
壁。
ほぼ。
灰色。
途中。
人型。
何か。
倒れている。
「止まれ」
ガルド。
剣。
前。
「オルドが言ってた」
人だったもの。
松明。
近づける。
服。
人間。
男。
だが。
顔。
灰色。
口。
細い糸。
出ている。
「死んでる?」
『生体反応――なし』
「なら」
アルフレッド。
「死体」
『肯定』
「でも」
ベルン。
「動くんだろ」
その瞬間。
指。
ぴく。
「下がれ!」
ガルド。
死体。
立つ。
いや。
立たされる。
背中。
菌糸。
天井。
繋がっている。
「操り人形!」
アルフレッド。
死体。
こちら。
飛びかかる。
「触るな!」
ガルド。
剣。
横。
一閃。
脚。
切る。
倒れる。
それでも。
腕。
這う。
「うわっ」
「気持ち悪!」
ベルン。
槍。
肩。
固定。
「アル坊!」
「《清掃》?」
「死体じゃない!」
「糸!」
「うん!」
アルフレッド。
距離。
取る。
手。
「《清掃》!」
白。
光。
菌糸。
天井から。
死体へ。
繋ぐ。
部分。
消える。
ぷつ。
死体。
完全に。
動きを止めた。
「……」
全員。
息。
止める。
「これ」
アルフレッド。
顔。
青い。
「人を」
「動かしてた」
『侵食因子』
『死体利用を確認』
「死者は」
「戻ってない」
「動かされてるだけ」
ガルド。
「そういうことだな」
アルフレッド。
少し。
安心した。
奇妙に。
安心。
死者。
生き返ったわけではない。
生き返らない。
ただ。
侵食が。
身体を。
使っている。
⸻
「アル坊」
「うん」
「顔色」
「少し悪い」
「使ったから?」
「たぶん」
「次」
「もう使うな」
「でも」
「命に関わる時だけ」
「……うん」
⸻
進む。
少し。
遠く。
青い光。
「見える」
ベルン。
巨大な。
柱。
地下空間。
中心。
上。
天井へ。
続く。
青。
ところどころ。
赤。
菌糸。
巻きついている。
『第四浄化塔』
A―07。
声。
低い。
『本体確認』
「でかい……」
アルフレッド。
息。
呑む。
第一浄化施設。
とは。
規模。
違う。
塔。
というより。
巨大な。
心臓。
施設全体。
脈打つ。
青。
赤。
「生命反応」
『一』
「近い?」
『非常に近い』
「どこ」
A―07。
指。
塔。
基部。
人影。
一人。
男。
立っている。
「ケイン?」
ガルド。
「特徴」
石工。
大柄。
短髪。
「合う」
ベルン。
「おーい!」
ガルド。
「ケイン!」
男。
振り返る。
ゆっくり。
「……」
顔。
普通。
生きている。
「助けに来た!」
男。
口。
動く。
「……来るな」
「何?」
「来るな!」
声。
はっきり。
「どうして!」
「俺は」
ケイン。
両手。
震える。
「ここから」
「離れられない」
「怪我?」
「違う」
足元。
灰色の。
細い。
糸。
足首。
絡む。
「切れない!」
「斬る!」
ガルド。
前。
「待て!」
「なんだ!」
「バックスが!」
「どこ!」
ケイン。
塔。
上。
見る。
そこ。
青と赤。
交互。
光る。
金属の。
通路。
その上。
一人。
人影。
ゆっくり。
歩いている。
「バックス!」
「生きてる!」
ベルン。
叫ぶ。
『生命反応――確認』
「降りてこい!」
だが。
バックス。
反応。
ない。
さらに。
塔。
中心。
進む。
「何してる?」
ケイン。
顔。
歪む。
「止めろ!」
「何を」
「あいつ」
「呼ばれてる!」
「誰に!」
ケイン。
塔。
見る。
「中からだ!」
⸻
ごん。
下層。
水門。
また。
震える。
『閉鎖率――36.5%』
「下がってる!」
「バックス!」
ガルド。
「止まれ!」
男。
歩く。
その先。
塔中心。
大きな。
円形扉。
半分。
菌糸。
覆う。
そして。
向こう。
低い。
音。
『……開……』
アルフレッド。
凍る。
「今」
「喋った?」
誰も。
答えられない。
『……け……』
A―07。
警告。
『未知音声信号』
『塔内部より発生』
「バックス!」
ケイン。
叫ぶ。
「聞くな!」
「そいつの声を!」
バックス。
一歩。
また。
円形扉へ。
近づく。
そして。
手。
伸ばした。
⸻
第39話 三つの生命反応 了




