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男爵家四男の辺境開拓記 ~不遇スキル《修繕》と《清掃》で、みんなの帰る場所を作ります~  作者: 和泉發仙
第二章 灰境

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39/53

三つの生命反応



前書き


生きている。


それだけで、


希望になります。


けれど。


生きているからこそ、


急がなければならない時もあります。


残された時間。


動ける人。


使える道具。


知らない危険。


それらを前にして。


助ける側は、


選ばなければなりません。


何を先にするのか。


誰を先に守るのか。


そして。


今、


何をしないのか。


⸻


 翌朝。


 アルフレッドは。


 まだ朝食も終わっていないうちから。


 机へ地図を広げていた。


「三つ」


 小さく呟く。


 第四浄化塔。


 その外周保守区画。


 昨夜。


 A―07が確認した。


 三つの生命反応。


 オルド。


 ケイン。


 バックス。


 そう断定はできない。


 だが。


 地下へ入った五人のうち。


 ダリオ。


 救出済み。


 ラウル。


 救出済み。


 残り。


 三人。


 数は。


 合う。


「アルフレッド様」


 セルマが。


 隣から地図を見る。


「眠れましたか?」


「少し」


「少し?」


「……ちゃんと寝ました」


「本当ですか?」


「マルタさんに」


「寝るところ見られたから」


「では本当ですね」


「信用の基準がマルタさん……」


⸻


「アル坊」


 ガルド。


 部屋。


 入ってくる。


「早ぇな」


「ガルドさんも」


「俺は仕事だ」


「僕も仕事」


「そうだったな」


 以前なら。


 十二歳だから。


 そう言って。


 簡単に区切っていた。


 だが。


 最近。


 ガルドも。


 アルフレッドへ。


 少しずつ。


 領主として話すようになっていた。


「エーナナ」


『確認』


「昨日の三つ」


『生命反応――継続』


「位置」


 床。


 青い光。


 地図。


 三点。


 一つ。


 第四浄化塔。


 南外周。


 一つ。


 西保守路。


 一つ。


 そして。


 問題。


「これ」


 アルフレッド。


 三つ目を見る。


「近づいてる?」


『肯定』


「どこへ」


『第四浄化塔中心機構』


 ガルド。


 眉。


 寄せる。


「自力で動いてる?」


『移動速度――低』


「歩いてる?」


『断定不能』


「引きずられてる可能性」


 セルマが言う。


『可能性あり』


 部屋。


 少し。


 静かになる。


⸻


「水門」


 ノエル。


 帳面。


「閉鎖率」


『38%』


「昨夜と同じ?」


『否定』


「え?」


『昨夜最終計測――38.4%』


『現在――37.9%』


 アルフレッド。


 顔。


 変わる。


「開いてる?」


『微増』


「勝手に?」


『自動閉鎖機構――故障』


「閉じようとして」


「逆に開いてる?」


『可能性あり』


「最悪だな」


 ガルド。


 低い声。


⸻


「急ぐ必要があります」


 ノエル。


「ただし」


「何も分からない状態で」


「緊急封鎖を承認するのは」


「依然危険です」


「三人」


 アルフレッド。


「先に見つける」


「それが一番?」


「少なくとも」


 ガルド。


「人間が中にいるなら」


「水門いじる前に」


「場所を知りてぇ」


「うん」


「でも」


 セルマ。


「三人の場所へ」


「どうやって」


 A―07。


『経路候補――三』


「三つ?」


『第一』


『第三旧居住区封鎖門より進入』


「却下」


 ガルド。


 即答。


『第二』


『非常排水路』


「ラウルさんのところ?」


『そこから内部へ』


「でも」


「崩れてるんでしょう?」


『一部閉塞』


「使える?」


『危険』


「じゃあ第三」


『第一浄化施設』


『保守連絡路』


 全員。


 止まる。


「あるの?」


 アルフレッド。


『記録上――存在』


「通れる?」


『不明』


「入口は?」


『第一浄化施設』


『下層西北区画』


「昨日まで」


「そんなの言ってなかったよね」


『管理者権限上昇に伴い』


『閲覧情報増加』


 ノエル。


 眼鏡。


 押し上げる。


「権限が」


「少しずつ増えている」


「何をしたから?」


『居住者増加』


『保守管理個体復旧』


『施設部分再稼働』


「全部?」


『複合条件』


「……ゲームみたい」


「何です?」


 ノエル。


「なんでもない」


⸻


「じゃあ」


 アルフレッド。


「その保守連絡路」


「調べれば」


「三人の近くまで行ける?」


『可能性あり』


「第四浄化塔へ」


「直接入らず?」


『外周接続』


「それなら」


 ガルド。


 地図。


 見る。


「昨日よりマシだな」


「僕も行く」


「……」


「理由あります」


「聞こう」


「管理者権限」


「エーナナだけだと」


「途中で開かない場所があるかもしれない」


『可能性――あり』


「《清掃》」


「侵食があった場合」


「使える」


「《修繕》」


「保守路が壊れてた場合」


「使える」


「……」


 ガルド。


 腕。


 組む。


「ノエル」


「合理性はあります」


「セルマ」


「反対です」


「即答」


「ただし」


「条件付きで」


「同行は認めるべきかと」


 アルフレッド。


 びっくり。


「セルマが?」


「私も」


「何でも反対するわけではありません」


「ガルドさんと同じこと言った」


「嫌です」


「そこまで?」


⸻


「条件」


 セルマ。


 指。


 一つ。


「単独行動しない」


「うん」


「二つ」


「先頭へ出ない」


「うん」


「三つ」


「異常を感じたら」


「必ず言う」


「うん」


「四つ」


「スキル使用前に」


「相談」


「うん」


「五つ」


「三人を見つけても」


「勝手に助けに飛び込まない」


「……うん」


「今」


「少し間がありました」


「聞こえてた?」


「見ていました」


「分かりやすいな僕……」


⸻


「探索隊」


 ガルド。


「俺」


「アル坊」


「A―07」


「ベルン」


「マルク」


「五人」


「ビーさんは?」


 アルフレッド。


「通路幅」


『B―03通行可否――低』


「また駄目か」


『外周接続以降は通行可能可能性あり』


「連れていく?」


「途中で詰まったら」


「帰れなくなる」


 ガルド。


「残す」


「村の守りもいる」


「うん」


⸻


「私は」


 セルマ。


「行きません」


 アルフレッド。


「大丈夫?」


「何がですか」


「いや」


「最近」


「一緒に来そうだったから」


 セルマ。


 右の空袖。


 ちら。


 見る。


「今の私は」


「足手まといです」


「そんなこと」


「あります」


 はっきり。


「だから」


「今は」


「行きません」


 アルフレッド。


 何も言わない。


「でも」


 セルマ。


 続ける。


「帰ってきてください」


「うん」


「それだけです」


「うん」


⸻


 出発前。


 ダリオ。


 ラウル。


 二人とも。


 寝台。


「三人」


 ガルド。


「何か思い出せ」


 ラウル。


 目。


 閉じる。


「オルドは」


「一番前」


「道を探してた」


「ケイン」


「石工」


「壁を見るのが得意だった」


「バックス」


「若い」


「猟も少しできる」


「武器」


「短剣」


「槍一本」


「弓」


「それだけ」


「食料」


「ほぼなし」


「水」


「最初は持ってた」


「今は?」


「知らん」


「最後に見た場所」


 ラウル。


 指。


 地図。


「この辺」


 非常排水路。


 分岐。


「ここから」


「北東」


「水が増えてきて」


「俺は動けなかった」


「三人は」


「上へ抜ける道」


「探しに行った」


⸻


「オルド」


 ダリオ。


 掠れた声。


「変な話してた」


「何」


「昔」


「第四の塔には」


「触るなって」


「誰から?」


「爺さん」


「そのまた爺さん」


「理由」


「知らん」


「でも」


「開けると」


「灰が流れる」


「そう」


「言ってた」


 アルフレッド。


 地図。


「第四浄化塔」


「たぶん」


「昔から」


「壊れてたんだね」


『可能性――高』


 A―07。


⸻


「じゃあ」


 ガルド。


「行くぞ」


⸻


 地下。


 第一浄化施設。


 入口。


 アルフレッド。


 今日は。


 前より。


 少しだけ。


 落ち着いている。


「エーナナ」


『確認』


「保守連絡路」


『案内開始』


 青い線。


 壁。


 今まで。


 消えていた区画。


 点灯。


「こんなところ」


 ベルン。


「前も通った?」


『近傍通過』


「開かなかった?」


『管理者権限不足』


「今は?」


『開放可能』


 扉。


 古い。


 丸い。


 金属。


「アル坊」


「何?」


「触る前に」


「聞け」


「分かってる」


 A―07。


『管理者認証要求』


 アルフレッド。


 扉。


 前。


「何すれば?」


『手掌接触』


「触っていい?」


 ガルド。


「認証だけなら」


「うん」


 右手。


 置く。


 青い光。


 走る。


『暫定管理者――認証』


『保守連絡路』


『開放』


 ご。


 重い音。


 扉。


 左右へ。


 開く。


⸻


 冷たい。


 空気。


「臭い」


 マルク。


「何?」


「鉄」


「水」


「……あと」


 A―07。


『侵食因子』


「多い?」


『中程度』


 ガルド。


 顔。


 険しくなる。


「進める?」


『可能』


「接触しないで?」


『一部区画――困難』


「アル坊」


「うん」


「必要な時だけ」


「《清掃》」


「分かってる」


⸻


 連絡路。


 狭い。


 だが。


 完全な廃墟ではない。


 壁。


 青い線。


 時々。


 生きている。


 水。


 横。


 細い溝。


 流れる。


「これ」


「第一浄化施設の水?」


『保守用循環水』


「飲める?」


『非推奨』


「分かった」


 十数分。


 進む。


⸻


『停止』


 A―07。


「菌糸?」


『肯定』


 前。


 通路。


 半分。


 灰色。


 壁。


 天井。


 床。


 絡む。


「多いね」


 アルフレッド。


「ここ通るの?」


『代替経路――なし』


「《清掃》」


 ガルド。


「狭い範囲」


「通れる分だけ」


「うん」


 アルフレッド。


 手。


 前。


「《清掃》」


 白い光。


 広げない。


 足元。


 幅。


 一人分。


 菌糸。


 ぱら。


 ぱら。


 崩れる。


 黒い。


 灰。


「……止める」


 自分から。


 光。


 消す。


「体調」


「平気」


「頭」


「平気」


「吐き気」


「なし」


「よし」


「最近」


「自動で答えられるようになった」


「それは成長なのか?」


「たぶん」


⸻


 通過。


 直後。


 A―07。


 後ろ。


 見る。


『侵食因子――再成長』


「え?」


 アルフレッド。


 振り返る。


 さっき。


 消した場所。


 壁の亀裂。


 奥。


 細い。


 菌糸。


 また。


 出てくる。


「早い」


『供給源近傍』


「第四浄化塔?」


『可能性――高』


「じゃあ」


「掃除しても」


「元を止めないと」


「また来る」


『肯定』


 アルフレッド。


 少し。


 悔しそう。


「掃除だけじゃ」


「駄目なんだ」


「だから」


 ガルド。


「原因探すんだろ」


「うん」


⸻


 さらに。


 三十分。


 扉。


 一つ。


『第四浄化塔外周保守区画』


 A―07。


 声。


 少し。


 変わる。


『警戒』


「何」


『侵食率――高』


「中?」


『扉向こう』


「生命反応」


『三』


「三人?」


『人類種一致率――』


『一』


『二』


『三』


『各90%以上』


 アルフレッド。


 息。


 止める。


「いる」


「三人とも」


『可能性――高』


「近い?」


『最短――41メートル』


「行こう」


 ガルド。


「ただし」


「ゆっくり」


⸻


 扉。


 開く。


 臭い。


 強い。


 湿気。


 灰。


 金属。


 そして。


 腐った。


 植物。


 松明。


 前。


 照らす。


「……」


 ベルン。


 言葉。


 出ない。


 広い。


 通路。


 壁。


 ほとんど。


 菌糸。


 灰色。


 天井から。


 垂れる。


「これ」


「地下施設じゃなくて」


「巣みたいだな」


 マルク。


 呟く。


『侵食率――81%』


「第四浄化塔全体?」


『外周区画』


「本体は?」


『不明』


「もっと高い可能性」


 ガルド。


「あるな」


⸻


『生命反応――西』


 A―07。


「一番近い?」


『肯定』


「行く」


 壁際。


 進む。


 菌糸。


 避ける。


 時々。


 《清掃》。


 小さく。


 道だけ。


 アルフレッド。


 二回目。


「大丈夫?」


 ベルン。


「まだ」


「無理するなよ」


「うん」


 最近。


 皆。


 言う。


 無理するな。


 以前なら。


 少し。


 うるさいと思った。


 今は。


 少し。


 嬉しい。


⸻


 角。


 曲がる。


「いた!」


 マルク。


 壁。


 横。


 男。


 倒れている。


 四十代。


 いや。


 もっと。


 老けて見える。


 服。


 泥。


 血。


「オルド!」


 ガルド。


 ラウルから。


 聞いた特徴。


 左眉。


 古い傷。


 ある。


「オルド!」


 男。


 動く。


 目。


 薄く。


 開く。


「……誰だ」


「灰境の村」


「救助」


「……村?」


「ラウルも」


「ダリオも」


「生きてる」


 男の目。


 一気に。


 開く。


「ラウル……」


「助けた」


「村にいる」


「……」


 オルド。


 笑う。


「そうか」


「しぶといな」


「お前もな」


⸻


「怪我」


「腹」


 血。


 古い。


 布。


 巻かれている。


「菌糸」


 A―07。


 走査。


『侵食反応――』


 一瞬。


『微弱』


「え?」


 全員。


 動き。


 止まる。


「身体?」


『衣服表面』


「中?」


『生体内部――検出なし』


「なら」


 ガルド。


「服脱がす」


「今?」


「菌糸持って帰る方が嫌だ」


「オルド」


「悪い」


「好きにしろ」


「寒いけど」


「生きてりゃ何でもいい」


 外套。


 上着。


 切る。


 菌糸。


 表面。


 A―07。


『除去推奨』


「アル坊」


「うん」


「ここ」


「小さく」


「《清掃》」


 光。


 衣服。


 菌糸。


 消える。


「身体」


『反応なし』


「よし」


⸻


「他の二人」


 アルフレッド。


「ケイン」


「バックス」


 オルド。


 顔。


 変わる。


「……別れた」


「また?」


「ああ」


「水が」


「上がってきた」


「ケインが」


「壁の向こうに」


「空洞があるって」


「石工だから?」


「ああ」


「それで」


「壁を壊した」


「その先」


「何があった」


 オルド。


 息。


 整える。


「塔」


「塔?」


「ここ」


「地下なのに?」


「ああ」


「巨大な」


「柱みたいな」


「中が」


「青く光ってた」


「第四浄化塔本体?」


 A―07。


『可能性――高』


「そこへ」


「ケインとバックス?」


「行った」


「俺は」


「腹」


「やられて」


「動けなくなった」


「何に」


「……人」


 全員。


 止まる。


「人?」


「違う」


 オルド。


 震える。


「人だったもの」


⸻


 ガルド。


 剣。


 抜く。


「詳しく」


「灰色」


「肌」


「目」


「白い」


「動き」


「変」


「口から」


「糸」


 アルフレッド。


 首輪。


 森狼。


 A―07。


 B―03。


 全部。


 頭。


 よぎる。


「ゾンビ?」


 言葉。


 前世。


 ぽろ。


 出る。


「ぞんび?」


 ガルド。


「いや」


「なんでもない」


「死体だった?」


「分からん」


 オルド。


「でも」


「剣で斬った」


「血は」


「ほとんど出なかった」


「倒した?」


「ああ」


「その後」


「また」


「動いた」


 ベルン。


 顔。


 強張る。


「魔物じゃないのか」


『生体情報――未登録』


 A―07。


⸻


「ケイン」


「バックス」


「その先」


 オルド。


 目。


 閉じる。


「行った」


「戻らない」


「いつ」


「たぶん」


「二日前」


「……」


 まだ。


 近い。


 生きている可能性。


 高い。


「エーナナ」


『生命反応』


「残り二つ」


『確認』


「一つ」


「塔中心へ近づいてる」


『肯定』


「もう一つ」


『停止状態』


「生きてる?」


『生命反応あり』


「よし」


 アルフレッド。


 立つ。


「オルドさん」


「先に」


「外へ」


「誰が連れる」


 ガルド。


「マルク」


「はい」


「オルドを」


「入口まで戻せ」


「一人で?」


「A―07」


『経路記録済』


「マルクを案内」


「その後」


「戻ってこい」


『了解』


「僕たちは?」


「進む」


 ガルド。


「二人」


「まだいる」


⸻


「僕」


 アルフレッド。


「大丈夫」


「聞いてねぇ」


「でも」


「三回使った」


「《清掃》」


「うん」


「今日は」


「あとどれくらい」


「分からない」


「なら」


「温存」


「うん」


「次」


「本当に必要な時だけ」


「うん」


⸻


 オルド。


 運ばれる。


「領主様」


「何?」


「本当に」


「十二?」


「また?」


「十二です」


「……変な土地に」


「変な領主が来たな」


「褒めてる?」


「半分」


「残り?」


「心配」


「皆同じこと言う……」


⸻


 A―07と。


 マルク。


 戻る。


 その間。


 ガルド。


 ベルン。


 アルフレッド。


 三人。


 外周区画。


 待機。


 ごん。


 地下。


 振動。


「また」


 ガルド。


『下層水門』


『閉鎖率――』


 A―07。


 戻る途中。


 遠隔。


 声。


『37.1%』


「また開いた」


「三人助けるまで」


「持つ?」


『不明』


 アルフレッド。


 拳。


 握る。


「時間ない」


「だから」


 ガルド。


「焦らない」


「分かってる」


⸻


 十数分後。


 A―07。


 戻る。


『オルド』


『入口側へ移送』


「よし」


「次」


『生命反応――北東』


 進む。


 菌糸。


 増える。


 壁。


 ほぼ。


 灰色。


 途中。


 人型。


 何か。


 倒れている。


「止まれ」


 ガルド。


 剣。


 前。


「オルドが言ってた」


 人だったもの。


 松明。


 近づける。


 服。


 人間。


 男。


 だが。


 顔。


 灰色。


 口。


 細い糸。


 出ている。


「死んでる?」


『生体反応――なし』


「なら」


 アルフレッド。


「死体」


『肯定』


「でも」


 ベルン。


「動くんだろ」


 その瞬間。


 指。


 ぴく。


「下がれ!」


 ガルド。


 死体。


 立つ。


 いや。


 立たされる。


 背中。


 菌糸。


 天井。


 繋がっている。


「操り人形!」


 アルフレッド。


 死体。


 こちら。


 飛びかかる。


「触るな!」


 ガルド。


 剣。


 横。


 一閃。


 脚。


 切る。


 倒れる。


 それでも。


 腕。


 這う。


「うわっ」


「気持ち悪!」


 ベルン。


 槍。


 肩。


 固定。


「アル坊!」


「《清掃》?」


「死体じゃない!」


「糸!」


「うん!」


 アルフレッド。


 距離。


 取る。


 手。


「《清掃》!」


 白。


 光。


 菌糸。


 天井から。


 死体へ。


 繋ぐ。


 部分。


 消える。


 ぷつ。


 死体。


 完全に。


 動きを止めた。


「……」


 全員。


 息。


 止める。


「これ」


 アルフレッド。


 顔。


 青い。


「人を」


「動かしてた」


『侵食因子』


『死体利用を確認』


「死者は」


「戻ってない」


「動かされてるだけ」


 ガルド。


「そういうことだな」


 アルフレッド。


 少し。


 安心した。


 奇妙に。


 安心。


 死者。


 生き返ったわけではない。


 生き返らない。


 ただ。


 侵食が。


 身体を。


 使っている。


⸻


「アル坊」


「うん」


「顔色」


「少し悪い」


「使ったから?」


「たぶん」


「次」


「もう使うな」


「でも」


「命に関わる時だけ」


「……うん」


⸻


 進む。


 少し。


 遠く。


 青い光。


「見える」


 ベルン。


 巨大な。


 柱。


 地下空間。


 中心。


 上。


 天井へ。


 続く。


 青。


 ところどころ。


 赤。


 菌糸。


 巻きついている。


『第四浄化塔』


 A―07。


 声。


 低い。


『本体確認』


「でかい……」


 アルフレッド。


 息。


 呑む。


 第一浄化施設。


 とは。


 規模。


 違う。


 塔。


 というより。


 巨大な。


 心臓。


 施設全体。


 脈打つ。


 青。


 赤。


「生命反応」


『一』


「近い?」


『非常に近い』


「どこ」


 A―07。


 指。


 塔。


 基部。


 人影。


 一人。


 男。


 立っている。


「ケイン?」


 ガルド。


「特徴」


 石工。


 大柄。


 短髪。


「合う」


 ベルン。


「おーい!」


 ガルド。


「ケイン!」


 男。


 振り返る。


 ゆっくり。


「……」


 顔。


 普通。


 生きている。


「助けに来た!」


 男。


 口。


 動く。


「……来るな」


「何?」


「来るな!」


 声。


 はっきり。


「どうして!」


「俺は」


 ケイン。


 両手。


 震える。


「ここから」


「離れられない」


「怪我?」


「違う」


 足元。


 灰色の。


 細い。


 糸。


 足首。


 絡む。


「切れない!」


「斬る!」


 ガルド。


 前。


「待て!」


「なんだ!」


「バックスが!」


「どこ!」


 ケイン。


 塔。


 上。


 見る。


 そこ。


 青と赤。


 交互。


 光る。


 金属の。


 通路。


 その上。


 一人。


 人影。


 ゆっくり。


 歩いている。


「バックス!」


「生きてる!」


 ベルン。


 叫ぶ。


『生命反応――確認』


「降りてこい!」


 だが。


 バックス。


 反応。


 ない。


 さらに。


 塔。


 中心。


 進む。


「何してる?」


 ケイン。


 顔。


 歪む。


「止めろ!」


「何を」


「あいつ」


「呼ばれてる!」


「誰に!」


 ケイン。


 塔。


 見る。


「中からだ!」


⸻


 ごん。


 下層。


 水門。


 また。


 震える。


『閉鎖率――36.5%』


「下がってる!」


「バックス!」


 ガルド。


「止まれ!」


 男。


 歩く。


 その先。


 塔中心。


 大きな。


 円形扉。


 半分。


 菌糸。


 覆う。


 そして。


 向こう。


 低い。


 音。


『……開……』


 アルフレッド。


 凍る。


「今」


「喋った?」


 誰も。


 答えられない。


『……け……』


 A―07。


 警告。


『未知音声信号』


『塔内部より発生』


「バックス!」


 ケイン。


 叫ぶ。


「聞くな!」


「そいつの声を!」


 バックス。


 一歩。


 また。


 円形扉へ。


 近づく。


 そして。


 手。


 伸ばした。


⸻


第39話 三つの生命反応 了

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